新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.209、2004/12/15 18:49

[家事・親子]
質問:養子を迎えたいと思っているのですが、法的な知識がないので、縁組の要件と手続きについて教えてください。また、普通養子縁組と、特別養子縁組についても教えてください。

回答:
1、養子とは、他人の子(養子)を自分(養親)の戸籍に入れることです。養子縁組をすることによって、扶養の義務や相続の権利が生じます。
2、養子縁組には、普通養子縁組、特別養子縁組の二種類があります。普通養子縁組は、区役所、市町村役場で届け出ることによって効力を生じます。届出は、養親となる者、養子となる者から、また夫婦で養親になるときは、夫婦双方からの届出が必要となります。縁組届には養親および養子双方の戸籍謄本または正本が必要であり、届出の用紙は区役所、市町村役場に備え付けてあります。
3、普通養子縁組は、要件を充たしていれば、届出をすることによって効力を生じます。
その要件とは、
@当事者間に縁組の意思があること。養親、養子ともに、縁組をする意思のあること。これに反してなされた養子縁組は無効となります。ただし、意思に反して勝手に届出を出された場合でも、いったん戸籍簿に記載されてしまったら、届出無効の審判もしくは判決がないと訂正することはできません。
A養親は成年者であること。養親には満20歳以上でないとなることができません。ただし、未成年でも結婚していると成年とみなされます(成年擬制)ので、このような場合は、未成年者でも養親になることができるといえます。
B養子は、養親より年少者(同年は含む)であること、または、養親の卑属であること。たとえ養親子であっても、親より子の方が年上というような状態は許されません。養子は、養親より年少者である必要があります。ただし、養子が養親の卑属である場合には年の上下に関係なく縁組できます。卑属とは、血縁で下にあたる者(子、孫、甥、姪、など)のことです(逆に、両親、祖父、祖母等を、尊属といいます)。
C養親に配偶者がある場合には、縁組は配偶者と共同でしなければならない。配偶者(妻、夫)がいる場合には、養子縁組は夫婦共同でする必要があります。ただし、配偶者の嫡出子(連れ子)を、もう一方の配偶者が養子とする場合は共同縁組の必要はありません(民法795条)。
D養子となる者が15歳未満である場合、法定代理人が、本人に代わって承諾を与えることが必要。法定代理人は、原則として両親です。養子となる者が15歳に達していれば、本人の判断で承諾の意思表示ができますが、その場合でも、未成年者を養子とする場合には、家庭裁判所の許可が必要です。なお、自己または配偶者の子や孫を養子とする場合には、家庭裁判所の許可は必要ありません(民法798条但書)。

特別養子縁組の要件や手続きについて
4、通養子縁組では、戸籍には父母欄に実父母・養父母双方の氏名が併記され養父母との続柄は「養子・養女」と記載されます。また、養子縁組が成立しても、実親子関係は継続するので、実親と「縁を切る」状態にはなりません(依然として扶養の義務や相続の問題などが残ることになります)。そこで、民法では、普通養子縁組のほかに、「特別養子縁組」という制度が用意されています(民法817条の2〜11)。
5、特別養子縁組の効果は、養子と、その実方の父母や血族との関係が、婚姻障害(近親者間で婚姻を禁止するもの、これは生物学的な理由に基づいているので終了しません)を除いて修了し、養親のみが養子の父母となります。戸籍上も、特別養子では、父母欄はひとつで、養父母の氏名を記載するだけで、書き方も「長男・長女」「二男・二女」のように実子と同様の記載になります。その他、戸籍の記載欄を一見しても養子だということがわからないように配慮されています(ただし、養子であるということが一切記録に残らないというわけではありません。法律上正当な理由があるときや、養子が成長後自らの出生を知りたいときなどは、実親方の戸籍を調査することができます。)
6、養子縁組は、普通養子縁組とは異なるさまざまな効果が認められるため、誰でもできるというものではありません。当然、普通養子縁組よりも成立要件が厳しくなっています。特別養子縁組が、看護にかける幼少の児童の養育、福祉という目的から認められるものであるため、この趣旨に適合する場合に、手続きを経て、成立が認められます。具体的には、家庭裁判所が、以下のような要件について判断し、裁判所が子の福祉のために適当と判断した場合に、審判によってのみ成立します。すなわち、当事者や親の合意のみでは成立しないことになります。要件としては以下のようなものがあげられます。
(ア)実親が同意していること。ただし、実の父母が意思を表示できないこと、虐待、悪意の遺棄その他養子となる者の利益を著しく害する事由がある場合は同意は不要(民法817条の6)。
(イ)実の父母による監護が著しく困難または不適当であること。その他特別な事情により、この利益のために特に必要があると認められるとき(817条の7)。
(ウ)養子となるものは原則として6歳未満であること。ただし、6歳になる前から養親となる者に監護されているときは8歳未満でもよい(817条の5)。
(エ)養親となる者は夫婦で、少なくとも一方が25歳に達していること(一方のみが25歳に達している場合、もう一方は20歳以上であればよい)(817条の4)。
(オ)養子が成人しても協議離縁はできない。また、審判による離縁も養親の側からは申し立てることができない。離縁は、養子の利益のために特に必要があると認められるとき、家庭裁判所の審判によってのみできる。
(カ)裁判所は、養親となる者が養子となる者を6ヶ月以上の期間監護し、その監護状況を考慮したうえでなければ特別養子縁組の審判はできません(ただし、以前から養育されており、その状況が明らかであるときは別です)。
7、以上のように、特別養子縁組は、普通養子縁組に比べて厳しい制限が多数あります。これは、特別養子縁組が、実親との関係をほぼ断ち切ってしまうこととした理由が、子の福祉の実現という目的に基づいているからといえます。特別養子縁組を希望される場合は、お近くの家庭裁判所に一度相談することをお勧めします。

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