薬剤師、保健師、助産師、看護師、准看護師の行政処分について

(最終更新日平成24年6月19日)

質問:私は薬剤師ですが、自動車で高速道路を走行中にスピード違反で検挙され罰金刑を受けてしまいました。私は、今後、行政処分で薬剤師の免許取消や免許停止などの処分を受けてしまうのでしょうか。どのような処分になるでしょうか。保健師、助産師、看護師、准看護師の場合も教えて下さい。

回答:

1、薬剤師の免許に対する行政処分は、「心身の障害により薬剤師の業務を適正に行うことができない者として厚生労働省令で定めるもの」、「麻薬、大麻又はあへんの中毒者」、「罰金以上の刑に処せられた者」又は「薬事に関し犯罪又は不正の行為があつた者」に対して、医道審議会(各都道府県の医務薬務課)の意見聴取又は弁明聴取手続が行われ、事案によって、「免許取消」、「3年以内の免許停止」、「戒告」の行政処分が行われます。ここで「心身の障害」は、「視覚又は精神の機能の障害により薬剤師の業務を適正に行うに当たって必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者」とされています。

2、保健師・助産師・看護師・准看護師の免許に対する行政処分は、「罰金以上の刑に処せられた者」、「保健師、助産師、看護師又は准看護師の業務に関し犯罪又は不正の行為があつた者」、「心身の障害により保健師、助産師、看護師又は准看護師の業務を適正に行うことができない者として厚生労働省令で定めるもの」、「麻薬、大麻又はあへんの中毒者」に対して、医道審議会(各都道府県の医務薬務課)の意見聴取又は弁明聴取手続が行われ、事案によって、「免許取消」、「3年以内の免許停止」、「戒告」の行政処分が行われます。ここで「心身の障害」は、「視覚、聴覚、音声機能若しくは言語機能又は精神の機能の障害により保健師、助産師、看護師又は准看護師の業務を適正に行うに当たって必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者」とされています。

3、道路交通法違反で罰金刑に処せられた場合、「戒告」又は「免許停止1ヶ月」の処分を受ける可能性があります。ご心配であれば、弁明聴取手続について法律事務所に相談され、弁明聴取手続の代理人を依頼されると良いでしょう。

4、関連事例原稿2028番も参照ください。

解説:


(薬剤師免許に対する行政処分の考え方)

薬剤師の免許取消等行政処分の判断基準については、具体的に薬剤師法には規定がありません。そこで、医師免許に関する最高裁判例が参考になります。資格の内容が異なっても国家から付与された資格を行政権により制限剥奪するという側面は同じだからです。

その内容ですが、厚生労働大臣は合理的裁量権を性格上保有し、当該刑事罰の対象となつた行為の種類,性質,違法性の程度,動機,目的,影響のほか,当該対象者の性格,処分歴,反省の程度等,諸般の事情を総合的に考慮して薬剤師法の制度趣旨に従い決定することができるのが原則です。しかし、裁量権の逸脱、濫用は許されません(行政事件訴訟法30条)。裁量権の逸脱,濫用が認められ,処分が違法となる基準は、①事実誤認に基づく処分や,②法の趣旨・目的とは異なる目的や動機でなされた処分,③平等原則や比例原則に反する処分,④判断過程に過誤がある処分などが違法と判断されます。

すなわち、平等原則違反とは,他の同種事案との関係で当該事案のみが差別的に取り扱われ,その結果不当に重い処分が課されたといえる場合をいいます。次に比例原則ですが,違反行為の内容と比較して,処分の内容が不当に重いといえる場合には比例原則違反となります。最後に判断過程の違法ですが,処分を決定する判断の過程で本来考慮すべきではない事項を考慮した場合や,重要視すべき事項を不当に軽視し,考慮すべき事項について考慮を尽くさなかった場合等が考えられます。国民の信託(国民主権による)に基づく国民の適正な生活保全という目的から行政権行使(行政サービス)は行われます。従って、その性格は、社会全体的視野から求められる合目的妥当性、迅速、低廉性が要請され行政権の合理的裁量権の根拠となっています。ただ、国家権力、行政権といえども権限逸脱、濫用禁止の大原則(憲法12条、民法1条の趣旨は行政権にも求められます。行政事件訴訟法30条)に服することは言うまでもありません。その趣旨は、国家賠償法にも具現されています。


最高裁判例の抜粋内容。

最高裁判所昭和63年7月1日判決(以下,「昭和63年判例」といいます。)は,以下に引用するとおり,同条項の趣旨についての解釈を示すとともに,医師が「罰金以上の刑に処せられた者」(医師法4条3号)に該当する場合にいかなる処分を命ずるかについては厚生労働大臣の合理的な裁量にゆだねられているとの判断を示しました。

