新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.330、2006/1/5 14:59

[刑事・違法性]
質問:会社にやみ金業者から甲に対する脅迫的な取立ての電話がありました。甲は、当社の社員及びその家族にも該当者がいなかったのですが、注意を喚起するために社内のLANを通して社員のパソコンにやみ金業者から甲に対する電話があったこと及び今後電話があったとしても無視するように指示をするメールを配信しました。すると、甲がこのことを聞きつけて、当該メールの配信は自分に対する名誉毀損に当たると抗議し、謝罪、慰謝料を請求してきました。この行為は、名誉毀損になるのでしょうか。また、今後、どのように対処すべきでしょうか。

回答:
1、名誉毀損罪は公然と事実を摘示して、人の名誉を毀損することによって成立します(刑法230条1項)。その指摘した事実が真実であるかどうかは問われません。名誉の毀損とは、人の社会的評価を低下させることを意味しますので、甲の名前を特定して、やみ金業者から脅迫的な取立てを受けていることが分かる内容のメールの記載は、甲の社会的評価を低下させる可能性があるので、名誉の毀損に当たる恐れがあります。
2、ただし、名誉毀損行為は、公然となされる必要があり、公然性とは不特定又は多数人に対して事実を摘示することが要求されています。特定の限定された一部のものに対する表現行為については、公然性が認められません。少数の人であっても、客観的に伝播する可能性が有る場合には、実質的に不特定多数といえるので、公然性が認められます。
3、本件の場合、会社内のLANを通じた社員に対するメールにとどまっており、特定されています。また、注意喚起を目的とするものであり、社内の利用に限定されており、伝播の可能性も低いといえます。
4、よって、本件行為には、公然性が認められず、名誉毀損罪は成立せず、不法行為にはならないといえます。したがって、会社及び相談者個人にはなんら法的な責任は生じませんので、甲に対して、謝罪や慰謝料を支払う法的な義務はありません。ただ、個人情報保護の観点から、道義的な責任がないともいえませんので、甲とは話し合いをして、誠意ある対応をした方が無難でしょう。

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