新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.1626、2015/08/10 12:00 https://www.shinginza.com/qa-syounen.htm
【少年事件、家庭裁判所からの逆送後の対応、福岡地裁小倉支部平成26年3月27日決定】

少年事件・逆送後の対応
   
質問:
 現在私には,もうすぐ19歳になる息子がいます。これまで刑事事件等は起こしたことがありませんでした。
 息子は既に働いていて,一人で暮らしていますが,先日,息子が強盗致傷罪の容疑で逮捕された,という連絡がありました。
 その後息子は鑑別所というところに行きましたが,昨日,家庭裁判所から,再度検察官に送致する,という決定がされたと聞きました。調べてみると,息子は刑事裁判によって裁かれる,ということのようです。この決定によって息子はどのようになるのでしょうか。
 なお,まだ被害者の方との間で,示談等はしておりません。この点をどうしたら良いかも併せて教えてください。



回答:
 通常,未成年者の刑事事件は,成人の手続とは異なる特別な手続き・処分が予定されています。しかし,一定の場合,基本的に未成年者(少年)であっても,成人と同じ手続の流れで同種の処分になることがあります。
 今回の再度検察官に送致するという決定は,いわゆる「逆送」という手続きで,まさに少年であっても成人と同様の手続き・処分をおこなう前提となる決定です。この決定を受けた検察官は,基本的に家庭裁判所ではなく地方裁判所に起訴することになり,起訴をされた地方裁判所は,成人と基本的には同じ手続きで,成人と同じような刑事処分を決することになります。そのため,本件のような強盗致傷罪の場合は,お子様のような少年であっても,裁判員裁判となります。
 ただし,「逆送」された少年の場合,起訴された地方裁判所が,事件を家庭裁判所に再度移送する決定をすることができます。その場合,再度少年事件として,家庭裁判所の判断(審判)により,成人とは異なる処分を受けることになります。
 この移送がなされるかどうかは,少年法の趣旨に係るところですが,そもそも少年審判を目指して移送を主張した方が良いのか,あるいはこのまま裁判員裁判を進行させた方が良いのかについては,それぞれの場合に予測される処分によっても変わってきます(下記で詳述します)。
 また,被害者との間の示談が未了である点も問題です。移送を求めるとしても,そのまま進行させるとしても,本件で示談は必須であるところです。たとえ、強盗致傷罪でも、少年であり前科がないと思われますので、示談ができれば執行猶予付き判決の可能性が大きいからです。本件が逆送されてしまったのは、肝心かなめの示談、被害者の上申書が取れなかったことが大きく影響しているからでしょう。被害者のある犯罪(個人法益保護の犯罪)では、刑事事件の本質(刑事裁判による処罰は、自力救済禁止による被害者の処罰請求権を根拠にしています。)から示談なくして弁護活動により少年被疑者、被告人を有利に導くことはほぼ不可能です。何故、被疑者段階、家裁送致後逆送まで担当弁護士による示談ができなかったのかその原因を徹底的に分析しなければないけません。今からでも遅くありません。示談をし、被害者の上申書を獲得できれば再度家庭裁判所に移送される可能性が十分あります(少年法55条の再移送)。
 その場合、執行猶予も十分望めるようであれば、判決を求めてもよいかもしれませんので柔軟な対応ができるでしょう。
いずれにいたしましても,少年事件と成年の刑事事件の両方に経験のある示談ができる弁護士に今後の進行について至急ご相談されることをお勧めいたします。

 少年事件関連事例集1572番1591番参照。その他少年事件 関連事例集1544番1459番1432番1424番1402番1336番1220番1113番1087番1039番777番716番714番649番461番403番291番245番244番161番参照。


解説:

1 はじめに

  本件の強盗致傷罪は,刑法第240条に規定があり,その法定刑は無期または6年以上の懲役となっています。そのため,裁判員裁判の対象事件となります(裁判員法第2条1項1号)。