 「医師法七条二項によれば,医師が「罰金以上の刑に処せられた者」(同法四条二号[現行法では4条3号])に該当するときは,被上告人厚生大臣(以下「厚生大臣」という。)は,その免許を取り消し,又は一定の期間を定めて医業の停止を命ずることができる旨定められているが,この規定は,医師が同法四条二号の規定に該当することから,医師として品位を欠き人格的に適格性を有しないものと認められる場合には医師の資格を剥奪し,そうまでいえないとしても,医師としての品位を損ない,あるいは医師の職業倫理に違背したものと認められる場合には一定期間医業の停止を命じ反省を促すべきものとし,これによつて医療等の業務が適正に行われることを期するものであると解される。
  したがつて,医師が同号の規定に該当する場合に,免許を取消し,又は医業の停止を命ずるかどうか,医業の停止を命ずるとしてその期間をどの程度にするかということは,当該刑事罰の対象となつた行為の種類,性質,違法性の程度,動機,目的,影響のほか,当該医師の性格,処分歴,反省の程度等,諸般の事情を考慮し,同法七条二項の規定の趣旨に照らして判断すべきものであるところ,その判断は,同法二五条の規定に基づき設置された医道審議会の意見を聴く前提のもとで,医師免許の免許権者である厚生大臣の合理的な裁量にゆだねられているものと解するのが相当である。それ故,厚生大臣がその裁量権の行使としてした医業の停止を命ずる処分は,それが社会観念上著しく妥当を欠いて裁量権を付与した目的を逸脱し,これを濫用したと認められる場合でない限り,その裁量権の範囲内にあるものとして,違法とならないものというべきである。」


1、 薬剤師の免許に対する行政処分は、薬剤師法5条及び8条で規定され、次の条件に当てはまる場合に行政処分の手続が行われます。

(1)「心身の障害により薬剤師の業務を適正に行うことができない者として厚生労働省令で定めるもの」(厚生労働省令=視覚又は精神の機能の障害により薬剤師の業務を適正に行うに当たって必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者)
(2)「麻薬、大麻又はあへんの中毒者」
(3)「罰金以上の刑に処せられた者」
(4)「薬事に関し犯罪又は不正の行為があつた者」

行政処分の手続きは、対象となる薬剤師に対して、医道審議会における「意見聴取」又は「弁明聴取」手続が行われますが、まず各都道府県の医務薬務課(相当部署)からその旨の通知があります。そして医道審議会における「意見聴取」又は「弁明聴取」手続の後、事案によって、「免許取消」、「3年以内の免許停止」、「戒告」の行政処分をなすべきことが医道審議会によって厚生労働大臣に答申され、これを受けて、厚生労働大臣が行政処分を発令します。
薬剤師法8条2項は「薬剤師が、第五条各号のいずれかに該当し、又は薬剤師としての品位を損するような行為のあつたときは、厚生労働大臣は、次に掲げる処分をすることができる」と規定しており、行政処分は、厚生労働大臣の裁量行為と解釈されておりますが、平成19年7月に、「薬剤師の行政処分の在り方等に関する検討会」において基本的な考え方が「薬剤師の行政処分に関する考え方(本稿の最後に引用)」として提示されておりますので、これに従って考えてゆくことになります。

参考文書
http://www.shinginza.com/yakuzaishi-b.pdf
「薬剤師の再教育及び行政処分の在り方等について」
平成19年7月、薬剤師の行政処分の在り方等に関する検討会

http://www.shinginza.com/yakuzaishi2.pdf
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/06/s0607-6.html
「薬剤師の行政処分事例について(過去10年間)」
平成19年6月、第4回 薬剤師の行政処分の在り方等に関する検討会

これによりますと、薬剤師が「国民の生命・健康を預かる立場」にあることから、「他人の生命・健康を軽んずる行為」をした場合や、「薬剤師として当然に負うべき義務を果たしていないことに起因する行為」をした場合や、「薬剤師の立場や知識を利用した事案」については、重い処分が下される可能性があることが分かります。

私見となりますが、これらの考え方から、免許取消の可能性もある事案を列挙してみたいと思います。

(1) 薬剤師法違反(無資格調剤、処方せん応需義務違反など)
薬剤師免許を受けた者の基本的な職務上の義務に違反して、無資格者に調剤させたり、患者が処方せんを持参しているのに調剤に応じなかったり、処方せんに基く適正調剤、医師等への疑義照会、薬剤交付時の情報提供などを怠り、かつ、これらのことが原因で患者に生命・健康上の重大な支障を生じたような場合には、「国民の薬剤師に対する信用を失墜させる」行為であるとして、取消処分の可能性もあると考えられます。

(2)医師法、歯科医師法、保健師助産師看護師法等その他の身分法違反(無資格医業、無資格者の関係業務の共犯等)
医師法、歯科医師法、その他の医療資格者身分法は、国民の健康に直結する極めて重要な法規範であり、国民保健に及ぼす危険性の大きさを考慮して罰則規定が整備されていることから、薬剤師がこれらの法規に違反することは、医療の担い手の一員としての自らの任務を怠るのみならず、本邦の医療秩序全体に対する国民の信用を失墜させ国民保健を危険に陥れる行為といえますので、取消処分の可能性もあると考えられます。

(3)薬事法違反
(医薬品の無許可販売又はその共犯、医薬品の製造販売及び製造に関する管理不行届等)
薬事法は、医薬品等の品質、有効性及び安全性の確保に必要な措置等を講じることにより、保健衛生の向上を図ることを目的としており、国民の健康な生活を確保する任務を負うべき薬剤師が薬事法に違反することは、薬剤師としての基本的倫理を遵守せず、国民の健康を危険にさらす行為と判断されて、免許取消の可能性もあると考えられます。

