再開発における権利変換と損失補償|定期建物賃貸借契約の有効性について争いがある場合

都市再開発法|定期建物賃貸借の有効要件|権利変換を受ける権利の存否を判断する基準日の判断方法|基準日における権利について争いがある場合のみなし規定(都再法73条4項)について|定期建物賃貸借契約が権利変換期日より前に終了する事案

目次

  1. 質問
  2. 回答
  3. 解説
  4. 関連事例集
  5. 参照条文
  6. 参照判例

質問

私は、ビルの一室を賃借し、飲食店を経営していますが、店舗がある地区につき市街地再開発事業の認可決定が決まり貸主と再開発組合の方から、「あなたの店舗物件は定期建物賃貸借契約となっており、その期間が再開発事業による権利変換期日の予定日よりも前に終了するため、その時期に退去してもらう。再開発事業の対象となることはなく、移転に際しての補償金なども一切支払われない。」との通知がありました。

賃貸借契約書を確認したところ、「定期建物賃貸借契約書」との記載があり、その期間は今から約半年後に設定されています。しかし、私はもともと20年前から普通賃貸借契約で本件建物を賃借していたところを、約10年前に大家から「再開発の可能性があるので定期借家にする必要がある。再開発までは必ず更新できるので安心して欲しい。」などと言われ、契約の切り替えに応じたものです。そのときには、再開発のために移転するときには、当然補償金などが支払われるものと認識していました。

私は、大家や再開発組合のいうとおり、契約期間満了時には退去しなければならないのでしょうか。再開発において、補償金の支払いや自分の権利の保護を主張することはできないでしょうか。

回答

1 補償が受けられるか否かについては、第1に賃貸借契約が定期借家契約としての要件を満たしているか、それとも契約書には定期借家契約と記載してあっても法令要件を満たさないため普通借家契約と認められるか、第2に仮に定期借家契約としても、契約の終期がいつなのかを検討する必要があります。

本件で再開発組合らは、契約が定期建物賃貸借契約であることを前提にしていますが、定期建物賃貸借契約が有効と認められるためには、借地借家38条2項の説明がされていることが必要です。その説明には、判例上厳しい基準が課されています。不動産という人の仕事や居住の重要な拠点の貸し借りに関する契約ですから、退去義務の有無について厳格な要件が求められているのです。

本件でも、書類上定期建物賃貸借契約になっていたとしても、更新が前提であるかのような説明がされていたとのことですので、具体的な経緯によっては、定期建物賃貸借特約が無効である(権利変換期日時にも普通借家権が存在する)ことを主張することができる可能性があります。

2 また、賃貸人や再開発組合は、権利変換期日までに契約期間が終了することを根拠に無条件の退去を要求しているとのことですが、都市再開発法上、借家権のような物件に関する権利の存否について、権利変期日を基準に定めるべきと定めた規定はありません。

都市再開発法の解釈では、所謂評価基準日(事業計画認可決定から30日後、都再法80条1項)の時点で権利を有していれば、再開発事業の対象となる、との解釈も可能です。そのため、この条項の適用を主張し、再開発における権利を主張することも可能です。

3 さらに、都再法では、法律上権利の存否につき争いがある場合には、権利が存在するものとみなすとの規定(都再法73条4項)もあります。本件でも、定期建物賃貸借契約の有効性(借家権の存否)について争いがある場合ですので、当該条文の適用を主張することも考えられます。

4 再開発における定期借家契約の取り扱いについては、法律上も明確に規定されていない部分が多いといえます。そのため、弁護士を通じて法律上の反論を適格に行うことにより、再開発事業において適切な取扱い(補償金の支払いや再開発建物の利用(権利変換))を受けることも十分可能性があります。当初の対応によってその後の反論の可否も変わってきますので、速やかに弁護士に相談されることをお勧めします。

5 都市再開発関連事例集再開発の都市計画決定を法的に争った場合の判断基準については、再開発の都市計画決定を法的に争った場合の判断基準をご参照ください。

解説

1 定期建物賃貸借契約が無効であることの主張

(1) 定期建物賃貸借契約の要件

本件では、大家や再開発組合から、定期建物賃貸借契約であることを根拠に建物明渡を請求されているとのことですので、まずは定期建物賃貸借契約が有効に成立しているか否かが問題となります。

