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No.1719、2017/01/18 09:05 https://www.shinginza.com/jidoukaisyun.htm

【刑事、青少年健全育成条例、淫行条例、最判平成10年11月2日、東京高判昭和42年2月28日】

児童との性行為における年齢確認義務

質問:
私は,27歳の会社員です。先日,町でナンパした女性と,当日そのまま性行為をしました。相手の女性の見た目が若かった為,一応行為前に年齢を確認したのです が,女性は,18歳と言っていました。なお,行為の際,女性にお金などは渡していません。当日は,女性が親から呼び戻された為,夜,家の近くまで車で送り届け ました。
その後,私は女性と交際しようと思って何度かライン等で連絡を取っていたのですが,2週間ほどして,女性からの返信が途絶えました。
 今になって心配になってきたのですが,女性の発言が嘘で,実は18歳未満であった場合,私の行為は犯罪になるのでしょうか。仮に犯罪になる場合,どのように 対応したら良いのでしょうか,


回答:

1 本件で成立する可能性がもっとも高いのが,各都道府県で制定されている青少年健全育成条例違反(淫行条例とも呼ばれます。)の罪です。

 同種条例において処罰対象となる「青少年」との「みだらな性交又は性交類似行為」は,単に半倫理的かつ不純な性行為というだけではなく,青少年の未成熟に 乗じた不当な手段により行う等の悪質な態様でなければなりません。

 本件では、あった当日に性行為に及んだということですから「みだらな性交」に該当すると考えられます。しかし、仮に相手の少女との真摯な交際関係が存在す れば,「みだらな性交」には該当しない可能性があります。

 他に「児童福祉法違反」の罪も考えられますが、単にナンパして出会っただけの間柄ということであれば同法の要件とされる「児童に淫行させる行為」には該当 しないと考えられます。

2 女性が18歳と言っていたことは犯罪の成立に影響するか問題となります。上記各罪については,条文の規定上,単に相手の年齢を知らなかっただけでは,罪 を免れることはできず,「知らなかったことにつき過失が無い」ことを認定してもらう必要があります。

 過失がないと認められるのはどのような場合かについては,児童福祉法違反の場合,戸籍や身分証明書の確認等が必要とされ確認を怠った場合は過失があるとさ れていますが,条例違反については,立法趣旨や法律相互の関係からすると,相手の年齢についての確認義務の程度がより軽減されると考えられます。具体的にどの ような場合に過失があるか否かは具体的に事情により判断することになります。

4 単なる条例違反の場合,相手青少年の保護者との間で正式に示談合意を締結すれば,不起訴処分となり,前科がつくことを回避することができる場合もありま す。担当検察官の考えによっては,公共の利害に関する罪であることを重視し、示談ができていても起訴する場合もありますので,場合によっては相手青少年には近 づかないという不接近誓約書や,公共機関(弁護士会等)に対する寄付を行う等,追加の弁護活動を検討する必要があります。

5 条例違反の事件は,逮捕等に至ることも非常に大きい事案です。本件のように,突然相手からの連絡が無くなった場合,既に両親が事態を把握し,被害届を警 察に提出しており,突如として逮捕されてしまうケースも多くみられます。弁護活動によって,起訴,不起訴が非常に別れやすい類型の事件でもありますので,突然 の逮捕や前科等の不利益を回避する為にも,早急に弁護士に相談することをお勧め致します。

6 関連事例集論文1604番1414 番916番735 番639番256 番参照。その他1382番1361番1340 番1276番1127 番823番686 番185番参照。


解説:

1 成立し得る犯罪について

(1)児童福祉法違反

ア 法律の規定

 児童福祉法は,18歳未満の児童に「淫行をさせる行為」を禁止しており(同法34条1項6号),これに違反した場合十年以下の懲役若しくは三百万円以下の 罰金に処せられることになります。

 ここでいう「淫行」とは,判例によれば,性交そのものだけでなく,性交類似行為まで含むことになります(最高裁昭和47年4月20日)。性交類似行為に は,口淫や手淫等の直接性器に触れる行為だけでなく,児童に自慰行為をさせることも含まれます。