(4)麻薬及び向精神薬取締法違反、覚せい剤取締法違反、大麻取締法違反
(麻薬、向精神薬、覚せい剤及び大麻の不法譲渡、不法譲受、不法所持、自己施用等)
国民の健康な生活を確保する任務を負うべき薬剤師が、麻薬等の薬効の知識を有し、その被害の大きさを十分認識しているにも関わらず自ら違反したということになりますので、免許取消の可能性もあると考えられます。特に、常習犯や、複数回の累犯や、処方せんの偽造など他の刑罰法規にも違反しているようなケースや、麻薬類を横流ししたり、これにより不当な経済的利益を得ていたようなケースでは重い処分の可能性が高くなると考えられます。

(5)殺人及び傷害
(殺人、殺人未遂、傷害(致死、暴行等))
本来、国民の健康な生活を確保する任務を負うべき薬剤師が、他人の生命・身体を軽視して、殺人や傷害や堕胎などの罪を犯してしまった場合には、免許取消処分を受ける可能性が高いと考えられますが、個々の事案では、その様態や原因が様々でありますので、それらを考慮して、取消回避となる場合も考えられます。

(6)猥せつ行為
(強姦、強制わいせつ、売春防止法違反、児童買春禁止法違反、児童福祉法違反、青少年育成条例違反等)
国民の健康な生活を確保する任務を負うべき薬剤師は、倫理上も相応なものが求められるものであり、猥せつ行為は、薬剤師としての社会的信用を失墜させる行為であり、また、人権を軽んじ他人の身体を軽視した行為であることから、免許取消処分を受ける可能性もあると考えられます。特に、自らの業務の機会に薬剤師としての立場を利用した猥せつ行為などは、国民の信頼を裏切る悪質な行為であることから、免許取消の可能性が高まると考えられます。


ご心配の道路交通法違反の点については、「薬剤師に限らず不慮に犯しうる行為であり、また、薬剤師としての業務との直接の関連性はなく、その品位を損する程度も低いことから、基本的には戒告等の取扱いとする」と記載されており、「戒告」又は重くても「免許停止1ヶ月」程度の処分が想定されると思われます。ご心配であれば、弁明聴取手続について法律事務所に相談され、弁明聴取手続の代理人を依頼されると良いでしょう。


2、 保健師・助産師・看護師・准看護師の免許に対する行政処分は、保健師助産師看護師法9条及び14条で規定され、次の条件に当てはまる場合に、行政処分の手続が行われます。

(1)「罰金以上の刑に処せられた者」
(2)「保健師、助産師、看護師又は准看護師の業務に関し犯罪又は不正の行為があつた者」
(3)「心身の障害により保健師、助産師、看護師又は准看護師の業務を適正に行うことができない者として厚生労働省令で定めるもの」(厚生労働省令=視覚、聴覚、音声機能若しくは言語機能又は精神の機能の障害により保健師、助産師、看護師又は准看護師の業務を適正に行うに当たって必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者)
(4)「麻薬、大麻又はあへんの中毒者」

行政処分の手続きは薬剤師の場合と同様に、各都道府県の医務薬務課(相当部署)から医道審議会における「意見聴取」又は「弁明聴取」手続の通知があり、事案によって、「免許取消」、「3年以内の免許停止」、「戒告」の行政処分をなすべきことが医道審議会によって厚生労働大臣に答申され、これを受けて、厚生労働大臣が行政処分を発令します。保健師助産師看護師法14条1項は「保健師、助産師若しくは看護師が第9条各号のいずれかに該当するに至つたとき、又は保健師、助産師若しくは看護師としての品位を損するような行為のあつたときは、厚生労働大臣は、次に掲げる処分をすることができる」と規定しており、行政処分は、厚生労働大臣の裁量行為と解釈されておりますが、平成17年7月に、「医道審議会保健師助産師看護師分科会」において基本的な考え方が「保健師助産師看護師行政処分の考え方(本稿の最後に引用)」として提示されておりますので、これに従って考えてゆくことになります。

参考文書
「保健師助産師看護師行政処分の考え方」
平成28年12月、医道審議会保健師助産師看護師分科会看護倫理部会
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000145692.html
保健師助産師看護師に対する行政処分の考え方(平成28年12月14日)

「保健師・助産師・看護師の行政処分の状況」
平成19年6月、行政処分を受けた保健師・助産師・看護師に対する再教育に関する検討会
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/06/s0606-4.html
http://www.shinginza.com/kangoshi2.pdf

これらによりますと、「生命の尊重に関する視点」、「身体及び精神の不可侵性を保証する視点」、「看護師等が有する専門知識や技術を適正に用いること及び患者への情報提供に対する責任性の視点」、「専門職としての道徳と品位の視点」から、処分が判断されていると分かります。