  しかし,これは成人が強盗致傷の罪に問われた場合です。未成年者による犯罪は少年法の適用を受けますから(少年法第2条),成人の刑事事件とは異なる観点から異なる手続が進められ,異なる処分が決されることになります(少年法第40条参照)。少年に対する処分のことを,「保護処分」といいます。

  ただし,特定の事件については,少年法による保護処分ではなく,上記のとおり成人の場合の手続・処分の流れに付されることがあります。

  以下では,@未成年者に成人と異なる手続・処分が妥当する根拠(少年法の趣旨)を前提としてご説明した上で,A未成年者であっても成人と同じ手続・処分の流れに付されるための特別な手続(いわゆる「逆送」といわれる手続です)及びその要件とそれに対する対応を踏まえた上で,B本件に関して想定しうる具体的な弁護活動についてご説明します。

  なお,本稿では主に「逆送」とその対応について説明いたしますので,少年事件一般についての弁護活動(付添人としての活動)については当事務所のホームページ事例集1572番1591番等をご参照ください。

2 少年法の趣旨について

(1)少年法は,その目的を「少年の健全な育成を期し,非行のある少年に対して性格の矯正及び環境の調整に関する保護処分を行うとともに,少年の刑事事件について特別の措置を講ずること」としています(少年法第1条)。すなわち,少年の場合は刑罰ではなく「健全な育成」をおこなうため,「保護処分」という特別な措置(処分)をおこなうということです。

  あくまでも少年の「健全な育成」を目的とするため,成人に対するものとは,処分に至る手続や処分の内容も異なる,ということになります。

  このような目的によって,少年による犯罪(非行)について成人に対する刑罰と異なる措置をとるのは,主に,年少者は成人と異なり環境や性格を教育によって矯正することが可能である,という理由によるものです。この少年の教育による矯正可能性を「可塑性」といいます。少年には可塑性があって,しっかりとした教育がなされることによって更生が可能なのであれば,単に刑罰を与えるよりも,環境を変えて教育を施すことでかえって再非行等が防止できる(刑罰を課するよりも,社会にとってプラスになる)という考え方です。

  ここで、少年の刑事事件についてどうして刑法の他に少年法が規定されているのか簡単に説明しておきます。刑法とは犯罪と刑罰に関する法律の総称であり,刑罰は犯罪に対する法律上の効果として行為者に科せられる法益の剥奪,制裁を内容とする強制処分です。刑法の最終目的は国家という社会の適正な法的秩序を維持するために存在します。どうして罪を犯した者が刑罰を受けるかという理論的根拠ですが,刑罰は,国家が行為者の法益を強制的に奪うわけですから,近代立憲主義の原則である個人の尊厳の保障,自由主義,(本来人間は自由であり,その個人に責任がない以上社会的に個々の人が国家権力によっても最大限尊重されるという考え方)個人主義(全ての価値の根源を社会全体ではなく個人自身に求めるもの,民主主義の前提です)の見地から,刑罰の本質は個人たる行為者自身に不利益を受ける合理的理由が不可欠です。その理由とは,自由に判断できる意思能力を前提として犯罪行為者が犯罪行為のような悪いことをしてはいけないという社会規範(決まり)を守り,適法な行為を選択できるにもかかわらずあえて違法行動に出た態度,行為に求める事が出来ます(刑法38条1項)。そして,その様な自分を形成し生きて来た犯罪者自身の全人格それ自体が刑事上の不利益を受ける根拠となります(これを刑法上道義的責任論といいます。判例も同様です。対立する考え方に犯罪行為者の社会的危険性を根拠とし,社会を守るために刑罰があるとする社会的責任論があります)。

