インターネット記事の検索停止依頼について (最終更新日平成23年11月8日)


インターネットの掲示板に名誉毀損の記事が掲載されたが、掲示板の管理者が一切削除に応じてくれない場合、どうしたらよいでしょうか。各種インターネット検索サイトに対して、検索結果の削除を請求する事はできないでしょうか。


1、 インターネットの掲示板に記載する行為も、一般社会での「言いふらし行為」「掲示行為」「落書き行為」も、媒体が異なるだけで、人の名誉を侵害する行為は、同様に法的に評価されます。民事上は、不法行為に基く損害賠償請求や差止請求の対象となりますし、刑事上は、名誉毀損罪での刑事処分の可能性があります。
2、 インターネット上で、名誉毀損やプライバシー侵害を生じた場合は、その掲示板等の管理者や、WEBサーバーの管理者に対して、削除請求や、送信停止措置請求を行うことが原則ですが、どうしても、これらの請求手続がうまく行かない場合は、各種インターネット検索サイトの運営会社に対して、検索結果の削除請求をすることが考えられます。

解説:

1、 名誉毀損

名誉とは、人の社会上の地位又は価値を言い(大審院大正5年5月25日判決)、名誉毀損行為は、社会的評価を低下させるような事実を、不特定多数の人の視聴に達することの可能な状況(大審院対象12年6月4日判決)に置く事を意味します。

刑法230条(名誉毀損)公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。
2項 死者の名誉を毀損した者は、虚偽の事実を摘示することによってした場合でなければ、罰しない。

当然、不特定多数人に対して口頭で告知(言いふらし)する行為であっても、不特定多数人の目に触れる場所にポスターや落書きなどで掲出する行為であっても、名誉毀損罪は成立しうるものですが、インターネットが普及した今日では、インターネット掲示板に他人の社会的評価を低下させるような事実を記載した記事を書き込みし、不特定多数の視聴に供する行為を行った場合でも、名誉毀損罪は成立しうることになります。判例も、インターネット上の名誉毀損事案について、他の事例と基本的に同様の基準で犯罪の成否を検討すべきであると判示しています。最高裁判所平成22年3月15日判決は、「インターネットの個人利用者による表現行為の場合においても、他の場合と同様に、行為者が摘示した事実を真実であると誤信したことについて、確実な資料、根拠に照らして相当の理由があると認められるときに限り、名誉毀損罪は成立しないものと解するのが相当であって、より緩やかな要件で同罪の成立を否定すべきものとは解されない」としています。

名誉毀損行為は、民事上も違法な行為となりますので、民法709条の不法行為として、損害賠償請求や差止請求の対象となります。

但し、他人の社会的評価を低下させるような事実を公表したとしても、マスコミの他、一般私人であっても、専ら公益を図る目的で行われた行為であれば、正当行為として違法性が阻却され、刑事処分の対象とはなりません(刑法230条の2第1項)。

刑法230条の2(公共の利害に関する場合の特例)
 前条第一項の行為が公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあったと認める場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない。
2項  前項の規定の適用については、公訴が提起されるに至っていない人の犯罪行為に関する事実は、公共の利害に関する事実とみなす。
3項  前条第一項の行為が公務員又は公選による公務員の候補者に関する事実に係る場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない。

過去の刑事事件については、最高裁判決昭和56年4月14日で「前科及び犯罪経歴は、人の名誉、信用に直接かかわる事項であり、前科等のある者もこれをみだりに公開されないという法律上の保護に値する利益を有する」と判示されておりますとおり、合理的な必要性もないのに不特定多数に情報を流布することは、違法性を阻却せず、刑事上も民事上も違法性を帯びる行為と解釈されています。従って、事件直後に新聞報道等には一定の合理性があるとしても、事件から何年も経過した場合には、この情報を流布することは法律上認められる行為ではありません。

また、刑事事件終了から一定期間が経過した場合は、法的に「刑の消滅」又は「刑の言渡しが効力を失った」状態に至っていることになります。この場合は、法的に、刑事処分の効力が消滅しているため、掲出行為の正当性を法的に基礎付けることが極めて困難と言えます。罰金刑の場合は、納付から5年、懲役刑の場合は執行を終えて10年、執行猶予の場合は猶予期間経過により、刑事処分の効力が消滅することになります。