私見となりますが、これらの資料等から、免許取消の可能性もある事案を列挙してみたいと思います。

(1) 殺人罪及び殺人未遂罪
 本来、人の生命や身体の安全を守るべき看護師等が、殺人や傷害の罪を犯すことは、看護師等としての資質や基本姿勢が問われるだけではなく、専門職としての社会的な信用を大きく失墜させるものであるので、免許取消処分の可能性が高くなります。特に、殺人を犯した場合は基本的に免許取消の処分がなされると考えられます。勿論、個々の事案では、その様態や原因も様々であり、行政処分に当たっては、それら事情を考慮に入れることが考えられます。

(2)危険運転致死傷罪
 本来、人の生命や身体の安全を守るべき看護師等が危険運転(飲酒など正常な運転ができない状態での運転等)を行うことは、著しく生命尊重を欠く行為であり、看護師等としての資質や基本姿勢が問われるだけでなく、専門職としての社会的信用を大きく失墜させるものと考えられるので、免許取消の可能性があります。

(3)わいせつ行為等(強姦、準強姦、強制わいせつ、準強制わいせつ、青少年保護育成条例違反等の性犯罪)
 人の身体に接する機会が多く、身体の不可侵性を特に重んじるべき看護師等がわいせつ行為を行うことは、専門職としての品位を貶め、看護師等に対する社会的信用を失墜させるだけではなく、看護師等としての倫理性が欠落し、あるいは看護師等として不適格であると判断されるので、免許取消の可能性が高いと考えられます。特に、看護師等の立場を利用して行った事犯や、強姦・強制わいせつ等、被害者の人権を軽んじ、心身に危害を与えた事犯については、悪質であるとして、免許取消の可能性が高くなると考えられます。

(4)詐欺・窃盗
 傷病により心身が衰えた患者が医療機関を頼り、信頼関係を基にその業務を行う看護師等が詐欺・窃盗を行うことは、専門職としての品位を貶め、看護師等に対する社会的信用を失墜させるものと考えられます。特に、全身麻酔を受けることもある患者の信頼を裏切り、手術中の患者の金員を盗むなど看護師等の立場を利用して行った事犯(業務関連の事犯)については、看護師等としての倫理性が欠落していると判断されるので、免許取消の可能性もあると考えられます。

(5)特別法違反

保健師助産師看護師法5条では、看護師の業務は「傷病者若しくはじよく婦に対する療養上の世話又は診療の補助を行うこと」とされています。このような看護師の業務の特性上、患者の心身のサポートが求められますので、ストーカー規制法違反の行為があった場合は、患者から見て看護師の業務全般に対する信頼性を著しく棄損するおそれが高い事になります。刑事罰としては相対的に重いとは言えないストーカー規制法違反でも免許取消のリスクがありますので注意が必要です。


3、 最後に
薬剤師、保健師、助産師、看護師、准看護師の場合、刑罰法規に違反し、逮捕・検挙され、有罪判決を受けてしまった場合は、たとえ罰金刑であったとしても行政処分の可能性があります。重大事案では、免許取消の可能性もあります。そこで、刑事事件において有罪判決を受けることは、刑事罰を受けるという不利益だけでなく仕事を失うという社会生活における不利益を負うことにもなります。罰金払って終わりになるというわけではありません。罰金はしょうがないとか、執行猶予になればしょうがない等と安易に考えずにできるだけ不起訴になるよう努力する必要があります。
通常、刑事事件では、初期の段階、被害者が被害届を提出する前後や刑事告訴を行う前後においては、弁護士が民事示談交渉や被害弁償を行うことにより被害者の被害届や刑事告訴の取り下げを実現させ、検察官の不起訴処分を得て、起訴自体を回避できる可能性があります。
なお、有罪判決を受けてしまった場合でも、控訴審や上告審の段階で最大限の弁護活動を行い、第一審判決よりも軽い量刑を受ける可能性もあります。有罪判決が確定してしまった場合でも、有罪判決確定後の事情として、被害者との追加示談を成立させ、これを特別事情として医道審議会の弁明聴取資料として提出する手段も考えられます。いずれにしても、刑事事件を犯してしまった、または刑事事件に巻き込まれてしまったという場合でも、すぐに諦めてしまわず、弁護士に相談し、刑事事件についても、行政処分についても、最大限、弁護や弁明に努力すべきであるといえます。お困りの場合は、できるだけ早い段階で、お近くの法律事務所にご相談なさると良いでしょう。

4、 当事務所の相談データベース事例集で薬剤師や看護師の医道審議会に関する記事を検索できます。QA事例原稿2028番も御参照ください。

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<参照条文>

※薬剤師法(抜粋)
第4条(絶対的欠格事由)
 未成年者、成年被後見人又は被保佐人には、免許を与えない。
第5条(相対的欠格事由)
 次の各号のいずれかに該当する者には、免許を与えないことがある。
一  心身の障害により薬剤師の業務を適正に行うことができない者として厚生労働省令で定めるもの
二  麻薬、大麻又はあへんの中毒者
三  罰金以上の刑に処せられた者
四  前号に該当する者を除くほか、薬事に関し犯罪又は不正の行為があつた者
第8条(免許の取消し等)
 薬剤師が、成年被後見人又は被保佐人になつたときは、厚生労働大臣は、その免許を取り消す。
2項  薬剤師が、第五条各号のいずれかに該当し、又は薬剤師としての品位を損するような行為のあつたときは、厚生労働大臣は、次に掲げる処分をすることができる。
一  戒告
二  三年以内の業務の停止
三  免許の取消し
3項  都道府県知事は、薬剤師について前二項の処分が行なわれる必要があると認めるときは、その旨を厚生労働大臣に具申しなければならない。
4項  第一項又は第二項の規定により免許を取り消された者(第五条第三号若しくは第四号に該当し、又は薬剤師としての品位を損するような行為のあつた者として第二項の規定により免許を取り消された者にあつては、その取消しの日から起算して五年を経過しない者を除く。)であつても、その者がその取消しの理由となつた事項に該当しなくなつたとき、その他その後の事情により再び免許を与えるのが適当であると認められるに至つたときは、再免許を与えることができる。この場合においては、第七条の規定を準用する。
5項  厚生労働大臣は、第一項、第二項及び前項に規定する処分をするに当たつては、あらかじめ、医道審議会の意見を聴かなければならない。