  すなわち,刑事責任の大前提は行為者の自由意志である是非善悪を弁別し,その弁別にしたがって行動する能力(責任能力)の存在が不可欠なのです。この能力は,画一的に刑法上14歳以上と規定されていますから,少年であっても理論的には直ちに刑罰を科すことが出来るはずです。しかし,少年は刑事的責任能力としての最低限の是非善悪の弁別能力があったとしても総合的に見れば精神的,肉体的な発達は不十分,未成熟であり,周りの環境に影響を受けやすく人格的には成長過程にあります。従って,少年に対して形式上犯罪行為に該当するからといって直ちに成人と同様に刑罰を科するよりは,人格形成の程度原因を明らかにして犯罪の動機,原因,実体を解明し少年の性格,環境を是正して適正な成長を助けることが少年の人間としての尊厳を保障し,刑法の最終目的である適正な法社会秩序の維持に合致します。又,道義的責任論の根拠は,元々その人間が違法行為をするような全人格を形成してきた態度にあり,未だ成長過程にある未成熟な少年に刑罰を直ちに科す事は道義的責任論からも妥当ではありません。そこで,人格性格の矯正が可能な少年については処罰よりも性格の矯正,環境の整備,健全な教育育成を主な目的とした保護処分制度(保護観察,少年院送致等)及び少年に特別な手続(観護措置,鑑別所送致)が優先的に必要となるのです。更に少年の捜査等の刑事手続,家庭裁判所の裁判等の判断、少年法の解釈についても以上の観点から適正な解釈が求められます。


(2)このような考え方に基づく少年事件の手続・処分に関する特殊性については,当事務所のホームページ事例集1572番1591番に詳しい記載がありますが,本件との関係では,@(現在,お子様もこの措置を受けている状況のようですが)処分が出るまでの間の身体拘束として少年鑑別所による観護措置といわれるものがあること(少年法第17条),A裁判ではなく審判といわれる,非公開の審理手続によって処分が決まること(少年法第22条2項),B上記のとおり,刑罰ではなく保護処分が付されること(大きく@不処分,A保護観察,B少年院送致に分かれます。少年法第24条)が重要です。

(3)以上が,本件の前提となる少年事件の基本的な考え方です。これを踏まえた上で,本件での家庭裁判所の決定に対する対応をご説明していきます。

3 「逆送」という制度について

(1)「逆送」について

 ア 上記のとおり,原則として少年事件は刑事事件と異なる手続・処分が予定されていますが,家庭裁判所は刑事処分を科すことが相当であると考えた場合,事件を検察官に送る決定が可能です(少年法第20条)。

   通常の少年事件の場合,@警察による逮捕→A検察官による勾留→B検察官による家庭裁判所への送致→C家庭裁判所による観護措置決定→D家庭裁判所による審判→E家庭裁判所による保護処分という流れを辿るところ,送致を受けた裁判所が再度事件を検察官に戻すため,この決定を一般的には「逆送」(送致を受けた裁判所が逆に検察官に送致をする)といわれています。

 イ この「逆送」を受けた検察官は,成人における刑事事件と同様に,起訴・不起訴の判断をすることになります。家庭裁判所が逆走するということは刑罰を科すのが相当という判断ですから、検察官もこれをうけて起訴するのが一般的です。起訴された場合,通常の刑事裁判が開かれるため,公開の法廷で裁判が実施されます。また,本件のような強盗致傷事件も含まれるところですが,対象事件の場合,裁判員裁判が開かれることになります。

   また,検察官による起訴から判決までの間は,勾留がなされることになります。この勾留は,観護措置のように少年鑑別所ではなく,成人と同じように拘置所でなされるため,少年に対する教育的な処遇はなされません。

   なお,少年に対する刑事罰については,@死刑及び無期懲役刑相当の場合の刑罰の緩和(少年法51条),A「懲役3年以上,5年以下」といった不定期刑罰の存在(少年法52条)等の特殊な規定がありますが,上記少年院送致等の保護処分はなく,基本的には基本的に成人と同じ刑罰が科されることになります。
 このように「逆送」された少年事件は,少年法の趣旨に基づく特殊な手続・処分が原則として排除されることになります。

