新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.1646、2015/10/19 15:37 https://www.shinginza.com/qa-hanzai.htm

【刑事、逮捕、勾留、身柄拘束、示談の重要性とその根拠】

通常逮捕手続きにおける勾留回避の方法

質問:
東京都在住の33歳、会社員です。本日、警察が自宅にやってきて、警察署まで任意同行を求められた上、逮捕状を見せられ逮捕されました。10日ほど前、偶々立ち寄ったコンビニエンスストアで店員の顔面を殴る等して全治約10日間を要する打撲等の怪我を負わせた、という傷害の容疑がかけられています。店員の接客態度に腹を立てて殴ったこと、私を捕まえようとする店員をさらに殴る等して逃げ帰ってきたことは覚えているのですが、事件当時は飲み会の帰りで酔っていたこともあり、細かい暴行態様については記憶が定かでない部分もあります。私はこのまま勾留されてしまうのでしょうか。身柄拘束が長期化すると、会社を長期欠勤せざるを得なくなるため、大変不安です。また、刑事処罰は避けられないのでしょうか。



回答:

1.早急に弁護士に依頼し、被害者と示談することにより身柄の拘束や刑事処分を防ぐことは可能です。 2.あなたは現在、傷害罪(刑法204条)の被疑事実で逮捕されている状態であり、目先では、逮捕から48時間以内に送検の手続きがとられた上(刑事訴訟法203条1項)、検察官が裁判官に対する勾留請求を行うか否かを検討することになります。

2.勾留の要件は刑事訴訟法に定めが置かれており、本件では主に罪証隠滅のおそれ(刑事訴訟法207条1項、60条1項2号)、逃亡のおそれ(刑事訴訟法207条1項、60条1項3号)、勾留の必要性(刑事訴訟法207条1項、87条1項)の有無が問題になると考えられます。本件では、現に暴行という手段を用いて逃亡を図っていること、あなたが被害者の勤務地を把握しており、威迫や懇願等によって被害者の供述を変遷させる等の働きかけが客観的には比較的容易な状況にあるといえること等の事情からすれば、検察官や裁判官とすれば、罪証隠滅のおそれや逃亡のおそれ、勾留の必要性があると考えざるを得ないところでしょう。

3.通常逮捕の場合、令状なしでの身柄拘束が認められている現行犯逮捕の場合と異なり(刑事訴訟法213条)、逮捕状発付の際に一度司法審査を経て、身柄拘束が許容されています(刑事訴訟法199条2項)。そのため、一度通常逮捕が認められてしまった場合、逮捕状発付時とは異なる有利な事情の変化がなければ、勾留回避が困難となることが多い点、注意が必要です。

4.上記のような本件事案の性質に照らせば、就業への支障や示談(謝罪と被害弁償)申入れの準備をしている、といった一般的な事情のみでは勾留請求や勾留決定を回避するための事情としては不十分と思われます。とすれば、逮捕に続く勾留を回避するためには、勾留の理由(罪証隠滅のおそれ、逃亡のおそれ)と必要性を低下させるような状況を作り出す必要があり、具体的には、速やかに弁護人を選任し、弁護人を介して被害者との間で示談を成立させることが最低限必要になってくると考えられます。弁護人には、一刻も早い示談成立に向けた行動力が求められることになります。

5.示談成立後は、勾留請求前であれば検察官に対して勾留請求をしないよう求め、勾留請求後であれば勾留判断の主体である裁判官に対して勾留請求を却下するよう求め、勾留決定後であれば勾留の裁判に対する準抗告(刑事訴訟法429条1項2号)を申し立てる必要があります。また、終局処分についても、示談の結果を踏まえて、弁護人に不起訴処分を求める内容の詳細な意見書を作成してもらい、検察官と交渉してもらうべきことになるでしょう。本件の事案であれば、示談が成立した場合、前科の存在や余罪多数等の特別な事情がなければ、十分不起訴処分が見込めるものと考えられます。

6.本件はいかに早期に被害者との示談を成立させられるかが事件の帰趨を大きく左右することになると考えられます。家族等を介して弁護人を選任するにあたっては、同種事案の弁護の経験や示談交渉の進め方に関する弁護士の考え方・方針等をよく確認の上、適任者を選ばれることを強くお勧めいたします。

7.示談関連事例集1627番、関連事例集論文1582番1559番1541番1536番1402番1367番1349番1324番1307番1258番1164番1106番1089番1063番1031番896番595番459番386番359番319番258番158番など参照。


