民事執行法改正後の財産開示手続き

民事|民事執行法における財産開示手続の改正(令和2年4月1日施行)|金融機関・登記所・市町村からの情報取得

目次

  1. 質問
  2. 回答
  3. 解説
  4. 関連事例集
  5. 参照条文

質問

私は、都内に住む主婦です。3年ほど前に、夫と不貞行為をした女性に対して慰謝料を請求する訴訟を起こし、150万円の支払いを命じる判決を得ました。しかし、相手女性は一切支払わず、また相手女性の勤め先や銀行口座などもわからなかったので、結局150万円の支払いは受けることができておりません。

私が相手の女性から判決に従った支払いを受けるために、何か良い方法はないでしょうか。

回答

1 民事訴訟で金銭の給付を命じる判決を取得した場合、同判決により強制執行を申立て、相手の財産を差し押さえ、現金化して回収することが可能です。差押=強制執行るためには、相手の財産を特定して裁判所に申し立てする必要がありますが、どのような財産があるのか調べる必要があり、そのために利用可能な手段の一つとしては、民事執行法上の「財産開示手続き」を利用することが考えられます。

2 同手続きは、従前は実行性が低く利用件数も少なかったのですが、民事執行法の改正(令和2年4月1日施行)により、開示を拒否した場合の罰則の規定や、金融機関や債務者以外の第三者からの情報取得手続が新設され、以前よりも実効性が確保されることとなりました。

3 同手続きを申立てるためには、強制執行が可能な状況であることや、知れている財産に対して強制執行を実行しても弁済できないこと等を主張、立証する必要があります。具体的な手続きの利用方法や強制執行の進め方については、弁護士などに相談されることをお勧めいたします。

解説

第1 財産開示制度の改正について

1 財産開示制度について

民事訴訟で請求が認められて金銭の給付を命じる判決を得た場合、同判決に基づき強制執行を申し立てることができます。

具体的には、相手(債務者)の銀行預金口座を差し押さえてその預金から金銭の給付を受けたり(債権差押)、不動産を差し押さえてその不動産を競売(不動産強制競売)で売却して代金の支払いを受けることができます。

これらの強制執行を申し立てるためには、債務者の銀行預金口座がどこの銀行支店にあるかや、不動産の所在地などの債務者の財産に関する情報を特定して裁判所に申し立てる必要があり、そのためには自分で相手の財産を調査する必要があります。

その調査のために利用可能な手続きとして、民事執行法上の財産開示制度というものがあります。この財産開示制度は、執行裁判所が債務者を呼出し、自身の財産に関する情報を陳述させるという、手続きです。

しかしこの手続きには、債務者の出頭を強制する力が弱いため、申立をしても債務者が出頭せずに無視されてしまうことも多く、これまであまり利用されることがありませんでしたが、民事執行法の改正により、その実効性が向上させられることになりました。

以下では、主な改正点にについて説明します。

2 罰則の強化

改正前の民事執行法206条では、「正当な理由なく、債務者が財産開示期日に出頭せず、又は宣誓を拒んだ場合や、債務者が財産開示期日において陳述すべき事項について陳述せず、又は虚偽の陳述をした場合、30万円以下の過料に処する」としていました。

しかし、この「過料」というものはいわゆる秩序罰としての制裁的であり、刑事的な処罰ではないため、義務違反に対する制裁としては弱いものでした。また、金額の上限も30万円であるため、財産開示に応じることによってこれ以上の損失を被る可能性のある者に対する強制力についても、疑問が残るものでした。

そこで、改正民事執行法213では、罰則が強化され、不出頭や虚偽の陳述をした者に対して、「六月以下の懲役又は五十万円以下の罰金」という重い処罰が下されることとなりました。これは上記の秩序罰とは異なり刑事罰であるため、この条文による制裁を受ければいわゆる法律上の前科ともなります。

これにより、従前横行していた不出張や虚偽の陳述が大幅に抑制されることが期待されます。

3 債務者以外の第三者からの情報取得手続の新設

さらに改正法では、債権者からの申立てにより、債務者だけではなく第三者からも債務者財産に関する情報を取得する制度(第三者からの情報取得手続)が新設されることになりました。

具体的には、①金融機関(銀行、信用金庫、労働金庫、信用協同組合、農業協同組合、証券会社等)等から、預貯金債権や上場株式、国債、投資信託受益権等に関する情報を取得できる手続(民事執行法207条)、②登記所から土地・建物に関する情報を取得できる手続(同法205条)、③市町村、日本年金機構等から給与債権(勤務先)に関する情報を取得できる手続(同法206条)がそれぞれ新設されました。

