迷惑防止条例事件における勾留阻止手続

刑事|痴漢事件における勾留阻止手続|対策|近時裁判所の動向

目次

  1. 質問
  2. 回答
  3. 解説
  4. 関連事例集
  5. 参考条文

質問:

都内在住の会社員・31歳です。本日、都内の会社から帰宅中の電車内で目の前にいた女性の臀部をスカートの外側から触る痴漢行為をしてしまい、女性に腕を掴まれ、次の停車駅で一緒に降りるように言われました。私は、女性に言われる通りホームに降りましたが、女性が駅員の助けを求めている一瞬の隙を突いて、その場から離れようと改札に向かって駆け出しました。その際、私の鞄を掴んでいた女性の腕を振りほどこうとして、誤って鞄を落としてしまい、中身がホームに飛び散る状態となりましたが、無我夢中でそのまま走って帰ってきてしまいました。冷静になって考えてみれば、鞄の中には私の住所と氏名が記載してある手帳が入っており、犯人が私であることは容易に分かってしまうと思います。私は警察に逮捕されるのを待つ他ないのでしょうか。今から何かできることがないか、ご相談させて下さい。

回答:

1. あなたが女性の臀部をスカートの外側から触った行為は、東京都のいわゆる迷惑防止条例に違反する犯罪行為であり、その法定刑は6月以下の懲役又は50万円以下の罰金とされています。もっとも、初犯の場合であれば、30万円程度の罰金刑が処分相場です。さらに弁護人を通じて被害者と示談が成立した場合であれば、殆どのケースで不起訴処分となる犯罪類型です。不起訴処分になればもちろん前科にはなりません。

2. 本件では、女性ないし駅員が警察に通報し、所管の警察が迷惑条例違反事件として捜査を開始している可能性が非常に高いと考えられ、犯人の特定も容易であることから、既にあなたが被疑者として特定されていることを前提に対応を検討する必要があります。そして、本件では実際に犯行現場から逃亡しているという事情がありますので、捜査機関による身柄拘束(逮捕、勾留)の危険性が高いと考えられ、これを回避するための準備、活動を尽くす必要があります。警察への出頭、弁護人の選任、被害者の示談の準備等の具体的対応方法について、解説で述べていますので、ご参照ください。

3. 数年前までは、痴漢事案でも、被疑者が犯行を否認している、犯行を認めていたとしても被害者供述と重要な部分で食い違いがある、被疑者が逃亡を図ろうとしていた、等の事情があると、高い確率で検察官から勾留請求がなされ、実際に勾留が認められてしまうケースが多々見受けられました。しかし、近時の勾留実務の動向として、こうしたケースを含め、痴漢事案における勾留は原則的に認めない運用が定着してきています。このことは、勾留請求に先行して被疑者が通常逮捕されている(逮捕状発付の可否の審査の時点で一度司法判断を経て身柄拘束が許容されている)場合であっても同様であり、筆者が経験したところでも、痴漢の容疑で通常逮捕された事案であっても、弁護人として十分な対応を尽くすことで、裁判官によって勾留決定がされないばかりか、そもそも検察官が勾留請求を行わない(断念する)ケースすら見られるようになってきています。

4. こうした近時の痴漢事案における勾留判断の傾向を踏まえれば、ご相談のケースでも然るべき対応を尽くすことで、警察が逮捕状の請求を断念し、在宅のままの捜査とする可能性も十分考えられるように思います。万が一、警察が既に逮捕状の発付を得ており、あなたの逮捕に踏み切ったとしても、送検のタイミングで上記各証拠資料を提出した上、弁護人に交渉してもらうことで、検察官による勾留請求を食い止められることも十分考えられるでしょう(その場合、あなたは最大でも3日間で釈放されることになります)。結局のところ、警察が現に逮捕状を取得しているか否かにかかわらず、速やかに弁護人を選任した上で身柄拘束回避のための準備を進めることが、身柄拘束期間の最小化、ひいては回避の上で最も効果的な対応ということができるでしょう。速やかに信頼できる弁護士にご相談されることをお勧めいたします。

