映画無断転載による著作権侵害と損害額について

民事・知的財産権|著作権法114条3項に基づく請求|映画の無断アップロードを理由に映画会社から損害賠償請求を受けた事案|大阪高判平成30年6月29日

目次

  1. 質問
  2. 回答
  3. 解説
  4. 関連事例集
  5. 参照条文
  6. 参照判例

質問

無料動画サイトに、ある映画作品の一部(全体の再生時間2時間の5%に相当する約6分)を無断でアップロードしていたところ、サイト運営会社により動画が凍結されてしまいました。一般社団法人日本レコード協会より配信停止とファイル削除依頼が届いたことが理由とのことです。

その後、著作権者を名乗る映画会社から、著作権の侵害を理由とする損害賠償を請求する通知書が届き、非常に高額であったことから怖くなって無視をしていたところ、今度は裁判所から損害賠償請求訴訟の訴状が届いてしまいました。

私は、今回の無断転載によって利益を得ていたわけではないのですが、それでも著作権侵害ということになってしまうのでしょうか。

また、先方は、本来であれば動画再生1回につき少なくともストリーミング料金1000円(1週間の視聴期間あり)にライセンス許諾料30%を乗じた金額である300円を受領できたという前提のもと、サイトに表示されていた再生回数2万回分を乗じた600万円が損害額であると主張していますが、私は本編作品2時間分を無断転載したのではなく、あくまでもごく一部6分間転載したに過ぎないことから、この計算方法には納得がいきません。本件訴訟についてどのように対応すべきでしょうか。

回答

1 2時間の映画についてその一部6分間の部分を無断でアップロードしたあなたの行為は、著作権者である映画会社の公衆送信権を侵害するものであり(著作権法23条1項)、著作権侵害の事実自体を争うのは困難でしょう。

2 とはいえ、その損害額については、著作権者の請求から十分に減額が可能と思われます。本件と類似の事案において、①配信した著作物の収録時間に応じて使用料相当額を算定すべきこと、②1週間という利用期間を前提に設定されているストリーミング配信の料金を動画サイトにおける公衆への自動送信1回ごとに対応する対価とすることは合理的でなく、本件著作物の利用者が、3分の1を乗じるのが相当であること、を判示した裁判例(大阪高判平成30年6月29日)があり、参考になります。

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4 その他の関連する事例集はこちらをご覧ください。

解説

第1 著作者と著作権者について

1 原則

「著作者」とは、著作物を創作する者と定義され(著作権法(以下単に「法」といいます。)2条1項2号)、「著作物」とは、思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものと定義されています。

その上で、著作者は、公表権、氏名表示権、同一性保持権といった「著作人格権」(法19条1項、20条1項)と複製権、上演権、上映権、公衆送信権、口述権、展示権、頒布権、譲渡権、貸与権、翻訳権、二次的著作物の利用に関する原著作者の権利といった「著作権」(法21条から28条まで)を享有するものとされます。すなわち、原則的には、著作者は著作権者と一致します。

2 映画の場合の例外

ところが、映画については、著作者と著作権者が一致しない(財産権たる著作権と人格権たる著作者人格権が、原始的に別個の法人格に帰属する)著作物とされます。

映画の著作物の場合、職務著作物(従業員等が職務上作成する著作物)を除き、「制作、監督、演出、撮影、美術等を担当してその映画の著作物の全体的形成に創作的に寄与した者」が著作者とされます(法16条)。いわゆる監督やプロデューサーといったモダンオーサーが著作者となるのですが、形式的に「監督」「プロデューサー」といった肩書が付いているだけで著作者となるわけではなく、創作面において実質的に製作過程を統括することが必要です。

一方で、「映画の著作物(第15条第1項、次項又は第3項の規定の適用を受けるものを除く。)の著作権は、その著作者が映画製作者に対し当該映画の著作物の製作に参加することを約束しているときは、当該映画製作者に帰属する。」とされます(法29条1項)。

