定期借家権の権利変換

都市再開発法|定期建物賃貸借契約の有効性(借地借家法38条)|定期借家権の期日が権利変換前に到来する場合と権利変換期日後に到来する場合の違い

目次

  1. 質問
  2. 回答
  3. 解説
  4. 関連事例集
  5. 無料法律相談

質問

駅前で建物を賃借して飲食店を経営しています。賃貸契約書は「定期建物賃貸借」という形式になっていますが、2回ほど更新(再契約)して、5年ほど賃借しています。

このたび、再開発の話が進展して、再開発準備組合から正式組合に変わったと聞きました。しかし、大家からは、「あなたの権利は定期借家権だから再開発後の再入居はできない」と言われてしまいました。確かに現在の契約では、来年契約期限となり、新しいビルの竣工には間に合いません。

私の権利は再入居できない権利なのでしょうか。

回答

1 賃貸借契約書の名称が「定期建物賃貸借」となっていたとしても、必ず再入居ができないということはありません。契約の内容、再開発事業の進捗状況によって再入居ができるか、立ち退きの補償はどうなるのか、結論が異なります。

2 契約定期建物賃貸借契約は、当事者の特約により、「契約の法定更新ができない」「更新拒絶の正当事由が必要無い」という性質を有する特別の賃貸借契約です。転勤期間の不動産有効活用など日常生活上の必要性や、経済界からの要請によって、平成12年の借地借家法改正によって導入された制度です。

3 権利変換計画において、再開発ビルに借家権が与えられることになる従来建物の借家権者は住所氏名が記載され、地区外退出を選択し再開発ビルに借家権が与えられず金銭による補償が与えられることになる借家権者は住所氏名及び建物の特定と借家権の価額が記載されます。このように従来の権利が新しい権利や価額に評価されることを「借家権の権利変換」と呼ぶことができます。

4 形式的に「定期建物賃貸借契約書」という書類が作成されていたとしても、借地借家法38条所定の手続条件を満たさない場合は、更新が無いとする特約部分について法的に無効と判断される可能性があります。その場合は、通常の借家権として、権利変換計画に登載され、再開発後のビルに新たな借家権を取得することができます。

5 定期建物賃貸借契約における更新が無いとする特約が有効な場合でも、定期建物賃貸借の契約期限が、権利変換期日よりも後に設定されている場合は、定期建物賃貸借権も権利変換の対象となり、3~5年後に竣工する再開発ビルに借家権を取得することができます。借家権の内容は当事者間の協議で決めますが、協議が整わない場合は再開発組合が審査委員の過半数の同意を得、又は市街地再開発審査会の議決を経て裁定を行います。裁定に不服がある場合は、60日以内に裁判所に裁定変更の訴えを提起することができます。

解説

第1 定期建物賃貸借契約

平成12年の借地借家法改正により、定期建物賃貸借契約を締結することができるようになりました。建物賃貸借契約は、居住用にしても、事業用にしても、人々の生活や活動の基盤となる重要資産である不動産の賃貸借に関する契約でありますから、賃借人の生活や活動の保護のために、契約自由の原則が修正され、原則として期間満了しても当然には契約が終了せず、更新拒絶には制限が設けられていますが(借地借家法26、28、37条、強行規定)、転勤の間だけ臨時に自宅を貸したいというような日常生活上の要請や、不動産業界など経済界からの要請を受けて、一定の要件のもとに定期建物賃貸借の特約を締結できるよう法改正がなされたのです。

所轄庁である国土交通省の関連ページを御案内致しますので御参考になさって下さい。

国土交通省の解説ページ
国土交通省のパンフレット
国土交通省の定期建物賃貸借契約全般に関するQ&A
国土交通省の民間賃貸住宅の定期借家契約に関するQ&A
国土交通省の定期賃貸住宅標準契約書

定期建物賃貸借契約で通常の賃貸借契約に対する特約となっているのは、借地借家法26条(法定更新)と28条(更新拒絶の正当事由)の適用が排除されている部分です。通常の建物賃貸借契約のことを「普通借家契約」と言い、この賃借権のことを、「普通借家権」と言います。定期建物賃貸借の特約のある賃借権のことを、「定期借家権」と言います。

借地借家法

第26条(建物賃貸借契約の更新等)
第1項 建物の賃貸借について期間の定めがある場合において、当事者が期間の満了の一年前から六月前までの間に相手方に対して更新をしない旨の通知又は条件を変更しなければ更新をしない旨の通知をしなかったときは、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。ただし、その期間は、定めがないものとする。
第2項 前項の通知をした場合であっても、建物の賃貸借の期間が満了した後建物の賃借人が使用を継続する場合において、建物の賃貸人が遅滞なく異議を述べなかったときも、同項と同様とする。
第3項 建物の転貸借がされている場合においては、建物の転借人がする建物の使用の継続を建物の賃借人がする建物の使用の継続とみなして、建物の賃借人と賃貸人との間について前項の規定を適用する。