5. 迷惑防止条例違反・身柄解放手続きに関する関連事例集参照。

解説:

1.(はじめに)

あなたが女性の臀部をスカートの外側から触った行為は、犯行場所が都内であることを前提とすれば、東京都のいわゆる迷惑防止条例(正確には「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」といいます。)に違反する犯罪行為です。あなたが今回行った痴漢行為の法定刑は、6月以下の懲役又は50万円以下の罰金とされていますが(同条例8条1項2号、5条1項)、初犯であれば、略式起訴された上、30万円程度の罰金刑となることが通常です。

しかし、本件では、刑事処分もさることながら、以下で述べるとおり、捜査機関による身柄拘束(逮捕、勾留)の危険性が高いと考えられるため、かかる身柄拘束処分を回避するための対応を尽くす必要があります。

2.(刑事手続の見通し)

本件では、女性が電車内で明確に痴漢の被害を訴えており、あなたが落とした手帳等により犯人の特定も容易であることから、女性ないし駅員が警察に通報し、所管の警察が迷惑条例違反事件として捜査を開始している可能性が非常に高いといえるでしょう。警察としては、まずは女性の被害状況等についての供述調書を作成した上、現場に遺留されたあなたの鞄と内容物を収集し、あなたを痴漢事件の被疑者として特定していると考えられ、次いであなたを被疑者として取調べようとするものと考えられます。この段階で、警察としては、あなたを逮捕(通常逮捕)することを検討するはずです。

警察が被疑者を逮捕しようとする場合、まず被疑者の供述を聴取し、その内容を踏まえて犯人性に問題がないことや刑事訴訟法上逮捕に要求される要件を満たしていることを確認した上で逮捕するケースと、初めから逮捕状を取得して、被疑者を逮捕した上で取調べを行うケースがあり得ます。本件でも、いずれの展開も考え得るところであり、仮にあなたに対する警察からの最初の連絡が任意の事情聴取を要請するものであったとしても、あなたが女性に痴漢を指摘された際、実際に逃亡を図り、これを遂げているという事情のもとでは、取調べ後に逮捕される可能性が高い状況に変わりはありません。

刑事訴訟法上、被疑者を逮捕するためには、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由(逮捕の理由)の他、明らかに逮捕の必要がない(被疑者の年齢及び境遇並びに犯罪の軽重及びその態様その他諸般の事情に照らし、被疑者が逃亡するおそれがなく、かつ、罪証隠滅するおそれがないこと等。刑事訴訟規則143条の3)とはいえないこと(逮捕の必要性)が必要とされていますが(刑事訴訟法199条2項)、あなたのケースでは、現場の遺留物から逮捕の理由が存在することは明らかであり、また、現に逃亡していることから、このままでは逮捕の必要性もある(明らかに逮捕の必要がないとはいえない)と判断されることになるのです。

逮捕後は、48時間以内に警察から検察官に身柄送致(送検)された上、送検から24時間以内に、検察官において、裁判官に対して勾留請求を行うか否かが検討されることになります(刑事訴訟法203条1項、205条1項・2項)。勾留とは逮捕に引き続き行われる比較的長期間の身柄拘束処分のことをいい、検察官が勾留請求を行い、これが認められた場合、原則10日間(刑事訴訟法208条1項)、検察官が起訴・不起訴の決定にあたって追加で取調べや証拠収集をする必要があると判断した場合、さらに10日間身柄拘束が続くことになります(刑事訴訟法208条2項)。

被疑者が勾留された場合、検察官は上記勾留期間内に捜査の結果を踏まえて終局処分(起訴、不起訴)の決定をすることになります。

3.(痴漢事案における勾留判断の傾向)