この点、お伺いしている以上からすると、本件では、定期建物賃貸借契約が有効ではない(普通建物賃貸借契約として更新が可能)と反論できる可能性があります。

本来、建物の賃貸借契約において、賃貸人は、契約更新を拒絶する正当な理由が無い限り、賃借人からの契約更新の希望には応じなければならず、契約上の期間が満了したとしても賃貸人の側から一方的に契約を終了させることができないのが原則です。

しかし、いわゆる「定期建物賃貸借契約」により契約をした場合には、賃借人の希望に関わらず契約の更新がないものとし、契約期間の満了により契約更新をせずに契約を終了させることができます(借地借家法38条1項)。建物賃貸借契約の例外として特別に認められる制度で、賃借人には不利益な契約ですから、要件が厳格に定められています。

まず、この定期建物賃貸借契約が有効であるための要件について解説致します。

① 公正証書による等書面によって契約をすること
定期建物賃貸借契約は、当事者の合意を明確化するために、書面によって締結する必要があります(借地借家法38条1項)。条文上は、「公正証書による等」との例示がされていますが、公正証書でなくても一般の書面による契約であれば、定期借家契約を締結できます。

② 更新排除特約の説明義務の履行
加えて、建物の賃貸人が、あらかじめ、建物の賃借人に対し、契約の更新がなく、期間の満了により当該建物の賃貸借は終了することについて、その旨を記載した「書面」を交付して「説明」することが必要です(借地借家法38条2項)。

ここでいう「書面」とは、賃貸借契約とは別個の書面であることが必要です(最判平成22年7月16日)。

また、この「説明」は、不動産仲介業者による重要事項の説明とは別に、賃貸人自身が説明する必要があります(東京地裁平成25年1月23日判決。もっとも、不動産仲介業者が賃貸人の代理人として説明することは認められています。)。

さらにここでいう「説明」は、当該賃借人となる者を基準として、相手方が理解できるように伝えなければならないとされております。そのため、例え説明の書面が交付されていたとしても、実際の説明が不十分であったとして、定期建物賃貸借契約を無効と判断した裁判例もあります。

(2) 本件で考えられる主張

以上を前提に、本件で可能な反論について検討致します。過去の裁判例に照らすと、本件では、以下のような反論が可能と見込まれます。

まず、本件建物については、もともと普通建物賃貸借として契約されていたものが、10年前に定期建物賃貸借契約に切り替えられたとのことです。この点、定期建物賃貸借契約は、普通建物賃貸借契約では通常認められる契約更新が認められないため、賃借人にとっては非常に不利な契約切り替えとなります。

そのため、このような場合には、更新がない点でより不利益な内容となる定期建物賃貸借契約を合意することの説明をしてその旨の認識をさせた上で、契約を締結することを要するものと解するのが相当であると考えられます(東京地裁平成27年 2月24日判決(平25(ワ)10691号))。

また、そのような不利益な契約切り替えとなることから、普通賃貸借から定期賃貸借に切り替える際には、賃借人に対して、そのような不利益を補填するための経済的な給付がされることが通常です。経済的な給付もなしに契約切り替えに合意することには合理性がなく、経済的給付も無く切り替えが実行された場合には、そもそも説明が不十分であったとの推定が働きます(東京地裁平成26年11月20日判決)。

そのため、本件にいて、契約切り替えに際して特段の経済的給付もされていなかったのであれば、これらの裁判例に基づく主張を展開することによって、定期建物賃貸借契約の説明が十分にされていないことを理由として、その有効性を否定することも可能と思われます。

仮に本件が定期建物賃貸借契約でないとなると、普通建物賃貸借契約となりますので、周辺の他の店舗と同じように、再開発事業の対象として補償金の支払いなどの対象となることになります。

2 借家権の存否に関する判断基準時が評価基準日となることの主張

また、本件では、賃貸借契約が定期建物賃貸借契約として有効か否かに関わらず、「都市再開発法上の『評価基準日』においては借家権が未だ存在する以上、いずれにせよ再開発事業の対象とすべきである。」との主張をすることも考えられます。