刑法27条(猶予期間経過の効果)刑の執行猶予の言渡しを取り消されることなく猶予の期間を経過したときは、刑の言渡しは、効力を失う。

刑法第34条の2(刑の消滅)禁錮以上の刑の執行を終わり又はその執行の免除を得た者が罰金以上の刑に処せられないで十年を経過したときは、刑の言渡しは、効力を失う。罰金以下の刑の執行を終わり又はその執行の免除を得た者が罰金以上の刑に処せられないで五年を経過したときも、同様とする。

刑事訴訟終了後の刑事記録の取扱いについて定めた「刑事確定訴訟記録法」では、4条と6条で、刑事事件終結後3年を経過した場合は原則として閲覧させないこと、閲覧した者は「犯人の改善及び更生を妨げ、又は関係人の名誉若しくは生活の平穏を害する行為をしてはならない」ことが規定されています。刑事記録ではなくても、人の過去の刑事事件に関する事実を知った者には、被告人の権利を保護するために、同様の注意義務が求められていると言えるでしょう。

刑事確定訴訟記録法4条(保管記録の閲覧) 保管検察官は、請求があつたときは、保管記録(刑事訴訟法第五十三条第一項 の訴訟記録に限る。次項において同じ。)を閲覧させなければならない。ただし、同条第一項 ただし書に規定する事由がある場合は、この限りでない。
2  保管検察官は、保管記録が刑事訴訟法第五十三条第三項 に規定する事件のものである場合を除き、次に掲げる場合には、保管記録(第二号の場合にあつては、終局裁判の裁判書を除く。)を閲覧させないものとする。ただし、訴訟関係人又は閲覧につき正当な理由があると認められる者から閲覧の請求があつた場合については、この限りでない。
一  保管記録が弁論の公開を禁止した事件のものであるとき。
二  保管記録に係る被告事件が終結した後三年を経過したとき。
三  保管記録を閲覧させることが公の秩序又は善良の風俗を害することとなるおそれがあると認められるとき。
四  保管記録を閲覧させることが犯人の改善及び更生を著しく妨げることとなるおそれがあると認められるとき。
五  保管記録を閲覧させることが関係人の名誉又は生活の平穏を著しく害することとなるおそれがあると認められるとき。
六  保管記録を閲覧させることが裁判員、補充裁判員、選任予定裁判員又は裁判員候補者の個人を特定させることとなるおそれがあると認められるとき。
3  第一項の規定は、刑事訴訟法第五十三条第一項 の訴訟記録以外の保管記録について、訴訟関係人又は閲覧につき正当な理由があると認められる者から閲覧の請求があつた場合に準用する。
4  保管検察官は、保管記録を閲覧させる場合において、その保存のため適当と認めるときは、原本の閲覧が必要である場合を除き、その謄本を閲覧させることができる。

第6条(閲覧者の義務) 保管記録又は再審保存記録を閲覧した者は、閲覧により知り得た事項をみだりに用いて、公の秩序若しくは善良の風俗を害し、犯人の改善及び更生を妨げ、又は関係人の名誉若しくは生活の平穏を害する行為をしてはならない。


2、 プライバシー侵害

プライバシー権とは、個人の人権尊重と幸福追求権を定めた憲法13条から派生し、判例上、解釈上認められた権利で、「私生活をみだりに公開されない権利」とされています(東京地裁昭和39年9月28日判決)。この判例では、プライバシー侵害が不法行為を構成するための条件として、3条件が示されています。@私生活上の事実または私生活上の事実らしく受け取られるおそれのある情報であること、A一般人の感受性を基準にして当該私人の立場に立った場合に、他社に開示されることを欲しないであろうと認められる情報であること、B一般の人に未だ知られていない情報であることが必要である、とされています。一般に、個人の前科に関する情報は、プライバシー権の保護の対象となると解釈することができます。プライバシー侵害が不法行為となる場合は、損害賠償請求や差止請求をすることができる事になります。

国民の権利意識の高まりを受けて、平成15年5月に「個人情報の保護に関する法律」が制定されました。第1条の目的規定を引用します。

第1条(目的) この法律は、高度情報通信社会の進展に伴い個人情報の利用が著しく拡大していることにかんがみ、個人情報の適正な取扱いに関し、基本理念及び政府による基本方針の作成その他の個人情報の保護に関する施策の基本となる事項を定め、国及び地方公共団体の責務等を明らかにするとともに、個人情報を取り扱う事業者の遵守すべき義務等を定めることにより、個人情報の有用性に配慮しつつ、個人の権利利益を保護することを目的とする。

この法律で個人情報は、特定個人を識別することができる情報を指しますが、裁判所は個人情報もプライバシー権の一部として保護されうると判断しています(最高裁平成15年9月12日判決)。