 ウ このように取り扱いが大きく変わりますから,当然,少年を「逆送」するためには,要件が必要です。
   まず,事件係属中に少年が20歳以上に達した場合,家庭裁判所は「逆送」決定をすることになります。これを「年齢超過逆送」といいます(少年法第23条3項,法第19条2項)。

   「年齢超過逆送」は無条件ですが,これとは別に「刑事処分相当逆送」が規定されています(少年法第23条1項,法第20条)。これは,@死刑,懲役または禁固に当たる罪で,A当該犯罪(非行)事実を認定できる場合でかつ,Bその罪質及び情状に照らして刑事処分が相当であること(「刑事処分相当性」)を要件とするものです。

   ここで重要なのは,「刑事処分相当性」です。「刑事処分相当性」の具体的な内容は規定がないため,解釈によることになるのですが,上記のとおり,本来少年については健全な育成のために保護処分という特別な処分(保護処分)がなされるべきである以上,「逆送」して刑事処分を科すということは,保護処分による「健全な育成」が見込めない場合か,少なくとも「健全な育成」を目的とする保護処分を科すことが適当でないこと(保護処分によることを社会が許容しないこと)が必要です。

   この判断をするための要素は多岐に亘りますが,これまでの裁判例上は,年齢や家庭環境,これまでの非行歴や,当該事件の行為態様やその動機,被害者の被害感情や少年の反省状況,今後の再非行可能性等が挙げられます。これらの要素は個別ではなく総合的に判断されることになります。

(2)「逆送」への対応について

 ア 以上が「逆送」の制度と要件ですが,以下では本件のように「逆送」決定がなされた場合の対応について,説明していきます。

   「逆送」の決定に対しては,不服申し立てができない,というのが判例です(最決平成17年8月23日刑集59巻6号720頁)。

   この点,「逆送」に端を発する刑事処分を回避する方法として,少年法には,保護処分が相当であるとして,再度裁判所が家庭裁判所に事件を移送する決定が規定されています。この決定は少年法第55条に規定されていることから,「55条移送」といわれています。

   少年法第55条は,55条移送の要件として「保護処分に付するのが相当であると認めるとき」としています。この「保護処分相当性」は,上記「逆送」と表裏の関係(保護処分が相当であれば,逆送する必要はなく,要件を充足しないという関係)にあるため,「保護処分相当性」の判断要素は,上記「逆送」の判断要素と共通となります。これらの要素を個別に検討するのではなく,総合的に考慮して決する点も変わりません。

   加えて,実際の裁判例(下記参考裁判例参照)では,保護処分相当性の他に,保護処分に付することが社会的に許容されること,すなわち「保護処分許容性」も必要とされています。例えば下記参考裁判例@では,犯罪の種類や,被害額や被害感情等の事情から,「被害感情や正義観念」の観点から保護処分に付することが許容されないとはいえない,として「保護処分許容性」を認めています。

 イ なお,上記の対応は,あくまでも「逆送」されてしまった場合の手続です。「逆送」を回避するのであれば,そもそも家庭裁判所に「逆送」決定されないように,事前に裁判所や調査官に働きかけておくことが重要です(この意味でも,早期対応が必要となります)。

4 本件における具体的対応

(1)上記のとおり本件においては,すでに「逆送」決定がなされており,「逆送」決定自体について不服申し立てができないため,この時点で、検察官による起訴、裁判員裁判は避けられません(55条移送は裁判員裁判によって判断されることになります)。

  そのため,裁判の中で主張をしていくほかありません。ここで主張するべきなのは,自ずと@保護処分が相当であるため,少年法第55条に基づく移送決定が相当であること,あるいはA執行猶予判決が相当であることのいずれかになります。