なお、③については、全ての債権者が対象となるのではなく、養育費等の扶養義務に係る請求権を有する債権者と人の生命・身体の侵害による損害賠償請求権を有する債権者のみが対象とされています。

情報の提供を命じられた第三者は、執行裁判所に対し、書面で情報を提供しします(同法208条1項)。対象となる情報は、預貯金債権であれば(同法207条)は、預貯金債権の有無のほか、その預貯金債権に対する差押命令の申立てをするのに必要となる事項(取扱店舗、預貯金債権の種類及び額等)とされています。

情報の提供がされたときは、執行裁判所は、申立人に上記書面の写しを送付し、かつ、債務者に対しても、財産に関する情報の提供がされた旨を通知することとされていますが(同法208条2項)、債務者への通知時期については、財産隠しの危険を避けるため、申立人への送付から相応の期間が経過した後になされるものと考えられます。

なお、財産開示手続きとは別の方法として、銀行の預金の内、みずほ銀行、みずほ信託銀行、三井住友銀行、三菱UFJ銀行、ゆうちょ銀行の5行に対しては、弁護士会照会請求という手続きにより(弁護士しかできませんが)、全店舗における相手方名義の口座の有無及び残高を照会し、回答を得ることができます。これらの銀行に預金口座がありそうだという場合は、より簡易迅速な調査が可能です。

第2 財産開示制度の要件について

最後に、上記の財産開示手続きを申し立てるための要件について説明します。

1 執行力のある債務名義の正本を有する債権者(民事執行法197条1項)

執行力のある債務名義とは、民事訴訟の確定判決、家事審判、和解調書、調停調書などです。なお、仮執行宣言付きの判決についても、法改正により対象となりました。

これらの債務名義の内容は、金銭債権である必要があります。また、その後に強制執行を行うことが前提となる手続きですので、執行開始の要件を備えていること(債務名義が債務者に送達されていることなど)、その他強制執行を開始することができない場合でないことが必要となります。

その他、一般の先取特権を有する場合もこの手続きを利用することが可能です(民事執行法197条2項)。

詳細な形式的要件につういては、専門家に確認した方が良いでしょう。

2 強制執行の不奏功など

さらに、財産開示手続きを踏まないと強制執行が奏功できないこととして、裁判所に対して、次の①又は②のいずれかに該当することを主張、立証する必要があります。

① 強制執行等の手続(申立ての日より6箇月以上前に終了したものを除く。)において、完全な弁済を得ることができなかったこと(民事執行法197条1項1号及び2項1号)。

6か月以内に強制執行を実施した場合には、こちらの要件による申立をまず検討します。

この要件を証明するためには、弁済金交付計算書の写しを提出することのほか、必要に応じて、強制執行の開始決定正本写し又は差押命令正本写し、配当期日呼出状写し等の提出することになります。

② 既に知れている財産に対する強制執行を実施しても、完全な弁済を得られないこと(民事執行法197条1項2号及び2項2号)。

申立人が、債権者として通常行うべき調査を行った結果、知れている財産がどれだけ存在するのか、そしてそれらの財産に対する強制執行を実施しても、請求債権の完全な弁済を得られないことを具体的に主張する必要があります。

これらの調査には、専門的な手法が必要となる場合もありますので、専門家に相談した方が良いでしょう。

第3 まとめ

せっかく訴訟で勝訴判決を得たとしても、強制執行が奏功せずに金銭の支払いを受けることができないのは、非常に勿体ない状況です。

もし相手が財産を秘匿している可能性が高いような場合には、改正された財産開示手続きの利用等について、弁護士に相談してみることをお勧めいたします。

以上

関連事例集

参照条文

民事執行法

第四章 債務者の財産状況の調査
第一節 財産開示手続
(管轄)
第百九十六条 この節の規定による債務者の財産の開示に関する手続(以下「財産開示手続」という。)については、債務者の普通裁判籍の所在地を管轄する地方裁判所が、執行裁判所として管轄する。