解説:

1.(刑事手続の見通し)

(1)勾留の要件
 あなたは現在、傷害罪(刑法204条)の被疑事実で逮捕されている状態であり(刑事訴訟法201条1項)、目先では、逮捕から48時間以内に送検の手続きがとられた上(刑事訴訟法203条1項)、検察官において、裁判官に対して勾留請求を行うか否かが検討されることになります。勾留とは、逮捕に引き続き行われる比較的長期の身柄拘束処分のことであり、原則10日間、裁判官によって必要性が認められた場合は更に10日間、身柄拘束が継続することになります(刑事訴訟法208条1項、2項)。刑事訴訟法は、勾留の要件として、@被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があること(刑事訴訟法207条1項、60条1項柱書)、A被疑者に住所不定、罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由、逃亡すると疑うに足りる相当な理由のいずれかの事情があること(これらを合わせて、勾留の理由といいます。刑事訴訟法207条1項、60条1項各号)、B諸般の事情に照らして勾留の必要性があること(刑事訴訟法207条1項、87条1項)の3つを規定しています。勾留請求をされた裁判官は、検察官の勾留請求が上記の要件を満たしているか否かを審査することになりますので、あなたの今後の身柄拘束に関する見通しも、かかる要件に沿って検討する必要があります。

(2)本件における勾留判断の見通し
 そこで、本件について見ていくと、まず、警察はあなたの逮捕に先立ち、コンビニエンスストア店内の防犯カメラや負傷した店員(被害者)の供述等から、犯行の際の具体的状況に関する証拠を既に収集していると思われます。あなたが犯人として浮上した理由はお聞きした事情のみからでは明らかでないですが、少なくとも、あなた自身の認識として本件犯行の犯人があなたであることに間違いないということであれば、@あなたが罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があることは明白といえるでしょう。
次に、本件では、あなたはコンビニエンスストアの店員による逮捕を避けるために、現に暴行という手段を用いて逃亡を図っており、また、あなたは被害者の勤務地を把握しているわけですから、威迫や懇願等によって被害者の供述を変遷させる等の働きかけが客観的には比較的容易な状況にあるといえます。かかる事案の性質からすれば、検察官や裁判官とすれば、A勾留の理由(逃亡のおそれ、罪証隠滅のおそれ)があると考えざるを得ないところでしょう。
 さらに、逃亡のおそれや罪証隠滅のおそれが高いことは、それ自体B勾留の必要性を高めることになります。伺った事情のみで断言できるわけではありませんが、上記のような本件事案の性質に照らせば、勾留の必要性が認められてしまう可能性が高いと考えられ、就業への支障や示談(謝罪と被害弁償)申入れの準備をしている、といった一般的な事情のみでは勾留請求や勾留決定を回避するための事情としては不十分と思われます。
 そもそも、通常逮捕の場合、令状なしでの身柄拘束が認められている現行犯逮捕の場合と異なり(刑事訴訟法213条)、逮捕状発付の可否の審査の時点で一度司法審査を経て、身柄拘束が許容されているわけです(刑事訴訟法199条2項)。法が被疑者の逮捕に際して要求している要件(罪を犯したことを疑う相当な理由、逮捕の理由、逮捕の必要性(刑事訴訟法199条2項、刑事訴訟規則143条の3))は上記の勾留の要件と重なる部分が大きいため、一度通常逮捕が認められてしまった場合、逮捕状発付時と比較して有利な事情の変化がなければ、勾留回避が困難となることが多いのです。残念ながら、本件では、かかる有利な事情の変更がない限り、検察官による勾留請求が行われ、裁判官によって勾留決定が出されてしまう可能性が高いといわざるを得ないでしょう。

(3)本件における刑事処分の見通し
 傷害結果が全治約10日間と比較的軽微であることからすれば、例えば同種前科があったり犯行を否認する供述をしている等の特別な事情がなければ、本件が正式裁判となる(公判請求される)ことは考えにくいと思われます。もっとも、処分相場に照らせば、傷害結果が軽微であるとしても、示談(謝罪と被害弁償)の成立なくして本件が不起訴処分となって刑事手続終了するとも考えにくく、本件で何ら必要な対応を行わずにいた場合、略式起訴された上、30万円程度の罰金刑となることが予想されます。不起訴処分を獲得して前科を回避するためには、被害者であるコンビニエンスストアの店員との示談が必須となるでしょう。