  もっとも,年齢超過による「逆送」ではない場合は,前科を回避するとともに,少年法の趣旨に基づく教育的配慮がなされる@少年法第55条に基づく移送を求めることを第1に考えるべきです。

(2)原則としては上記のとおりなのですが,@このまま刑事裁判を進めていけば,実刑ではなく執行猶予判決(あるいは罰金刑)が下される可能性が極めて高く,他方A家庭裁判所の保護処分としては少年院送致が見込まれるような場合には,むしろ保護処分による方が社会復帰の時期が延びるため,あえて刑事裁判を進めて執行猶予判決(あるいは罰金刑)を目指すことも考えられるところです。

   もっとも,@刑事裁判による執行猶予は「前科」となる,A必ず執行猶予判決が得られる保証はない,B刑事処分によっては教育的な配慮がなされないため,少年の将来にとってかえってよくない(更生の機会を逸する)等のリスクはあるため,慎重な検討が必要です。

(3)少年法第55条に基づく移送がなされるためには,上記のとおり保護処分相当性を裁判の中で主張していくことになります。特に本件では裁判員裁判となるため,難しい概念である少年法の趣旨と保護処分の相当性(許容性)を裁判員に説得的に主張することが要求されるところです。

   また,主張するだけではなく,例えば少年の反省や更生の状況,家庭環境等を明らかにするため,本人の日記等を証拠提出することも考えられるところです。

   ただし,本件のような裁判員裁判では,主張・証拠の内容や期限が厳密に定められているため,早期の準備が必要です。

(4)なお,本件のような強盗致傷事件で執行猶予の可能性を高めるためには,示談の成立は必須です。保護処分を決するにおいても,示談の成否は刑事処分に比して決定的な要素ではないものの,大きな要素として取り上げられます。

   また,参考裁判例@では,「保護処分の許容性」を判断するための要素として,被害回復(示談)を挙げているため,少年法第55条に基づく移送決定を得るためにも,示談は必要だ,ということになります。

   かかる観点からすると,いずれの手段を選択するにしても,早急に示談交渉を進める必要があることは明白です。

(5)以上のとおり,本件においては,まず示談を成立させたうえで,第1に55条移送を求めながら,予備的に執行猶予付きの判決を求めていくことになります。

   ただし,上記のとおり執行猶予判決の可能性や少年院送致の可能性等によっては,刑事処分の方がかえって負担が軽くなるケースもあるため,その見極めも必要になってきます。

   専門的な判断や対応が必要になってくるため,早期の専門家へのご相談をお勧めいたします。

【参照条文】
少年法
(この法律の目的)
第一条 この法律は,少年の健全な育成を期し,非行のある少年に対して性格の矯正及び環境の調整に関する保護処分を行うとともに,少年の刑事事件について特別の措置を講ずることを目的とする。
(検察官への送致)
第二十条 家庭裁判所は,死刑,懲役又は禁錮に当たる罪の事件について,調査の結果,その罪質及び情状に照らして刑事処分を相当と認めるときは,決定をもつて,これを管轄地方裁判所に対応する検察庁の検察官に送致しなければならない。
2 前項の規定にかかわらず,家庭裁判所は,故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪の事件であつて,その罪を犯すとき十六歳以上の少年に係るものについては,同項の決定をしなければならない。ただし,調査の結果,犯行の動機及び態様,犯行後の情況,少年の性格,年齢,行状及び環境その他の事情を考慮し,刑事処分以外の措置を相当と認めるときは,この限りでない。
(審判開始後保護処分に付しない場合)
第二十三条 家庭裁判所は,審判の結果,第十八条又は第二十条にあたる場合であると認めるときは,それぞれ,所定の決定をしなければならない。
2  家庭裁判所は,審判の結果,保護処分に付することができず,又は保護処分に付する必要がないと認めるときは,その旨の決定をしなければならない。
3  第十九条第二項の規定は,家庭裁判所の審判の結果,本人が二十歳以上であることが判明した場合に準用する。
(準拠法例)
第四十条 少年の刑事事件については,この法律で定めるものの外,一般の例による。
(家庭裁判所への移送)
第五十五条 裁判所は,事実審理の結果,少年の被告人を保護処分に付するのが相当であると認めるときは,決定をもつて,事件を家庭裁判所に移送しなければならない。