「映画製作者」とは、「映画の著作物の製作に発意と責任を有する者」と定義され(法2条1項10号)、通常は、映画製作のために経済的リスクを負担する映画会社やプロダクションがこれに該当することになります。映画監督やプロデューサーは、職務著作物となる場合を除けば、通常は映画会社との契約により映画製作に参加することになりますので、当該映画の著作権は映画会社に帰属することになるのです。

本件に即していえば、アップロードの対象となった映画作品の監督等が著作者、映画会社(プロダクション)が著作権者ということになります。そのため、損害賠償の請求主体が映画制作会社となっているのです。

第2 本件行為の評価について

法23条1項は著作権者が公衆送信権を享有することを規定しています。

「公衆送信」とは、公衆によって直接受信されることを目的として無線通信又は有線電気通信の送信(電気通信設備で、その一の部分の設置の場所が他の部分の設置の場所と同一の構内(その構内が二以上の者の占有に属している場合には、同一の者の占有に属する区域内)にあるものによる送信(プログラムの著作物の送信を除く。)を除く。)を行うこと(法2条1項7号の2)と定義されています。

動画のアップロードは、公衆に自動送信しうる状態に置く行為といえ、この「公衆送信」にあたることになります。厳密には動画のアップロードだけでは公衆に送信したことにはなりません。ダウンロードされて初めて送信されたことになります。

しかし、自動送信が可能な状態に置く行為は公衆送信と同視されます。そして、著作物である映画作品を著作権者の許諾を得ることなく動画サイトでアップロードする行為は、たとえ一部であったとしても、著作権者の公衆送信権(法23条1項)を侵害する行為といえます。

そのため、本件で、この著作権の侵害自体を争うことは困難でしょう。

第3 著作権侵害に対する対応

著作権侵害行為に対しては、民事上の救済として、侵害行為等の差止めを求めること(法112条)、損害賠償を請求すること、不当利得の返還を請求すること、名誉回復のための措置等(法115条)を求めることが可能です。

また、刑事事件として告訴し(法119条以下)、刑事罰の適用を求めることもできます。

本件は、損害賠償請求を受けている事案ですから、以下では、損害賠償請求における損害額の点に絞って解説いたします。

第4 損害について|著作権法114条

1 損害額の算定規定

(1) 著作権法114条の趣旨

著作権侵害を理由とする損害賠償を請求するにあたり、損害額の立証は困難なことが多いため、著作権者から侵害者に対する損害賠償請求を容易にする趣旨で、損害額に関する算定規定が設けられています(法114条)。

ただし、侵害行為について過失が存在したことに関する推定規定はありませんので、侵害者の故意・過失については、権利者の側で証明しなければなりません。

(2) 114条1項について

まず、法114条1項は、著作権侵害により、著作権者が自己の受けた損害の賠償を請求する場合において、著作権侵害者が侵害の行為によって作成された物を譲渡し、又はその侵害の行為を組成する公衆送信を行ったときは、その譲渡した物の数量又はその公衆送信が公衆によって受信されることにより作成された著作物若しくは実演等の複製物の数量(譲渡等数量)に、著作権者がその侵害がなければ販売することができた物の単位数量あたりの利益の額を乗じて得た額を、著作権者の販売等を行う能力に応じた額を超えない限度において、著作権者等が受けた損害の額とすることができると規定しています。ただし、譲渡等数量の全部または一部を著作権者等が販売することができない事情があるときは、その事情に相当する数量に応じた額を控除することになっています。

例えば、著作権侵害者が、著作物の海賊版を1万個販売し、著作権者の単位数量あたりの利益の金額が500円だとすれば、これらを乗じた500万円を著作権者が受けた損害の額と出来る場合があるということになります。ただ、著作権者の販売能力がこれを下回るときや、代替品の存在、侵害者の営業努力等があれば、減額される場合もあります。