イ 「淫行をさせる」相手の範囲

  「淫行をさせる」の意義については,「させる」という言葉が,その対象となる第三者が存在すること(第三者と淫行をさせる行為)を想定しているようにも 考えられることから,淫行の相手方が自分である場合も,本法の処罰対象に含まれるかが問題となりました。

 この点については,最高裁平成10年11月2日判決において,淫行の相手方が自分である場合も,「児童に淫行させる」に該当すると判断しています。しかし, 同判例の原審(東京高裁平成8年10月30日判決)では,淫行の対象が自分である場合に,全ての淫行を処罰対象とするのではなく,次のような制限を付しており ます。

 すなわち,まず淫行の意義は,「事実上の影響力を及ぼして児童が淫行することに原因を与えあるいはこれを助長する行為をも包含するものと解される」とした上 で,「行為者自身が淫行の相手方となる場合について同号違反の罪が成立するためには,淫行をする行為に包摂される程度を超え,児童に対し,事実上の影響力を及 ぼして淫行をするように働きかけ,その結果児童をして淫行をするに至らせることが必要であるものと解される。」と判示しています。

 つまり,淫行の相手方の場合、同法の処罰対象たる「淫行をさせる」にあたるためには,単に淫行をするのではなく,その事実上の影響力,すなわち上下関係や 使役関係による心理的な強制要素を含む形で,淫行に至ることが必要としています。

 これは,「させる」という言葉の文理上の解釈とも合致しますし,児童福祉法の規定が,最大懲役10年と重くされており,次項記載の健全育成条例違反の罪よ りも重くされていることの均衡から考えると,その対象となる淫行の範囲も,当然健全育成条例の対象より悪質な態様のものに制限される必要がありますので,当然 の解釈と言えるでしょう。

 上記判例では,中学の教員が,生徒に対して性的玩具を利用して自慰行為をさせた事例ですが,教師という立場・影響力を及ぼしたとして,本罪の成立が認定さ れています。

 本件では,単にナンパして出会っただけの間柄ですので,単に年上の男性というだけでは,基本的に何等かの事実上の影響力を行使したとは言えず,本罪は成立 しないものと考えられます。

 これに対し,教師と生徒、塾講師と生徒等,優越的な立場を利用して淫行が行われた場合には,本罪の成立も視野に入れて対応を考える必要があるでしょう。

(2) 青少年健全育成条例違反

ア 法律上の規定

 本件でもっとも可能性が高いのが,各都道府県で制定されている青少年健全育成条例違反(淫行条例とも呼ばれます。)の罪です。

 東京都の例を挙げると,「青少年の健全な育成に関する条例」では,18歳未満の青少年(同2条),「何人も、青少年とみだらな性交又は性交類似行為を行つ てはならない。(同18条の6)」と規定されており,同条項に違反した場合,二年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処せられることになります(同法24条の 3)。

イ みだらな行為の意義

 同種条例において処罰対象となる「みだらな性交又は性交類似行為」の意味について「みだらな」とはどのようなものなのか問題となりますが,判例は下記のと おり判示しております。

(最高裁昭和60年10月23日・福岡県青少年健全育成条例違反事件)
 「 「淫行」とは、広く青少年に対する性行為一般をいうものと解すべきではなく、青少年を誘惑し、威迫し、欺罔し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた 不当な手段により行う性交又は性交類似行為のほか、青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱つているとしか認められないような性交又は性交 類似行為をいうものと解するのが相当である。」

 つまり,同最高裁判例によれは,処罰の対象とするには,当該行為が単に半倫理的かつ不純な性行為というだけでは不十分であって,青少年の未成熟に乗じた不 当な手段により行う等の悪質な態様でなければなりません。その為,「例えば婚約中の青少年又はこれに準ずる真摯な交際関係にある青少年との間で行われる性行為 等」については,処罰の対象とはなりません。