もっとも、近時の勾留実務の動向として、痴漢事案における勾留の是非については、裁判官が要件の審査を厳格に行う傾向があります。数年前までは、痴漢事案でも、被疑者が犯行を否認している、犯行を認めていたとしても被害者供述と重要な部分で食い違いがある、被疑者が逃亡を図ろうとしていた、等の事情があると、高い確率で検察官から勾留請求がなされ、実際に勾留が認められてしまうケースが多々見受けられました。刑事訴訟法上、被疑者を勾留するためには(1)被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があること(刑事訴訟法207条1項、60条1項柱書)、(2)被疑者に住所不定、罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由、逃亡すると疑うに足りる相当な理由のいずれかの事情があること(これらを合わせて「勾留の理由」といいます。刑事訴訟法207条1項、60条1項各号)、(3)諸般の事情に照らして「勾留の必要性」があること(刑事訴訟法207条1項、87条1項)の3つをそれぞれ充足している必要がありますが、これらのケースでは、罪証隠滅のおそれや逃亡のおそれ、勾留の必要性が認定できる、というのが勾留判断の根拠とされてきました。

しかし、近時では、たとえ被疑者が犯行を全面的に否認しているようなケースであっても、裁判官によって勾留請求が却下され、即日釈放されるケースが多く出てきており、一昔前の運用とは有意な差異が認められるように思われます。このことは、勾留請求に先行して被疑者が通常逮捕されている場合であっても同様です。

通常逮捕の場合、令状なしでの身柄拘束が認められている現行犯逮捕の場合と異なり(刑事訴訟法213条)、逮捕状発付の可否の審査の時点で一度司法判断を経て、身柄拘束が許容されてしまっているため、逮捕の要件と重なる部分が大きい勾留の要件の有無の判断においても、特段の事情がない限り、逮捕時の判断が踏襲され易い、というイメージをかつて筆者も持っていました。しかし、近時、筆者が経験したところで言っても、痴漢の容疑で通常逮捕された事案であっても、弁護人として十分な対応を尽くすことで、裁判官によって勾留決定がされないばかりか、そもそも検察官が勾留請求を行わない(断念する)ケースすら見受けられるようになってきています(ただし、あくまで必要な対応を尽くした場合の話であって、何ら必要な活動をせずに漫然と状況放置したような場合はこの限りではありません。)。これは、勾留の要件、特に勾留の必要性についての司法の捉え方に変化が出てきていることによるものと考えられます。

勾留の必要性は、被疑者の身柄を拘束しなければならない積極的な必要性(公的な利益)とその拘束によって被疑者が被る不利益、苦痛、弊害等の比較考量によって判断されますが、初犯であれば罰金30万円程度が相場とされている痴漢事案の起訴価値と、最大で20日間にも及ぶ身柄拘束に伴う肉体的、精神的苦痛の大きさや、欠勤が長期化することで職場での懲戒解雇等の処分が予想される等、被疑者のみならずその家族の生活にまで重大な影響が及ぶこと等を比較考量した場合の勾留の不当性、不合理性(これまで同種事案の弁護人が声を大にして訴え続けていたことです。)について、ようやく裁判所の理解が追いついてきたものと評価することができるでしょう。

4.(身柄拘束の回避に向けた活動)

とはいえ、本件では、あなたが実際に現場を離れてしまっているという事情は、逮捕の必要性の判断の上でも勾留の理由や必要性の判断の上でも、大きなマイナスと言わざるを得ません。かかる状況の下で身柄拘束を回避するためには、捜査機関が逮捕や勾留を思い止まる程度にまで逮捕の必要性、勾留の必要性を低下させるような事情を事後的に作り出す活動が不可欠となってきます。具体的には、弁護人の助力の下、以下に挙げるような対応が最低限必要といえるでしょう。

まずは、所管の警察署に自発的に出頭することが必須といえるでしょう。現場を逃亡したことによって逃亡のおそれが高まっているのだとすれば、事後的にではあれ、逃亡する意思がないことを態度として示しておくことで、逃亡のおそれを低下させておく必要があります。当然のことながら、逃亡のおそれの程度は逮捕の必要性や勾留の必要性の程度にも影響することになります。そして、出頭する際には、今後捜査機関から出頭要請があった際には必ずこれに応じる旨の誓約書や、家族等の身元引受書(あなたに対する監督等を誓約する書面)を併せて準備し、提出しておくことが望ましいでしょう。また、あなたが正社員の地位にあることや扶養家族がいることは、逃亡の動機に乏しいことを示すものとして、逮捕や勾留の必要性を低下させる事情となりますので、あなたの身分関係が分かる資料も準備しておくとよいでしょう。