2.(勾留回避、不起訴処分獲得に向けた具体的対応)

(1)示談の必要性
 上記のとおり、本件は現時点で勾留の理由と必要性共に認められてしまい易い状況と考えられますので、逮捕に続く勾留を回避するためには、勾留の理由(罪証隠滅のおそれ、逃亡のおそれ)と必要性を低下させるような状況を作り出す必要があります。具体的には、速やかに弁護人を選任し、弁護人を介して被害者との間で示談を成立させることが最低限必要となってくるでしょう。
 示談の成否は傷害事件における終局処分決定の際の重要な考慮要素となるため、被害者との示談成立に至った場合、不起訴処分の可能性が飛躍的に高まることになります(刑事訴訟法248条参照)。そして、不起訴処分の可能性が高まるということは、刑事処罰をおそれて逃亡や罪証隠滅を図る動機(勾留の理由)が低減することを意味するとともに、逮捕に続いて更に身柄拘束を継続させる合理的根拠(勾留の必要性)を欠くことになるため、示談の成立は、起訴を回避する上でも、身柄拘束を最短に止めるためにも、極めて重要な意味を持つことになります。
 示談の必要性の理論的根拠ですが、法の支配に求められます。個人主義,自由主義から人間は生まれながらに自由であり,本来これを奪うことは出来ませんが(憲法13条),行為者が義務を負い,とりわけ,生命身体の自由を剥奪,制限されるのは,法の支配の趣旨から国民が委託した立法府により定められた正義にかなう公正,公平な法によらなければならず,個人による報復,自力救済は一切禁止されることになります。これを適正手続きの保障,自力救済禁止の原則といいます(憲法31条,32条,76条)。法治国家の存在自体がこれを裏付けています。このような構造から明文はありませんが,被害者は自力救済禁止の反射的効果として国家に対して適正な刑事裁判を通じて被告人を処罰して欲しいという抽象的な処罰を求める請求権(処罰請求権)を有していると考えることができます。被害者の刑事告訴権(刑事訴訟法230条)もこのような構造から当然に導かれる権利と考えることができます。
 従って,規定がなくても理論的に当然認められる権利と言ってよいでしょう。刑事裁判で近時認められた被害者の公判廷での被害者参加,意見陳述も,この被害者の抽象的処罰請求権の具現化と位置付けることができます(刑訴316条の33,同38以下参照)。示談は,通常「処罰請求権を事実上放棄する。すなわち一切の処罰を求めない。」「許す。」「宥恕する。」という言葉が記載されています。この短い文章が,刑事手続きに絶大な効果を及ぼします。この言葉が入っていない示談書,和解合意書は被害者が本来有する抽象的処罰請求権の放棄がないので刑事手続き上効果がかなり低いといわざるを得ません。仮に刑事弁護人が示談書にこの言葉の記載漏れを生じせしめた場合,量刑に大きな差異を生じ責任問題にもなりかねません。法律の解釈適用を行う裁判所(司法権)は,国民の信託を根拠にしており,当該犯罪の被害者が示談,和解により処罰請求権行使を事実上放棄するのであれば,積極的に刑罰を適用する理由が希薄になり刑事裁判に大きな影響を及ぼし,又,起訴前の検察官の公訴権行使に大きな影響を与えることになります。刑訴248条,起訴便宜主義も「犯罪後の情況により」と規定し被害者側の意思を重視する結果になっています。起訴後も執行猶予となるための不可欠な条件といえるでしょう。

 ここで、検察官が勾留請求を行うか否かを判断するタイミングは送検から24時間以内(逮捕時から72時間以内)とされており(刑事訴訟法205条1項、2項)、仮に勾留請求がなされた場合、通常遅くとも24時間以内には裁判官による勾留判断(勾留決定を出すか否か)がなされることになります。裁判官による勾留決定が一度出されてしまうと、勾留期間(原則として10日間)前に身柄拘束から解放してもらうためには勾留の裁判に対する準抗告の申立て(刑事訴訟法429条1項2号)という手続きを行い、勾留の裁判を取り消してもらう必要が生じ、この場合、申立てから判断まで半日乃至1日程度の時間を要することが見込まれます。このように、示談の成立まで時間がかかればかかるほど身柄拘束が長期化してしまうため、示談交渉への着手は一刻を争う状況といえます。
 したがって、本件であなたの弁護人として活動する弁護士には、即座に示談交渉を開始してくれるフットワークの軽さと、示談の早期成立を実現できるだけの同種事案の弁護経験が求められることになります。被害者が面識のない人物である場合、示談交渉開始にあたり、被害者の連絡先等の情報を捜査機関から開示してもらう必要があることが多く、捜査機関が示談に非協力的であったり、捜査機関が被害者に対して弁護人への情報開示の可否について確認する過程で時間を要するような場合、なかなか示談交渉に着手できないというケースも良く経験するところではあります。しかし、本件の場合、被害者が勤務しているコンビニエンスストアの場所が分かっているため、捜査機関からの情報開示がなくとも、弁護人が示談交渉のために被害者と接触を図ることは比較的容易であると思われます。