(3) 114条2項について

次に、法114条2項は、著作権等侵害行為により侵害者が利益を受けている場合は、その利益の額が損害の額と推定されることを規定しています。例えば、侵害者が1000個の著作物の海賊版を販売した場合において、100万円の利益を受けているときは、その額が権利者の損害として推定されます。

ただし、この規定は推定規定に過ぎないため、権利者が受けた損害の額がもっと少ないことを侵害者側が立証することで、推定が覆される可能性があります。

例えば、侵害者が1000個の著作物の海賊版を販売した場合において、100万円の利益を受けているときは、その額が権利者の損害として推定されます。

(4) 114条3項について

最後に、法114条3項は、著作権者が著作権侵害者に対し、その著作権の行使につき受けるべき金銭の額に相当する額を自己が受けた損害の額として、その賠償を請求することができると規定しています。いわゆるライセンス料相当額を損害額として請求出来るという規定であり、この規定は、損害額の最低限を法定した規定と考えられております。そのため、侵害者が実際の損害額がこれより小額であることを主張して損害賠償を減額させることはできません。

例えば、侵害者が、著作物の海賊版を販売して月額1000万円を売上げた場合において、権利者のライセンス料率の相場が売上高の10%であれば、著作権者の損害は月額100万円とすることができます。

2 本件における損害額について

本件において原告側は、法114条3項の規定に基づき、本件著作物を適法に視聴する場合の最低料金(1週間のストリーミング配信料金)を基準に、本件著作物について利用許諾する場合の料率30%を乗じ、さらに無断アップロードされた著作物が動画サイトにおいて再生された回数(すなわち公衆に自動送信された回数)を乗じる方法で損害を算定しています。

しかし、この算定方法には次の2点の問題があります。すなわち、①あなたがアップロードした著作物は、本件著作物の極一部である(時間にして収録時間の5パーセント)のに、本件著作物全体を正規に視聴する場合の料金を基準にすることが適切であるか否か、②公衆への自動送信1回ごとのライセンス料相当額を算定する上で、1週間のストリーミング配信料金を基準とすることが適切であるか否か、といった疑問が生じます。

この点について、同種の裁判例(大阪高判平成30年6月29日)は、①の点に関し、「本件著作物を自動公衆送信により得ることのできる金銭は、視聴できる時間(上映時間、ストリーミングの時間)に大きく影響されることが推認される。」「被告アップロード著作物の配信1回につき、これに対応する本件著作物の1回分の使用料額をそのまま、本件著作物にかかる著作権等の行使につき受けるべき金銭とすることは相当とはいえない。」とした上で、「配信した著作物の収録時間に応じて使用料相当額を算定するのが相当である。」と判示しました。

また、②の点に関し、「本件著作物の利用者は、ストリーミングで1週間見放題になるというのであるから、本件著作物の配信を受ける対価は、1週間という利用期間を前提に設定されているものであって、これを「FC2アダルト」における公衆への自動送信1回ごとに対応する対価とすることは合理的でない。本件著作物の利用者が、1週間に数回視聴することを前提とし、更に3分の1を乗じるのが相当である。」と判示しました。

これらの結果として、大幅な減額が認められており、本件での反論を組み立てる上で参考になるでしょう。

第5 まとめ

以上のとおり、著作権の侵害を理由とする損害賠償請求の事案では、損害の算定方法が争点になりやすいといえます。原告の請求額を鵜呑みにするのではなく、適正な損害額を導くための適切な反論を加える必要がございます。知的財産権の分野は専門性の強い領域ですから、経験のある弁護士への相談をお勧めいたします。