賃貸人や再開発組合は、権利変換期日までに契約期間が終了することを根拠に無条件の退去を要求しているとのことですが、都市再開発法上、借家権のような物件に関する権利の存否について、権利変期日を基準に定めるべき(権利変換期日よりも前に権利が消滅する場合には、再開発事業の対象とならない)と定めた規定はありません。

この点の取り扱いについては、裁判所の裁判例なども存在せず、現状は、再開発事業を進める再開発組合の一方的な解釈により事業が進められてしまっていることが多いといえます。すなわち、基準日は、80条1項の日か、権利変換期日(法87条、86条の2、73条1項22号)かどうかという争いです。

しかし、都再法80条1項は、権利変換計画を策定する際の基準となる日について、以下のように規定しています。

都市再開発法第80条1第1項

第七十三条第一項第三号、第八号、第十六号又は第十七号の価額は、第七十一条第一項又は第四項(同条第五項において読み替えて適用する場合を含む。)の規定による三十日の期間を経過した日における近傍類似の土地、近傍同種の建築物又は近傍類似の土地若しくは近傍同種の建築物に関する同種の権利の取引価格等を考慮して定める相当の価額とする。

つまり、同条項は、再開発事業について関係する権利の評価については、事業計画決定の認可公告があった日から起算して30日が経過した日を「評価基準日」とすると定めています。

同条項は、直接的には、権利変換処分により消滅することになる「従前資産(所有権、借地権など)の価額」を、いつの時点の価額で評価するか、その評価基準日を定めた規定ですが、一方で、再開発事業が、権利変換処分をその中核として据えていること、また同規定が権利評価や取扱いについての基準時点を定めた唯一の規定であること、権利変換期日は再開発事業が相当程度進行しないと定まらない不確定な期日であるからことなどからすると、都市再開発事業においては、同「評価基準日」における権利関係を基準として策定する必要があるとの解釈も成り立ちうるところです。

本件でも、事業計画が既に決定しているとのことですので、上記のように都市再開発法における権利の存否に関する判断の基準日時点を「評価基準日」であると主張することによって、あなたの店舗が再開発事業の対象となることを主張することも可能と考えられます。

大家や再開発組合は、このような主張をしない限り、自分達に有利な解釈のもとで、一方的に事業を進めようとする傾向がありますが、適切な主張反論をすれば、計画の修正を含めた適切な対応をしてくるケースも多いです。

そのため、まずは基準日の解釈に関して指摘の上、協議を実施すべきでしょう。

3 権利の存否につき争いがある場合の取り扱いの規定の適用の主張

都市再開発法においては、借家権などの権利に関して争いがありその存否が確定しない場合、当該権利が存在するものとして扱う、と定められています(都再法73条4項)。

本件は、定期建物賃貸借の有効性に争いがあり、ひいては権利変換期日における借家権の存否につき争いが有る事案であるため、当該条項の適用を主張することによって、都市再開発法事業において権利が存在するものとしての扱いを受ける=権利の返還や補償金の支払いなどを受けることが可能となる可能性があります。

この条項の適用を主張するためには、権利の存否について「争いがある」ことが必要となります。そのため、例えば再開発組合が建物の物件調書を作成するに際して、自ら定期建物賃貸借であることを認めて署名してしまったような場合などは、「争いがない」ものとみなされ、同条項を主張することができなくなってしまう可能性もあります。

このような危険を避けるためには、早急に権利の存否について争いがあることを、再開発組合や賃貸人に対して明確化する必要があるでしょう。具体的には、内容証明郵便等により、上記第1項で述べたような理由により定期建物賃貸借契約が無効であることを主張しておく必要があります。

これに対する大家側の対応としては、あなたに対して民事訴訟などを提起することによって、「権利が存在しない」ことを法的に確定させようとしてくることが考えられます。仮に右の民事訴訟が早期に終結すれば、当該民事訴訟の判断に従った結論になりますが、上記のような定期借家契約の有効性に関する争点がある場合、民事訴訟の審理には時間がかかるため、結局は権利の存否について確定できない場合の方が多いといえます。

組合側としては、権利変換前の大家賃貸人が、権利変換期日前に賃貸借契約が終了していることを理由に建物明け渡しの裁判で勝訴しているので、賃借権が不存在であることに争いがない、ということが考えられますが、仮にそうだとしても、定期借家か否かの裁判は時間がかかり、再開発の手続きによる建物の解体開始までには結論が出ないと考えられ、組合の主張は裁判の結論が出ていない以上、認められないことになります。

