新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.324、2006/1/5 11:17

[家事・親子]
質問:私たち夫婦は、子供に恵まれなかったので、養子縁組をしました。その子は、家に寄り付かず、お金をせびられます。また、妻は暴力を受けたこともあります。養子親子関係を清算する方法はないでしょうか。

回答:
養親と養子双方に養子縁組の関係を終了させる意思(離縁の意思)がある場合には、協議によって離縁することが可能です(民法811条1項)。また、協議では離縁することが困難であるときでも、調停等法的手続きによって離縁することができる場合があります。
1、協議離縁
まず、話し合いで「離縁をする」との合意を得られたならば、協議離縁をすることができます。ただし、この場合でも養子の方が成年者か未成年者かで相違がありますので、これを分けて説明します。
(1)養子が成年者である場合・・養子が成年者であるような場合には、相談者の方(Aさん)だけが離縁することもできますし、奥さん(Bさん)だけが離縁することもできます。もちろん、AさんBさん両者揃って離縁することも可能です。
(2)養子が未成年者である場合・・養子が未成年者の場合には、AさんあるいはBさんどちらかが単独で離縁をすることはできません。離縁をする場合には、特別な事情(一方が心神喪失状態で意思表示ができないなど)がない限り、両者揃ってということになります(同法811条の2)。
なお、未成年者が15歳未満の場合には、未成年者本人と協議をすることはできません。このような場合には、離縁後にこの未成年者の法定代理人となるべき人が未成年者に代わって協議をすることになります(同法811条2項)。
2、調停離縁
当事者同士だけの話し合いでは解決ができない場合、いきなり裁判をする、ということはできません。このような場合にはまず、家庭裁判所に調停を申し立てることになります(調停前置主義・家事審判法17条、18条)。調停も裁判所を利用した手続ですが、裁判とは異なり、あくまで「話し合い」ということになります。ただし、調停でも話し合いがまとまれば調書が作成され、これが作成されれば判決と同様の効力を持つことになります。したがって、調停で話し合いがまとまれば離縁することが可能です。
3、審判離縁
調停があともう少しのところでまとまらなかった、というような場合に、家庭裁判所は一切の事情を見て職権で審判をすることができます(家事審判法24条1項)。これを調停に代わる審判といいますが、ここで離縁の審判がなされ、2週間以内に異議が申し立てられなかった場合にはこの審判が確定判決と同様の効力を有することになりますので(家事審判法25条1項、3項)、離縁することができます。一方、2週間以内に異議が申し立てられた場合には、この審判は効力を失うことになります(家事審判法25条2項)ので、離縁することはできません。
4、裁判離縁
調停で話し合いがつかず、審判もなされなかったような場合、最終的には裁判によって離縁をすることなります。ただし、どのような場合にでも離縁することができるわけではなく、下記のような離縁事由が必要となります(民法814条1項)。
・他の一方から悪意で遺棄されたとき
・他の一方の生死が三年以上明らかでないとき
・その他縁組を継続し難い重大な事由があるとき
本件では、養子の方が家に寄り付かず、お金をせびったり、あるいは暴力をふるったりなどしているということですので、「縁組を継続し難い重大な事由がある」と認められる可能性があります。したがって、裁判ではその旨主張することになります。
5、その他
(1)ここまでの説明は全て「普通養子」についてのものです。「特別養子」については、協議で離縁することはできませんし、当事者が裁判を提起して離縁することもできません(民法817条の10)。
(2)また、上記のように協議が調えば離縁ができますが、これは実質的な要件であり、離縁を成立させるためには、他に形式的な要件として、市役所等に「養子離縁届」を提出する必要がありますので、その点ご注意下さい。
裁判等による離縁の場合でも、市役所等に「養子離縁届」を提出することになりますが、判決等によって既に離縁の効力は生じているので、離縁届の提出が離縁の効力を生じさせるための要件となるわけではなく、この届出はいわば「報告」のようなものということになります。

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