あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゆう師、柔道整復師等の行政処分

行政|あん摩マッサージ指圧師|はり師|きゆう師|柔道整復師|臨床工学技士|救急救命士

目次

  1. 質問
  2. 回答
  3. 解説
  4. 関連事例集
  5. 参考判例

質問:

私は接骨院を経営している柔道整復師ですが、昔からよく通ってくれている患者さんが交通事故に遭い、首や腰が痛いというので施術をしていました。その患者さんから、「保険金が下りるので施術回数を水増しした施術証明書兼明細書を発行してもらえないか」、と頼まれ、長年の付き合いだったので断り切れず虚偽の証明書を発行してしまいました。その患者さんは保険金を受領し、お礼ということで私にも一部を分けてくれました。しかし、私は今になって後悔の気持ちが募るようになって来ました。この行為が発覚してしまったら、私と患者さんはどのような罪に問われてしまうのでしょうか、また、私の柔道整復師の国家資格はどうなってしまうのでしょうか。あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゆう師、臨床工学技士、救急救命士の国家資格の場合はどうですか。

回答:

1、虚偽の「施術証明書兼明細書」を発行して、交通事故に関する虚偽の保険金の請求をして保険金を受領する行為は、刑法246条詐欺罪の構成要件に該当する行為であり、あなたと患者さんは、共同正犯として、二人とも詐欺罪の罪責に問われてしまいます。詐欺は重罪ですから、被害額が数十万円程度であっても、逮捕勾留され、起訴されると実刑判決を受けてしまう可能性もがあります。

2、柔道整復師の国家資格については、柔道整復師法8条1項で、罰金刑以上の刑に処せられた者について、行政処分で免許の取り消しや、業務停止を命ずることができる旨定められています。業務停止の期間については法律の規定はありませんが過去の事例を見ると、業務停止期間は3月~5年が多いようです。

3、虚偽の施術を行ったように見せかけて、損害保険などの保険金を騙し取る詐欺行為は、損害保険制度の根幹を揺るがしかねない悪質な行為であると判断されて、免許取消し処分を受けてしまう危険性があります。なるべく早期に、被害者である保険会社に被害弁償の申し入れを行い、刑事事件で不起訴処分を得て行政処分を回避できるよう努力するべきでしょう。御心配の場合は、このような問題に詳しい法律事務所にご相談なさると良いでしょう。

4、医道審議会に関する関連事例集参照。

解説:

1、詐欺罪の適用可能性

虚偽の「施術証明書兼明細書」を発行して、交通事故に関する虚偽の治療費保険金の請求をして、保険金を受領する行為は、刑法246条詐欺罪の構成要件に該当する行為であり、あなたと患者さんは、共同正犯として、二人とも詐欺罪の罪責に問われてしまいます。詐欺は重罪ですし、交通事故の保険金の詐欺はさらに悪質で違法性が高い犯罪ですから、被害額が数十万円程度であっても、逮捕勾留され、起訴される可能性が高く、被害弁償ができていないと初犯であってもと実刑判決を受けてしまう可能性もあります。

刑法第246条(詐欺)第1項 人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。

詐欺罪の構成要件は、相手を騙す「欺もう行為」と、財物の「処分行為」から成っています。今回、あなたと患者さんは、虚偽の施術証明書兼明細書を発行して、保険金を請求し、保険金の振り込みを受けて居ますから、詐欺罪は既遂の状態です。被害者が被害届を提出し又は刑事告訴し、起訴立件されれば、有罪判決を受けてしまうことになります。詐欺罪の法定刑は10年以下の懲役刑ということになります。

なお、公的健康保険の療養費の不正請求についても、同様に詐欺罪の成立を観念しうるところではありますが、保険請求が保険点数の計上という複雑な形式をとっているため日常的に過失による誤請求が発生しうることもあり、健康保険組合では、欺もう行為の立証よりも、不正請求額の確定と返還請求に重点を置いて業務遂行しており、よほど悪質なケースでなければ詐欺罪での刑事告訴には至らないようです。健康保険の療養費不正請求が認定された場合は、療養費受領委任の取扱い中止(健康保険取扱い中止)という処分が下されることになり、これを受けて業務停止等の行政処分が検討されることになります。

2、医療資格者の行政処分根拠規定

柔道整復師の国家資格については、柔道整復師法8条1項で、罰金刑以上の刑に処せられた者について、行政処分で免許の取り消しや、業務停止を命ずることができる旨定められています。業務停止の場合の期間については法律の規定はありませんが過去の事例を見ると、業務停止期間は3月~5年が多いようです。

柔道整復師法第8条(免許の取消し等)第1項 柔道整復師が、第四条各号のいずれかに該当するに至つたときは、厚生労働大臣は、その免許を取り消し、又は期間を定めてその業務の停止を命ずることができる。

あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゆう師の場合も、あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律第9条第1項により、罰金刑以上の刑に処せられた者について、行政処分で免許の取り消しや、業務停止を命ずることができる旨定められています。

あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律 第9条第1項 施術者が、第三条各号の一に掲げる者に該当するときは、厚生労働大臣は期間を定めてその業務を停止し、又はその免許を取り消すことができる。

人工透析機器など生命維持管理装置の操作を行う臨床工学技士については、臨床工学技士法第8条1項で、罰金刑以上の刑に処せられた者について、行政処分で免許の取り消しや、臨床工学技士の名称使用停止を命ずることができる旨定められています。

臨床工学技士法 第8条(免許の取消し等)第1項 臨床工学技士が第四条各号のいずれかに該当するに至つたときは、厚生労働大臣は、その免許を取り消し、又は期間を定めて臨床工学技士の名称の使用の停止を命ずることができる。