 本件でも,仮に相手の少女との真摯な交際関係が存在すれば,「みだらな性交」には該当しない可能性があります。

 この点,過去の裁判例では,16歳の青少年と半月ほどの交際期間があり,起訴後正式に被告人から結婚を申し入れた事例(結婚は青少年の両親が拒否)では, 一審ではみだらな性交であることを否定し無罪判決となったのに対し,高等裁判所における控訴審では「結婚の申込をしたとかいうのは、本件起訴事実に関し処罰を 免れるための被告人の弁解の辞であると認むべく、少くとも、本件起訴にかかる情交当時においては、結婚とか婚約とかいうことを前提とせず、年長者が年少の少女 を誘惑し、専ら情慾の満足を目的とする性行為をしたものと観察すべき」とし,有罪とした事例があります(東京高判昭和42年2月28日)。

 その為,本件のように,会って当日性交に及んだ事例等では,真摯な交際関係を認められるのは困難な可能性もあります。少なくとも,事件発覚後に真摯な交際 を改めて申し入れている等の事情が必要となるでしょう。原則としては,「みだらな性行為」に該当することを想定した対応をすべきといえます。

2 未成年であることに気付かなかった点について

(1)児童福祉法における年齢確認義務

 なお,上記の各罪については,いずれも相手方が18歳未満であることを構成要件としているため,あなたが相手の年齢を知らなかった場合,故意が否定され, 犯罪として成立しないことになります。

 しかし,上記核法規は,この点につき下記のような特殊な規定をおいています。

 まず,児童福祉法では,相手の年齢の知情について,同法60条3項において,「児童を使用する者は、児童の年齢を知らないことを理由として、前三項の規定 による処罰を免れることができない。ただし、過失のないときは、この限りでない。」と規定しています。

 もっとも,当該条項は,「児童を使用する者」に対象を限定している為,それ以外の者については,特に年齢の知情に関する規定は適用されないことになりま す。

 このような規定が定められたのは,児童を使用する者であれば,その立場上,児童の年齢を確認する義務が認められ,その義務を尽くしたことをその者において 立証する必要があると考えられる為です。

 この年齢確認義務を尽くしたと言える為にどの程度の調査を行えば良いかについて,裁判例等によると,児童本人や仲介者などの自称する年齢を信じるだけでは 不十分であり、児童の戸籍などによつて生年月日を調査し、あるいは親許の照会をして年齢を確かめるとか、一般に確実性のある調査確認の方法を一応つくすことが 必要であるとされています(長崎家裁昭和34年12月10日等参照)。

 その為,児童の疑いがあるものと性行為をする為には,このような確認を取ってから行うのが無難でしょう。

(2)健全育成条例における規定

 各都道府県の健全育成条例違反についても,同種の規定が設けられています。東京都健全育成条例の場合,みだらな行為について「当該青少年の年齢を知らない ことを理由として、(略)規定による処罰を免れることができない。ただし、過失のないときは、この限りでない。」としています。

 つまり,上記児童福祉法違反の場合と同様,単に相手の年齢を知らなかっただけでは,罪を免れることはできず,「知らなかったことにつき過失が無い」ことを 認定してもらう必要があります。

 一方で,条例違反の場合の年齢確認義務につき,どの程度の確認行為まで行うことが要請されているかについては,明確ではありません。

 規定の文言自体は上記児童福祉法と同じ文言で規定されていることからすると,解釈についても,同法と同じくし,戸籍などによる調査確認義務を課しているも のと判断される可能性は高いといえます。一方,上述のとおり,児童福祉法が上述のような厳しい年齢確認義務を置いているのは,児童の使用者について,その地位 に基づく高度な責任が存在すると考えられる為です。その為,何の特殊な関係性にもない人物が当事者の場合にまで,使用者と同レベルの年齢確認義務を科すこと は,不当とも考えられます。

 この点につき,明示的に示した裁判例等は特にありませんが,使用者たる地位には無い点,少なくとも一定の年齢確認を行った点等を強く主張すれば,年齢知情 の点についての無過失が認められる可能性は十分に存在すると言えるでしょう。当該主張をする為には,どのような経緯で年齢確認をしたか,相手との会話をできる 限り明確に証拠化する必要があります。