以上

関連事例集

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参照条文
著作権法

(定義)
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一 著作物 思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。
二 著作者 著作物を創作する者をいう。
三 実演 著作物を、演劇的に演じ、舞い、演奏し、歌い、口演し、朗詠し、又はその他の方法により演ずること(これらに類する行為で、著作物を演じないが芸能的な性質を有するものを含む。)をいう。
四 実演家 俳優、舞踊家、演奏家、歌手その他実演を行う者及び実演を指揮し、又は演出する者をいう。
五 レコード 蓄音機用音盤、録音テープその他の物に音を固定したもの(音を専ら影像とともに再生することを目的とするものを除く。)をいう。
六 レコード製作者 レコードに固定されている音を最初に固定した者をいう。
七 商業用レコード 市販の目的をもつて製作されるレコードの複製物をいう。
七の二 公衆送信 公衆によつて直接受信されることを目的として無線通信又は有線電気通信の送信(電気通信設備で、その一の部分の設置の場所が他の部分の設置の場所と同一の構内(その構内が二以上の者の占有に属している場合には、同一の者の占有に属する区域内)にあるものによる送信(プログラムの著作物の送信を除く。)を除く。)を行うことをいう。
八 放送 公衆送信のうち、公衆によつて同一の内容の送信が同時に受信されることを目的として行う無線通信の送信をいう。
九 放送事業者 放送を業として行う者をいう。
九の二 有線放送 公衆送信のうち、公衆によつて同一の内容の送信が同時に受信されることを目的として行う有線電気通信の送信をいう。
九の三 有線放送事業者 有線放送を業として行う者をいう。
九の四 自動公衆送信 公衆送信のうち、公衆からの求めに応じ自動的に行うもの(放送又は有線放送に該当するものを除く。)をいう。
九の五 送信可能化 次のいずれかに掲げる行為により自動公衆送信し得るようにすることをいう。
イ 公衆の用に供されている電気通信回線に接続している自動公衆送信装置(公衆の用に供する電気通信回線に接続することにより、その記録媒体のうち自動公衆送信の用に供する部分(以下この号において「公衆送信用記録媒体」という。)に記録され、又は当該装置に入力される情報を自動公衆送信する機能を有する装置をいう。以下同じ。)の公衆送信用記録媒体に情報を記録し、情報が記録された記録媒体を当該自動公衆送信装置の公衆送信用記録媒体として加え、若しくは情報が記録された記録媒体を当該自動公衆送信装置の公衆送信用記録媒体に変換し、又は当該自動公衆送信装置に情報を入力すること。
ロ その公衆送信用記録媒体に情報が記録され、又は当該自動公衆送信装置に情報が入力されている自動公衆送信装置について、公衆の用に供されている電気通信回線への接続(配線、自動公衆送信装置の始動、送受信用プログラムの起動その他の一連の行為により行われる場合には、当該一連の行為のうち最後のものをいう。)を行うこと。
十 映画製作者 映画の著作物の製作に発意と責任を有する者をいう。
十の二 プログラム 電子計算機を機能させて一の結果を得ることができるようにこれに対する指令を組み合わせたものとして表現したものをいう。
十の三 データベース 論文、数値、図形その他の情報の集合物であつて、それらの情報を電子計算機を用いて検索することができるように体系的に構成したものをいう。
十一 二次的著作物 著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案することにより創作した著作物をいう。
十二 共同著作物 二人以上の者が共同して創作した著作物であつて、その各人の寄与を分離して個別的に利用することができないものをいう。
十三 録音 音を物に固定し、又はその固定物を増製することをいう。
十四 録画 影像を連続して物に固定し、又はその固定物を増製することをいう。
十五 複製 印刷、写真、複写、録音、録画その他の方法により有形的に再製することをいい、次に掲げるものについては、それぞれ次に掲げる行為を含むものとする。
イ 脚本その他これに類する演劇用の著作物 当該著作物の上演、放送又は有線放送を録音し、又は録画すること。
ロ 建築の著作物 建築に関する図面に従つて建築物を完成すること。
十六 上演 演奏(歌唱を含む。以下同じ。)以外の方法により著作物を演ずることをいう。
十七 上映 著作物(公衆送信されるものを除く。)を映写幕その他の物に映写することをいい、これに伴つて映画の著作物において固定されている音を再生することを含むものとする。
