電話で勧誘された教材の送り付け|契約の有無・解約・支払拒否

関連解説:クーリング・オフの期間・方法と契約トラブル

No.120|初出:2001/09/10|最終改訂:

民事・消費者|電話勧誘販売・資格商法・送り付け・クーリング・オフ・取消し

質問

電話で生涯学習や資格取得の教材を勧められ、購入に同意したつもりはないのに、教材と請求書が送られてきました。業者は「電話で契約が成立している」と言います。契約書に署名していなくても支払う必要がありますか。受取拒否、返品、クーリング・オフの方法や、開封してしまった場合の対応も教えてください。

回答

購入の合意がない場合と、電話で契約した場合を分けて考えます。教材を一方的に送られただけでは、当然に購入契約や代金支払義務が生じるわけではありません。一方、売買契約は原則として口頭でも成立するため、署名や契約書がないことだけで契約不成立とは決められません。

  • 注文・購入の合意がない場合:支払義務を否定します。事業者が代金を得ようとして、売買契約の申込みも締結もないのに一方的に送った商品は、特定商取引法59条により、直ちに処分できる場合があります。開封しただけで代金や返送料の負担が生じるものではありません。
  • 電話勧誘で契約した場合:原則として、法定の申込書面又は契約書面を受け取った日を含めて8日以内に、書面又は電子メール等でクーリング・オフできます。適式な書面が交付されていない場合や、妨害があった場合も確認します。
  • 返送と通知は別です:受取拒否や教材の返送だけで、契約の問題がすべて解決するとは限りません。契約を争う旨と、必要に応じた予備的なクーリング・オフを、証拠が残る方法で通知します。
  • 期間が過ぎたと思う場合:不実告知等による取消し、過量販売の解除、講座の種類に応じた中途解約等を検討できます。クレジット払いでは、販売会社と信販会社等の双方へ連絡することが重要です。
  • まず証拠を保管してください:電話の日時・内容、録音、広告、請求書、送り状、書面の受領日等を残します。期限が近い場合は、相手の返答や相談の予約日を待って通知を遅らせないでください。

解説

教材を受け取ると、「送り返さないと契約になるのでは」「開けたからもう断れないのでは」と不安になることがあります。支払義務、商品の扱い、解除・取消しの通知を分けて整理すると、必要な対応が分かりやすくなります。

1.購入契約は成立しているか――署名よりも、電話のやり取りを確認

民法522条は、申込みに対する承諾によって契約が成立し、法令に特別の定めがなければ書面等の方式を必要としないと定めています。売買も、財産権を移転することと代金を支払うことの合意によって成立するのが原則です(民法555条)。

例えば、商品と価格等を理解して「その教材をその金額で買います」と申し込んだ場合には、署名がなくても契約が成立することがあります。これに対し、「説明を聞きます」「無料の資料なら見ます」という返答や、話の途中の相づちを、直ちに有料教材の購入への同意と扱うことはできません。

商品名、価格、支払方法、教材だけか受講サービスも含むか、誰が何と発言したかを確認します。業者が「録音がある」と言う場合も、一部の「はい」だけでなく、前後を含むやり取りの提示を求め、手元の記録と照合してください。

特定商取引法18条・19条の書面交付義務は、契約の内容を明確にし、消費者を保護するためのものです。契約の成立の問題と、事業者が法定書面を交付したか、クーリング・オフの期間が始まったかという問題は、分けて判断します。

2.注文していない教材が届いた場合――支払・返送・開封

事業者が、代金を得る目的で、売買契約の申込みも締結もないのに商品を一方的に送付した場合、消費者は代金を支払う必要がなく、事業者はその商品の返還を請求できません(特定商取引法59条)。消費者庁は、この場合の商品は直ちに処分でき、開封や処分によって支払義務が生じるものではないと案内しています。