第28条(建物賃貸借契約の更新拒絶等の要件)建物の賃貸人による第二十六条第一項の通知又は建物の賃貸借の解約の申入れは、建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む。以下この条において同じ。)が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。

通常の建物賃貸借契約では、借地借家法26条1項で「法定更新」が規定されており、契約期間満了に際して当事者が何も意思表示しなければ、自動的に従前と同じ条件で更新されることになります。

定期借家権では、この「法定更新」がありませんので、期間満了により借家権が消滅し、賃借人は法的に退去しなければならない立場に置かれることになります。

また、家主側の都合で賃貸借契約の更新の機会に更新を拒絶する旨の通知を行うことがありますが、この場合は、普通借家権では、借地借家法28条で更新拒絶をすることについて「正当事由」を具備することが必要です。

しかし、定期借家権では、この「正当事由」の要件がありませんので、期間満了と事前通知の要件(借地借家法38条4項)を満たせば借家権は消滅し、賃借人は法的に退去しなければならない立場に置かれることになるのです。

第2 借家権の権利変換

初めに借家権が再開発事業においてどのように扱われるのか理解する必要があります。そのうえで、定期借家権の扱いが初めて理解されることになります。

都市再開発法の再開発事業は権利変換手続という方法で行われます(第1種市街地再開発事業)。これは再開発ビルの建て替えを円滑に進めるために、権利変換期日に、従来建物の所有権や、建物を目的とする権利が全て消滅し、建物所有権は施行者(再開発組合)に移転し、再開発ビルの竣工後に、権利変換計画に記載されたとおり、施工区域内の土地建物の所有者が、再開発ビルに土地建物の権利が与えられるとする、法的な仕組みです。

再開発事業は、開発事業の都市計画決定、施工認可、都市計画決定、権利変換計画の決定、権利変換期日、土地建物の明け渡しという手順で進みますが、権利変換計画の決定の前に従前の土地建物の権利者は地区外に転出するか再建築後の建物の権利を取得するか否かの申し出をすることになっています。借家権者もこの申し出をすることになり、地区外転居しないで再入居を求めるか地区外転居かによって、権利変換手続における借家権の扱いは2通りに分かれています。

1 借家権者が再入居を求めた場合

都市再開発法73条1項12号に、「施行地区内の土地(指定宅地を除く。)に存する建築物について借家権を有する者(その者が更に借家権を設定しているときは、その借家権の設定を受けた者)で、当該権利に対応して、施設建築物の一部について借家権を与えられることとなるものの氏名又は名称及び住所」と規定され、権利変換計画に記載されることになります。

また、同13号に、「前号に掲げる者に借家権が与えられることとなる施設建築物の一部」と規定され、権利変換計画に記載され、再入居先となる建物の区画が明記されることになります。従来の家主が権利変換を受けて再開発ビルの建物所有権を取得する場合には、借家権者は大家が取得した建物について借家権を取得します(都市再開発法77条5項)。従来の家主が、権利変換を希望せず補償金を受領して地区外退去する場合は、(都市再開発法77条5項但し書き)

しかし権利変換計画を見ただけでは、家賃や支払い期や敷金など、当該借家権の詳細は分からない形となっています。具体的な借家条件は、「当事者間の協議(都市再開発法102条1項)」「再開発組合の裁定(都市再開発法102条2項)」「裁定変更の訴え(都市再開発法102条6項)」によって決められます。

2 借家権者が借家権の取得を希望しない旨の申し出をした場合(退去の場合)

都市再開発法73条1項17号に「施行地区内の宅地(指定宅地を除く。)若しくはこれに存する建築物又はこれらに関する権利を有する者で、この法律の規定により、権利変換期日において当該権利を失い、かつ、当該権利に対応して、施設建築敷地若しくはその共有持分、施設建築物の一部等又は施設建築物の一部についての借家権を与えられないものの氏名又は名称及び住所、失われる宅地若しくは建築物又は権利並びにそれらの価額」と規定され、権利変換計画にこれらの事項が記載されることになります。

ここで注意しなければならないのは、この17号の「価額」がゼロと記載される場合もあるということです。

東京高等裁判所 平成27年11月19日判決

控訴人らは,本件建物部分の明渡しは不随意の明渡しであるから,本件借家権の価格の補償の要否を判断するに当たり,客観的な取引価格を問題とすること自体誤りであり,取引価格が存在しない限り借家権価額は0円であるとする原判決の法解釈は立法者意思にも反するものである旨主張する。

しかしながら,原判決は,借家権者が法87条2項により失う借家権の価額は,法80条1項において,所定の評価基準日における近傍同種の建築物に関する同種の権利の取引価格等を考慮して定める相当の価額と規定されていることから,この文言に従い,施行者が91条補償により補償すべき額は,借家権の取引価格を基礎として算定すべきものであるとしたものである。