十八 口述 朗読その他の方法により著作物を口頭で伝達すること(実演に該当するものを除く。)をいう。
十九 頒布 有償であるか又は無償であるかを問わず、複製物を公衆に譲渡し、又は貸与することをいい、映画の著作物又は映画の著作物において複製されている著作物にあつては、これらの著作物を公衆に提示することを目的として当該映画の著作物の複製物を譲渡し、又は貸与することを含むものとする。
二十 技術的保護手段 電子的方法、磁気的方法その他の人の知覚によつて認識することができない方法(次号及び第二十二号において「電磁的方法」という。)により、第十七条第一項に規定する著作者人格権若しくは著作権、出版権又は第八十九条第一項に規定する実演家人格権若しくは同条第六項に規定する著作隣接権(以下この号、第三十条第一項第二号及び第百二十条の二第一号において「著作権等」という。)を侵害する行為の防止又は抑止(著作権等を侵害する行為の結果に著しい障害を生じさせることによる当該行為の抑止をいう。第三十条第一項第二号において同じ。)をする手段(著作権等を有する者の意思に基づくことなく用いられているものを除く。)であつて、著作物、実演、レコード、放送又は有線放送(以下「著作物等」という。)の利用(著作者又は実演家の同意を得ないで行つたとしたならば著作者人格権又は実演家人格権の侵害となるべき行為を含む。)に際し、これに用いられる機器が特定の反応をする信号を著作物、実演、レコード若しくは放送若しくは有線放送に係る音若しくは影像とともに記録媒体に記録し、若しくは送信する方式又は当該機器が特定の変換を必要とするよう著作物、実演、レコード若しくは放送若しくは有線放送に係る音若しくは影像を変換して記録媒体に記録し、若しくは送信する方式によるものをいう。
二十一 技術的利用制限手段 電磁的方法により、著作物等の視聴(プログラムの著作物にあつては、当該著作物を電子計算機において実行する行為を含む。以下この号及び第百十三条第三項において同じ。)を制限する手段(著作権者、出版権者又は著作隣接権者(以下「著作権者等」という。)の意思に基づくことなく用いられているものを除く。)であつて、著作物等の視聴に際し、これに用いられる機器が特定の反応をする信号を著作物、実演、レコード若しくは放送若しくは有線放送に係る音若しくは影像とともに記録媒体に記録し、若しくは送信する方式又は当該機器が特定の変換を必要とするよう著作物、実演、レコード若しくは放送若しくは有線放送に係る音若しくは影像を変換して記録媒体に記録し、若しくは送信する方式によるものをいう。
二十二 権利管理情報 第十七条第一項に規定する著作者人格権若しくは著作権又は第八十九条第一項から第四項までの権利(以下この号において「著作権等」という。)に関する情報であつて、イからハまでのいずれかに該当するもののうち、電磁的方法により著作物、実演、レコード又は放送若しくは有線放送に係る音若しくは影像とともに記録媒体に記録され、又は送信されるもの(著作物等の利用状況の把握、著作物等の利用の許諾に係る事務処理その他の著作権等の管理(電子計算機によるものに限る。)に用いられていないものを除く。)をいう。
イ 著作物等、著作権等を有する者その他政令で定める事項を特定する情報
ロ 著作物等の利用を許諾する場合の利用方法及び条件に関する情報
ハ 他の情報と照合することによりイ又はロに掲げる事項を特定することができることとなる情報
二十三 国内 この法律の施行地をいう。
二十四 国外 この法律の施行地外の地域をいう。
2 この法律にいう「美術の著作物」には、美術工芸品を含むものとする。
3 この法律にいう「映画の著作物」には、映画の効果に類似する視覚的又は視聴覚的効果を生じさせる方法で表現され、かつ、物に固定されている著作物を含むものとする。
4 この法律にいう「写真の著作物」には、写真の製作方法に類似する方法を用いて表現される著作物を含むものとする。
5 この法律にいう「公衆」には、特定かつ多数の者を含むものとする。
6 この法律にいう「法人」には、法人格を有しない社団又は財団で代表者又は管理人の定めがあるものを含むものとする。
7 この法律において、「上演」、「演奏」又は「口述」には、著作物の上演、演奏又は口述で録音され、又は録画されたものを再生すること(公衆送信又は上映に該当するものを除く。)及び著作物の上演、演奏又は口述を電気通信設備を用いて伝達すること(公衆送信に該当するものを除く。)を含むものとする。
8 この法律にいう「貸与」には、いずれの名義又は方法をもつてするかを問わず、これと同様の使用の権原を取得させる行為を含むものとする。
9 この法律において、第一項第七号の二、第八号、第九号の二、第九号の四、第九号の五若しくは第十三号から第十九号まで又は前二項に掲げる用語については、それぞれこれらを動詞の語幹として用いる場合を含むものとする。