 中には、捜査機関による被害者への意思確認を待たずに被害者に接触することに対する躊躇(示談は簡単言うと謝罪であり弁護人が自ら真剣にお詫びしなければいけないということですからこれが苦手な弁護人も存在するようです。)からか、捜査機関に対する被害者情報の開示要請以上に示談交渉開始に向けた具体的行動に出ようとしない弁護士もいるかもしれません。しかし、示談の成否が勾留回避の可否という差し迫った問題に大きく影響する状況下において、示談交渉開始に向けた積極的行動に出ないというのは、弁護活動として疑問を抱かざるを得ないところです。そもそも、刑事事件の加害者は被害者に対して民事上の損害賠償義務を負っており(民法709条)、速やかに履行すべき立場にあります。弁護士が加害者の代理人として被害弁償申入れのために早期に被害者との接触を試みることは、正にかかる民事上の責任を全うしようとする行動に他ならず、法的にも道義的にも何ら責められるべきことではありませんし、かかる民事上の責任を果たすにあたって、前もって捜査機関による被害者への意思確認を経なければならない合理的理由もありません。弁護人には、一刻も早い示談成立に向けた行動力が求められるといえます。

(2)具体的対応
 不起訴処分を獲得するためだけでなく、逮捕に続く勾留を回避するためにも、被害者との示談が必須となることについては既に述べたとおりです。前記のとおり、示談によって不起訴処分相当の事案となったことを示す必要があるため、示談合意書の作成にあたっては、最低限、被害者の宥恕(加害者に対して刑事処罰を求めない程度に許すという意思)を盛り込む必要があります。

 示談の際には、被害者の生活の平穏確保のために、被害者に対して直接接触しないことを違約金条項付きで誓約する等の内容を盛り込むことで、勾留の要件との関係でも罪証隠滅のおそれや勾留の必要性を低下させることが可能となります。

 また、逃亡のおそれとの関係では、両親や配偶者等の身近な家族に身元引受人(釈放された被疑者の身元を責任を持って引き受け、再び罪を犯したり罪証隠滅や逃亡等を図ることがないよう、指導、監督することを誓約する者のこと)となってもらうよう協力を得ることが不可欠といえます。

 このように、弁護人としては、被害者との示談を早期に成立させた上、勾留の要件を満たしていないことを示す資料を準備し、未だ検察官による勾留請求がなされていないタイミングであれば当該検察官に対して、既に勾留請求がなされているのであれば勾留請求の当否を判断する裁判官に対して、勾留の要件を欠いていることを説得的に主張する内容の詳細な意見書を提出した上、直接面談する等して身柄釈放を求めていくべきことになります。

 なお、伺った事情によれば、被害者に対して行った暴行の細かい態様について記憶が定かでない部分があるとのことですが、一般的に、被疑者が犯行を否認したり、「覚えていない」旨の供述を行った場合、被害者等事件関係者への働きかけ等によってその供述を変遷させる等の罪証隠滅を行う動機があることを示す事情となり、勾留の要件(罪証隠滅のおそれ、勾留の必要性)との関係では相当不利に斟酌されることとなります。そのため、身柄の早期釈放をより確実なものとするためには、取調べ等において供述する際、犯行の一部を否認しているなどと捉えられないよう、供述すべき内容について弁護人とよく協議しておく必要があるでしょう。

 終局処分についても、示談の結果を踏まえて、弁護人に不起訴処分を求める内容の詳細な意見書を作成してもらい、検察官と交渉してもらうべきことになるでしょう。

3.(最後に)

