新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.1740、2017/01/18 15:42 https://www.shinginza.com/saikaihatsu.htm

【民事、再開発、マンション建て替え円滑化法105条1項、同5条2項および同45条1項】

マンション建替え円滑化法105条1項による容積率の割増し、個人施行方式による建替え


質問:
私は築50年のマンションの管理組合の理事をしています。この度、マンションの耐震補強の話が持ち上がり、補強した場合に掛かる費用と、建て替えした場合に掛 かる費用などを比較検討してきましたが、委託している管理会社の親会社である不動産デベロッパー会社より、「建設費負担なしで従前組合員の床面積1.0倍以 上。建て替え期間(4年間)の賃料相当額提供。」という条件で当該デベロッパーを参加組合員に選定し、個人施行方式で建て替えさせて貰えないか、という提案が 来ました。当該マンションは容積率の限度一杯に建てられており、デベロッパーに等価交換で売却できるような容積率の余裕はありません。本当にそのような建て替 え計画が可能なのでしょうか。また、「個人施行方式」とはどういう意味でしょうか。



回答:

1、マンション建て替え円滑化法の手続を用いて建て替え手続する場合、同条105条1項の特例を適用することができ、都市計画図に記載された、いわゆる「基 準容積率」に対して最大75パーセント割増しを受けることができます。この割増しされた容積率をデベロッパーに売却することにより、建設費用の負担無く建て替 えをすることができる場合があります。

2、当該マンションの建て替えにおいて、容積率の緩和により従来の建物より大きな建物の建築が可能となり、増加した建物についてデベロッパーに売却することに なりますが、デベロッパーに帰属される建物(保留床と言います)の面積は、実態上、管理組合と参加組合員の間の容積率の売買に他なりません。保留床をどのくら い与えるかということは、売買条件となり当事者の自由交渉により定めることができます。そして、当該マンションの底地の地価状況、建築費予算額によっては、 「建設費負担なしで、権利床(旧建物の区分所有者が取得する新建物)還元率100パーセント。更に4年間の賃料補助」という条件提示があったとしても、更に有 利に交渉することができる場合もあります。例えば、「建設費負担なしで、権利床110パーセント。更に4年間の賃料補助」という条件も有り得るところです。理 事会で意思統一して、権利床の還元率について、デベロッパーと交渉されることをお勧め致します。

3、なお、参加組合員を選定するタイミングは、正式な建替組合設立前の、従前マンションの管理組合における「建替え推進決議」後で、「建替え決議」前に行われ ることが多くなっています。参加組合員候補選定決議の決議案を作成するための、候補者選定方法として、プロポーザル方式(技術提案書競技方式)や、コンペ方式 (設計競技方式)などがあります。早い段階で、権利床の還元率を意識して、交渉を開始すると良いでしょう。従前マンションの販売元系列のデベロッパーに拘る必 要はありません。

4、個人施行方式は、組合施行方式と並ぶマンション建替え円滑化法による建て替えの手法で、行政庁に対する事業計画認可申請や、権利変換計画認可申請などを、 組合ではなく、区分所有者の全会一致決議により区分所有者から指定された、特定の組合員(参加組合員も含む)が手続を行う方法です。区分所有者全員から手続を 一任される形になりますので、組合施行方式に比べて、最初の同意手続以外の場面で、区分所有者の意見が反映されにくい懸念があります。再建築に関して各区分所 有者の意思を反映させたいということであれば、個人施行方式は回避された方が良いでしょう。以上の点に関し法的知識が不足するようであれば専門的な弁護士と相 談、協議してください。

5、都市再開発法、マンション円滑化法関連事例集1701 番1684番1676 番1649番1633 番1512番1490 番1455番1448 番1122番参照。


解説:

1、容積率の割増について

 マンションの建替え等の円滑化に関する法律(以下マンション建替円滑化法)の手続を用いて建て替え手続する場合、同条105条1項の特例を適用することが でき、都市計画図に記載された、いわゆる「基準容積率」から最大75パーセント割増しを受けることができます。マンション建替え円滑化法105条1項が、各地 方自治体に容積率の緩和について権限を与え、各自治体が容積率緩和に関する基準(要綱など)を策定して、個別マンションの容積率を緩和するという仕組みになっ ています。