(映画の著作物の著作者)
第十六条 映画の著作物の著作者は、その映画の著作物において翻案され、又は複製された小説、脚本、音楽その他の著作物の著作者を除き、制作、監督、演出、撮影、美術等を担当してその映画の著作物の全体的形成に創作的に寄与した者とする。ただし、前条の規定の適用がある場合は、この限りでない。

(著作者の権利)
第十七条 著作者は、次条第一項、第十九条第一項及び第二十条第一項に規定する権利(以下「著作者人格権」という。)並びに第二十一条から第二十八条までに規定する権利(以下「著作権」という。)を享有する。
2 著作者人格権及び著作権の享有には、いかなる方式の履行をも要しない。

(公衆送信権等)
第二十三条 著作者は、その著作物について、公衆送信(自動公衆送信の場合にあつては、送信可能化を含む。)を行う権利を専有する。
2 著作者は、公衆送信されるその著作物を受信装置を用いて公に伝達する権利を専有する。

第二十九条 映画の著作物(第十五条第一項、次項又は第三項の規定の適用を受けるものを除く。)の著作権は、その著作者が映画製作者に対し当該映画の著作物の製作に参加することを約束しているときは、当該映画製作者に帰属する。
2 専ら放送事業者が放送のための技術的手段として製作する映画の著作物(第十五条第一項の規定の適用を受けるものを除く。)の著作権のうち次に掲げる権利は、映画製作者としての当該放送事業者に帰属する。
一 その著作物を放送する権利及び放送されるその著作物について、有線放送し、自動公衆送信(送信可能化のうち、公衆の用に供されている電気通信回線に接続している自動公衆送信装置に情報を入力することによるものを含む。)を行い、又は受信装置を用いて公に伝達する権利
二 その著作物を複製し、又はその複製物により放送事業者に頒布する権利
3 専ら有線放送事業者が有線放送のための技術的手段として製作する映画の著作物(第十五条第一項の規定の適用を受けるものを除く。)の著作権のうち次に掲げる権利は、映画製作者としての当該有線放送事業者に帰属する。
一 その著作物を有線放送する権利及び有線放送されるその著作物を受信装置を用いて公に伝達する権利
二 その著作物を複製し、又はその複製物により有線放送事業者に頒布する権利