 以上のとおり、本件はいかに早期に被害者との示談を成立させられるかが事件の帰趨を大きく左右することになると考えられます。やむを得ず勤務先を欠勤せざるを得ないような場合、身柄拘束期間1日の違いによって職場での処遇が大きく左右されるといった事態も容易に想定されるため、弁護人としては、一刻も早い示談の成立に向けた行動力と手腕が求められることになるでしょう。

 家族等を介して弁護人を選任するにあたっては、同種事案の弁護の経験や示談交渉の進め方に関する弁護士の考え方・方針等をよく確認の上、適任者を選ばれることを強くお勧めいたします。

≪参照条文≫
刑法
(傷害)
第二百四条  人の身体を傷害した者は、十五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

刑事訴訟法
第六十条  裁判所は、被告人が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がある場合で、左の各号の一にあたるときは、これを勾留することができる。
一  被告人が定まつた住居を有しないとき。
二  被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
三  被告人が逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
第八十七条  勾留の理由又は勾留の必要がなくなつたときは、裁判所は、検察官、勾留されている被告人若しくはその弁護人、法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族若しくは兄弟姉妹の請求により、又は職権で、決定を以て勾留を取り消さなければならない。
第百九十九条  検察官、検察事務官又は司法警察職員は、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があるときは、裁判官のあらかじめ発する逮捕状により、これを逮捕することができる。ただし、三十万円(刑法 、暴力行為等処罰に関する法律及び経済関係罰則の整備に関する法律の罪以外の罪については、当分の間、二万円)以下の罰金、拘留又は科料に当たる罪については、被疑者が定まつた住居を有しない場合又は正当な理由がなく前条の規定による出頭の求めに応じない場合に限る。
○2  裁判官は、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があると認めるときは、検察官又は司法警察員(警察官たる司法警察員については、国家公安委員会又は都道府県公安委員会が指定する警部以上の者に限る。以下本条において同じ。)の請求により、前項の逮捕状を発する。但し、明らかに逮捕の必要がないと認めるときは、この限りでない。
第二百一条  逮捕状により被疑者を逮捕するには、逮捕状を被疑者に示さなければならない。
第二百三条  司法警察員は、逮捕状により被疑者を逮捕したとき、又は逮捕状により逮捕された被疑者を受け取つたときは、直ちに犯罪事実の要旨及び弁護人を選任することができる旨を告げた上、弁解の機会を与え、留置の必要がないと思料するときは直ちにこれを釈放し、留置の必要があると思料するときは被疑者が身体を拘束された時から四十八時間以内に書類及び証拠物とともにこれを検察官に送致する手続をしなければならない。
第二百五条  検察官は、第二百三条の規定により送致された被疑者を受け取つたときは、弁解の機会を与え、留置の必要がないと思料するときは直ちにこれを釈放し、留置の必要があると思料するときは被疑者を受け取つた時から二十四時間以内に裁判官に被疑者の勾留を請求しなければならない。
○2  前項の時間の制限は、被疑者が身体を拘束された時から七十二時間を超えることができない。
第二百七条  前三条の規定による勾留の請求を受けた裁判官は、その処分に関し裁判所又は裁判長と同一の権限を有する。但し、保釈については、この限りでない。
第二百八条  前条の規定により被疑者を勾留した事件につき、勾留の請求をした日から十日以内に公訴を提起しないときは、検察官は、直ちに被疑者を釈放しなければならない。
○2  裁判官は、やむを得ない事由があると認めるときは、検察官の請求により、前項の期間を延長することができる。この期間の延長は、通じて十日を超えることができない。
第二百十三条  現行犯人は、何人でも、逮捕状なくしてこれを逮捕することができる。
第二百四十八条  犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないときは、公訴を提起しないことができる。
第四百二十九条  裁判官が左の裁判をした場合において、不服がある者は、簡易裁判所の裁判官がした裁判に対しては管轄地方裁判所に、その他の裁判官がした裁判に対してはその裁判官所属の裁判所にその裁判の取消又は変更を請求することができる。
二  勾留、保釈、押収又は押収物の還付に関する裁判

刑事訴訟規則
(明らかに逮捕の必要がない場合)
第百四十三条の三  逮捕状の請求を受けた裁判官は、逮捕の理由があると認める場合においても、被疑者の年齢及び境遇並びに犯罪の軽重及び態様その他諸般の事情に照らし、被疑者が逃亡する虞がなく、かつ、罪証を隠滅する虞がない等明らかに逮捕の必要がないと認めるときは、逮捕状の請求を却下しなければならない。

民法
(不法行為による損害賠償)
第七百九条  故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。


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