「返送しなければ購入したものとします」「開封したので返品できません」という業者の一方的な記載だけで、購入の合意がない人に契約を成立させることはできません。この制度の対象であれば、自費で返送する義務や、業者に引取りを求めてから待つ義務もありません。

もっとも、電話で実際に注文したか争いがある本件では、処分を急ぐ前に、教材・請求書・送り状等の写真を撮り、電話の記録を確認することが有用です。クーリング・オフによる返品を検討している商品と、契約に基づかない一方的な送り付けとは、扱いが異なります。

家族が注文した商品、贈り物、宛先を間違えた配達や、契約した商品の配送ミス等を、すべて送り付け商法として処分してよいわけではありません。誰の注文か分からない場合は、家族や配送会社に確認します。59条には営業目的の取引についての適用除外もあります。

教材が届いたときに区別する場面
状況主な対応
注文も購入の合意もなく、代金目的で一方的に送られた支払義務を否定し、59条の要件に当たるかを確認。該当すれば直ちに処分可能です。
電話勧誘を受けて購入を申し込んだ契約内容と法定書面を確認し、クーリング・オフ等を通知します。
電話で注文したか、認識が食い違っている契約不成立の主張と、予備的なクーリング・オフを検討。証拠を残します。
自分で広告を見て、電話勧誘を受けずに通販で注文した通常の通信販売には法定のクーリング・オフがありません。返品特約や表示、契約内容等を確認します。

3.電話勧誘販売に当たる取引と、教材・講座の違い

電話勧誘販売は、事業者が電話をかける等して契約の締結を勧誘し、その勧誘によって消費者から申込みを受け、又は契約を締結する取引です(特定商取引法2条3項)。電話を切った後に、指定されたウェブサイトで申し込んだり決済したりしても、電話勧誘販売に当たることがあります。

ウェブ会議等の通話を使う勧誘も、電話勧誘販売として問題になる場合があります。最後の申込みがインターネット上だったことだけで、「通信販売なのでクーリング・オフできない」と決めることはできません。

教材の販売だけなのか、添削・動画・授業・資格講座等のサービスも組み合わされているのかを確認します。語学教室、家庭教師、学習塾等に該当し、期間・金額等の要件も満たせば、特定継続的役務提供としてクーリング・オフや中途解約が問題になります。一方、「生涯学習」「通信講座」という名称だけで、すべてがこの制度の対象になるわけではありません。

営業のための契約等には適用除外がありますが、「資格を取れば仕事に役立つ」「開業届を出したことがある」という事情だけで、一律に保護の対象外になるものではありません。契約の目的と実態を確認します。また、消費者自身が購入契約のための電話を求めた場合等にも例外があるため、勧誘を受ける前の経緯から確認してください。

4.8日間の数え方、書面の不備、電子交付、解約妨害

電話勧誘販売では、原則として、法律所定の書面を受け取った日を1日目として8日以内にクーリング・オフできます(特定商取引法24条)。契約書面より先に、適式な申込書面を受け取っている場合には、その受領日が基準になります。教材が届いた日や、電話があった日から必ず数えるというものではありません。

法定書面には、商品・サービス、金額、支払方法、事業者の情報、クーリング・オフ等の必要事項・表示が求められます。適式な書面の交付がなければ、原則として8日間の期間は始まりません。納品書・請求書が入っていたというだけで、法定書面の交付が済んだとは限りません。

本人の承諾等の法定要件を満たす電子交付は、書面の交付に代えることができます。これは、消費者から電子メール等で解除を通知できる制度とは別です。単にPDFが送られてきた、規約に電子交付と書かれていたという事情だけで、必要な承諾・提供方法等をすべて満たすとは限りません。

業者が「法律上、解約できない」と事実と違う説明をしたり、威迫して困惑させたりしたために期間内にクーリング・オフしなかった場合も、期間経過だけで断念する必要はありません。妨害の解消についての所定の書面と説明、その後の期間等を確認します。通話の録音、メール、業者に相談した日付を保存してください。