第2条(定義) この法律において「個人情報」とは、生存する個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)をいう。
2項  この法律において「個人情報データベース等」とは、個人情報を含む情報の集合物であって、次に掲げるものをいう。
一  特定の個人情報を電子計算機を用いて検索することができるように体系的に構成したもの
二  前号に掲げるもののほか、特定の個人情報を容易に検索することができるように体系的に構成したものとして政令で定めるもの
3項  この法律において「個人情報取扱事業者」とは、個人情報データベース等を事業の用に供している者をいう。ただし、次に掲げる者を除く。
一  国の機関
二  地方公共団体
三  独立行政法人等
四  地方独立行政法人
五  その取り扱う個人情報の量及び利用方法からみて個人の権利利益を害するおそれが少ないものとして政令で定める者
4項  この法律において「個人データ」とは、個人情報データベース等を構成する個人情報をいう。
5項  この法律において「保有個人データ」とは、個人情報取扱事業者が、開示、内容の訂正、追加又は削除、利用の停止、消去及び第三者への提供の停止を行うことのできる権限を有する個人データであって、その存否が明らかになることにより公益その他の利益が害されるものとして政令で定めるもの又は一年以内の政令で定める期間以内に消去することとなるもの以外のものをいう。
6項  この法律において個人情報について「本人」とは、個人情報によって識別される特定の個人をいう。

個人情報保護法では、個人情報が事実に反する場合や、本人の同意を得ない個人情報の取扱いがある場合には、個人情報の訂正(26条)や、利用停止(27条)を求めることが出来る旨規定されています。

個人情報保護法26条(訂正等) 個人情報取扱事業者は、本人から、当該本人が識別される保有個人データの内容が事実でないという理由によって当該保有個人データの内容の訂正、追加又は削除(以下この条において「訂正等」という。)を求められた場合には、その内容の訂正等に関して他の法令の規定により特別の手続が定められている場合を除き、利用目的の達成に必要な範囲内において、遅滞なく必要な調査を行い、その結果に基づき、当該保有個人データの内容の訂正等を行わなければならない。
2項  個人情報取扱事業者は、前項の規定に基づき求められた保有個人データの内容の全部若しくは一部について訂正等を行ったとき、又は訂正等を行わない旨の決定をしたときは、本人に対し、遅滞なく、その旨(訂正等を行ったときは、その内容を含む。)を通知しなければならない。

第27条(利用停止等) 個人情報取扱事業者は、本人から、当該本人が識別される保有個人データが第十六条の規定に違反して取り扱われているという理由又は第十七条の規定に違反して取得されたものであるという理由によって、当該保有個人データの利用の停止又は消去(以下この条において「利用停止等」という。)を求められた場合であって、その求めに理由があることが判明したときは、違反を是正するために必要な限度で、遅滞なく、当該保有個人データの利用停止等を行わなければならない。ただし、当該保有個人データの利用停止等に多額の費用を要する場合その他の利用停止等を行うことが困難な場合であって、本人の権利利益を保護するため必要なこれに代わるべき措置をとるときは、この限りでない。
2項 個人情報取扱事業者は、本人から、当該本人が識別される保有個人データが第二十三条第一項の規定に違反して第三者に提供されているという理由によって、当該保有個人データの第三者への提供の停止を求められた場合であって、その求めに理由があることが判明したときは、遅滞なく、当該保有個人データの第三者への提供を停止しなければならない。ただし、当該保有個人データの第三者への提供の停止に多額の費用を要する場合その他の第三者への提供を停止することが困難な場合であって、本人の権利利益を保護するため必要なこれに代わるべき措置をとるときは、この限りでない。
3項 個人情報取扱事業者は、第一項の規定に基づき求められた保有個人データの全部若しくは一部について利用停止等を行ったとき若しくは利用停止等を行わない旨の決定をしたとき、又は前項の規定に基づき求められた保有個人データの全部若しくは一部について第三者への提供を停止したとき若しくは第三者への提供を停止しない旨の決定をしたときは、本人に対し、遅滞なく、その旨を通知しなければならない。


3、 掲示板の管理者や、プロバイダに対する削除請求や送信停止措置請求。

インターネット上で、名誉毀損行為やプライバシー侵害行為があった場合は、そのホームページの開設者や、掲示板の管理者に対して、記事の削除請求をすることが原則になります。また、管理者の連絡先が不明であるとか、管理者がどうしても削除に応じない、という場合は、実際にWEBサーバーを運営しているプロバイダ業者に対して送信停止措置請求をする事になります。