※薬剤師法施行規則
第1条の2(法第5条第1号の厚生労働省令で定める者)
法第5条第1号の厚生労働省令で定める者は、視覚又は精神の機能の障害により薬剤師の業務を適正に行うに当たつて必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者とする。

※行政事件訴訟法
30条(裁量処分の取消し)
行政庁の裁量処分については,裁量権の範囲をこえ又はその濫用があつた場合に限り,裁判所は,その処分を取り消すことができる。

※薬剤師の行政処分に関する考え方(平成19年7月,厚生労働省,薬剤師の行政処分の在り方等に関する検討会報告書)

1.基本的考え方
薬剤師の行政処分については、公正、公平に行われなければならないことから、
処分対象となるに至った行為の事実、経緯、過ちの軽重等を正確に判断する必要が
ある。そのため、処分内容の決定にあたっては、司法における刑事処分の量刑や刑
の執行が猶予されたか否かといった判決内容を参考にすることを基本とし、その上
で、薬剤師に求められる倫理に反する行為と判断される場合は、これを考慮して厳
しく判断することとする。

薬剤師に求められる職業倫理に反する行為については、基本的には、以下のよう
に考えられる。

(1)薬剤師が、業務を行うに当たって当然に負うべき義務を果たしていないこと
に起因する行為については、国民の薬剤師に対する信用を失墜させるものであ
り、厳正な対処が求められる。その義務には、処方せん応需義務、処方せんに
基づく適正な調剤、必要な医師等への疑義照会、薬剤交付時の情報提供、薬剤
服用歴への真実の記載などといった病院・薬局における実務のほか、製造販売
業における医薬品の品質管理業務や市販後の安全管理業務、医薬品製造業にお
ける製造管理業務、医薬品販売業等における管理業務など、薬剤師の職業倫理
として遵守することが当然に求められている義務を含むものである。
(2)薬剤師が、その業務を行う機会を利用したり、薬剤師としての身分を利用し
て行った行為についても、同様の考え方から処分の対象となる。
(3)また、薬剤師は、公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もって国民の健康な生
活を確保する資格であり、国民の生命・健康を預かる立場にあることから、業
務以外の場面においても、他人の生命・健康を軽んずる行為をした場合には、
厳正な処分の対象となる。
(4)さらに、薬剤師は、実際の業務を通じて、自己の利潤を不正かつ不当に追求
する行為をなした場合については、厳正な処分の対象となるものである。
また、薬剤師によって不当な経済的利益を求めて不正行為が行われたときに
は、業務との直接の関係を有しない場合であっても、当然に処分の対象となる
ものである。

2.事案別考え方
(1)薬剤師法違反
(無資格調剤、処方せん応需義務違反など)
薬剤師が行う、調剤、医薬品の供給その他薬事衛生をつかさどる行為については、
医療をはじめとして公衆衛生の向上及び増進など、国民の健康な生活の確保に直結
する極めて重要なものであることから、薬剤師法において、薬剤師の資格・業務を
定め、原則、薬剤師以外の者が調剤や医薬品の供給などを行うことを禁止し、その
罰則規定は、国民の健康な生活に及ぼす危険性の大きさを考慮して量刑が規定され
ているところである。

行政処分の程度は、基本的には司法処分の量刑などを参考に決定するものである
が、国民の健康な生活を確保する任務を負うべき薬剤師自らが薬剤師法に違反する
行為は、その責務を怠った犯罪であることから、重い処分とする。

(2)医師法、歯科医師法、保健師助産師看護師法等その他の身分法違反
(無資格医業、無資格者の関係業務の共犯等)
医師や歯科医師が行う医業は、国民の健康に直結する極めて重要なものであるこ
とから、医師法、歯科医師法において、医師、歯科医師の資格・業務を定め、医師、
歯科医師以外の者が医業、歯科医業を行うことを禁止し、その罰則規定は、国民保
健に及ぼす危険性の大きさを考慮して量刑が規定されているところである。

また、保健師助産師看護師などの医療関係職種の身分法は、医師、歯科医師の補
助者として医療に従事する者の資格・業務について規定した法律である。

行政処分の程度は、基本的には司法処分の量刑などを参考に決定するものである
が、薬剤師が医師法又は歯科医師法をはじめ他の身分法に違反する行為は、医療の
担い手の一員として自らの任務を怠るものであるとともに、他の身分法を遵守せず
に行った犯罪として、重い処分とする。