 場合によっては,弁護人面前調書の作成等も検討すべきでしょう。

 もっとも,本件のように,相手女性に口頭で年齢を確認したという程度では,年齢確認の点において過失有りと認定されてしまう可能性はやはり高いでしょう。 相手方女性との会話の内容や女性の行動等から18歳以上であると判断できる事情があったこと、たとえば自動車を運転するとか運転免許証を持っている、高校を卒 業している等の話があったことから18歳以上であると考えた等の事情が必要でしょう。その為,以下で述べるとおり,ある程度条例違反の成立も念頭に置いた活動 を行う必要があります。

3 予想される展開と考えられる弁護活動について

 以上を踏まえ,今後の予想される展開と,処罰を回避する為に行うべき弁護活動について解説致します。

 上述のとおり,本件では仮に相手の女性が18歳未満だったとすると、18歳以上と思っていたとしても条例違反の罪が成立する可能性は非常に高いといえま す。そのため相手青少年の親が警察に相談したり,相手青少年が警察に補導される等して携帯の連絡先を警察がチェックしたりすれば,あなたが条例違反の被疑者と なり事件化する可能性は高いといえます。相手方女性が警察に補導されて携帯電話などからあなたの連絡先が判明して女性があなたとの交際を捜査機関に明らかにす るというのはしばしばみられるパターンです。その点からは、早い時点で示談等の弁護活動を開始する必要があります。しかし、現時点では18歳未満か否かも不明 ですし、単に連絡が取れなくなったということだけかもしれませんから、今しばらく様子をみるという考えもあるでしょう。どの時点で、弁護士に依頼すべきかは具 体的な事情によるでしょうが、少なくとも早い時期に相談だけはしておくべきでしょう。弁護士に、まず相談し、その上で依頼が必要か否かについて、相手方女性と 早い時期に連絡を取って年齢等を確認したり、事件化するか否かに関する情報を得ることは、あなたの精神上の安定という点からも必要なことです。

 仮に刑事事件となってしまったとしても,単なる条例違反の場合,早い時期に相手青少年の保護者との間で正式に示談合意を締結すれば、逮捕等の強制捜査は免 れることができるでしょうし、最終処分についても不起訴処分となり,前科がつくことを回避することができる場合もあります。この点,担当する検察官によって は,条例違反は特定の被害者を保護する法律では無い等との理由から,示談が成立しても処罰することを強硬に主張されてしまう可能性もあります。

 そのような場合には,相手青少年には近づかないという不接近誓約書や,公共機関(弁護士会等)に対する寄付を行う等,追加の弁護活動を検討する必要があり ます。

 また合わせて,上記「みだらな性行為」の定義や,年齢知情の点について,法律の解釈の面や,事実経過を詳細に主張する必要もあります。

 このような主張・追加の弁護活動を説得的に行うことによって,一反,検察官が罰金刑を選択しようとしても,逆転で不起訴処分となる事例もあります。罰金刑 を検察官が選択する場合は略式命令といって、被疑者の同意の上簡単な手続きにより罰金刑が科せられます。しかし、罰金とは言え前科ですし、特に特定の有資格者 や公務員にとっては資格の停止や懲戒処分という問題が生じ、罰金を支払って終わりということにはなりません。できる限り不起訴処分を獲得する必要がありますか ら安易に罰金刑を了承すべきではありません。

 健全育成条例違反の事件は,逮捕等に至ることもしばしばあり、非常に大きい事案です。本件のように,突然相手からの連絡が無くなった場合,既に両親が事態 を把握し,被害届を警察に提出しており,突如として逮捕されてしまうケースも多くみられます。