また,甲33号証(衆議院建設委員会議事録)によれば,都市再開発法案審議における政府委員の答弁内容は,権利変換を希望しない借家人については,施行者が直接借家権を評価して補償すること,その借家権の評価に当たっては,近傍同種の借家権の取引に権利金授受の慣行があるかどうかといった形によって借家権価額の存在が認められる場合には,取引価格を中心に,賃貸借契約の諸条件を考慮して評価するというものであって(取引価格等の「等」とはこれらの考慮要素を指すものと解される。),近傍同種の借家権取引に照らして借家権価額が認められない消滅借家権についてまで,他の評価方法によって補償を行うことを明らかにしたものとは認め難いから,このような借家権について91条補償をしないことが立法者意思に反するものともいえない。

控訴人らの上記主張は,法91条の文言を離れて独自に解釈するものであり,採用することができない。

つまり、裁判所は、法71条3項の申し出(借家権の取得を希望しない旨の申し出)が、71条1項の申し出(自己の有する宅地、借地権若しくは建築物に代えて金銭の給付を希望する申し出)とは格別に異なる定め方をしていることと、取引実勢価格の認定を根拠として、借家権の取得を希望しなかった旧借家権者に対する補償額をゼロ円と裁定することも法に反しないと判断していることになります。

結局、現在の都市再開発法の条文と裁判所の判例を前提とすれば、「借家権の取得を希望しない旨の申し出(借家権消滅希望申出)」には、補償額がゼロ円となってしまうリスクが存在すると言わざるを得ません。

この申し出を検討する場合には、当該借家権の設定された区域において、具体的に借家権の流通価格を見積もりすることができるかどうか、慎重な検討が必要になります。弁護士として、この申し出を行うことに意見を求められた場合は、「一般論として、お勧めすることができない」という回答になってしまいます。

このように、都市計画区域内に借家権を有する者は、再入居するか、地区外退去するかにより、権利変換計画における取り扱いは異なることになりますが、いずれにしても権利変換計画書に記載され、権利変換期日に借家権を失い、これに対応して再開発ビルに相応の借家権を取得したり、退出補償を受けることになります。このように再開発に伴って借家権が変形することを「借家権の権利変換」と言います。

借家権の扱いについて説明しましたが、定期借家権の場合どのように扱われるのか、検討が必要です。定期借家権の場合期間が満了すると契約が終了するのが原則ですが、再開発事業は計画の段階から再開発ビルの竣工まで10年にわたるような長期の事業ですから、その途中で賃貸借期間が満了し、そもそも保護される権利があるのかという疑問が生じるからです。特に再開開発事業が具体化すると、立ち退きを前提として定期借家契約を締結することが多くみられることから、借家人の保護がどうなるのか、契約期間の満了と事業の進捗状況を踏まえながら明確にしておく必要があります。

第3 定期借家の特約が無効となる場合の、定期借家権の権利変換

定期借家の権利変換を検討する前に、定期借家契約として有効といえるのか、検討しておく必要があります。定期借家契約は、賃借人に重大な不利益がありますので、借地借家法所定の手続を踏まないと有効に契約成立させることはできません。具体的には、借地借家法38条2項で、次の手続が必要とされています(手続きに瑕疵があり違法であれば普通賃貸借になります)。

借地借家法38条2項 前項の規定による建物の賃貸借をしようとするときは、建物の賃貸人は、あらかじめ、建物の賃借人に対し、同項の規定による建物の賃貸借は契約の更新がなく、期間の満了により当該建物の賃貸借は終了することについて、その旨を記載した書面を交付して説明しなければならない。

これは「賃貸人が」「あらかじめ」「契約の更新が無く、期間の満了により賃貸借が終了することについて、その旨記載した書面を交付して説明」することが必要とされています。この要件について、いくつか判例がありますので、御紹介致します。いずれも定期借家契約の特約を無効と判断した判例です。

最高裁判所平成22年7月16日判決

しかしながら,原審の上記認定は是認することができない。その理由は,次のとおりである。

前記事実関係によれば,本件公正証書には,説明書面の交付があったことを確認する旨の条項があり,上告人において本件公正証書の内容を承認した旨の記載もある。

しかし,記録によれば,現実に説明書面の交付があったことをうかがわせる証拠は,本件公正証書以外,何ら提出されていないし,被上告人は,本件賃貸借の締結に先立ち説明書面の交付があったことについて,具体的な主張をせず,単に,上告人において,本件賃貸借の締結時に,本件賃貸借が定期建物賃貸借であり,契約の更新がなく,期間の満了により終了することにつき説明を受け,また,本件公正証書作成時にも,公証人から本件公正証書を読み聞かされ,本件公正証書を閲覧することによって,上記と同様の説明を受けているから,法38条2項所定の説明義務は履行されたといえる旨の主張をするにとどまる。

これらの事情に照らすと,被上告人は,本件賃貸借の締結に先立ち説明書面の交付があったことにつき主張立証をしていないに等しく,それにもかかわらず,単に,本件公正証書に上記条項があり,上告人において本件公正証書の内容を承認していることのみから,法38条2項において賃貸借契約の締結に先立ち契約書とは別に交付するものとされている説明書面の交付があったとした原審の認定は,経験則又は採証法則に反するものといわざるを得ない。