マンション建替え円滑化法第105条(容積率の特例)
第1項 その敷地面積が政令で定める規模以上であるマンションのうち、要除却認定マンションに係るマンションの建替えにより新たに建築されるマンションで、特 定行政庁が交通上、安全上、防火上及び衛生上支障がなく、かつ、その建ぺい率(建築面積の敷地面積に対する割合をいう。)、容積率(延べ面積の敷地面積に対す る割合をいう。以下この項において同じ。)及び各部分の高さについて総合的な配慮がなされていることにより市街地の環境の整備改善に資すると認めて許可したも のの容積率は、その許可の範囲内において、建築基準法第五十二条第一項から第九項まで又は第五十七条の二第六項の規定による限度を超えるものとすることができ る。

※参考URL、東京都マンション建替法容積率許可要綱の策定について
http://www.metro.tokyo.jp/INET/KEIKAKU/2015/03/70p3u500.htm

※参考文書、東京都マンション建替法容積率許可要綱
http://www.metro.tokyo.jp/INET/KEIKAKU/2015/03/DATA/70p3u500.pdf

※東京都マンション建替法容積率許可要綱抜粋
>割増容積率の限度は、計画敷地が存する区域により、次の表に定める数値(以下「割増容積率の最高限度」という。)を超えることができない。

>区域割増容積率の最高限度
>環状第七号線の内側の区域---基準容積率の 0.75 倍又は 300%のいずれか低い数値
>上欄以外の特別区の区域---基準容積率の 0.5 倍又は 250%のいずれか低い数値
>多摩の核都市及び都市基盤の整備された区域---基準容積率の 0.5 倍又は 200%のいずれか低い数値
>なお、割増し後の容積率は 1,000 パーセントを超えることはできない。

この割増しされた容積率をデベロッパーに売却することにより、建設費用の負担無く建て替えをすることができる場合があります。

 このような容積率割増しの制度趣旨は、マンション建替え円滑化法全体の制度趣旨と基本的に同じです。大規模災害や建築技術の進歩を受けて更新された建築基準 法の耐震基準に、既存の建物を建て替えすることにより適合させるようにして、地域全体の防災機能を高め、国民生活の安全と国民経済の発展に寄与しようとする趣 旨です。

※マンション建替え円滑化法第1条(目的)
この法律は、マンション建替事業、除却する必要のあるマンションに係る特別の措置及びマンション敷地売却事業について定めることにより、マンションにおける良 好な居住環境の確保並びに地震によるマンションの倒壊その他の被害からの国民の生命、身体及び財産の保護を図り、もって国民生活の安定向上と国民経済の健全な 発展に寄与することを目的とする。


2、容積率の割増と建築費について

 当該マンションの建て替えにおいて、建築費の負担が問題となりますが、建築費をデベロッパーが負担し、その対価としてデベロッパーが新建物の一部を取得す るという方法が行われます。等価交換の一種であり、デベロッパーに帰属される保留床の面積は、実態上、管理組合と参加組合員の間の容積率の売買に他なりませ ん。割増し容積率で、建設費・事業費の全てを賄うことができる場合は、次の様な計算式が成り立ちます。

基準容積率+円滑化法105条1項の割増し容積率 = 区分所有者の権利床+参加組合員の保留床

 権利床と保留床の割合を決めるのは容積率の売買条件であり、当事者の自由交渉により定めることができます。そして、当該マンションの底地の地価状況によって は、「建設費負担なしで、権利床還元率100パーセント。更に4年間の賃料補助」という条件提示があったとしても、更に有利に交渉することができる場合もあり ます。例えば、「建設費負担なしで、権利床110パーセント。更に4年間の賃料補助」という条件も有り得るところです。

 例えば、建設費坪75万円、容積率100パーセントあたりの地価1坪100万円、割増し容積率が基準容積率の75パーセントであれば、次の様な計算となり、 建設費の負担無く建て替えることができることになります。当然ながら、建築方法によって建築費が変わってきますし、地価動向によって容積率100パーセントあ たりの地価も変わってきます。