(実施決定)
第百九十七条 執行裁判所は、次の各号のいずれかに該当するときは、執行力のある債務名義の正本を有する金銭債権の債権者の申立てにより、債務者について、財産開示手続を実施する旨の決定をしなければならない。ただし、当該執行力のある債務名義の正本に基づく強制執行を開始することができないときは、この限りでない。
一 強制執行又は担保権の実行における配当等の手続(申立ての日より六月以上前に終了したものを除く。)において、申立人が当該金銭債権の完全な弁済を得ることができなかつたとき。
二 知れている財産に対する強制執行を実施しても、申立人が当該金銭債権の完全な弁済を得られないことの疎明があつたとき。
2 執行裁判所は、次の各号のいずれかに該当するときは、債務者の財産について一般の先取特権を有することを証する文書を提出した債権者の申立てにより、当該債務者について、財産開示手続を実施する旨の決定をしなければならない。
一 強制執行又は担保権の実行における配当等の手続(申立ての日より六月以上前に終了したものを除く。)において、申立人が当該先取特権の被担保債権の完全な弁済を得ることができなかつたとき。
二 知れている財産に対する担保権の実行を実施しても、申立人が前号の被担保債権の完全な弁済を得られないことの疎明があつたとき。
3 前二項の規定にかかわらず、債務者(債務者に法定代理人がある場合にあつては当該法定代理人、債務者が法人である場合にあつてはその代表者。第一号において同じ。)が前二項の申立ての日前三年以内に財産開示期日(財産を開示すべき期日をいう。以下同じ。)においてその財産について陳述をしたものであるときは、財産開示手続を実施する旨の決定をすることができない。ただし、次の各号に掲げる事由のいずれかがある場合は、この限りでない。
一 債務者が当該財産開示期日において一部の財産を開示しなかつたとき。
二 債務者が当該財産開示期日の後に新たに財産を取得したとき。
三 当該財産開示期日の後に債務者と使用者との雇用関係が終了したとき。
4 第一項又は第二項の決定がされたときは、当該決定(同項の決定にあつては、当該決定及び同項の文書の写し)を債務者に送達しなければならない。
5 第一項又は第二項の申立てについての裁判に対しては、執行抗告をすることができる。
6 第一項又は第二項の決定は、確定しなければその効力を生じない。

(期日指定及び期日の呼出し)
第百九十八条 執行裁判所は、前条第一項又は第二項の決定が確定したときは、財産開示期日を指定しなければならない。
2 財産開示期日には、次に掲げる者を呼び出さなければならない。
一 申立人
二 債務者(債務者に法定代理人がある場合にあつては当該法定代理人、債務者が法人である場合にあつてはその代表者)

(財産開示期日)
第百九十九条 開示義務者(前条第二項第二号に掲げる者をいう。以下同じ。)は、財産開示期日に出頭し、債務者の財産(第百三十一条第一号又は第二号に掲げる動産を除く。)について陳述しなければならない。
2 前項の陳述においては、陳述の対象となる財産について、第二章第二節の規定による強制執行又は前章の規定による担保権の実行の申立てをするのに必要となる事項その他申立人に開示する必要があるものとして最高裁判所規則で定める事項を明示しなければならない。
3 執行裁判所は、財産開示期日において、開示義務者に対し質問を発することができる。
4 申立人は、財産開示期日に出頭し、債務者の財産の状況を明らかにするため、執行裁判所の許可を得て開示義務者に対し質問を発することができる。
5 執行裁判所は、申立人が出頭しないときであつても、財産開示期日における手続を実施することができる。
6 財産開示期日における手続は、公開しない。
7 民事訴訟法第百九十五条及び第二百六条の規定は前各項の規定による手続について、同法第二百一条第一項及び第二項の規定は開示義務者について準用する。

(陳述義務の一部の免除)
第二百条 財産開示期日において債務者の財産の一部を開示した開示義務者は、申立人の同意がある場合又は当該開示によつて第百九十七条第一項の金銭債権若しくは同条第二項各号の被担保債権の完全な弁済に支障がなくなつたことが明らかである場合において、執行裁判所の許可を受けたときは、前条第一項の規定にかかわらず、その余の財産について陳述することを要しない。
2 前項の許可の申立てについての裁判に対しては、執行抗告をすることができる。

(財産開示事件の記録の閲覧等の制限)
第二百一条 財産開示事件の記録中財産開示期日に関する部分についての第十七条の規定による請求は、次に掲げる者に限り、することができる。
一 申立人
二 債務者に対する金銭債権について執行力のある債務名義の正本を有する債権者
三 債務者の財産について一般の先取特権を有することを証する文書を提出した債権者
四 債務者又は開示義務者

(財産開示事件に関する情報の目的外利用の制限)
第二百二条 申立人は、財産開示手続において得られた債務者の財産又は債務に関する情報を、当該債務者に対する債権をその本旨に従つて行使する目的以外の目的のために利用し、又は提供してはならない。
2 前条第二号又は第三号に掲げる者であつて、財産開示事件の記録中の財産開示期日に関する部分の情報を得たものは、当該情報を当該財産開示事件の債務者に対する債権をその本旨に従つて行使する目的以外の目的のために利用し、又は提供してはならない。