そのため、上記条文の適用を指摘した交渉により、借家権が存在ことを前提とした有利取り扱いを先取りして受けることができるようになります。

4 まとめ

以上のように、例え定期建物賃貸借契約の形式である場合でも、適切な反論を行うことによって、再開発事業の対象となることを主張可能な場合もあります。

もっとも、これらの反論は、法律上も明確に規定されていない部分が多いく、弁護士を通じて法律上の反論を適格に行う必要性が大きいです。

当初の対応によってその後の反論の可否も変わってきますので、速やかに弁護士に相談されることをお勧めします。

以上

関連事例集

参照条文

借地借家法

(定期建物賃貸借)
第三十八条 期間の定めがある建物の賃貸借をする場合においては、公正証書による等書面によって契約をするときに限り、第三十条の規定にかかわらず、契約の更新がないこととする旨を定めることができる。この場合には、第二十九条第一項の規定を適用しない。
2 前項の規定による建物の賃貸借をしようとするときは、建物の賃貸人は、あらかじめ、建物の賃借人に対し、同項の規定による建物の賃貸借は契約の更新がなく、期間の満了により当該建物の賃貸借は終了することについて、その旨を記載した書面を交付して説明しなければならない。
3 建物の賃貸人が前項の規定による説明をしなかったときは、契約の更新がないこととする旨の定めは、無効とする。
4 第一項の規定による建物の賃貸借において、期間が一年以上である場合には、建物の賃貸人は、期間の満了の一年前から六月前までの間(以下この項において「通知期間」という。)に建物の賃借人に対し期間の満了により建物の賃貸借が終了する旨の通知をしなければ、その終了を建物の賃借人に対抗することができない。ただし、建物の賃貸人が通知期間の経過後建物の賃借人に対しその旨の通知をした場合においては、その通知の日から六月を経過した後は、この限りでない。
5 第一項の規定による居住の用に供する建物の賃貸借(床面積(建物の一部分を賃貸借の目的とする場合にあっては、当該一部分の床面積)が二百平方メートル未満の建物に係るものに限る。)において、転勤、療養、親族の介護その他のやむを得ない事情により、建物の賃借人が建物を自己の生活の本拠として使用することが困難となったときは、建物の賃借人は、建物の賃貸借の解約の申入れをすることができる。この場合においては、建物の賃貸借は、解約の申入れの日から一月を経過することによって終了する。
6 前二項の規定に反する特約で建物の賃借人に不利なものは、無効とする。
7 第三十二条の規定は、第一項の規定による建物の賃貸借において、借賃の改定に係る特約がある場合には、適用しない。

都市再開発法

(権利変換を希望しない旨の申出等)
第七十一条 個人施行者若しくは再開発会社の施行の認可の公告、第十九条第一項の規定による公告若しくは事業計画の決定若しくは認可の公告(第六項において「施行認可の公告等」という。)又は前条第六項の規定による公告があつたときは、施行地区内の宅地(指定宅地を除く。)について所有権若しくは借地権を有する者又は施行地区内の土地(指定宅地を除く。)に権原に基づき建築物を所有する者は、その公告があつた日から起算して三十日以内に、施行者に対し、第八十七条又は第八十八条第一項及び第二項の規定による権利の変換を希望せず、自己の有する宅地、借地権若しくは建築物に代えて金銭の給付を希望し、又は自己の有する建築物を施行地区外に移転すべき旨を申し出ることができる。
2 前項の宅地、借地権若しくは建築物について仮登記上の権利、買戻しの特約その他権利の消滅に関する事項の定めの登記若しくは処分の制限の登記があるとき、又は同項の未登記の借地権の存否若しくは帰属について争いがあるときは、それらの権利者又は争いの相手方の同意を得なければ、同項の規定による金銭の給付の希望を申し出ることができない。
3 施行地区内の土地(指定宅地を除く。)に存する建築物について借家権を有する者(その者が更に借家権を設定しているときは、その借家権の設定を受けた者)は、第一項の期間内に施行者に対し、第八十八条第五項の規定による借家権の取得を希望しない旨を申し出ることができる。
4 第一項の期間経過後六月以内に第八十三条の規定による権利変換計画の縦覧の開始(個人施行者が施行する第一種市街地再開発事業にあつては、次条第一項後段の規定による権利変換計画の認可。以下この項において同じ。)がされないときは、当該六月の期間経過後三十日以内に、第一項若しくは前項の規定による申出を撤回し、又は新たに第一項若しくは前項の規定による申出をすることができる。その三十日の期間経過後更に六月を経過しても第八十三条の規定による権利変換計画の縦覧の開始がされないときも、同様とする。
5 事業計画を変更して従前の施行地区外の土地を新たに施行地区に編入した場合においては、前項前段中「第一項の期間経過後六月以内に第八十三条の規定による権利変換計画の縦覧の開始(個人施行者が施行する第一種市街地再開発事業にあつては、次条第一項後段の規定による権利変換計画の認可。以下この項において同じ。)がされないときは、当該六月の期間経過後」とあるのは、「新たな施行地区の編入に係る事業計画の変更の公告又はその変更の認可の公告があつたときは、その公告があつた日から起算して」とする。
6 前条第三項の規定による決定があつた場合においては、同条第六項の規定による公告があつた日から起算して三十日以内に、施行認可の公告等があつた場合又は新たな施行地区の編入に係る事業計画の変更の公告若しくはその変更の認可の公告があつた場合において行つた第一項又は第三項の規定による申出を撤回することができる。
7 第一項又は第三項から前項までの規定による申出又は申出の撤回は、国土交通省令で定めるところにより、書面でしなければならない。
8 前条第八項の規定は、第一項又は第三項の規定による申出について準用する。