権利床(坪)=α
保留床(坪)=0.75×α
保留床売却価格=75×α万円
権利床建築費=75×α万円

 マンション管理組合の理事会で意思統一して、権利床の還元率について、デベロッパーと交渉されることをお勧め致します。

3、なお、参加組合員を選定するタイミングは、正式な建替組合設立前の(従来のマンション管理組合とは別に建て替え組合設立します)、従前マンションの管理組 合における「建替え推進決議」後で、「建替え決議」前に行われることが多くなっています。建替え決議と同時に、これに付随して参加組合員を選定する場合もあり ます。

マンション建て替え円滑化法によるマンション建替え事業の手順を示します。

建築士による耐震診断(建築物の耐震改修の促進に関する法律第7条など)
参考=国土交通省、マンション耐震化マニュアル
http://www.mlit.go.jp/common/001086800.pdf

マンション管理組合において、耐震補強と、建て替えの費用対効果を検討する
(耐震補強をする場合の見積もり算出、及び、建て替え構想計画の策定)
参考=国土交通省、マンションの建替えか修繕かを判断するためのマニュアル
http://www.mlit.go.jp/common/001064889.pdf

管理組合総会における建替え推進決議(建替え推進方針の確認決議)
参考=国土交通省、マンションの建替えに向けた合意形成に関するマニュアル
http://www.mlit.go.jp/common/001064895.pdf

調査設計計画費を支出して、具体的な計画案の立案

事業協力者選定決議(参加組合員選定決議)

建て替え決議の議題となる、建て替え基本計画の策定

建替え決議(区分所有法62条の法定建替え、又は全員一致による任意建替え決議)

建替え組合設立認可申請、または個人施行による建替え事業の認可申請
(組合施行について円滑化法9条1項、個人施行について円滑化法45条1項)

事業計画変更認可申請

権利変換計画認可申請

権利変換期日

建物除却(取り壊し、解体工事)

新マンション建設工事

再入居、新管理組合創立総会


 参加組合員候補選定決議の決議案を作成するための、候補者選定方法として、プロポーザル方式(技術提案書競技方式、人を選ぶ方式)や、コンペ方式(設計競技 方式、設計案を選ぶ方式)などがあります。早い段階で権利床の還元率を意識して、交渉を開始すると良いでしょう。従前マンションの販売元系列のデベロッパーに 拘る必要はありません。

 なお、床面積ベースの還元率を重視しすぎると却って資産価値を損ねてしまう場合もありますので注意が必要です。参加組合員によって、建物のブランド力や企画 力や販売力が異なり、建物竣工後の転売価値(坪単価)に大きく差異を生じる場合があるからです。床面積が狭くなっても、逆に資産価値が高くなる場合もあります ので、慎重に検討することが必要です。


4、個人施工方式について

 個人施行方式は、組合施行方式と並ぶマンション建替え円滑化法による建て替えの手法で、行政庁に対する事業計画認可申請や、権利変換計画認可申請などを、 建替え組合ではなく、区分所有者の全会一致決議により区分所有者から指定された、特定の組合員(参加組合員も含む)が手続を行う方法です。根拠規定は、マン ション建て替え円滑化法5条2項および同45条1項です。

 この個人施行者に対する同意手続の中で、「権利床の還元率を面積比で8割以上とする」というような最低条件のみ定めて合意してしまう事例があります。このよ うな同意方法は、デベロッパーのフリーハンドを招きやすく、区分所有者の利益を害する結果となってしまうリスクがあります。

 個人施行者は区分所有者全員から手続を一任される形になりますので、組合施行方式に比べて、最初の同意手続以外の場面で、区分所有者の意見が反映されにくい 懸念があります。他方、建替え組合の決議を省略できる分、手続が迅速化するメリットは有ります。事業計画の認可申請も、事業計画の変更申請も、権利変換計画の 認可申請も全て、個人施行者が行政庁に対して単独で申請することができます。このようなメリットはありますが一般論として、各区分所有者の利益保護という点か らは、個人施行方式は回避された方が良いでしょう。