(3)薬事法違反
(医薬品の無許可販売又はその共犯、医薬品の製造販売及び製造に関する管理
不行届等)

薬事法は、医薬品等の品質、有効性及び安全性の確保に必要な措置等を講じるこ
とにより、保健衛生の向上を図ることを目的としている。

行政処分の程度は、基本的には司法処分の量刑などを参考に決定するが、国民の
健康な生活を確保する任務を負うべき薬剤師が薬事法に違反することは、基本的倫
理を遵守せず、国民の健康を危険にさらす行為であることから、重い処分とする。

(4)麻薬及び向精神薬取締法違反、覚せい剤取締法違反、大麻取締法違反
(麻薬、向精神薬、覚せい剤及び大麻の不法譲渡、不法譲受、不法所持、自己
施用等)

麻薬、覚せい剤等に関する犯罪に対する司法処分は、一般的には懲役刑となる場
合が多く、その量刑は、不法譲渡した場合や不法所持した麻薬等の量、施用期間の
長さ等を勘案して決定され、累犯者については、更に重い処分となっている。

行政処分の程度は、基本的には司法処分の量刑などを参考に決定するが、国民の
健康な生活を確保する任務を負うべき薬剤師が、麻薬等の薬効の知識を有し、その
害の大きさを十分認識しているにも関わらず自ら違反したということに対しては、
重い処分とする。

(5)殺人及び傷害
(殺人、殺人未遂、傷害(致死、暴行等))

本来、国民の健康な生活を確保する任務を負うべき薬剤師が、殺人や傷害の罪を
犯した場合には厳正な処分をすべきと考えるが、個々の事案では、その様態や原因
が様々であることから、それらを考慮する必要がある。

行政処分の程度は、基本的には司法処分の量刑などを参考に決定するが、殺人、
傷害致死といった悪質な事案は当然に重い処分とし、その他の暴行、傷害等は、薬
剤師としての立場や知識を利用した事案かどうか、事犯に及んだ情状などを考慮し
て判断する。

(6)業務上過失致死(致傷)
ア交通事犯(業務上過失致死、業務上過失傷害、道路交通法違反等)

自動車等による業務上過失致死(傷害)等については、薬剤師に限らず不慮に犯
し得る行為であり、また、薬剤師としての業務と直接の関連性はなく、その品位を
損する程度も低いことから、基本的には戒告等の取り扱いとする。

ただし、救護義務を怠ったひき逃げ等の悪質な事案については、基本的には司法
処分の量刑などを参考に決定するが、国民の健康な生活を確保する任務を負うべき
薬剤師としての倫理が欠けていると判断される場合には、重めの処分とする。

イ医療過誤・調剤過誤(業務上過失致死、業務上過失傷害等)

国民の健康な生活を確保する任務を負うべき薬剤師は、その業務の性質に照し、
危険防止の為に薬剤師として要求される最善の注意義務を尽くすべきものであり、
その義務を怠った時は医療過誤又は調剤過誤となる。

司法処分においては、当然、薬剤師としての過失の度合い及び結果の大小を中心
として処分が判断されることとなる。

行政処分の程度は、基本的には司法処分の量刑などを参考に決定するが、明らか
な過失による医療過誤や調剤過誤、さらには繰り返し行われた過失など、薬剤師と
して通常求められる注意義務が欠けているという事案については、重めの処分とす
る。

なお、薬剤師が従事する施設、機関、組織等の管理・業務の体制、他の医療従事
者における注意義務の程度、生涯学習に努めていたかなどの事項も考慮して、処分
の程度を判断する。

(7)猥せつ行為
(強制猥せつ、売春防止法違反、児童福祉法違反、青少年育成条例違反等)
国民の健康な生活を確保する任務を負うべき薬剤師は、倫理上も相応なものが求
められるものであり、猥せつ行為は、薬剤師としての社会的信用を失墜させる行為
であり、また、人権を軽んじ他人の身体を軽視した行為である。

行政処分の程度は、基本的には司法処分の量刑などを参考に決定するが、特に、
自らの業務の機会に薬剤師としての立場を利用した猥せつ行為などは、国民の信頼
を裏切る悪質な行為であり、重い処分とする。

(8)贈収賄
(収賄罪、贈賄罪等)
贈収賄は、薬剤師としての業務に直接関わる事犯ではないが、薬剤師としての品
位を損ない、信頼感を喪失せしめることから、行政処分に付することとし、行政処
分の程度は、基本的には、司法処分の量刑などを参考に決定する。

なお、特に薬剤師としての地位や立場を利用した事犯など悪質と認められる事案
は、重めの処分とする。

(9)詐欺・窃盗
(詐欺罪、詐欺幇助、同行使等)
詐欺・窃盗は、薬剤師としての業務に直接関わる事犯ではないが、薬剤師として
の品位を損ない、信頼感を喪失せしめることから、行政処分に付することとし、行
政処分の程度は、基本的には、司法処分の量刑などを参考に決定する。

なお、特に、薬剤師としての立場を利用して、虚偽の薬剤を販売・授与するなど
の方法により詐欺罪に問われるような行為は、業務に関連した犯罪であり、薬剤師
の社会的信用を失墜させる悪質な行為であるため、重い処分とする。

