新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.295、2005/9/12 14:49

[債務整理]
質問:特定調停とはどういった手続きでしょうか。申立方法など教えてください。

回答:
1 特定調停は,個人・法人を問わず,現状のままの条件で返済を続けていくことが困難な方が,生活や事業の建て直しを図るため,債権者と返済方法などについて話し合いを行う手続として,民事調停の特例として定められたものです(特定債務等の調整の促進のための特定調停に関する法律)。特定調停は,債務整理に特化した手続きであり,通常の民事調停に比して,例えば,次のようなメリットがあります。まず,裁判所の管轄が異なる債権者が多数いる場合でも、1つの簡易裁判所に対しての調停申立てが可能です(法4条)。また,貸金業者に対して、調停委員会が、取引経過等の資料の提出を命令することができ(法12条),不提出に対しては,10万円以下の過料が科されます(法24条)。さらに,特定調停を申し立てれば,調停終了までの間、強制執行の停止を求めることができます(法7条)。強制執行停止そのものは民事調停にも存在しますがが,特定調停の場合は,担保を提供することが法律上必ずしも必要ではありません。
2 特定調停を申し立てるには,調停申立書という書面を,相手方の住所のある地区を受け持つ簡易裁判所に提出する必要があります。その際は,特定調停の手続を利用したいことを明らかにし,また,毎月,どれくらいの額なら支払えるのか,期限をどのくらい猶予してもらいたいのかといった希望する返済条件も示してください。また,事業者が申し立てる場合には,債権者などとの交渉の経過についても明らかにし,会社などの法人が申し立てる場合には,さらに,労働組合の名称や所在地,代表者名,連絡先なども明らかにしてください。そのほか,手数料と関係者に書類を送るためなどに使う郵便切手を納めてください。なお,申立用紙については,窓口に用意してある庁もありますから,最寄りの簡易裁判所に問い合わせを行ってみてください。また,特定調停を申し立てるときには,このままでは返済を続けていくことが難しいということを明らかにする資料として,資産の一覧表,債権者及び担保権者の一覧表,生活や事業の状況が分かるもの,借入れの内容やこれまでの返済の内容が分かるものなどを提出してください。例えば,非事業主の個人の方が申し立てる場合には,給与明細,家計簿,通帳などの写しが,事業主や法人が申し立てる場合には,貸借対照表,損益計算書,資金繰表,事業計画書,会計帳簿などの写しが考えられます。また,借入れの内容が分かるものとしては,契約書などの写しが,これまでの返済の内容が分かるものとしては,領収証などの写しが考えられます。また,資産としては,不動産,自動車,預貯金,生命保険解約返戻金,事業用の機械,売掛金,手形債権などが考えられます。このほかにも,裁判所から必要な書類を指示された場合には,その指示に従ってください。
3 調停の申立てがあると話合いの期日が指定され,この期日に,調停委員が,申立人から,生活や事業の状況,今後の返済方針などについて聴取した上で,相手方の意向を聴き,残っている債務をどのように支払っていくことが,公正かつ妥当で,経済的に合理的なのかについて,双方の意見を調整していきます。したがって,特定調停で成立した合意の内容は,実質的に公平で,法律などに違反するものでなく,債務者の生活の建て直しやのために適切なものであって,しかも,そのような内容の合意をすることが当事者双方にとって経済的に合理的なものとなります。ただし,どうしても債権者との間で返済方法等について折り合いがつかない場合には,調停は不成立として終了します。
4 話合いがまとまると,裁判所書記官がその内容を調書に記載して,調停が成立しますが,この調書には,確定した判決と同じ効力があり,記載された約束し従った返済をしない場合には,相手方(債権者)から強制執行(調書の内容を強制的に実現すること)を受けることもあります。

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