<参照条文>

マンション建替え円滑化法
第5条第1項 マンション建替組合(以下この章において「組合」という。)は、マンション建替事業を施行することができる。
第2項 マンションの区分所有者又はその同意を得た者は、一人で、又は数人共同して、当該マンションについてマンション建替事業を施行することができる。
第45条(施行の認可)
第1項 第五条第二項の規定によりマンション建替事業を施行しようとする者は、一人で施行しようとする者にあっては規準及び事業計画を定め、数人共同して施行 しようとする者にあっては規約及び事業計画を定め、国土交通省令で定めるところにより、そのマンション建替事業について都道府県知事等の認可を受けなければな らない。

建築物の耐震改修の促進に関する法律
第七条(要安全確認計画記載建築物の所有者の耐震診断の義務)
 次に掲げる建築物(以下「要安全確認計画記載建築物」という。)の所有者は、当該要安全確認計画記載建築物について、国土交通省令で定めるところ により、耐震診断を行い、その結果を、次の各号に掲げる建築物の区分に応じ、それぞれ当該各号に定める期限までに所管行政庁に報告しなければならない。
一号 第五条第三項第一号の規定により都道府県耐震改修促進計画に記載された建築物・・同号の規定により都道府県耐震改修促進計画に記載された期限
二号 その敷地が第五条第三項第二号の規定により都道府県耐震改修促進計画に記載された道路に接する通行障害既存耐震不適格建築物(耐震不明建築物であるもの に限る。)・・同号の規定により都道府県耐震改修促進計画に記載された期限
三号 その敷地が前条第三項第一号の規定により市町村耐震改修促進計画に記載された道路に接する通行障害既存耐震不適格建築物(耐震不明建築物であるものに限 り、前号に掲げる建築物であるものを除く。)・・同項第一号の規定により市町村耐震改修促進計画に記載された期限

※建物の区分所有等に関する法律
第62条(建替え決議)
第1項 集会においては、区分所有者及び議決権の各五分の四以上の多数で、建物を取り壊し、かつ、当該建物の敷地若しくはその一部の土地又は当該建物の敷地の 全部若しくは一部を含む土地に新たに建物を建築する旨の決議(以下「建替え決議」という。)をすることができる。
第2項 建替え決議においては、次の事項を定めなければならない。
一  新たに建築する建物(以下この項において「再建建物」という。)の設計の概要
二  建物の取壊し及び再建建物の建築に要する費用の概算額
三  前号に規定する費用の分担に関する事項
四  再建建物の区分所有権の帰属に関する事項
第3項 前項第三号及び第四号の事項は、各区分所有者の衡平を害しないように定めなければならない。
第4項 第一項に規定する決議事項を会議の目的とする集会を招集するときは、第三十五条第一項の通知は、同項の規定にかかわらず、当該集会の会日より少なくと も二月前に発しなければならない。ただし、この期間は、規約で伸長することができる。
第5項 前項に規定する場合において、第三十五条第一項の通知をするときは、同条第五項に規定する議案の要領のほか、次の事項をも通知しなければならない。
一  建替えを必要とする理由
二  建物の建替えをしないとした場合における当該建物の効用の維持又は回復(建物が通常有すべき効用の確保を含む。)をするのに要する費用の額及びその内訳
三  建物の修繕に関する計画が定められているときは、当該計画の内容
四  建物につき修繕積立金として積み立てられている金額
第6項 第四項の集会を招集した者は、当該集会の会日より少なくとも一月前までに、当該招集の際に通知すべき事項について区分所有者に対し説明を行うための説 明会を開催しなければならない。
第7項 第三十五条第一項から第四項まで及び第三十六条の規定は、前項の説明会の開催について準用する。この場合において、第三十五条第一項ただし書中「伸縮 する」とあるのは、「伸長する」と読み替えるものとする。
第8項 前条第六項の規定は、建替え決議をした集会の議事録について準用する。


※マンション建替え円滑化法

第5条第1項 マンション建替組合(以下この章において「組合」という。)は、マンション建替事業を施行することができる。
第2項 マンションの区分所有者又はその同意を得た者は、一人で、又は数人共同して、当該マンションについてマンション建替事業を施行することができる。