警察署への出頭後は事情聴取ないし被疑者としての取り調べを受けることになると思われますが、その際には、犯行状況や犯行に至った動機、経緯、犯行後の状況や逃走に至る経緯、逃走時の状況等に至るまでありのままを述べることが重要です。自らの罪を認め、捜査に協力的姿勢を示していることは逃亡の主観的可能性の存在と相反するものであり、逮捕や勾留の必要性を低下させる事情となります。

また、痴漢事案においては、被害者に対する謝罪(実際には弁護人を通しての謝罪文の交付)と被害弁償(示談)の準備があることを示しておくことが身柄拘束回避の上で非常に有効です。痴漢事案の処分相場が罰金30万円程度であることは前述したとおりですが、これはあくまで示談等の必要な活動を何ら行わずにいた場合のことであって、実際には、弁護人を通して被害者と示談が成立した事案においては、ほとんどが不起訴処分となり、前科が付くことなく刑事手続終了となっています。すなわち、示談のための準備(示談金の準備、謝罪文の作成等)によって、示談成立による不起訴処分の可能性が高く、刑事処罰を恐れて逃亡する動機が欠けるという意味で、逃亡のおそれ、逮捕や勾留の必要性が認められないことを示すことができるのです。併せて、被害者に対する働きかけ等による罪証隠滅のおそれが欠けるという方向からの逮捕や勾留の必要性の低下を示す事情として、被害者に対して接近、接触しないことや、本件の現場となった路線を当面の間利用しないこと等を誓約する文書を提出しておくとより効果的でしょう。

これらの準備を尽くすことで、仮に逮捕状や勾留状を請求したとしても、逮捕や勾留の必要性が不十分であるとして却下される蓋然性が高いことを示すことで、捜査機関に身柄拘束手続を執ることを思い止まらせることが重要です。上述した近時の痴漢事案における勾留判断の傾向を踏まえれば、ご相談のケースでも然るべき対応を尽くすことで、警察が逮捕状の請求を断念し、在宅のままの捜査とする可能性も十分考えられるように思います。

万が一、警察が既に逮捕状の発付を得ており、あなたの逮捕に踏み切ったとしても、逮捕状発付にあたっての裁判官の判断は、あくまで捜査機関の提出証拠のみに基づいたもの(あなたに有利な上記各証拠資料の存在が全く考慮されることなく判断されたもの)に過ぎず、送検のタイミングで上記各証拠資料を提出した上、弁護人に交渉してもらうことで、検察官による勾留請求を食い止められることも十分考えられます。その場合、あなたは最大でも3日間で釈放されることになります。結局のところ、警察が現に逮捕状を取得しているか否かにかかわらず、速やかに弁護人を選任した上で身柄拘束回避のための準備を進めることが、身柄拘束期間の最小化、ひいては回避の上で最も効果的な対応ということができるでしょう。

5.(おわりに)

以上のとおり、本件は必要な対応を尽くした場合とそうでない場合とで、身柄拘束手続の見通しが全く異なってきます。何時警察から呼び出しを受けたり逮捕されたりするか分からない状況に不安に感じていることとは思いますが、何もせずにいたところで状況が改善することはあり得ず、かえって時間の経過に伴って逃亡のおそれや逮捕の必要性を高める結果となり、身柄拘束の危険性を高めるだけです。したがって、本件であなたが採り得る現実的な選択肢としては、上述したとおりの身柄拘束回避策を尽くす以外に考えられないでしょう。

なお、本件では、身柄拘束の回避もさることながら、刑事処分の回避に向けた対応も必須の活動となってきます。上述したとおり、痴漢事案においては、被害者と示談を成立させることができれば、殆どのケースで不起訴処分となっていますので、本件でも弁護人を通じた示談交渉の中で真摯な謝罪と反省の姿勢を示すことができれば、不起訴処分を獲得できる(前科が残らない形で刑事手続終了となる)可能性も十分見込まれます。速やかに信頼できる弁護士にご相談されることをお勧めいたします。