(権利変換計画の内容)
第七十三条 権利変換計画においては、国土交通省令で定めるところにより、次に掲げる事項を定めなければならない。
一 配置設計
二 施行地区内の宅地(指定宅地を除く。)若しくはその借地権又は施行地区内の土地(指定宅地を除く。)に権原に基づき建築物を有する者で、当該権利に対応して、施設建築敷地若しくはその共有持分又は施設建築物の一部等を与えられることとなるものの氏名又は名称及び住所
三 前号に掲げる者が施行地区内に有する同号の宅地、借地権又は建築物及びそれらの価額
四 第二号に掲げる者に前号に掲げる宅地、借地権又は建築物に対応して与えられることとなる施設建築敷地若しくはその共有持分又は施設建築物の一部等の明細及びそれらの価額の概算額
五 第三号に掲げる宅地、借地権又は建築物について先取特権、質権若しくは抵当権の登記、仮登記、買戻しの特約その他権利の消滅に関する事項の定めの登記又は処分の制限の登記(以下「担保権等の登記」と総称する。)に係る権利を有する者の氏名又は名称及び住所並びにその権利
六 前号に掲げる者が施設建築敷地若しくはその共有持分又は施設建築物の一部等に関する権利の上に有することとなる権利
七 指定宅地又はその使用収益権を有する者の氏名又は名称及び住所
八 前号に掲げる者が有する指定宅地又はその使用収益権及びそれらの価額
九 第七号に掲げる者に前号に掲げる指定宅地又はその使用収益権に対応して与えられることとなる個別利用区内の宅地又はその使用収益権の明細及びそれらの価額の概算額
十 第八号に掲げる指定宅地又はその使用収益権について担保権等の登記に係る権利を有する者の氏名又は名称及び住所並びにその権利
十一 前号に掲げる者が個別利用区内の宅地又はその使用収益権の上に有することとなる権利
十二 施行地区内の土地(指定宅地を除く。)に存する建築物について賃借権を有する者(その者が更に賃借権を設定しているときは、その賃借権の設定を受けた者)又は施行地区内の土地(指定宅地を除く。)に存する建築物について配偶者居住権を有する者から賃借権の設定を受けた者で、当該賃借権に対応して、施設建築物の一部について賃借権を与えられることとなるものの氏名又は名称及び住所
十三 前号に掲げる者に賃借権が与えられることとなる施設建築物の一部
十四 施行地区内の土地(指定宅地を除く。)に存する建築物について配偶者居住権を有する者(その者が賃借権を設定している場合を除く。)で、当該配偶者居住権に対応して、施設建築物の一部について配偶者居住権を与えられることとなるものの氏名及び住所並びにその配偶者居住権の存続期間
十五 前号に掲げる者に配偶者居住権が与えられることとなる施設建築物の一部
十六 施設建築敷地の地代の概算額及び地代以外の借地条件の概要
十七 施行者が施設建築物の一部を賃貸しする場合における標準家賃の概算額及び家賃以外の借家条件の概要