連絡の相手方を調べるには、ホームページのトップページに記載された連絡先を参照することも必要ですが、ドメインの登録者を確認することも必要です。ドメイン管理団体であるNIC(ニック=ネットワークインフォメーションセンター)のwhoisサーバーを利用すると良いでしょう。whoisサーバーはドメインの登録者や管理者の照会に対してドットコムやドットネットなど、トップレベルドメインを管理するインターニックや、日本のjpドメインを管理するJPNICなどがあります。日本ではJPNICから委託を受けたJPRSがwhoisサーバーを提供しています。各URLは次の通りです。

http://www.internic.net/whois.html ←インターニックのwhoisサービス
http://whois.jprs.jp/ ←JPRSのwhoisサービス
http://www.telesa.or.jp/consortium/provider/pdf/Whois.pdf ←社団法人テレコムサービス協会による解説ページ

しかし、これらの方法により連絡先を調査して連絡をしてみても、相手方が、削除や送信停止に応じない場合もあります。

また、掲示板によっては、whoisで調査をしてみても、インターネットのドメインの登録者が外国会社になっていたり、プロバイダも外国の会社が行っている場合もあります。つまり、この場合、登録者も、管理者も、プロバイダもすべて外国に所在することになりますので、日本国内で法的な手続をすることは極めて困難となります。インターネットの通信ですから、IPアドレスを特定して国内のルーターの通信を遮断することは技術的には可能ですが、特定のIPアドレスを指定して全ての通信を遮断するということは、表現の自由や通信の秘密を保障した憲法21条の趣旨に反しますので、極めて困難と言えます。

そのような場合には、やむを得ず、各種インターネット検索サイトの運営会社に対して、検索結果の削除請求をすることを検討せざるを得ないでしょう。

4、インターネット検索サイトの運営会社に対する検索停止請求

インターネットを通した、名誉毀損やプライバシー侵害の記事の閲覧は、様々な場面が考えられますが、最も一般的な手順は次の通りの経路を辿る事になります。

@名誉毀損サイトの管理者が、過去の新聞記事などを個人的に保存し、これを引用した名誉毀損記事を作成し、インターネットWEBサーバーにアップロードする。
A検索サイト運営会社のサーチエンジンがWEBクロールし、上記@の名誉毀損サイトのテキストとURLを検索データベースに保存する。
B不特定多数の一般閲覧者が検索サイト運営会社のサイトの検索窓に「名誉毀損被害者の氏名」を入力し、検索ボタンをクリックする。
C検索サイト運営会社の検索エンジンが、検索データベースの内容と、検索ワード(名誉毀損被害者の氏名)を照合・検索し、検索結果画面に、検索データベースから抽出された上記@の名誉毀損サイトのテキスト抜粋とURL(ハイパーリンク付き=クリックすると当該サイトにジャンプできる)が表示される。
D不特定多数の一般閲覧者が、CのURLをクリックし、@のWEBサーバーからの情報が不特定多数の一般閲覧者の目前のPCにダウンロードされ、不特定多数の一般閲覧者の目前のPCに名誉毀損サイトの情報が表示される。

従って、不特定多数の一般閲覧者の目前における名誉毀損サイトの表示に関して、検索サイト運営会社にも不可欠の関与があると考えることができます。検索サイトの運営会社は、個別の記事の内容を確認できないことは当然ですが、一連の名誉毀損行為の一部の部分に、知らないうちに関与していることになるのです。一般的に、名誉毀損サイトの存在について、検索サイト運営会社は、名誉毀損被害者から通知を受けるまでは名誉毀損行為に関して故意過失は認められませんので、民法709条の不法行為は成立しませんが、名誉毀損被害者から検索サイト運営会社に対して通知がなされた後においては、名誉毀損サイトの表示に関して、検索サイト運営会社に不法行為責任が発生する可能性を生じると言えるでしょう。

検索サイト運営会社は、検索サイトを運営することにより、広告収入や、様々な手数料収入を得て利益を上げる営業活動を行っていますので、自社のサイトが不法行為に加担しないように注意すべき義務を負担していると主張することが考えられます。これは従業員の故意過失行為についての使用者の責任を認めている民法715条の報償責任の趣旨に基づく考え方です。

そこで、被害者としては、検索サイトの運営会社に対して、検索結果画面のURL表示及び記事内容の表示(キャッシュ表示)を解除(検索停止)するよう請求することが考えられます。これは、民法709条の不法行為に基く差止請求という法律構成になります。また、個人情報保護法27条に基いて、個人情報の利用停止を請求することも考えられます。裁判外の交渉段階では、検索停止措置に技術者の作業に関して費用が掛かる場合にこれを通知人が負担する事を申し出ても良いでしょう。