この判例によれば、賃貸人側が、定期借家契約であることを主張するには、法38条2項書面を交付して説明したことについて具体的に主張立証しなければ、これを認定して、特約の有効性を認定することはできないということになります。賃貸人が法38条2項の説明義務を立証することは簡単ではない場合があるということになります。

最高裁判所平成24年9月13日判決

しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。

期間の定めがある建物の賃貸借につき契約の更新がないこととする旨の定めは,公正証書による等書面によって契約をする場合に限りすることができ(法38条1項),そのような賃貸借をしようとするときは,賃貸人は,あらかじめ,賃借人に対し,当該賃貸借は契約の更新がなく,期間の満了により当該建物の賃貸借は終了することについて,その旨を記載した書面を交付して説明しなければならず(同条2項),賃貸人が当該説明をしなかったときは,契約の更新がないこととする旨の定めは無効となる(同条3項)。

法38条1項の規定に加えて同条2項の規定が置かれた趣旨は,定期建物賃貸借に係る契約の締結に先立って,賃借人になろうとする者に対し,定期建物賃貸借は契約の更新がなく期間の満了により終了することを理解させ,当該契約を締結するか否かの意思決定のために十分な情報を提供することのみならず,説明においても更に書面の交付を要求することで契約の更新の有無に関する紛争の発生を未然に防止することにあるものと解される。

以上のような法38条の規定の構造及び趣旨に照らすと,同条2項は,定期建物賃貸借に係る契約の締結に先立って,賃貸人において,契約書とは別個に,定期建物賃貸借は契約の更新がなく,期間の満了により終了することについて記載した書面を交付した上,その旨を説明すべきものとしたことが明らかである。そして,紛争の発生を未然に防止しようとする同項の趣旨を考慮すると,上記書面の交付を要するか否かについては,当該契約の締結に至る経緯,当該契約の内容についての賃借人の認識の有無及び程度等といった個別具体的事情を考慮することなく,形式的,画一的に取り扱うのが相当である。

したがって,法38条2項所定の書面は,賃借人が,当該契約に係る賃貸借は契約の更新がなく,期間の満了により終了すると認識しているか否かにかかわらず,契約書とは別個独立の書面であることを要するというべきである。

これを本件についてみると,前記事実関係によれば,本件契約書の原案が本件契約書とは別個独立の書面であるということはできず,他に被上告人が上告人に書面を交付して説明したことはうかがわれない。なお,上告人による本件定期借家条項の無効の主張が信義則に反するとまで評価し得るような事情があるともうかがわれない。

そうすると,本件定期借家条項は無効というべきであるから,本件賃貸借は,定期建物賃貸借に当たらず,約定期間の経過後,期間の定めがない賃貸借として更新されたこととなる(法26条1項)。

この判例によれば、定期建物賃貸借契約の特約を有効とするためには、賃貸人が契約書とは別個独立の書面を用いて特約について具体的に説明することが必要とされており、賃借人の個人的な認識とは関係なく、画一的に要件を満たすことが必要とされています。定期借家契約は例外的な取り扱いになりますので、法令要件が厳格に解釈されていると言えます。

東京地裁平成24年3月23日判決

(1)ア 前提事実(3)によれば,原告と被告らは,本件賃貸借契約をもって,法38条1項所定の定期建物賃貸借契約をしたと認められる。

イ ところで,法38条2項は,「前項の規定による建物の賃貸貸借契約をしようとするときは,建物の賃貸人は,あらかじめ,建物の賃借人に対し,同項の規定による建物の賃貸借は契約の更新がなく,期間の満了により当該建物の賃貸借は終了することについて,その旨を記載した書面を交付して説明しなければならない。」としているから,定期建物賃貸借契約の更新がないこととする定めが有効であるためには,賃貸人において,賃借人に対し,賃貸借契約締結前に,①締結される建物賃貸借契約が,同法38条1項の規定による定期建物賃貸借契約であること,②当該建物賃貸借契約は契約の更新がなく,期間の満了により契約が終了することを記載した書面を契約書とは別に交付するとともに,これを口頭で説明することを要すると解される(同法3項参照)。なお,原告は,「あらかじめ」といえるためには,十分な時間的余裕があることを要し,契約締結と同一の機会ではその要件を満たさないと主張するが,建物を賃借しようとする者が,賃貸人からの説明を受けた後に,理解が不十分であると考えれば,契約締結を控えることが可能であり,また,条文の文言上,特に限定はないから,契約と同一機会であっても,契約締結に時的に先立っていれば,「あらかじめ」に当たるというべきである。

(2)ア 前提事実(4)アのとおり,原告は,被告らに対して,本件説明書をいったん交付している。

イ そして,前提事実(4)イによれば,本件説明書は,上記(1)イ②の記載がされていることが認められるが,同①の記載については,「法38条2項の規定に基づく定期建物賃貸借」と記載するのみであって,記載が欠け又は誤った記載がされている。更に,同②の記載の関係でも,「法26条,28条及び29条1項の規定による契約の更新はない」として,更新に関する規定ではない同法29条が記載され,誤った又は意味が不明確な記載になっている。