第9条(設立の認可)
第1項 区分所有法第六十四条 の規定により区分所有法第六十二条第一項 に規定する建替え決議(以下単に「建替え決議」という。)の内容によりマンションの建替えを行う旨の合意をしたものとみなされた者(マンションの区分所有権又は敷地利用権 を有する者であってその後に当該建替え決議の内容により当該マンションの建替えを行う旨の同意をしたものを含む。以下「建替え合意者」という。)は、五人以上 共同して、定款及び事業計画を定め、国土交通省令で定めるところにより、都道府県知事(市の区域内にあっては、当該市の長。以下「都道府県知事等」という。) の認可を受けて組合を設立することができる。
第2項 前項の規定による認可を申請しようとする建替え合意者は、組合の設立について、建替え合意者の四分の三以上の同意(同意した者の区分所有法第三十八条 の議決権の合計が、建替え合意者の同条 の議決権の合計の四分の三以上となる場合に限る。)を得なければならない。
第3項 区分所有法第七十条第四項 において準用する区分所有法第六十四条 の規定により一括建替え決議の内容によりマンションの建替えを行う旨の合意をしたものとみなされた者(マンションの区分所有権又は敷地利用権を有する者であってその後に当 該一括建替え決議の内容により当該マンションの建替えを行う旨の同意をしたものを含む。以下「一括建替え合意者」という。)は、五人以上共同して、第一項の規 定による認可を受けて組合を設立することができる。
第4項 第一項の規定による認可を申請しようとする一括建替え合意者は、組合の設立について、一括建替え合意者の四分の三以上の同意(同意した者の区分所有法 第七十条第二項 において準用する区分所有法第六十九条第二項 の議決権の合計が、一括建替え合意者の同項 の議決権の合計の四分の三以上となる場合に限る。)及び一括建替え決議マンション群(一括建替え決議に係る団地内の二以上のマンションをいう。以下同じ。)を構成する各マ ンションごとのその区分所有権を有する一括建替え合意者の三分の二以上の同意(各マンションごとに、同意した者の区分所有法第三十八条 の議決権の合計が、それぞれその区分所有権を有する一括建替え合意者の同条 の議決権の合計の三分の二以上となる場合に限る。)を得なければならない。
第5項 前各項の場合において、マンションの一の専有部分が数人の共有に属するときは、その数人を一人の建替え合意者又は一括建替え合意者(以下「建替え合意 者等」という。)とみなす。
第6項 二以上の建替え決議マンション(建替え決議に係るマンションであって一括建替え決議マンション群に属さないものをいう。以下同じ。)若しくは一括建替 え決議マンション群又は一以上の建替え決議マンション及び一括建替え決議マンション群に係る建替え合意者等は、五人以上共同して、第一項の規定による認可を申 請することができる。この場合において、第二項の規定は建替え決議マンションごとに、第四項の規定は一括建替え決議マンション群ごとに、適用する。
第7項 第一項の規定による認可の申請は、施行マンションとなるべきマンションの所在地が町村の区域内にあるときは、当該町村の長を経由して行わなければなら ない。