このような請求は、一般的な削除方法ではありませんので、事件数も少ないですが、地裁レベルで検索停止を求めた事案に関する判例がありますので、御紹介したいと思います。

東京地方裁判所平成22年2月18日判決「以上のように,違法な表現を含むウェブページが検索サービスの検索結果として表示される場合でも,検索サービスの運営者自体が,違法な表現を行っているわけでも,当該ウェブページを管理しているわけでもないこと,検索サービスの運営者は,検索サービスの性質上,原則として,検索結果として表示されるウェブページの内容や違法性の有無について判断すべき立場にはないこと,現代社会における検索サービスの役割からすると,検索サービスの検索結果から違法な表現を含む特定のウェブページを削除すると,当該ウェブページ上の違法ではない表現についてまで,社会に対する発信や接触の機会を事実上相当程度制限する結果になることなどからすると,ウェブページ上の違法な表現によって人格権等を侵害される者が,当該表現の表現者に対してその削除等を求めることなく,例外的に,法的な請求として,検索サービスの運営者に対して検索サービスの検索結果から当該ウェブページを削除することを求めることができるのは,当該ウェブページ自体からその違法性が明らかであり,かつ,ウェブページの全体か,少なくとも大部分が違法性を有しているという場合に,申し出等を受けることにより,検索サービスの運営者がその違法性を認識することができたにもかかわらず,これを放置しているような場合に限られるものと解するのが相当である。」「原告の主張を前提としても、本件各ウェブページにおいて原告の社会的評価を低下させるような書き込みは、本件ウェブページ1では全体の30パーセント程度、本件ウェブページ2では全体の15パーセント程度に過ぎないことからすると、原告は、被告に対し、人格権に基き、本件検索サービスの検索結果から本件各ウェブページを削除するように求めることはできないというべきである。」

この判例では、一般論として、検索サービス運営会社に対する検索停止請求が認容されうる場合があるとした上で、「違法性が明らか」「ウェブページの全体か、少なくとも大部分が違法性を有しているという場合」「検索サービスの運営者が違法性を認識することができたにもかかわらずこれを放置しているような場合」に限られるとしています。その上で、当該事例においては名誉毀損記事が記事全体のうち15〜30パーセントの割合しか含まれていないので、検索結果の削除を求める事はできないと判断しています。

検索結果の削除がページの全体を削除することになってしまうため、表現の自由の重要性に鑑みて、このような判断方法にも一定の合理性があると言えるでしょう。しかし、被害者にとっては、記事の一部分であったとしても、名誉毀損の事実が記載されていれば、被害は甚大なものとなってしまいます。検索サービスの運営会社に対する請求は、「当該ページの検索結果の削除(ページ全体の削除)」という方法よりも、「検索データベース内における、当該ページ内の、被害者の氏名の削除」つまり、氏名を入れても当該ページが検索されず、検索結果に当該ページのテキスト抜粋が表示される場合でも被害者の氏名は表示されないことを求める、という方法を取った方が良いと考えられます。この方法であれば、ページ全体の削除にはなりませんので、上記判例の「違法性を有している部分の割合」という条件を検討する必要が無くなることになります。

検索サービスの運営会社に対する通知の内容は次の通りです。

@ 通知人の氏名連絡先(代理人の表示)
A 問題となっているページのURL(インターネットアドレス)
B 問題となっているページ内の、問題となっている部分の特定
C 問題となっているページが検索結果に表示されている旨
D 問題となっている部分が、削除されるべき法的な理由
E 問題となっているページの管理者に対して削除依頼したが拒否された旨、または削除依頼できない事情
F 検索データベースにおける、問題となっているページのテキストデータから通知人の氏名を削除請求する旨

本件は、インターネットの普及に伴って発生した、新しい分野の法的紛争になりますので、法律が整備されておらず、判例の集積も十分とはいえない状態にありますが、裁判所も条件を示して、検索結果からの削除がされうる事を判断しておりますので、個別の事案を検討して、どうしても必要な場合は、法的手続を行って削除を求めていく事も必要と思われます。本件は、事案が複雑ですので、ご本人で手続なさっても良い結果が得られない恐れがあると思います。弁護士に相談・依頼して、弁護士と共に主張立証を行い、判決を勝ち取る強い意思が必要です。お困りの場合は、一度、弁護士にご相談なさる事をお勧め致します。


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