(10)文書偽造
(処方せんの偽造(私文書偽造)、虚偽有印公文書偽造、製造販売に係る業務管理文書偽造等)

文書偽造は、薬剤師としての業務に直接関わる事犯ではないが、薬剤師としての
品位を損ない、信頼感を喪失せしめることから、行政処分に付することとし、行政
処分の程度は、基本的には、司法処分の量刑などを参考に決定する。

なお、特に、処方せんの偽造により医薬品を横流しした場合など、薬剤師として
の立場を利用した事犯等悪質と認められる事案は、重めの処分とする。

(11)税法違反
(所得税法違反、法人税法違反、相続税法違反等)
脱税は、薬剤師としての業務に直接関わる事犯ではないが、薬剤師としての品位
を損ない、信頼感を喪失せしめることから、行政処分に付することとし、行政処分
の程度は、基本的には、司法処分の量刑などを参考に決定する。

なお、脱税は、一般的な倫理はもとより、医療の担い手である薬剤師としての職
業倫理を欠くものと認められる。このため、処方せん調剤に基づく調剤報酬等によ
る収入に係る脱税などの事案については、重めの処分とする。

(12)診療報酬・調剤報酬の不正請求
(調剤報酬不正請求、保険薬剤師の取消し等)
診療報酬制度は、医療の提供の対価として受ける報酬であり、我が国の医療保険
制度において重要な位置を占めており、これを適正に請求し受領することは、薬剤
師に求められる職業倫理においても遵守しなければならない基本的なものである。

調剤報酬の不正請求は、非営利原則に基づいて提供されるべき医療について、薬
剤師が医療の担い手としての地位を利用し、社会保険制度を欺いて私腹を肥やす行
為であることから、調剤報酬の不正請求により保険薬剤師の登録の取消処分を受け
た薬剤師については、当該健康保険法等に基づく行政処分とは別に薬剤師法による
行政処分を行うこととする。

行政処分の程度は、基本的には不正請求額などに応じて決定するが、当該不正は
薬剤師に求められる職業倫理の基本を軽視し、国民の信頼を裏切り、国民の財産を
不当に取得しようというものであるため、重い処分とする。


※保健師助産師看護師法(抜粋)
第9条  次の各号のいずれかに該当する者には、前二条の規定による免許(以下「免許」という。)を与えないことがある。
一  罰金以上の刑に処せられた者
二  前号に該当する者を除くほか、保健師、助産師、看護師又は准看護師の業務に関し犯罪又は不正の行為があつた者
三  心身の障害により保健師、助産師、看護師又は准看護師の業務を適正に行うことができない者として厚生労働省令で定めるもの
四  麻薬、大麻又はあへんの中毒者
第14条  保健師、助産師若しくは看護師が第九条各号のいずれかに該当するに至つたとき、又は保健師、助産師若しくは看護師としての品位を損するような行為のあつたときは、厚生労働大臣は、次に掲げる処分をすることができる。
一  戒告
二  三年以内の業務の停止
三  免許の取消し
2項  准看護師が第九条各号のいずれかに該当するに至つたとき、又は准看護師としての品位を損するような行為のあつたときは、都道府県知事は、次に掲げる処分をすることができる。
一  戒告
二  三年以内の業務の停止
三  免許の取消し
3項  前二項の規定による取消処分を受けた者(第九条第一号若しくは第二号に該当し、又は保健師、助産師、看護師若しくは准看護師としての品位を損するような行為のあつた者として前二項の規定による取消処分を受けた者にあつては、その処分の日から起算して五年を経過しない者を除く。)であつても、その者がその取消しの理由となつた事項に該当しなくなつたとき、その他その後の事情により再び免許を与えるのが適当であると認められるに至つたときは、再免許を与えることができる。この場合においては、第十二条の規定を準用する。
第15条  厚生労働大臣は、前条第一項又は第三項に規定する処分をしようとするときは、あらかじめ医道審議会の意見を聴かなければならない。

※保健師助産師看護師法施行規則
第1条(法第9条第3号の厚生労働省令で定める者)
保健師助産師看護師法第9条第3号の厚生労働省令で定める者は、視覚、聴覚、音声機能若しくは言語機能又は精神の機能の障害により保健師、助産師、看護師又は准看護師の業務を適正に行うに当たつて必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者とする。


※保健師助産師看護師行政処分の考え方
(平成14年11月26日 改正平成17年7月22日)
医道審議会保健師助産師看護師分科会看護倫理部会

 当部会は、保健師助産師看護師(以下「看護師等」という。)の行政処分に関する意見の決定に当たり、過去における当部会の議論等を踏まえつつ、昨今の社会情勢や社会通念の変化に対応して、当面、以下の考え方により審議することとする。