ウ(ア) また,上記のように,賃貸借契約締結に先立って,契約書とは別に書面を交付して(最高裁平成21年(受)120号同22年7月16日第二小法廷判決・集民24号307頁参照),説明することが求められているのは,借家人が定期賃貸借制度の内容を十分に理解した上で契約することを担保するためであると解され,また,説明書面に,締結される建物賃貸借契約が,法38条1項の規定による定期建物賃貸借契約であることを記載すべきと解されること(上記(1)イ)に照らすと,説明書面を交付して行うべき説明は,締結される建物賃貸借契約が,一般的な建物賃貸借契約とは異なる類型の定期建物賃貸借契約であること,その特殊性は,同法26条所定の法定更新の制度及び同法28条所定の更新拒絶に正当事由を求める制度が排除されることにあるといった定期建物賃貸借という制度の少なくとも概要の説明と,その結果,当該賃貸借契約所定の契約期間の満了によって確定的に同契約が終了することについて,相手方たる賃借人が理解してしかるべき程度の説明を行うことを要すると解される。

(イ) ところが,原告が,被告らに対して行った説明は,Bを通じて行ったものは,本件説明書の条項の読み上げにとどまり,条項の中身を説明するものではなく,仮に条項内の条文の内容を尋ねられたとしても,六法全書を読んで下さいといった対応をする程度のものであったことが認められ(証人B(15,57頁)),その他の者を通じて行ったものは具体的にどのように行われたのか,証拠上明らかでない。

(ウ) そして,上記(イ)のBの説明は,一般的な賃借人において,定期建物賃貸借契約という制度の概要を理解できるものとはいえず,それにもかかわらず,Bから説明を受けた被告Y1及び被告Y2(証人B(1頁),被告Y1,被告Y2)においては,これが理解できたと考えられる特段の事情も認められない。 なお,被告Y1については,①原告との間で,平成16年11月ころ,賃貸借期間を同月1日から平成18年3月31日までとし,賃貸物件を本件建物の第28号区画とする定期建物賃貸借契約を締結した経験を有し,②それを理由に,本件賃貸借契約の際に,契約しなければ本件建物1の半分の返還を求めると言われた経験があることや,③ネットで定期建物賃貸借契約について調べ,借家人にとって不利な契約であるらしいとの認識を抱いていたことが認められる(被告Y1(12,13,15,29頁),乙1,19)。 しかし,①については,従前の定期建物賃貸借契約の担当者もBで(被告Y1本人(1,2頁)),同契約締結に先立つ説明が上記(イ)の程度を超えていたとは証拠上認められない。また,同契約後,平成18年3月31日が経過した後も,本件賃貸契約の賃貸物件である本件建物1に移転するまでの間,被告Y1が上記第28号区画の利用を継続していたこと(その間に新契約が締結されたかは証拠上明らかでない。)からして,被告Y1において,本件賃貸借契約締結以前に,定期建物賃貸借契約が,更新されることはなく,契約期間の満了によって確定的に終了するということを現実的に認識すべき状況もなかったことがうかがわれる。更に②③については,被告Y1は,第28号区画が定期建物賃貸借であったことを根拠に本件建物1の半分の返還を求められた際も定期建物賃貸借契約の効果であって法律上やむを得ないという認識に乏しく,そのまま使用を継続できていたことを根拠に憤慨していた様子(被告Y1本人(29頁))で,定期建物賃貸借契約という制度の概要を,正しく理解していたとは考えにくく,上記(イ)のBの説明程度で,被告Y1が,定期建物賃貸借契約という制度の概要を理解できたとは,やはりいえない。

(エ)a 被告Y3については,説明を行なうべき者が,B以外の者であった(証人B(1,2頁),被告Y3本人(6ないし9頁))ところ,仮に説明が行われたとしても,その具体的説明状況は証拠上不明であり,法38条2項で求められる説明がされたと認めるに足りない。 b 被告Y4について,証人Bは,B以外の者が行なったとする(証人B(1,2頁))ところ,仮に,B以外の者が説明を行なったとした場合,その具体的説明状況は証拠上不明である。また,被告Y4本人は,誰からも,本件賃貸借契約に先立って,本件説明書により説明を受けたことはないとしている。 すると,原告から被告Y4に,法38条2項で求められる説明がされたとは認めるに足りない。 c なお,甲5の1,2,甲6の1,2によれば,被告Y3及び被告Y4に係る本件説明書及び本件契約書の原告内での各管理番号を見ると,本件説明書の管理番号が本件契約書の管理番号よりも後の番号であることが認められ,原告が,被告Y3及び被告Y4から,本件説明書より先に,本件契約書を受領した可能性,ひいては,本件賃貸借契約の締結前に,法38条2項所定の説明が行われていない可能性がうかがわれるところ,この可能性を否定すべき,特段の主張・立証もない。