(強制執行及び担保権の実行の規定の準用)
第二百三条 第三十九条及び第四十条の規定は執行力のある債務名義の正本に基づく財産開示手続について、第四十二条(第二項を除く。)の規定は財産開示手続について、第百八十二条及び第百八十三条の規定は一般の先取特権に基づく財産開示手続について準用する。
第二節 第三者からの情報取得手続

(管轄)
第二百四条 この節の規定による債務者の財産に係る情報の取得に関する手続(以下「第三者からの情報取得手続」という。)については、債務者の普通裁判籍の所在地を管轄する地方裁判所が、この普通裁判籍がないときはこの節の規定により情報の提供を命じられるべき者の所在地を管轄する地方裁判所が、執行裁判所として管轄する。

(債務者の不動産に係る情報の取得)
第二百五条 執行裁判所は、次の各号のいずれかに該当するときは、それぞれ当該各号に定める者の申立てにより、法務省令で定める登記所に対し、債務者が所有権の登記名義人である土地又は建物その他これらに準ずるものとして法務省令で定めるものに対する強制執行又は担保権の実行の申立てをするのに必要となる事項として最高裁判所規則で定めるものについて情報の提供をすべき旨を命じなければならない。ただし、第一号に掲げる場合において、同号に規定する執行力のある債務名義の正本に基づく強制執行を開始することができないときは、この限りでない。
一 第百九十七条第一項各号のいずれかに該当する場合
執行力のある債務名義の正本を有する金銭債権の債権者
二 第百九十七条第二項各号のいずれかに該当する場合
債務者の財産について一般の先取特権を有することを証する文書を提出した債権者
2 前項の申立ては、財産開示期日における手続が実施された場合(当該財産開示期日に係る財産開示手続において第二百条第一項の許可がされたときを除く。)において、当該財産開示期日から三年以内に限り、することができる。
3 第一項の申立てを認容する決定がされたときは、当該決定(同項第二号に掲げる場合にあつては、当該決定及び同号に規定する文書の写し)を債務者に送達しなければならない。
4 第一項の申立てについての裁判に対しては、執行抗告をすることができる。
5 第一項の申立てを認容する決定は、確定しなければその効力を生じない。

(債務者の給与債権に係る情報の取得)
第二百六条 執行裁判所は、第百九十七条第一項各号のいずれかに該当するときは、第百五十一条の二第一項各号に掲げる義務に係る請求権又は人の生命若しくは身体の侵害による損害賠償請求権について執行力のある債務名義の正本を有する債権者の申立てにより、次の各号に掲げる者であつて最高裁判所規則で定めるところにより当該債権者が選択したものに対し、それぞれ当該各号に定める事項について情報の提供をすべき旨を命じなければならない。ただし、当該執行力のある債務名義の正本に基づく強制執行を開始することができないときは、この限りでない。
一 市町村(特別区を含む。以下この号において同じ。)
債務者が支払を受ける地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)第三百十七条の二第一項ただし書に規定する給与に係る債権に対する強制執行又は担保権の実行の申立てをするのに必要となる事項として最高裁判所規則で定めるもの(当該市町村が債務者の市町村民税(特別区民税を含む。)に係る事務に関して知り得たものに限る。)
二 日本年金機構、国家公務員共済組合、国家公務員共済組合連合会、地方公務員共済組合、全国市町村職員共済組合連合会又は日本私立学校振興・共済事業団
債務者(厚生年金保険の被保険者であるものに限る。以下この号において同じ。)が支払を受ける厚生年金保険法(昭和二十九年法律第百十五号)第三条第一項第三号に規定する報酬又は同項第四号に規定する賞与に係る債権に対する強制執行又は担保権の実行の申立てをするのに必要となる事項として最高裁判所規則で定めるもの(情報の提供を命じられた者が債務者の厚生年金保険に係る事務に関して知り得たものに限る。)
2 前条第二項から第五項までの規定は、前項の申立て及び当該申立てについての裁判について準用する。

