医師会除名処分弁明手続について (最終更新日平成22年12月21日)

1、日本医師会や、各都道府県の医師会や、各地域の医師会は、医道の高揚や医学教育の向上や地域医療の推進などを目的として設置された任意団体です。法人格は社団法人となっている場合が多いようです。強制加入ではありませんので、全体の加入率は6割程度となっていますが、地方での加入率は高くなっており、重要な社会的役割を果たしています。地域によっては、医師会が学校などの定期健診などの窓口になっているため、これらの活動をしようとする場合は、加入することが事実上の必須条件となっている場合もあるようです。

2、各医師会には定款が定められており、非違行為のあった会員に対して、懲戒処分をすることができる旨規定されています。通常、「除名処分」「会員資格停止処分」「戒告処分」などが規定されております。処分理由は、「医師の倫理に違反し、会員としての名誉又は本会の名誉を毀損した者」や、「本会の定款に違反し、又は本会の秩序を著しく乱した者」など、定められていることが多いのですが、抽象的な規定が多く、トラブルの原因となる場合があります。通常は、「裁定委員会」「懲戒委員会」など、執行部役員以外の委員会の審議を経て処分が決定されます。「裁定委員会」「懲戒委員会」などでは、被対象者に対して、弁明期日への出席や、弁明書の提出を求めることになります。医師が犯罪行為を犯して有罪確定となった場合など、処分も仕方が無いと思われる事案も勿論多いですが、中には、刑事処分の対象となっていない場合でも、会員個人と、執行部役員の個人的な感情のもつれから処分に至ったのではないかと思われるケースもあります。「弁明書の提出通知」が来てしまった場合は、早急に事案を検討し、詳細な弁明を行う必要があるでしょう。弁護士に弁明手続の代理人を依頼することも検討して下さい。

3、不幸にも「除名処分」を受けてしまった場合は、事案を整理した上で、「除名処分無効確認及び謝罪広告、慰謝料請求訴訟」や、「地位確認請求訴訟」「地位保全仮処分申立」などを検討することになります。医師会は強制加入団体ではありませんので、会員の懲戒処分も含む内部規律は各団体の自治に任せられている(いわゆる部分社会の法理)のが原則ですが、単なる親睦団体ではなく、公共的な役割も担う医師会のような団体において、特に除名処分に関しては対象者の社会的信用にも大きな影響があり、司法審査の対象となると解釈されています。除名処分を否定した裁判例としては、長野地方裁判所昭和35年10月8日判決や、広島地方裁判所昭和50年6月18日判決などがあります。お困りの場合は一度お近くの法律事務所に御相談なさると良いでしょう。

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