横領罪・背任罪を犯してしまった場合(令和3年12月2日最終改訂)

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1、息子が勤務先の金銭を着服してしまい、会社から払わなければ刑事告訴すると言われ賠償請求されている、という相談があります。会社の金銭に手を出してしまったのであれば、自分の責任で弁済するなり、刑事裁判を受けて罪を償うのが原則ではありますが、家族親族が協力することで、刑事訴追を免れることができる場合があります。会社と交渉して、示談成立できるよう可能な限り努力をしてみるべきでしょう。被害届又は刑事告訴がなされると、警察の捜査が開始され、場合によって逮捕・勾留され、有罪となれば前科がついてしまいますが、被害届や刑事告訴が取り下げされると、通常は不起訴処分(起訴猶予処分)となり、前科はつかないことになります。

2、横領罪(刑法252条=5年以下の懲役、公訴時効は5年=刑訴法250条2項5号)は、自分が占有(管理)する他人の所有物を、不法に領得する行為です。領得行為とは、「他人の物を自己の物のように処分し、もしくは処分しうべき状態に置くこと(大審院明治42年8月31日判決)」を意味します。職務上の占有物を横領した場合は、より重い、業務上横領罪(刑法253条=10年以下の懲役、公訴時効は7年=刑訴法250条2項4号)が適用されます。

 会社で、業務上金銭の管理をしていた社員が、会社の金銭を着服し、現金を下ろして使ってしまったり、自己の口座に移したりする行為は、業務上横領罪に該当しうる行為となります。レジ打ち業務をしている従業員の着服行為も業務上横領です。顧客リストの持ち出し行為も業務上横領罪が適用される可能性があります。

3、背任罪(刑法247条=5年以下の懲役もしくは50万円以下の罰金、公訴時効は5年=刑訴法250条2項5号)は、他人のためにその事務を処理する者が、自己もしくは第三者の利益を図り又は本人に損害を加える目的で任務に背く行為をして、本人に財産上の損害を加える行為です。会社の取締役や監査役など役員が背任行為を行った場合は、会社法960条の特別背任罪が適用され、法定刑は、10年以下の懲役又は1000万円以下の罰金となっております。
 背任罪の典型事例は、融資担当者による不正融資や、抵当権の二重設定(二重抵当)事案ですが、顧客リストやプログラムの社外コンピューターへのコピーが適用される可能性もあります(東京地裁昭和60年3月6日、同昭和60年3月20日、財物の領得行為が無いので横領罪にはなりません)。判例は少ないですが、機密情報の私物USBメモリへのコピーや、私的メールアドレスへの送信も、適用される可能性があります。

4、刑事告訴回避について。

 会社に対して損害を与えた場合、会社経営者としては通常は、被害金の回復が最大の目標となります。刑事告訴して逮捕させて、有罪判決を受けさせることが目的ではありません。「賠償しなければ刑事告訴する」というのは、交渉上の主張手段ですので、加害者側として、最大限の誠意を見せて刑事告訴を回避してもらうよう交渉するべきです。被害金が数百万円以上と大きい場合で一括弁済できないときは、公正証書(強制執行認諾文言つき)の作成に応じたり、分割払いにしたり、両親を連帯保証人にしたり、両親名義の自宅不動産に抵当権を設定したり、合意成立できるように条件を提示すると良いでしょう。相手方との代理人交渉を弁護士に依頼することもできます。

合意書の書式例はこちらになります。既に被害届や刑事告訴がなされている場合の取り下げ書はこちらです。

合意書に必ず定めるべき条項は次の通りです。合意書の作成や鑑定は弁護士に依頼すると良いでしょう。
@合意成立時の金員の受け渡しの事実。
A分割弁済に滞りが無い場合は、被害届及び刑事告訴を行わない旨の約束。
B分割弁済を完了した場合は、それ以外の支払い義務が存在しない事の確認(清算条項)。

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≪条文参照≫

刑法第252条(横領)自己の占有する他人の物を横領した者は、五年以下の懲役に処する。
2項 自己の物であっても、公務所から保管を命ぜられた場合において、これを横領した者も、前項と同様とする。

第253条(業務上横領)業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、十年以下の懲役に処する。

第247条(背任)他人のためにその事務を処理する者が、自己若しくは第三者の利益を図り又は本人に損害を加える目的で、その任務に背く行為をし、本人に財産上の損害を加えたときは、五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

会社法第960条(取締役等の特別背任罪)次に掲げる者が、自己若しくは第三者の利益を図り又は株式会社に損害を加える目的で、その任務に背く行為をし、当該株式会社に財産上の損害を加えたときは、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一  発起人
二  設立時取締役又は設立時監査役
三  取締役、会計参与、監査役又は執行役
四  民事保全法第五十六条 に規定する仮処分命令により選任された取締役、監査役又は執行役の職務を代行する者
五  第三百四十六条第二項、第三百五十一条第二項又は第四百一条第三項(第四百三条第三項及び第四百二十条第三項において準用する場合を含む。)の規定により選任された一時取締役、会計参与、監査役、代表取締役、委員、執行役又は代表執行役の職務を行うべき者
六  支配人
七  事業に関するある種類又は特定の事項の委任を受けた使用人
八  検査役
2  次に掲げる者が、自己若しくは第三者の利益を図り又は清算株式会社に損害を加える目的で、その任務に背く行為をし、当該清算株式会社に財産上の損害を加えたときも、前項と同様とする。
一  清算株式会社の清算人
二  民事保全法第五十六条 に規定する仮処分命令により選任された清算株式会社の清算人の職務を代行する者
三  第四百七十九条第四項において準用する第三百四十六条第二項又は第四百八十三条第六項において準用する第三百五十一条第二項の規定により選任された一時清算人又は代表清算人の職務を行うべき者
四  清算人代理
五  監督委員
六  調査委員


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