(債務者の預貯金債権等に係る情報の取得)
第二百七条 執行裁判所は、第百九十七条第一項各号のいずれかに該当するときは、執行力のある債務名義の正本を有する金銭債権の債権者の申立てにより、次の各号に掲げる者であつて最高裁判所規則で定めるところにより当該債権者が選択したものに対し、それぞれ当該各号に定める事項について情報の提供をすべき旨を命じなければならない。ただし、当該執行力のある債務名義の正本に基づく強制執行を開始することができないときは、この限りでない。
一 銀行等(銀行、信用金庫、信用金庫連合会、労働金庫、労働金庫連合会、信用協同組合、信用協同組合連合会、農業協同組合、農業協同組合連合会、漁業協同組合、漁業協同組合連合会、水産加工業協同組合、水産加工業協同組合連合会、農林中央金庫、株式会社商工組合中央金庫又は独立行政法人郵便貯金簡易生命保険管理・郵便局ネットワーク支援機構をいう。以下この号において同じ。)
債務者の当該銀行等に対する預貯金債権(民法第四百六十六条の五第一項に規定する預貯金債権をいう。)に対する強制執行又は担保権の実行の申立てをするのに必要となる事項として最高裁判所規則で定めるもの
二 振替機関等(社債、株式等の振替に関する法律第二条第五項に規定する振替機関等をいう。以下この号において同じ。)
債務者の有する振替社債等(同法第二百七十九条に規定する振替社債等であつて、当該振替機関等の備える振替口座簿における債務者の口座に記載され、又は記録されたものに限る。)に関する強制執行又は担保権の実行の申立てをするのに必要となる事項として最高裁判所規則で定めるもの
2 執行裁判所は、第百九十七条第二項各号のいずれかに該当するときは、債務者の財産について一般の先取特権を有することを証する文書を提出した債権者の申立てにより、前項各号に掲げる者であつて最高裁判所規則で定めるところにより当該債権者が選択したものに対し、それぞれ当該各号に定める事項について情報の提供をすべき旨を命じなければならない。
3 前二項の申立てを却下する裁判に対しては、執行抗告をすることができる。

(情報の提供の方法等)
第二百八条 第二百五条第一項、第二百六条第一項又は前条第一項若しくは第二項の申立てを認容する決定により命じられた情報の提供は、執行裁判所に対し、書面でしなければならない。
2 前項の情報の提供がされたときは、執行裁判所は、最高裁判所規則で定めるところにより、申立人に同項の書面の写しを送付し、かつ、債務者に対し、同項に規定する決定に基づいてその財産に関する情報の提供がされた旨を通知しなければならない。

(陳述等拒絶の罪)
第二百十三条 次の各号のいずれかに該当する者は、六月以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
一 売却基準価額の決定に関し、執行裁判所の呼出しを受けた審尋の期日において、正当な理由なく、出頭せず、若しくは陳述を拒み、又は虚偽の陳述をした者
二 第五十七条第二項(第百二十一条(第百八十九条(第百九十五条の規定によりその例によることとされる場合を含む。)において準用する場合を含む。)及び第百八十八条(第百九十五条の規定によりその例によることとされる場合を含む。)において準用する場合を含む。)の規定による執行官の質問又は文書の提出の要求に対し、正当な理由なく、陳述をせず、若しくは文書の提示を拒み、又は虚偽の陳述をし、若しくは虚偽の記載をした文書を提示した者
三 第六十五条の二(第百八十八条(第百九十五条の規定によりその例によることとされる場合を含む。)において準用する場合を含む。)の規定により陳述すべき事項について虚偽の陳述をした者
四 第百六十八条第二項の規定による執行官の質問又は文書の提出の要求に対し、正当な理由なく、陳述をせず、若しくは文書の提示を拒み、又は虚偽の陳述をし、若しくは虚偽の記載をした文書を提示した債務者又は同項に規定する不動産等を占有する第三者
五 執行裁判所の呼出しを受けた財産開示期日において、正当な理由なく、出頭せず、又は宣誓を拒んだ開示義務者
六 第百九十九条第七項において準用する民事訴訟法第二百一条第一項の規定により財産開示期日において宣誓した開示義務者であつて、正当な理由なく第百九十九条第一項から第四項までの規定により陳述すべき事項について陳述をせず、又は虚偽の陳述をしたもの
2 不動産(登記することができない土地の定着物を除く。以下この項において同じ。)の占有者であつて、その占有の権原を差押債権者、仮差押債権者又は第五十九条第一項(第百八十八条(第百九十五条の規定によりその例によることとされる場合を含む。)において準用する場合を含む。)の規定により消滅する権利を有する者に対抗することができないものが、正当な理由なく、第六十四条の二第五項(第百八十八条(第百九十五条の規定によりその例によることとされる場合を含む。)において準用する場合を含む。)の規定による不動産の立入りを拒み、又は妨げたときは、三十万円以下の罰金に処する。