 その為,可能な限り早急に弁護士に相談する等し,場合によっては警察に対する自首,逮捕回避の為の上申等を依頼すると良いでしょう。

4 まとめ

 このように,条例違反は,担当する検察官や弁護人によって,起訴,不起訴が非常に別れやすい類型の事件です。

 突然の逮捕や,前科等の不利益を回避する為には迅速かつ適切な対応を取ることが重要です。まずは専門家に適切な方策と対応を相談することをお勧め致しま す。


【参照条文】
≪児童福祉法≫
第三十四条  何人も、次に掲げる行為をしてはならない。
一  身体に障害又は形態上の異常がある児童を公衆の観覧に供する行為
二  児童にこじきをさせ、又は児童を利用してこじきをする行為
三  公衆の娯楽を目的として、満十五歳に満たない児童にかるわざ又は曲馬をさせる行為
四  満十五歳に満たない児童に戸々について、又は道路その他これに準ずる場所で歌謡、遊芸その他の演技を業務としてさせる行為
四の二  児童に午後十時から午前三時までの間、戸々について、又は道路その他これに準ずる場所で物品の販売、配布、展示若しくは拾集又は役務の提供を業務としてさせる行為
四の三  戸々について、又は道路その他これに準ずる場所で物品の販売、配布、展示若しくは拾集又は役務の提供を業務として行う満十五歳に満たない児童を、当該業務を行うために、 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律 (昭和二十三年法律第百二十二号)第二条第四項 の接待飲食等営業、同条第六項 の店舗型性風俗特殊営業及び同条第九項 の店舗型電話異性紹介営業に該当する営業を営む場所に立ち入らせる行為
五  満十五歳に満たない児童に酒席に侍する行為を業務としてさせる行為
六  児童に淫行をさせる行為
七  前各号に掲げる行為をするおそれのある者その他児童に対し、刑罰法令に触れる行為をなすおそれのある者に、情を知つて、児童を引き渡す行為及び当該引渡し行為のなされる おそれがあるの情を知つて、他人に児童を引き渡す行為
八  成人及び児童のための正当な職業紹介の機関以外の者が、営利を目的として、児童の養育をあつせんする行為
九  児童の心身に有害な影響を与える行為をさせる目的をもつて、これを自己の支配下に置く行為
○2  児童養護施設、障害児入所施設、児童発達支援センター又は児童自立支援施設においては、それぞれ第四十一条から第四十三条まで及び第四十四条に規定する目的に反して、入 所した児童を酷使してはならない。
第六十条  第三十四条第一項第六号の規定に違反した者は、十年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
○2  第三十四条第一項第一号から第五号まで又は第七号から第九号までの規定に違反した者は、三年以下の懲役若しくは百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
○3  第三十四条第二項の規定に違反した者は、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
○4  児童を使用する者は、児童の年齢を知らないことを理由として、前三項の規定による処罰を免れることができない。ただし、過失のないときは、この限りでない。
○5  第二項(第三十四条第一項第七号及び第九号の規定に違反した者に係る部分に限る。)の罪は、刑法第四条の二 の例に従う。

≪東京都青少年の健全な育成に関する条例≫
(定義)
第二条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一 青少年 十八歳未満の者をいう。
(青少年に対する反倫理的な性交等の禁止)
第十八条の六 何人も、青少年とみだらな性交又は性交類似行為を行つてはならない。
(罰則)
第二十四条の三 第十八条の六の規定に違反した者は、二年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
第二十八条 第九条第一項、第十条第一項、第十一条、第十三条第一項、第十三条の二第一項、第十五条第一項若しくは第二項、第十五条の二第一項若しくは第二 項、第十五条の三、第十五条の四第二項又は第十六条第一項の規定に違反した者は、当該青少年の年齢を知らないことを理由として、第二十四条の四、第二十五条又 は第二十六条第一号、第二号若しくは第四号から第六号までの規定による処罰を免れることができない。ただし、過失のないときは、この限りでない。