第10条(事業計画)
第1項 事業計画においては、国土交通省令で定めるところにより、施行マンションの状況、その敷地の区域及びその住戸(人の居住の用に供するマンションの部分 をいう。以下同じ。)の状況、施行再建マンションの設計の概要及びその敷地の区域、事業施行期間、資金計画その他国土交通省令で定める事項を記載しなければな らない。
第2項 事業計画は、建替え決議又は一括建替え決議(以下「建替え決議等」という。)の内容に適合したものでなければならない。
(事業計画の縦覧及び意見書の処理)
第十一条  第九条第一項の規定による認可の申請があった場合において、施行マンションとなるべきマンションの敷地(これに隣接する土地を合わせて施行再建マンションの敷地とする場 合における当該土地(以下「隣接施行敷地」という。)を含む。)の所在地が市の区域内にあるときは、当該市の長は当該事業計画を二週間公衆の縦覧に供し、当該 マンションの敷地の所在地が町村の区域内にあるときは、都道府県知事は当該町村の長に当該事業計画を二週間公衆の縦覧に供させなければならない。ただし、当該 申請に関し明らかに次条各号のいずれかに該当しない事実があり、認可すべきでないと認めるときは、この限りでない。
2  施行マンションとなるべきマンション又はその敷地(隣接施行敷地を含む。)について権利を有する者は、前項の規定により縦覧に供された事業計画について意見があるとき は、縦覧期間満了の日の翌日から起算して二週間を経過する日までに、都道府県知事等に意見書を提出することができる。
3  都道府県知事等は、前項の規定により意見書の提出があったときは、その内容を審査し、その意見書に係る意見を採択すべきであると認めるときは事業計画に必要な修正を加え るべきことを命じ、その意見書に係る意見を採択すべきでないと認めるときはその旨を意見書を提出した者に通知しなければならない。
4  前項の規定による意見書の内容の審査については、行政不服審査法 (平成二十六年法律第六十八号)第二章第三節 (第二十九条、第三十条、第三十二条第二項、第三十八条、第四十条、第四十一条第三項及び第四十二条を除く。)の規定を準用する。この場合において、同法第二十八条 中「審理員」とあるのは「都道府県知事等(マンションの建替え等の円滑化に関する法律第九条第一項に規定する都道府県知事等をいう。以下同じ。)」と、同法第 三十一条、第三十二条第三項、第三十三条から第三十七条まで、第三十九条並びに第四十一条第一項及び第二項中「審理員」とあるのは「都道府県知事等」と読み替 えるものとする。
5  第九条第一項の規定による認可を申請した者が、第三項の規定により事業計画に修正を加え、その旨を都道府県知事等に申告したときは、その修正に係る部分について、更にこ の条に規定する手続を行うべきものとする。
(認可の基準)
第十二条  都道府県知事等は、第九条第一項の規定による認可の申請があった場合において、次の各号のいずれにも該当すると認めるときは、その認可をしなければならない。
一  申請手続が法令に違反するものでないこと。
二  定款又は事業計画の決定手続又は内容が法令(事業計画の内容にあっては、前条第三項に規定する都道府県知事等の命令を含む。)に違反するものでないこと。
三  施行再建マンションの敷地とする隣接施行敷地に建築物その他の工作物が存しないこと又はこれに存する建築物その他の工作物を除却し、若しくは移転することができることが 確実であること。
四  施行マンションの住戸の数が、国土交通省令で定める数以上であること。
五  施行マンションの住戸の規模、構造及び設備の状況にかんがみ、その建替えを行うことが、マンションにおける良好な居住環境の確保のために必要であること。
六  施行再建マンションの住戸の数が、国土交通省令で定める数以上であること。
七  施行再建マンションの住戸の規模、構造及び設備が、当該住戸に居住すべき者の世帯構成等を勘案して国土交通省令で定める基準に適合するものであること。
八  事業施行期間が適切なものであること。
九  当該マンション建替事業を遂行するために必要な経済的基礎及びこれを的確に遂行するために必要なその他の能力が十分であること。
十  その他基本方針に照らして適切なものであること。
(組合の成立)
第十三条  組合は、第九条第一項の規定による認可により成立する。

第45条(施行の認可)
第1項 第五条第二項の規定によりマンション建替事業を施行しようとする者は、一人で施行しようとする者にあっては規準及び事業計画を定め、数人共同して施行 しようとする者にあっては規約及び事業計画を定め、国土交通省令で定めるところにより、そのマンション建替事業について都道府県知事等の認可を受けなければな らない。
第2項 前項の規定による認可を申請しようとする者は、その者以外に施行マンションとなるべきマンション又はその敷地(隣接施行敷地を含む。)について権利を 有する者があるときは、事業計画についてこれらの者の同意を得なければならない。ただし、その権利をもって認可を申請しようとする者に対抗することができない 者については、この限りでない。
第3項 前項の場合において、施行マンションとなるべきマンション又はその敷地(隣接施行敷地を含む。以下この項において同じ。)について権利を有する者のう ち、区分所有権、敷地利用権、敷地の所有権及び借地権並びに借家権以外の権利(以下「区分所有権等以外の権利」という。)を有する者から同意を得られないと き、又はその者を確知することができないときは、その同意を得られない理由又は確知することができない理由を記載した書面を添えて、第一項の規定による認可を 申請することができる。
第4項 第九条第七項の規定は、第一項の規定による認可について準用する。

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