書面が不十分かを調べている間も、通知できる状況なら早く通知することが大切です。「説明を求めている」「相談を予約した」というだけでは、事業者へのクーリング・オフの通知にはなりません。

5.通知の方法と、契約を争う場合の文例

通知は、書面のほか、電子メール等の電磁的記録でも可能です。電話で伝えるだけにせず、通知した内容と発信日が分かる記録を残します。書面なら、控えと郵便の記録を保存できる方法を選びます。内容証明郵便も有用ですが、常にそれだけが必要なわけではありません。

電子メールでは送信済みメールと添付資料、専用フォームでは入力・送信完了画面、FAXでは送信原稿と送信結果等を保存します。事業者が示す合理的な通知先や実際に使われた連絡先を確認し、宛先間違い・送信失敗があれば速やかに別の方法も検討してください。

クーリング・オフは、原則として期間内に適切な通知を発信したときに効力を生じ、事業者の承諾を必要としません。契約していないと考える場合も、業者が成立を主張しているときは、例えば次のように、契約不成立と予備的な解除を併せて通知する方法があります。

通知文例――購入の合意をしていない場合

○○株式会社 御中
通知日:○年○月○日
通知人:住所・氏名

対象:○年○月○日ころの電話勧誘に係る○○教材(貴社主張の代金○円、請求番号○○)

私は、本教材を購入する申込み又は承諾をしておらず、売買契約は成立していませんので、代金の支払義務はありません。

仮に貴社が申込み又は契約の成立を主張する場合にも、本通知をもって、特定商取引法24条に基づき申込みを撤回し、契約を解除します。この通知は、契約の成立や債務を認めるものではありません。

代金請求を止めてください。既払金がある場合は返金を求めます。クーリング・オフによる教材の返還が必要となる場合には、貴社負担による引取り方法をご連絡ください。

文例は事実に合わせて調整してください。実際に購入を申し込んだ方が、事実と異なる契約不成立を主張する必要はなく、クーリング・オフをする旨を明確に通知します。契約日や金額が分からなくても、教材名、業者の請求書、勧誘日時等により、対象をできるだけ特定します。

6.受取拒否・返品・既払金と、クレジットへの対応

注文していないと分かっている荷物は、受取拒否を検討できます。代引きであれば、受取時に支払ってしまう前に、誰の注文か確認してください。受取拒否をする場合も、送り主・送り状番号等を控えます。受取拒否だけで、電話での契約があったかや、解除の通知まで当然に処理されるわけではありません。

有効にクーリング・オフした場合、事業者は、解除に伴う損害賠償・違約金を請求できず、教材の引取りに要する費用も事業者の負担です。既に受け取った代金等の返還も求められます。教材を開封したことだけで、直ちにクーリング・オフができなくなるものではありません。

クーリング・オフによる返還では、引取り・返送の方法を確認し、発送控えや配送記録を保存します。契約不成立か解除かを争っている間は、証拠になる書類と教材を混同して捨てず、対応方針を確認してください。契約に基づかない一方的な送り付けであれば、前記の59条の扱いを検討します。

信販会社の個別クレジットやカードの分割払い等を利用している場合は、販売会社への通知に加え、信販会社・カード会社にも契約を争う事情と通知の写しを伝えます。割賦販売法30条の4・35条の3の19等による支払停止の抗弁は、取引・支払方法・金額等の要件を満たすかを確認します。

一回払いでもカード会社の調査・取引取消し等を相談できる場合がありますが、法律上の支払停止の抗弁と、カード会社独自の手続は区別します。販売会社へ返金を求めたことだけでカードの請求処理まで自動的に止まるとは限らず、既払金の返還も別に検討が必要です。