【参考判例】
東京高裁平成8年10月30日判決
『2 淫行の相手方と淫行をさせる行為をした者との同一性について(所論(2))
 児童福祉法34条1項6号は,「児童に淫行をさせる行為」を禁止しているところ,まず,規定の文言上,淫行の相手方を限定していないばかりでなく,右の「児 童に淫行をさせる行為」は,文理上は,淫行をさせる行為をした者(以下「行為者」という。)が児童をして行為者以外の第三者と淫行をさせる行為と行為者が児童 をして行為者自身と淫行をさせる行為の両者を含むと読むことができる。そして,前記1において述べた同法の基本理念や同法34条1項6号の趣旨目的に照らせ ば,同号にいう淫行の相手方が行為者以外の第三者であるか,それとも行為者自身であるかは,児童の心身に与える有害性という点で,本質的な差異をもたらすべき 事項とは考えられない。もっとも,同号にいう「淫行をさせる行為」とは,行為者以外の第三者を相手方として淫行させることをいうもので,行為者が自ら児童と淫 行する場合を含まない旨の所論に沿う見解も存在する。しかし,単に児童と淫行したに過ぎない者が同号に該当しないことは当然であるとしても,行為者が児童に対 しいかに淫行を働きかけた場合であっても,行為者が自ら淫行の相手方になったときは,同号に該当しないこととなるとの点については,人を納得させるに足るだけ の根拠が示されておらず,その点について合理的理由を見出すことも困難であって,右のような見解を採ることはできない。以上の次第で,同号にいう「児童に淫行 させる行為」とは,行為者が児童をして第三者と淫行をさせる行為のみならず,行為者が児童をして行為者自身と淫行をさせる行為をも含むものと解するのが相当で ある。所論は,採用できない。
3 淫行を「させる行為」について(所論(3))
 児童福祉法34条1項6号にいう淫行を「させる行為」とは,児童に淫行を強制する行為のみならず,児童に対し,直接であると間接であると物的であると精神的 であるとを問わず,事実上の影響力を及ぼして児童が淫行することに原因を与えあるいはこれを助長する行為をも包含するものと解される(なお,最高裁判所昭和 30年12月26日第三小法廷判決刑集9巻14号3018頁,最高裁判所昭和40年4月30日第二小法廷決定裁判集155号595頁参照。)。そして,前記2 でみたとおり,同号には,行為者が児童をして行為者自身と淫行をさせる行為を含むと解すべきところ,同号が,いわゆる青少年保護育成条例等にみられる淫行処罰 規定(条例により,何人も青少年に対し淫行をしてはならない旨を規定し,その違反に地方自治法14条5項の範囲内で刑事罰を科するもの)とは異なり,児童に淫 行を「させる」という形態の行為を処罰の対象とし,法定刑も最高で懲役10年と重く定められていること等にかんがみれば,行為者自身が淫行の相手方となる場合 について同号違反の罪が成立するためには,淫行をする行為に包摂される程度を超え,児童に対し,事実上の影響力を及ぼして淫行をするように働きかけ,その結果 児童をして淫行をするに至らせることが必要であるものと解される。
 これを本件についてみると,関係各証拠によれば,次の事実が認められる。
 被告人は,○○中学校教諭の職にあり,A子及びB子について,それぞれ英語の授業を受け持ったことがあったものである。
 A子は,事件当時は,同中学校1年生の課程を終えたところであり,それまでの1年間,被告人から週に4ないし5時間英語の授業を受けており,本件前に2回被 告人方へ遊びに行ったことがあった。被告人は,A子が転校することを知り,同児に対し,春休みに泊まりがけで被告人方に遊びに来るように誘った。平成7年3月 24日夜,被告人は,右の誘いに応じて被告人方を訪れたA子及びその同級生である前記C子に対し,酎ハイやビールを勧めてともに飲酒し,次いで男女性交の場面 等を撮影したいわゆるアダルトビデオ2本を見せたり,オナニーの話をしたりした上,翌25日午前1時ころから2時ころまでの間,A子に対し,ポルノショップで 購入したバイブレーターを示し,スイッチを操作するなどしてその使用方法を説明した上,これを自己の性器に挿入しけ自慰行為をするよう勧めて与えた。A子は, 飲酒の上アダルトビデオを見せられていたことに加え,被告人がいつもより怖くて逆らい難いと感じたことから,被告人の言に従い,被告人の面前において,こたつ の中に下半身を入れた状態で,原判示第一のとおり,バイブレーターによる自慰行為をした。
 B子は,事件当時は,同中学校3年生で,2年生のとき以来,被告人から週1時間英語の授業を受け,また英語係として英語研究室に出入りしており,本件前にそ の同級生である前記D子と被告人方に遊びに行ったことがあった。その際,被告人は,両名に対し,酒を勧めてともに飲酒し,セックスやオナニーの話をし,深夜の ホテル街に連れて行って外観を見せ,「今度は入ろう。」などと言った。平成7年4月29日,再び被告人方を訪れた両名に対し,被告人は,酒を勧めてともに飲酒 し,同行してきていた男子生徒2名を帰宅させた後,B子及びD子の両名に対し,オナニーやバイブレーターの話をした上,翌30日午前3時ころ,両名を連れてい わゆるラブホテルであるホテル○○の×××号室へ入った。被告人は,同室内において,両名に客室備付けのアダルトビデオを見せ,さらにセックスの話をするなど して,その性的好奇心をあおった。すると,B子は,ベッドで手指を用いて自慰行為を始めたが,さらに被告人は,ホテルのフロントにバイブレーターを注文して入 手し,両名にこれを示し,スイッチを操作するなどしてその使用方法を説明した上,B子がこれを自己の性器に挿入して自慰行為をするであろうことを承知していな がら,これを同児に手渡した。B子はこのバイブレーターを使わざるを得ない状況にあると感じたことから,被告人の面前においてベッド上のふとんの中で,原判示 第二のとおり,バイブレーターによる自慰行為をした。
 右の事実関係によれば,要するに,被告人は,中学校の教師という生徒への強い立場を利用して,その生徒である女子中学生にバイブレーターを与えて淫行を勧 め,同児をして淫行をするに至らせ(原判示第一),また,同じく中学校の教師という生徒への強い立場を利用して,その生徒である女子中学生にバイブレーターを 入手した上その使用方法を説明して手渡し,同児をして淫行をするに至らせた(原判示第二)ものであって,まさに児童に対し事実上の影響力を及ぼして児童が淫行 することに原因を与えあるいはこれを助長する行為をし,それが淫行をする行為に包摂される程度を超えていたことが認められるから,右各行為が児童福祉法34条 1項6号にいう淫行を「させる行為」に該当することは明らかである。
 そして,被告人の右各行為は,社会的に強く非難されるべき当罰性の高い行為であって,所論のうち,その当罰性が高くないかのようにいう点も,失当である。』