1  行政処分の考え方
 保健師助産師看護師法第14条に規定する行政処分については、看護師等が、罰金以上の刑に処せられた場合等に際し、看護倫理の観点からその適正等を問い、厚生労働大臣がその免許を取り消し、又は期間を定めてその業務の停止を命ずるものである。
 処分内容の決定においては、司法処分の量刑を参考にしつつ、その事案の重大性、看護師等に求められる倫理、国民に与える影響等の観点から、個別に判断されるべきものであり、かつ、公正に行われなければならないと考える。
 このため、当部会における行政処分に関する意見の決定に当たっては、生命の尊重に関する視点、身体及び精神の不可侵性を保証する視点、看護師等が有する知識や技術を適正に用いること及び患者への情報提供に対する責任性の視点、専門職としての道徳と品位の視点を重視して審議していくこととする。

2  事案別の考え方

(1)身分法(保健師助産師看護師法、医師法等)違反
 保健師助産師看護師法、医師法等の医療従事者に関する身分法は、医療が国民の健康に直結する極めて重要なものであるとの考え方から、定められた教育課程を修了し免許を取得した者が医療に従事すること及び免許を取得していない者が不法に医療行為を行うことのないよう規定している。また、不法に医療行為を行った際の罰則についても、国民の健康に及ぼす害の大きさを考慮して量刑が規定されているところである。
 行政処分に当たっては、司法処分の量刑の程度に関わらず、他者の心身の安全を守り国民の健康な生活を支援する任務を負う看護師等が、自らに課せられた基本的倫理を遵守せず、国民の健康を危険にさらすような法令違反を犯したことを重く見るべきである。

(2)麻薬及び向精神薬取締法違反、覚せい剤取締法違反及び大麻取締法違反
 麻薬等の違法行為に対する司法処分は基本的には懲役刑(情状により懲役及び罰金)であり、その量刑は、不法譲渡、不法所持した麻薬等の量、施用期間の長さ等を勘案して決定されている。累犯者についても重い処分となっている。
 行政処分に当たっては、麻薬等の害の大きさを十分認識している看護師等が違法行為を行ったこと、麻薬等を施用して看護業務を行った場合には患者の安全性が脅かされること、さらに、他の不特定の者へ犯罪が伝播する危険があること等を重く見るべきである。

(3)殺人及び傷害
 本来、人の生命や身体の安全を守るべき看護師等が、殺人や傷害の罪を犯すことは、看護師等としての資質や基本姿勢が問われるだけではなく、専門職としての社会的な信用を大きく失墜させるものである。特に、殺人を犯した場合は基本的に免許取消の処分がなされるべきである。
 ただし、個々の事案では、その様態や原因も様々であり、行政処分に当たっては、それらを考慮に入れるのは当然である。

(4)業務上過失致死傷(医療過誤)
 看護師等の業務は人の生命及び健康を守るべきものであると同時に、その業務の性質から危険を伴うものである。従って看護師等に対しては、危険防止の為に必要とされる最善の注意義務を要求される。看護師等が国民の信頼に応えず、当然要求される注意義務を怠り、医療過誤を起こした事案については、専門職としての責任を問う処分がなされるべきである。
 ただし、医療過誤は、様々なレベルの複合的な管理体制上の問題の集積によることも多く、一人の看護師等の責任に帰することができない場合もある。看護師等の注意義務違反の程度を認定するに当たっては、当然のことながら、病院の管理体制や他の医療従事者における注意義務違反の程度等も勘案する必要がある。
 なお、再犯の場合は、看護師としての資質及び適性を欠くものでないかどうかを特に検討すべきである。

(5)業務上過失致死傷(交通事犯)
 交通事故による致死傷等に対する司法処分では、警察等への通報や被害者を救護せずそのまま逃走した事犯の場合、厳しく責任を問われている。
 元来、看護師等は人の心身の安全を守るべきであるにもかかわらず、適切な救護措置をとらなかったり、通報もしなかったということは悪質であり、行政処分に当たっては、看護師等としての資質及び適性を欠くものでないかどうかを十分に検討し、相当の処分を行うべきである。

(6)危険運転致死傷
 本来、人の生命や身体の安全を守るべき看護師等が危険運転(飲酒など正常な運転ができない状態での運転等)を行うことは、著しく生命尊重を欠く行為であり、看護師等としての資質や基本姿勢が問われるだけでなく、専門職としての社会的信用を大きく失墜させるものである。司法処分においては、危険運転による死傷事犯を故意犯として捉え、法定刑も大幅に引き上げられたことを当然考慮すべきである。

(7)わいせつ行為等(性犯罪)
 人の身体に接する機会が多く、身体の不可侵性を特に重んじるべき看護師等がわいせつ行為を行うことは、専門職としての品位を貶め、看護師等に対する社会的信用を失墜させるだけではなく、看護師等としての倫理性が欠落している、あるいは看護師等として不適格であると判断すべきである。
 特に、看護師等の立場を利用して行った事犯や、強姦・強制わいせつ等、被害者の人権を軽んじ、心身に危害を与えた事犯については、悪質であるとして相当に重い処分を行うべきである。

(8)詐欺・窃盗
 信頼関係を基にその業務を行う看護師等が詐欺・窃盗を行うことは、専門職としての品位を貶め、看護師等に対する社会的信用を失墜させるものである。
 特に、患者の信頼を裏切り、患者の金員を盗むなど看護師等の立場を利用して行った事犯(業務関連の事犯)については、看護師等としての倫理性が欠落していると判断され、重くみるべきである。

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