十八 第七十九条第三項の規定が適用されることとなる者の氏名又は名称及び住所並びにこれらの者が施行地区内に有する宅地、借地権又は建築物及びそれらの価額
十九 施行地区内の宅地(指定宅地を除く。)若しくはこれに存する建築物又はこれらに関する権利を有する者で、この法律の規定により、権利変換期日において当該権利を失い、かつ、当該権利に対応して、施設建築敷地若しくはその共有持分、施設建築物の一部等又は施設建築物の一部についての借家権を与えられないものの氏名又は名称及び住所、失われる宅地若しくは建築物又は権利並びにそれらの価額
二十 組合の参加組合員に与えられることとなる施設建築物の一部等の明細並びにその参加組合員の氏名又は名称及び住所
二十一 第五十条の三第一項第五号又は第五十二条第二項第五号(第五十八条第三項において準用する場合を含む。)に規定する特定事業参加者(以下単に「特定事業参加者」という。)に与えられることとなる施設建築物の一部等の明細並びにその特定事業参加者の氏名又は名称及び住所
二十二 第四号、第九号及び前二号に掲げるもののほか、施設建築敷地又はその共有持分、施設建築物の一部等及び個別利用区内の宅地の明細、それらの帰属並びにそれらの管理処分の方法
二十三 新たな公共施設の用に供する土地の帰属に関する事項
二十四 権利変換期日、土地の明渡しの予定時期、個別利用区内の宅地の整備工事の完了の予定時期及び施設建築物の建築工事の完了の予定時期
二十五 その他国土交通省令で定める事項
2 宅地(指定宅地を除く。)について所有権又は借地権を有する者が当該宅地の上に建築物を有する場合において、当該宅地、借地権又は建築物について担保権等の登記に係る権利があるときは、これらの宅地、借地権又は建築物は、それぞれ別個の権利者に属するものとみなして権利変換計画を定めなければならない。ただし、次の各号のいずれかに該当する場合は、この限りでない。
一 担保権等の登記に係る権利の消滅について関係権利者の全ての同意があつたとき。
二 宅地と建築物又は借地権と建築物とが同一の担保権等の登記に係る権利の目的となつており、かつ、それらの全ての権利の順位が、宅地と建築物又は借地権と建築物とにおいてそれぞれ同一であるとき。
3 借地権の設定に係る仮登記上の権利(指定宅地に係るものを除く。)があるときは、仮登記権利者が当該借地権を有する場合を除き、宅地の所有者が当該借地権を別個の権利者として有するものとみなして、権利変換計画を定めなければならない。
4 宅地又は建築物(指定宅地に存するものを除く。)に関する権利に関して争いがある場合において、その権利の存否又は帰属が確定しないときは、当該権利が存するものとして、又は当該権利が現在の名義人に属するものとして権利変換計画を定めなければならない。ただし、借地権以外の宅地(指定宅地を除く。)を使用し、又は収益する権利の存否が確定しない場合にあつては、その宅地の所有者に対しては、当該権利が存しないものとして、その者に与える施設建築物の一部等を定めなければならない。

