新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.340、2006/1/13 11:44

[刑事・起訴後]
質問:私は通常の会社員ですが,これまで,交通違反を何度か重ね,5年前には免許取消後だったにもかかわらず,無免許運転をしてしまい,法廷で懲役6か月執行猶予3年の判決を受けました。その後は,車を運転することもなかったのですが,最近,飲酒後に,つい友人の車を運転してしまい,人身事故を起こしてしまいました。その後,道路交通法違反と業務上過失傷害で起訴され,刑事裁判の第1審では,懲役1年の実刑判決を受けたのですが,現在まで被害者との間で示談ができていないので,控訴した上で,控訴審までに示談を成立させたいと考えています。執行猶予になる見込みはあるでしょうか。

回答:
1、本件では,@控訴審までに被害者と示談できるか,A示談ができたとして,執行猶予判決が得られるか,という2つの問題があります。
2、まず,被害者との示談についてですが,被害者が存在する事件において,示談の成否は,裁判官が刑を決める判断要素として最も重要な事柄の一つであり,本件における刑事弁護としても示談交渉が最も重要な活動になると思われます。ただ,第1審の段階で示談が成立しなかったということは,心情的な問題で被害者が示談に応じない,被害者の怪我が治癒(または症状固定)に至らないために損害額が未確定である,被害者との間で損害額について争いがある,など示談を困難にする何らかの事情が存在するのが通常でしょう。他方で,控訴審までの通常のスケジュールを考えると,示談交渉にかけられる時間は,長くとも,第1審判決後,2〜3か月程度でしょうから,そのような短期間の間で,示談を妨げている状況が好転することはあまり期待できません。したがって,控訴審までに示談を成立させることは必ずしも容易ではありませんが,例えば,心情的な問題で被害者が示談に応じない場合であれば,弁護士に依頼し,粘り強く交渉を続けてもらうことで示談に至ることは十分にありえます。また,損害額について争いがあるなど最終的な示談が難しい状況であっても,被害の一部賠償を行ったり,中間的・暫定的な和解を目指して交渉したりするなどの方法が考えられますし,このような一部賠償等であっても,裁判の際に,示談に準ずる事情として裁判官に評価されることはあり得ます。
3、それでは,本件で,被害者と示談が成立,もしくは,示談に準ずる被害弁償等ができたとして,控訴審で執行猶予判決が得られるか,というと,見込みとしては,それは難しいと言わざるを得ません。すなわち,@あなたは,すでに,5年前に執行猶予判決を受けているという交通前科を持っているのであり,一般に,執行猶予判決を受けた後,一定期間内に,再度,同種の犯罪を行うと,今度は実刑判決になる可能性が高まること,A近年,道路交通法,刑法改正などに顕著にみられるように,悪質な交通事故・交通違反に対しては厳罰化の傾向があるところ,あなたは,無免許及び酒気帯びという極めて悪質な交通違反を犯した上,人を傷つけるという重大な結果を招いていることからすると,あなたの場合,ある程度実刑判決を覚悟しなければならないと思われます。ただし,執行猶予を得られる可能性は皆無というわけではありませんし,たとえ執行猶予を得るまでには至らなくとも,被害者との間の示談交渉やその結果を踏まえて,例えば,第1審で懲役1年だったところ,懲役10か月に変更されるなど,一定の減刑がされる可能性は十分にあり,実際に,そのような事例も存在しますので,あなたの場合も,控訴をしてみるかどうか,弁護士とよく相談してはいかがでしょうか。

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