7.期間経過後の取消し、資格商法の二次被害、再勧誘

業者から「この資格は間もなく国家資格になる」「過去の講座を終わらせるには、別の教材を買う必要がある」等と虚偽の説明を受け、それを信じて申し込んだ場合、特定商取引法24条の3による取消しや、消費者契約法4条による取消し等が問題になります。虚偽の説明、本人の誤認、契約との関係等を整理します。

電話勧誘販売で、日常生活で通常必要な分量を著しく超える教材等を買わされた場合には、特定商取引法24条の2による解除を検討できる場合もあります。この解除権の行使期間は契約締結から1年以内で、通常の8日間のクーリング・オフとは別の要件がある制度です。消費者契約法や民法による取消しにも期間制限があるため、時間が経過している場合は早めに相談してください。

「名簿を消すため」「今後の電話を止めるため」「被害金を取り戻すため」等として、新たな契約や費用を求められることがあります。以前に教材を購入した事実だけで、別の業者からの講座を受けたり、名簿抹消料を払ったりする義務が生じるものではありません。相手に説明されるまま追加の支払約束をせず、根拠を確認します。

事業者は、勧誘前に社名・担当者名・商品等の種類と勧誘目的を告げる必要があり、契約しない意思を示した人への勧誘の継続・再勧誘は禁止されています(特定商取引法16条・17条)。「購入しません。今後の勧誘もお断りします」と短く伝え、日時と相手の情報を記録します。

8.裁判例と、2026年公表の教材契約の解決事例

伊丹簡易裁判所令和5年10月20日判決

国民生活センターの2025年12月の判例解説は、ウェブ会議で勧誘された講座について、契約者が開業届を出していても、その契約は実態として営業目的に当たらず、法定書面も交付されていないとして、クーリング・オフを認め、事業者の受講料請求を棄却した事例を紹介しています。

資格・学習に関する契約では、契約名義や「仕事に役立つ」という説明だけで適用除外と決めず、利用目的、活動の実態、勧誘経緯と交付書面を確認することが重要です。ただし、すべての開業準備・事業用講座が消費者取引になるという判断ではありません。

東京都消費者被害救済委員会の教材契約のあっせん

東京都は2026年4月22日、オンライン家庭教師と高額な教材等の契約について、書面の重要事項の記載不備を踏まえ、授業料・教材代等の全額返金と教材等の返還で合意した事例を公表しています。これは裁判所の判決ではなく、委員会によるあっせんの解決事例です。

教材がサービスと結び付いている場合には、商品名だけでなく、勧誘から契約までの流れ、契約の組合せと書面全体を調べる必要があります。各事例の資料は、末尾にPDF又は公表ページへのリンクを掲載しています。

9.相談に必要な資料と、請求が続く場合の対応

  1. 勧誘の記録:電話番号、日時、担当者名、録音、説明のメモ、メール・SNS、広告・申込画面を保存します。
  2. 届いた物の記録:教材、請求書、申込書・契約書・規約、送り状と封筒、受領日が分かる資料を保管・撮影します。
  3. 支払と通知の記録:振込・カード明細、信販契約、送信メール、郵便の控え、相手の回答をまとめます。
  4. 希望と期限:契約不成立の確認、請求停止、解除・取消し、返金、再勧誘を止めること等、希望する内容と直近の支払期日を整理します。

消費者ホットライン188から、地域の消費生活相談窓口につながります。弁護士には、契約成立の判断、通知文の作成、代理人としての連絡・交渉、返金請求等を相談できます。書類がそろっていなくても、期間の近いものから相談してください。

単なる業者の請求書と、裁判所からの訴状・支払督促等は区別してください。裁判所の書類を受け取った場合は、契約に心当たりがなくても放置せず、書面に記載された期限と必要な対応を確認します。脅迫的な取立てや詐欺が疑われる場合は、記録を保全し、警察への相談も検討してください。

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本記事は一般的な制度の解説です。個別の結論は、契約、時期、証拠、家族関係、財産等によって異なります。関連制度を含めて資料に即した確認が必要です。

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