エ 上記イ及びウによれば,原告が,被告らに対し,本件賃貸借契約について,法38条2項所定の説明をしたと認めることはできず,原告と被告らの間の各本件賃貸借契約に係る契約の更新がないこととする旨の定めは,いずれも有効とは認められないから,各賃貸借期間の満了後,法26条により更新され,いまだ終了していないことになる。

これは下級審判例ですが、やはり、法38条2項の説明義務を厳格に解釈した裁判例となります。引用した判例でBと記載されているのは賃貸人会社の契約手続担当社員です。賃貸人法人担当者の説明が不十分であったり、不足している点があると、説明義務を果たしたことにはならない可能性があるということを示しています。法38条2項書面の条項の読み上げにとどまり,条項の中身を説明するものでは無い場合には、説明義務を果たしたことにはならないと認定される可能性があることを示しています。法38条2項の説明は実質的に行わなければならないと解釈されています。

例えば、仲介業者の担当社が、「定期という契約書ですが、再契約もできますから使用し続けることができますよ」などという誤解を与えるような説明を行っていた場合には、説明義務を果たしていないと認定されてしまう可能性が十分あることになります。

定期建物賃貸借契約が何回か更新(再契約)されていた場合は、全ての契約手続時に、この説明義務を果たしている必要があります。1度でも説明義務を果たしていない契約手続がありますと、その時点から普通賃貸借契約がスタートすることになります。

具体的な説明義務の手続について、国土交通省のQA集の説明がありますので、引用致します。

Q12. 賃貸人の仲介をしている宅地建物取引業者が、「重要事項説明」として、「定期借家契約を結ぶ前に書面を交付して行う説明」と同様の説明を行った場合は、賃貸人から賃借人への説明が行われたことになるのですか。

A12.「重要事項説明」は 仲介者としての宅地建物取引業者が行うものですが、これに対して、「定期借家契約を結ぶ前に書面を交付して行う説明」は賃貸人自らが行うものですので、それぞれ説明すべき方が異なります。したがって、「重要事項説明」を行っただけでは、「定期借家契約を結ぶ前に書面 を交付して行う説明」をしたことにはなりません。
なお、仲介者が賃貸人の代理人として「定期借家契約を結ぶ前に書面を交付して行う説明」をする権限を有する場合でも、宅地建物取引業者として行う「重要事項説明」とは説明すべき方が異なることに変わりはありませんから、仲介者は、それぞれの立場で、それぞれの説明を行う必要があります。

これを見ると、定期建物賃貸借を有効に成立させるには、一般的に行われている、不動産業者における重要事項説明とは別個の手続が必要であることが分かります。

以上の様な、定期建物賃貸借契約の締結に必要な法38条2項所定の条件を満たしていない場合、賃借人としては、「定期建物賃貸借の特約は無効であるので、当方の借家権は普通賃借権である」と主張できることになります。これを賃貸人と、再開発準備組合および再開発組合に内容証明郵便などで通知した場合、再開発の手続上は、当該賃借権は存続しているものとして取り扱われることになります(都市再開発法73条4項)。

都市再開発法73条4項 宅地又は建築物(指定宅地に存するものを除く。)に関する権利に関して争いがある場合において、その権利の存否又は帰属が確定しないときは、当該権利が存するものとして、又は当該権利が現在の名義人に属するものとして権利変換計画を定めなければならない。ただし、借地権以外の宅地(指定宅地を除く。)を使用し、又は収益する権利の存否が確定しない場合にあつては、その宅地の所有者に対しては、当該権利が存しないものとして、その者に与える施設建築物の一部等を定めなければならない。

この権利変換計画の記載を変更させるには(権利変換計画に記載された借家権を抹消するためには)、当事者が裁判外で合意して、その旨を共同して再開発組合に届出するか、権利の存否についての民事裁判が和解や判決確定により、借家権が消滅したことを法的に確定させることが必要となります。

また、定期借家契約の締結に際して、「当該物件は再開発区域内にあり、取り壊し予定となっており、再開発契約の妨げとなるので法的に定期借家契約でないと締結できない」など家主側から説明があった場合は、都市再開発法における権利変換手続(借家権消滅に関する都市再開発法87条1項)や明渡確保の手続(都市再開発法96条3項)に関して虚偽説明があったことになりますので、場合によっては定期借家特約の部分についてのみ、錯誤無効(民法95条)や詐欺取消(民法96条1項)の法的主張が可能な場合もあると考えることができます。

意思表示の一般規定に基づく法的な主張は一般的にハードルが高い主張とはなりますが、家主側の入居時の説明に不適切な部分が見られた場合(特に悪質であったと考えられる場合)には、これらの主張をすることも検討なさると良いでしょう。