第二十九条 映画の著作物(第十五条第一項、次項又は第三項の規定の適用を受けるものを除く。)の著作権は、その著作者が映画製作者に対し当該映画の著作物の製作に参加することを約束しているときは、当該映画製作者に帰属する。
2 専ら放送事業者が放送のための技術的手段として製作する映画の著作物(第十五条第一項の規定の適用を受けるものを除く。)の著作権のうち次に掲げる権利は、映画製作者としての当該放送事業者に帰属する。
一 その著作物を放送する権利及び放送されるその著作物について、有線放送し、自動公衆送信(送信可能化のうち、公衆の用に供されている電気通信回線に接続している自動公衆送信装置に情報を入力することによるものを含む。)を行い、又は受信装置を用いて公に伝達する権利
二 その著作物を複製し、又はその複製物により放送事業者に頒布する権利
3 専ら有線放送事業者が有線放送のための技術的手段として製作する映画の著作物(第十五条第一項の規定の適用を受けるものを除く。)の著作権のうち次に掲げる権利は、映画製作者としての当該有線放送事業者に帰属する。
一 その著作物を有線放送する権利及び有線放送されるその著作物を受信装置を用いて公に伝達する権利
二 その著作物を複製し、又はその複製物により有線放送事業者に頒布する権利

第百十四条 著作権者等が故意又は過失により自己の著作権、出版権又は著作隣接権を侵害した者に対しその侵害により自己が受けた損害の賠償を請求する場合において、その者がその侵害の行為によつて作成された物を譲渡し、又はその侵害の行為を組成する公衆送信(自動公衆送信の場合にあつては、送信可能化を含む。)を行つたときは、その譲渡した物の数量又はその公衆送信が公衆によつて受信されることにより作成された著作物若しくは実演等の複製物(以下この項において「受信複製物」という。)の数量(以下この項において「譲渡等数量」という。)に、著作権者等がその侵害の行為がなければ販売することができた物(受信複製物を含む。)の単位数量当たりの利益の額を乗じて得た額を、著作権者等の当該物に係る販売その他の行為を行う能力に応じた額を超えない限度において、著作権者等が受けた損害の額とすることができる。ただし、譲渡等数量の全部又は一部に相当する数量を著作権者等が販売することができないとする事情があるときは、当該事情に相当する数量に応じた額を控除するものとする。
2 著作権者、出版権者又は著作隣接権者が故意又は過失によりその著作権、出版権又は著作隣接権を侵害した者に対しその侵害により自己が受けた損害の賠償を請求する場合において、その者がその侵害の行為により利益を受けているときは、その利益の額は、当該著作権者、出版権者又は著作隣接権者が受けた損害の額と推定する。
3 著作権者、出版権者又は著作隣接権者は、故意又は過失によりその著作権、出版権又は著作隣接権を侵害した者に対し、その著作権、出版権又は著作隣接権の行使につき受けるべき金銭の額に相当する額を自己が受けた損害の額として、その賠償を請求することができる。
4 著作権者又は著作隣接権者は、前項の規定によりその著作権又は著作隣接権を侵害した者に対し損害の賠償を請求する場合において、その著作権又は著作隣接権が著作権等管理事業法(平成十二年法律第百三十一号)第二条第一項に規定する管理委託契約に基づき同条第三項に規定する著作権等管理事業者が管理するものであるときは、当該著作権等管理事業者が定める同法第十三条第一項に規定する使用料規程のうちその侵害の行為に係る著作物等の利用の態様について適用されるべき規定により算出したその著作権又は著作隣接権に係る著作物等の使用料の額(当該額の算出方法が複数あるときは、当該複数の算出方法によりそれぞれ算出した額のうち最も高い額)をもつて、前項に規定する金銭の額とすることができる。
5 第三項の規定は、同項に規定する金額を超える損害の賠償の請求を妨げない。この場合において、著作権、出版権又は著作隣接権を侵害した者に故意又は重大な過失がなかつたときは、裁判所は、損害の賠償の額を定めるについて、これを参酌することができる。

参照判例

損害賠償請求控訴事件
大阪高等裁判所平成30年(ネ)第433号
平成30年6月29日第8民事部判決
原審 大阪地方裁判所平成29年(ワ)第7901号
口頭弁論終結日 平成30年5月11日

判旨PDF