長崎家裁昭和34年12月10日判決
『そこで、右認定の事実によると、被告人は右Aが満十八歳に満たない児童であることを知らないで、これを従業婦として雇つていたことが明かであるが、児童の年 齢を知らないことにつき過失がある以上被告人が本件児童福祉法第三十四条第六号違反の責を免れないことは同法第六十条第三項但書の明定するところであるから、 被告人が前記の点につき無過失かどうかを考察しなければならない。
 同法第六十条第三項但書にいう児童の年齢を知らないことにつき、過失がないといえるためには、使用者が児童を雇入れる際、児童本人や仲介者などの自称する年 齢を軽信せず、児童の戸籍謄本又は抄本などによつて生年月日を調査し、あるいは親許の照会をして年齢を確かめるとか、一般に確実性のある調査確認の方法を一応 つくすことが必要と考えられる。
 そこで、ひるがえつて本件の場合についてみると、被告人は前記Aを雇入れと同時に、本人自称の本籍地役場に電話で、本籍、氏名、生年月日を問い合わせて、そ の確認をえたのであるから、これによつて本件の場合なお正確な年齢を知りえなかつたとしても、それは右Aが巧みに偽名を用いたためにほかならず、被告人の調査 不十分を責めるのは無理といわねばならない。
 もつとも、被告人は同女を雇傭中男客より同女の年が足らないようなことを聞いたことがあるが、被告人は、その際同女に更めて年齢を確めたところ、雇入れ当時 と同様の主張をしたことが被告人の前掲副検事に対する供述調書により認められるし、その他特に同女の年齢につき疑念をさしはさむような事情があつたことが認め られない本件では被告人のなした前記調査は、その時期、方法において一応確実性ある年齢確認の措置をとつたものと認めることができる。
 そうすると、被告人は、前記Aの年齢を知らないことにつき無過失というべきであるから、結局本件公訴事実は前記児童福祉法第六十条第三項但書の規定により罪 とならないものというべきである。)』

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