【参考裁判例】
@福岡地裁小倉支部平成26年3月27日決定
「3 処遇選択の理由
(1)保護処分の許容性
 本件は,被告人が,被害店舗のレジ係らと共謀し,精算したふりをして大量の商品を盗んだという窃盗の事案であり,犯行態様は悪質であって,被害金額も高額である。また,共犯者の供述によれば,被告人が同種の行為を多数回繰り返してきたことが認められるのであり,本件犯行は常習的なものといえる。
 しかしながら,被害品は買い取られており,結果的には本件犯行による財産的被害は回復されていること,被告人には窃盗の常習性がうかがわれるものの,本件で起訴されているのは窃盗1件のみであること,被告人が,本件に関し,3万円の贖罪寄付をしていることなどからすると,本件につき,刑罰ではなく保護処分を選択することが,被害感情や正義観念等に照らし,社会的に許容されないものであるとはいえない。
(2)保護処分の有効性
 被告人は,大学進学を希望する両親の期待に反し,平成22年×月に高校を中退したころから,両親に反発するようになり,家庭内では,学業が優秀な姉や兄に対して劣等感を感じることから,自らの居場所を求めて,不良交友に親しむようになった。本件当時,被告人と交際中の女性との間には子どもが生まれていたが,被告人は,父親としての自覚も乏しいまま,就労することもなく安易に不良仲間との交遊を続け,本件犯行に及んだものと認められる。このように,被告人には,自己の感情や欲求に従って安易な行動をとりがちであるという問題点があるのみならず,自分の能力に自信が持てないことから,他者からも軽視されやすいと考えており,自分の問題点を指摘されると自分ばかりが悪く思われると被害的に捉えがちであり,すぐに感情的になって怒りを露わにするなど,情緒的に安定せず抑制が利きにくいという問題点も強くうかがわれるのであり,被告人は,年齢に比して精神的に幼く,人格形成が未成熟であるといえる。そして,被告人は,上記のように改善すべき問題点を多く抱えているにもかかわらず,これまでに一度も保護処分を受ける機会を持たず,被告人の両親も,被告人に愛情をもって接してはいるものの,被告人に対して的確な指導監督をなし得ず,現状ではどのように被告人に対応すればいいのかとまどっていることが認められる。
 このような事情からすれば,被告人を更生させるためには,十分な矯正教育を行わないままで刑罰を科すよりも,強力な枠組みの中で専門家による指導の下,自己の問題点に真摯に向き合わせ,情緒面での安定と感情統制力の涵養を図るとともに,年齢相応の義務感や責任感を身に付けさせ,就労に向けた技術や技能を習得させるべく,長期にわたって緻密な矯正教育を行うことが有効であるといえる。そして,現在19歳という被告人の年齢からすると,今回が被告人を教育する最後の機会であると考えられる。よって,被告人に対しては,少年法の原則に則り,刑罰ではなく保護処分を選択するのが相当である。
4 以上の次第であるから,少年法55条を適用して,本件を福岡家庭裁判所小倉支部に移送することとし,主文のとおり決定する。」