第4 特約が有効である場合の、定期借家権の権利変換

次に、借地借家法38条2項の説明義務について当事者間で争いが無く、定期建物賃貸借契約が有効に成立している場合の借家権が権利変換手続きにおいてどのように扱われるのか、説明します。定期賃借権の契約期間と、権利変換期日の先後により、権利の取り扱いが異なることになります。

但し、借家権の権利変換における取り扱いについては判例の少ない分野となっており、どのように考えるか流動的な部分もあり、今後の判例動向を注視することが必要です。

1 定期賃借権の契約期限が、権利変換期日よりも前に到来する場合

この場合、権利変換が認められるかについては、判例等もなく結論としては争いがあると考えられます。定期借家契約の場合、契約期限に賃借権は消滅しますので、権利変換計画に賃借権が与えられる旨が記載されていたとしても、借家人は、権利変換期日に借家権がないことになり再開発ビルに賃借権を取得することはできないと考えることが出来ます。

借地借家法38条4項 第一項の規定による建物の賃貸借において、期間が一年以上である場合には、建物の賃貸人は、期間の満了の一年前から六月前までの間(以下この項において「通知期間」という。)に建物の賃借人に対し期間の満了により建物の賃貸借が終了する旨の通知をしなければ、その終了を建物の賃借人に対抗することができない。ただし、建物の賃貸人が通知期間の経過後建物の賃借人に対しその旨の通知をした場合においては、その通知の日から六月を経過した後は、この限りでない。

この論点について正面から判断した判例は見当たりません。都市再開発法と権利変換手続の制度趣旨を、従来の権利関係にできるかぎり変更を加えずに、円滑に建て替え手続を推進すると解釈すれば、権利変換計画の効力発生する権利変換期日前に、当事者間の従来の契約に従って権利が消滅するのであれば、権利変換計画に借家権が記載されているとしても、権利変換期日に、消滅した権利が復活して再度「権利変換される」と解釈することはできないことになります。

なぜ、消滅すべき権利が権利変換計画に記載されたのかと言いますと、権利変換計画を作成するための、従前権利の評価基準日が、事業計画の認可公告日から31日目の期日と法定されているからです(都市再開発法80条1項)。つまり、事業計画の認可公告日から31日目の時点で定期借家権が存続している場合は、権利変換期日までに定期借家権の契約期限が到来するとしても、権利変換計画には登載されることになるわけです。権利変換計画を作成するためには必ずいつの日かを基準日として設定しなければなりませんから、法はこれを事業計画認可公告の31日目と法定しているのです。

都市再開発法

第80条(宅地等の価額の算定基準)
第1項 第七十三条第一項第三号、第八号、第十六号又は第十七号の価額は、第七十一条第一項又は第四項(同条第五項において読み替えて適用する場合を含む。)の規定による三十日の期間を経過した日における近傍類似の土地、近傍同種の建築物又は近傍類似の土地若しくは近傍同種の建築物に関する同種の権利の取引価格等を考慮して定める相当の価額とする。

他方、都市再開発法の評価基準日の規定を、都市再開発手続において権利変換期日から建て替え終結まで当事者の権利関係を固定化して明確化する趣旨であると解釈すれば、当事者間の定期借家契約書で権利変換期日前に契約関係が終了することになっていたとしても、当事者間でも、再開発組合との関係でも、再開発の建て替え手続が終結するまで「権利関係が固定化」されたと考えることになりますので、権利変換期日前に契約期限が到来しても借家権は消滅せず、再開発ビルに借家権を取得して入居できる権利があると考える事になります。

この考え方によれば再入居できるということになり、退去に伴う都市再開発法97条の損失補償を受けることもできることになります。

このように権利変換評価基準日に期間が満了していないため権利変換計画には借家人として記載されているが、権利変換期日までには期間満了する定期借家権者が権利変換手続きの対象になるか否かは、現時点で確立した判例はなく権利の主張をする可能性が残されているところです。

2 定期賃借権の契約期限が、権利変換期日よりも後に到来する場合

この場合、権利変換期日に借家権は存続しておりますので、都市再開発法87条2項により権利変換されて従前の権利が消滅することになります。

都市再開発法87条(権利変換期日における権利の変換)
第1項 施行地区内の土地は、権利変換期日において、権利変換計画の定めるところに従い、新たに所有者となるべき者に帰属する。この場合において、従前の土地を目的とする所有権以外の権利は、この法律に別段の定めがあるものを除き、消滅する。
第2項 権利変換期日において、施行地区内の土地(指定宅地を除く。)に権原に基づき建築物を所有する者の当該建築物は、施行者に帰属し、当該建築物を目的とする所有権以外の権利は、この法律に別段の定めがあるものを除き、消滅する。ただし、第六十六条第七項の承認を受けないで新築された建築物及び施行地区外に移転すべき旨の第七十一条第一項の申出があつた建築物については、この限りでない。