以上

関連事例集

Yahoo! JAPAN

※参照条文

公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例(東京都)

第5条(粗暴行為の禁止)

1項 何人も、人に対し、公共の場所又は公共の乗物において、人を著しくしゆう恥させ、又は人に不安を覚えさせるような卑わいな言動をしてはならない。

第8条(罰則)

1項 次の各号のいずれかに該当する者は、六月以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

2 第5条第1項の規定に違反した者

刑事訴訟法

第六十条 裁判所は、被告人が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がある場合で、左の各号の一にあたるときは、これを勾留することができる。

一 被告人が定まつた住居を有しないとき。

二 被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。

三 被告人が逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとき。

第八十七条 勾留の理由又は勾留の必要がなくなつたときは、裁判所は、検察官、勾留されている被告人若しくはその弁護人、法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族若しくは兄弟姉妹の請求により、又は職権で、決定を以て勾留を取り消さなければならない。

第百九十九条 検察官、検察事務官又は司法警察職員は、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があるときは、裁判官のあらかじめ発する逮捕状により、これを逮捕することができる。ただし、三十万円(刑法 、暴力行為等処罰に関する法律及び経済関係罰則の整備に関する法律の罪以外の罪については、当分の間、二万円)以下の罰金、拘留又は科料に当たる罪については、被疑者が定まつた住居を有しない場合又は正当な理由がなく前条の規定による出頭の求めに応じない場合に限る。

○2 裁判官は、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があると認めるときは、検察官又は司法警察員(警察官たる司法警察員については、国家公安委員会又は都道府県公安委員会が指定する警部以上の者に限る。以下本条において同じ。)の請求により、前項の逮捕状を発する。但し、明らかに逮捕の必要がないと認めるときは、この限りでない。

第二百三条 司法警察員は、逮捕状により被疑者を逮捕したとき、又は逮捕状により逮捕された被疑者を受け取つたときは、直ちに犯罪事実の要旨及び弁護人を選任することができる旨を告げた上、弁解の機会を与え、留置の必要がないと思料するときは直ちにこれを釈放し、留置の必要があると思料するときは被疑者が身体を拘束された時から四十八時間以内に書類及び証拠物とともにこれを検察官に送致する手続をしなければならない。

第二百五条 検察官は、第二百三条の規定により送致された被疑者を受け取つたときは、弁解の機会を与え、留置の必要がないと思料するときは直ちにこれを釈放し、留置の必要があると思料するときは被疑者を受け取つた時から二十四時間以内に裁判官に被疑者の勾留を請求しなければならない。

○2 前項の時間の制限は、被疑者が身体を拘束された時から七十二時間を超えることができない。

第二百七条 前三条の規定による勾留の請求を受けた裁判官は、その処分に関し裁判所又は裁判長と同一の権限を有する。但し、保釈については、この限りでない。

第二百八条 前条の規定により被疑者を勾留した事件につき、勾留の請求をした日から十日以内に公訴を提起しないときは、検察官は、直ちに被疑者を釈放しなければならない。

○2 裁判官は、やむを得ない事由があると認めるときは、検察官の請求により、前項の期間を延長することができる。この期間の延長は、通じて十日を超えることができない。

第四百六十一条 簡易裁判所は、検察官の請求により、その管轄に属する事件について、公判前、略式命令で、百万円以下の罰金又は科料を科することができる。この場合には、刑の執行猶予をし、没収を科し、その他付随の処分をすることができる。

刑事訴訟規則

(明らかに逮捕の必要がない場合)

第百四十三条の三 逮捕状の請求を受けた裁判官は、逮捕の理由があると認める場合においても、被疑者の年齢及び境遇並びに犯罪の軽重及び態様その他諸般の事情に照らし、被疑者が逃亡する虞がなく、かつ、罪証を隠滅する虞がない等明らかに逮捕の必要がないと認めるときは、逮捕状の請求を却下しなければならない。