(宅地等の価額の算定基準)
第八十条 第七十三条第一項第三号、第八号、第十八号又は第十九号の価額は、第七十一条第一項又は第四項(同条第五項において読み替えて適用する場合を含む。)の規定による三十日の期間を経過した日における近傍類似の土地、近傍同種の建築物又は近傍類似の土地若しくは近傍同種の建築物に関する同種の権利の取引価格等を考慮して定める相当の価額とする。
2 第七十六条第三項の割合の基準となる宅地の価額は、当該宅地に関する所有権以外の権利が存しないものとして、前項の規定を適用して算定した相当の価額とする。

参照判例

東京地裁平成27年 2月24日判決(平25(ワ)10691号)

そして、定期建物賃貸借が、普通建物賃貸借と比べ、契約の更新がなく、期間満了により賃貸借が終了する点で、賃借人にとって不利益であり、新たに定期建物賃貸借契約を締結する際にも借地借家法38条所定の要件を満たすことを要することを考慮すると、既に普通建物賃貸借が継続している賃貸人と賃借人との間で、定期建物賃貸借の合意をするためには、賃貸人は、賃借人に対し、普通建物賃貸借を更新するのではなく、これを終了させ、賃貸借の期間が満了した場合には、更新がない点でより不利益な内容となる定期建物賃貸借契約を合意することの説明をしてその旨の認識をさせた上で、契約を締結することを要するものと解するのが相当である。
第3契約の締結に際し、Aないし原告と被告会社との間で、第2契約を終了させることについて具体的な話合いがされたことを示す証拠はなく、契約書及び説明書を示して、原告が期間、賃料、保証金について読み上げたほかは、各自黙読しただけであり(甲27、被告Y1)、覚書3(乙2)は原告が読み上げた(原告)というのであるが、覚書3(乙2)は、Aと被告会社との間に争議、紛争がない場合には、次回の契約を速やかにすること、争議及び紛争があった場合で、第三者が介入せずに穏便に解決しない時には期間満了により終了するとの定めがあり、覚書1と同様、少なくとも紛争が生じない限りは、賃貸借が継続することが合意されていたといえる。
上記のとおり、第2契約が更新されたと認められるところ、第3契約の締結に際し、第2契約より不利益な内容の契約を締結することについての説明がされた形跡はなく、紛争が生じない限り賃貸借を継続することを合意していることと、被告Y1は、賃貸借契約が継続していると認識していたこと(乙13、被告Y1)を考慮すると、第3契約は、普通建物賃貸借である第2契約の更新契約として合意されたと解するのが相当であり、定期建物賃貸借契約で使用される契約書及び説明書が使用されたことのみでは、普通建物賃貸借であった第2契約を終了させて、新たに定期建物賃貸借として合意されたということはできない。

東京地裁平成26年11月20日判決

ウ 原告の主張に沿う証人Aの供述によれば、旧賃借建物については普通賃貸借であったにもかかわらず、本件賃貸借契約が定期建物賃貸借として新たに締結されることとなるが、これによって生じる借家権喪失を補填しうるだけの経済的合理性必要性を認めることができない。すなわち、被告は、本件賃貸借契約の締結は、旧賃借建物から本件建物へ移転に伴うものであったが、この際、被告が受けた経済的給付等の利益は、引越費用、玄関先の塀の改造等とわずかであり(その他の移転補償は受けていない。)、他方で、証人Aにおいても、被告からの申し出があれば、普通賃貸借による条件でも応じたと供述していることからすると(証人A)、本件賃貸借契約を定期建物賃貸借に該当すると解すべき経済的条件を欠いている。
エ 原告が、本件賃貸借契約が定期建物賃貸借に該当することを前提にして行った平成25年7月31日付け書面による定期建物賃貸借の終了通知は、同日に生じた被告とAとの間の紛争と前後してなされている。証人Aは、上記紛争との関連性を否定する供述をするものの、上記終了通知は、上記同日よりも前に行うことが可能である上、終了通知可能期限内に到達したことが確認し難い平成25年7月31日にあえて行うことは考えがたいことからすると、証人Aの供述には疑問がある。
オ 被告が、本件契約書及び本件説明書面にした署名・押印行為について、本件建物への移転居住が新築建物への再入居を前提にした書面である旨を誤信した旨の主張については、これを裏付ける証拠は被告本人の供述以外にない。しかしながら、再入居の約定違背に関する被告の不満は、本件訴訟提起前の段階の公開質問状にも記載されており、被告の供述には一貫性が認められる。
以上に説示したことに加え、定期建物賃貸借契約については、当該契約に係る賃貸借契約は契約の更新がなく、期間の満了により終了すると認識しているか否かにかかわらず、法38条所定の厳格な書面性を要すると解される最高裁判例(最一判・平成24年9月13日民集66巻9号3263号)に照らすと、前記(1)で説示したことをもっても、前記ア及びイの要式性等の不備を看過しえないばかりか、さらに、前記ウないしオの事実を併せ考慮すると、本件賃貸借契約は、定期建物賃貸借であると解することはできない。
 以上から、本件賃貸借契約は定期建物賃貸借に該当するとの原告の主張は採用できない。