借家権者は、都市再開発法97条の損失補償(転居費用、仮住居の家賃差額など)を受領して建物を退去し、数年後に竣工する再開発ビルに借家権を取得し、借家権者として再度入居することになります。都市再開発法87条2項では従前建物の賃借権は権利変換期日において消滅するとしか定められていませんが、権利変換計画で新しい建物の借家権に変換することが定められていることから、普通の借家権に変換することになります(都市再開発法73条1項)。定期賃貸借契約書の契約期限が再開発ビルの竣工前であっても、元来、定期借家権は権利変換処分により消滅しておりますので、権利変換手続により、建て替え後の再開発ビルに借家権を取得することになります。

定期借家権の存続状況を時系列で見ると次のようになります。

① 評価基準日(事業計画認可公告31日目)→権利変換される借家権の内容が確定する。

② 権利変換期日→借家権が消滅する。再開発ビル竣工後に権利変換により借家権を取得。

③ 定期借家契約の契約上の存続期限到来→上記②で借家権は消滅済みなので、何の効力も生じない。

④ 再開発ビル竣工、工事完了公告および権利取得通知(都市再開発法100条2項)

都市再開発法100条(工事の完了の公告等)
第2項 施行者は、施設建築物の建築工事が完了したときは、速やかに、その旨を、公告するとともに、第八十八条第二項又は第五項の規定により施設建築物に関し権利を取得する者に通知しなければならない。

この時系列を見れば分かる通り、「既に消滅している権利は消滅できない」という単純な理屈により、定期借家契約に基づく権利は、契約書上の期限には消滅しないことになります。定期借家契約に基づく権利は、権利変換期日に消滅し、再開発手続において、再開発ビルに新たに借家権を取得できる法的地位に移行することになるのです。

再開発ビルに再入居するときの借家契約の詳細は、当事者の協議によって決めるのが原則となりますが(都市再開発法102条1項)、工事完了公告までに当事者の協議が整わない場合は、再開発組合に対する裁定を申し立てることができます(都市再開発法102条2項、都市再開発法施行規則35条)。再開発組合の裁定は、審査委員の過半数の同意を得るか、又は市街地再開発審査会の議決を経て、決定されます。

この裁定に不服がある場合は、その裁定があつた日から60日以内に、裁定変更の訴えを提起することができます(都市再開発法102条6項)。

都市再開発法102条(借家条件の協議及び裁定)
第1項 権利変換計画において施設建築物の一部等が与えられるように定められた者と当該施設建築物の一部について第七十七条第五項本文の規定により借家権が与えられるように定められた者は、家賃その他の借家条件について協議しなければならない。
第2項 第百条第二項規定による公告の日までに前項の規定による協議が成立しないときは、施行者は、当事者の一方又は双方の申立てにより、審査委員の過半数の同意を得、又は市街地再開発審査会の議決を経て、次に掲げる事項について裁定することができる。この場合においては、第七十九条第二項後段の規定を準用する。
一号 賃借りの目的
二号 家賃の額、支払期日及び支払方法
三号 敷金又は借家権の設定の対価を支払うべきときは、その額
第3項 施行者は、前項の規定による裁定をするときは、賃借りの目的については賃借部分の構造及び賃借人の職業を、家賃の額については賃貸人の受けるべき適正な利潤を、その他の事項についてはその地方における一般の慣行を考慮して定めなければならない。
第4項 第二項の規定による裁定があつたときは、裁定の定めるところにより、当事者間に協議が成立したものとみなす。
第5項 第二項の裁定に関し必要な手続に関する事項は、国土交通省令で定める。
第6項 第二項の裁定に不服がある者は、その裁定があつた日から六十日以内に、訴えをもつてその変更を請求することができる。
第7項 前項の訴えにおいては、当事者の他の一方を被告としなければならない。

都市再開発法施行規則35条(借家条件の裁定手続)
第1項 法第百二条第二項(法第百十八条の二十二第二項において準用する場合を含む。)の裁定の申立てをしようとする者は、別記様式第十六の裁定申立書を施行者に提出しなければならない。
第2項 施行者は、裁定前に当事者の意見をきかなければならない。
第3項 裁定は、文書をもつてし、かつ、その理由を附さなければならない。
第4項 施行者は、裁定書の正本を当事者双方に送付しなければならない。

この都市再開発法102条2項の裁定では、「賃借りの目的」、「家賃の額、支払期日及び支払方法」、「敷金又は借家権の設定の対価を支払うべきときは、その額」の3点について決められますが、「定期借家契約の特約の有無」については、裁定の対象とはなっていませんので、この点については、別途、当事者間の協議か、または、当事者間の確認訴訟において権利関係を確定させる必要があります。

借家人としては、従前建物の賃借時には建物の建て替えや再開発の必要があったので、定期建物賃貸借の特約があったが、今回は新たに建て替えされた建物を目的とするので、定期の特約は不要であると主張すべきことになります。

いずれにしても、都市再開発法には「定期建物賃貸借」の取り扱いについて一切明記されていることはありませんので、当事者間の協議が重要になってきますし、今後の裁判例の蓄積や将来の法改正が待たれるところです。御心配な点があれば、再開発手続に経験のある弁護士に御相談なさると良いでしょう。

以上

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