新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.332、2006/1/5 15:07 https://www.shinginza.com/sakimono.htm

[民事・消費者]
質問:外国為替証拠金取引の取扱業者に対する法規制について教えて下さい。

回答:
1、いわゆる外国為替証拠金取引について、平成17年7月1日以降、金融先物取引法により規制が設けられました。従前は外国為替証拠金取引に関して、具体的な法律はなく、取扱業者に対する登録や取引の規制はありませんでした。そのため、法規制がないことをいいことに悪質な業者が出現し、外国為替証拠金取引を扱う業者と一般消費者との間でトラブルが急増し、民事裁判や詐欺などの刑事事件に発展するケースが多発しました。このような状況を踏まえて、金融先物取引法の改正がなされ、新たに外国為替証拠金取引を規制対象に加え、様々な法規制が設けられました。改正金融先物取引法は、平成16年12月1日に成立し、同年12月8日に公布され、平成17年7月1日から施行されました。
2、法改正により設けられた規制の主な内容は、次の通りです。
(1)外国為替証拠金取引の取扱業者の登録制(金融先物取引法56条)
取扱業者の登録が義務付けられ、登録拒否の要件も定められ、業者の適格性や財務上の健全性の確保が求められています(法59条)。また、株式会社や銀行等の金融機関でなければ取り扱えないことにもなりました。
(2)広告の規制(法68条)
取扱業者が広告をするときは、商号及び登録番号、手数料、通貨等の価格および金融指標の数値の変動により損失が生ずるおそれがあり、かつ、当該損失の額が委託証拠金その他の保証金の額を上回るリスクがあることなどの取引内容に関する重要事項を表示しなければならないこととされました。
(3)書面の交付の義務
金融先物取引において、契約締結前(法70条)、取引が成立したとき(法71条)、委託証拠金その他の保証金を受領したとき(法72条)、取扱業者は消費者に対して規定の書面を交付しなければならないことになりました。
(4)委託者等に対する誠実義務(75条)
金融先物取引業者並びにその役員及び使用人は、委託者等に対して誠実かつ公正に、その業務を遂行しなければならない旨明示されました。
(5)禁止行為の明示(76条)
取扱業者の禁止行為が明示されました。下記のような行為が禁止されています。
@顧客に対し、利益を生ずることが確実であると誤解させるような断定的判断を提供して受託契約等の締結を勧誘すること。
A顧客に対し、損失の全部若しくは一部を負担することを約し、又は利益を保証して、受託契約等の締結を勧誘すること。
B受託契約等の締結の勧誘の要請をしていない一般顧客に対し、訪問し又は電話をかけて、受託契約等の締結を勧誘すること。
C受託契約等の締結の勧誘を受けた顧客が当該受託契約等を締結しない旨の意思(当該勧誘を引き続き受けることを希望しない旨の意思を含む。)を表示したにもかかわらず、当該勧誘を継続すること。
D受託契約等を締結しないで、金融先物取引の受託等をし、顧客を威迫することによりその追認を求めること。
(6)適合性の原則(法77条)
取扱業者は、顧客の知識、経験及び財産の状況に照らして不適当と認められる受託契約等の締結の勧誘を行って顧客の保護に欠けることにならないように業務を行わなければならないと規定されました。
(7)自己資本規制比率(法82条)
取扱業者(銀行等は除かれます)は、資本、準備金等の合計額から固定資産等の合計額を控除した額の、その行っている金融先物取引の当該金融先物取引に係る通貨等又は金融指標の数値の変動その他の理由により発生しうる危険に対応する額として内閣府令で定めるものの合計額に対する比率(「自己資本規制比率」といいます)を算出し、毎月末等に、内閣総理大臣に届け出なければなりません。さらに、取扱業者は、自己資本規制比率が120パーセントを下回ることのないようにしなければなりません。
(8)外務員の登録(法95条)
取扱業者は、勧誘員、販売員、外交員その他いかなる名称を有する者であるかを問わず、その役員又は使用人のうち、その取扱業者のために金融先物取引の受託や契約締結の勧誘を行う者の氏名、生年月日等について、内閣府令で定める場所に備える外務員登録原簿に登録を受けなければならないこととされました。
(9)罰則(法148条乃至169条)
金融先物取引法違反行為に対して、罰則規定が設けられて、刑事責任が明確に定められました。

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