A東京地裁八王子支部平成15年6月12日決定
「(処遇決定の理由)
1 本件は,前件傷害保護事件において非行なし不処分の決定(平成14年7月30日決定)を受けた被告人が,鑑別所を出所した8日後に犯した傷害の事案である。
2 本件は,被害者の顔面等を多数回殴り付けるなどした態様の良くない事件である上,被害者が事件後9か月余り経過した現時点においてもなお強い被害感情を抱いていること,本件当時被告人が保護観察中であったこと等の事情に照らすと,現時点においても,被告人の責任は軽いとはいえない。
3 そこで,少年の処遇について検討するに,平成15年1月8日付の東京家庭裁判所八王子支部裁判官作成の決定書(以下,「本件検察官送致決定」という。)は,本件の態様が悪質であり,被告人の抱える資質面での問題性が決定時において強固なものとなっており,少年に対する保護処分はもはや限界を超えている旨説示する。
 しかしながら,本件の罪質及び情状にかんがみると,本件が他の一般的な傷害保護事件に比べて直ちに刑事処分を相当とするほど悪質な事案とはいえないし,被告人を刑事処分に付さなければ一般の社会感情が許さないといった事情も見当たらない。また,本件検察官送致決定時において,少年の資質につき,保護処分によっては矯正改善の見込みがないと一義的に判断できるほどの客観的な資料もない。すなわち,平成14年12月27日付鑑別結果通知書によれば,被告人は観護措置等の一連の身柄拘束に対する不満感をあらわにして鑑別所内で暴行の要注意者に指定されるなどしたが,観護措置期間が極めて短いこともあって鑑別に必要な情報が十分に得られず,鑑別所の判定は「保留」とされており,本件検察官送致決定時における少年の資質が,これまでの保護処分によりどの程度改善されたかは客観的に知ることができない状態にあった。むしろ,平成14年12月26日付の保護観察状況等報告書(甲)によれば,被告人は,本件により逮捕されるに至るまで,就労こそ安定していなかったものの,保護司の来訪もおおむね継続して受けており,保護観察の指導に従う姿勢もみせていた。保護者の保護観察に対する態度も協力的であったものと認められ,少年なりに更生意欲を示していたようにも認められる。そうすると,被告人が19歳であることを考慮してもなお,被告人に対して刑事処分をもって臨むことは相当でなく,本件検察官送致決定はこの点の判断を誤った不相当なものである。
 なお,平成15年1月6日付の家庭裁判所調査官作成の意見書は,事件を検察官に送致することが相当である旨意見を付しているが,その理由として述べるところは,要するに,少年が事実を否認しており,事実認定の帰すうにこだわっているため内省が深まらず,そのまま矯正教育を受けるような決定をしても教育効果が上がらないから,ひとまずは事実関係を確定した上で少年の考えを深めさせることが必要であるという趣旨であり,事案の重大性や資質面の矯正不能を理由とする検察官送致意見でないことは一見して明確である(ただし,本件の罪質や被告人の主張内容等にかんがみれば,観護措置期間の更新や合議体による審理等を適正に運用することにより,少年審判手続における事実認定も十分可能であったものと思われ,家庭裁判所における事実認定機能を高めようとする改正少年法の趣旨に照らしても,本件検察官送致決定は不相当であったといえる。)。
4 そこで,被告人に対する処遇であるが,以上に述べたとおり,本件はその罪質及び情状に照らして,被告人に刑事処分を科することが相当であるとは言い難い。また,被告人の更生を図り社会適応を期するためには,家庭裁判所調査官がその意見書の理由中で述べているとおり,当裁判所が認定した事実関係を前提として,被告人自身に将来の身の振り方を考えさせることが必要不可欠である。そのためには,刑事処分の枠組みよりもむしろ,保護処分の枠内で被告人に対する働きかけを十分に行い,事件に対する内省を深めさせて自律的な更生意欲を促すことが相当である。なお,今後,さらなる資質面の鑑別及び要保護性の調査を遂げる必要があるものの,被告人の年齢や保護処分歴等にかんがみると,長期間の施設収容による矯正教育を施すことも十分検討に値する。
5 いずれにせよ,本件を契機に,被告人にさらなる更生の機会を与えるのが少年法の目的に照らして相当であると認められるので,少年法55条を適用して,本件を東京家庭裁判所八王子支部に移送することとし,主文のとおり決定する。」


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