ここで、「名称使用停止」という形の行政処分が規定されているのは、臨床工学技士が、臨床工学技士法37条1項により、本来看護師の業務である診療補助行為として生命維持管理装置の操作を行うことができると規定されているためです。臨床工学技士に非行があった場合に、臨床工学技士に対して「看護師の業務を停止する」と命ずることはできないので、「臨床工学技士の名称使用を停止する」という形の行政処分が下されるわけです。結局、臨床工学技士の名称使用停止処分を受けると、生命維持管理装置の操作をすることはできなくなりますので、医師や看護師などの行政処分における業務停止処分と事実上同様の処分を受けたことになります。

臨床工学技士法 第37条(業務)

第1項 臨床工学技士は、保健師助産師看護師法第三十一条第一項 及び第三十二条 の規定にかかわらず、診療の補助として生命維持管理装置の操作を行うことを業とすることができる。

第2項 前項の規定は、第八条第一項の規定により臨床工学技士の名称の使用の停止を命ぜられている者については、適用しない。

自治体などの救急車の緊急搬送時に医師の指示の下に気道の確保や心拍回復などの救命処置を行う救急救命士については、救急救命士法第9条1項で、罰金刑以上の刑に処せられた者について、行政処分で免許の取り消しや、救急救命士の名称使用停止を命ずることができる旨定められています。

救急救命士法 第9条(免許の取消し等)第1項 救急救命士が第四条各号のいずれかに該当するに至ったときは、厚生労働大臣は、その免許を取り消し、又は期間を定めて救急救命士の名称の使用の停止を命ずることができる。

3、医療資格者の行政処分運用状況

医師や歯科医師はもちろん上記のように医療関係の資格者については、罰金以上の刑に処せられた場合、免許の取り消し業務停止等の行政処分に処せられることになっています。医師や歯科医師については、罰金以上の刑が確定すると検察庁から厚生労働省へ情報が提供され医道審議会において行政処分が検討される手続きになって言います。しかしそれ以外の医療関係者については基本的に検察庁からの情報提供は行われていません。医師、歯科医師以外の「医療関係資格者」の行政処分について、当事務所で法令関係調査及び厚生労働省への聞き取り調査を行ったところ、行政処分対象事案の把握については、医師や歯科医師のような法務省との情報提供の合意は存在していないため、各都道府県(医事課、保健所等)において種々の方面から情報収集し(例えば被害者、職場からの情報提供等)、厚生労働省において処分対象者の弁明聴取を行い、有識者で組織される、厚生労働大臣の諮問会議である「医療関係職種行政処分に関する検討会議」に諮り、その答申を受けて、免許取消や業務停止などの行政処分を決定しているとのことでした。

当事務所において調査した、過去の行政処分例の抜粋を引用致します。

平成26年2月

柔道整復師、詐欺罪、通院日数を水増しする虚偽の施術証明書・施術費明細書を作成し提出して、保険金約43万円をだまし取った事案、懲役1年6月・執行猶予4年 → 業務停止2年

あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゆう師、石川県子ども総合条例違反、自己の性欲を満たす目的で15歳の少女が18歳未満であることを知りながらホテルにおいて青少年に対してわいせつな行為をした、懲役8月実刑 → 免許取消

救急救命士、①法定速度50キロの道路を91キロで走行=罰金9万円、②免許の効力停止中に消防車を運転した=罰金40万円 → 名称使用停止1月

柔道整復師、療養費不正請求215万円=療養費受領委任の取扱い中止(健康保険取扱い中止)→ 業務停止3月

柔道整復師、療養費不正請求219万円=療養費受領委任の取扱い中止(健康保険取扱い中止) → 業務停止3月

柔道整復師、療養費不正請求192万円=療養費受領委任の取扱い中止(健康保険取扱い中止) → 業務停止3月

柔道整復師、療養費不正請求152万円=療養費受領委任の取扱い中止(健康保険取扱い中止) → 業務停止3月

柔道整復師、療養費不正請求92万円=療養費受領委任の取扱い中止(健康保険取扱い中止) → 業務停止3月

柔道整復師、療養費不正請求25万円=療養費受領委任の取扱い中止(健康保険取扱い中止) → 業務停止3月

柔道整復師、療養費不正請求98万円=療養費受領委任の取扱い中止(健康保険取扱い中止) → 業務停止3月

柔道整復師、療養費不正請求46万円=療養費受領委任の取扱い中止(健康保険取扱い中止) → 業務停止3月

柔道整復師、療養費不正請求496万円=療養費受領委任の取扱い中止(健康保険取扱い中止) → 業務停止3月

柔道整復師、療養費不正請求136万円=療養費受領委任の取扱い中止(健康保険取扱い中止) → 業務停止3月

柔道整復師、療養費不正請求59万円=療養費受領委任の取扱い中止(健康保険取扱い中止) → 業務停止3月

柔道整復師、療養費不正請求45万円=療養費受領委任の取扱い中止(健康保険取扱い中止)→ 業務停止3月

平成25年3月

はり師きゆう師、大麻取締法違反(大麻0.037グラム所持)=懲役10月・執行猶予3年 → 業務停止1年

あん摩マッサージ指圧師、柔道整復師、傷害致死罪(整骨院内で飲酒中に顔面殴打し出血性ショックにより死亡させた)=懲役3年実刑 → 免許取消

柔道整復師、準強制わいせつ(施術の機会を利用して患者の陰部を触った)=懲役2年6月実刑 → 免許取消

柔道整復師、詐欺(①施術日数を水増しして保険金51万円を詐取、②虚偽の施術証明書で保険金27万円詐取)=懲役1年2月実刑 → 免許取消

柔道整復師、詐欺(①保険金7万円詐取、②保険金121万円詐取、③保険金33万円詐取、④保険金53万円詐取、⑤保険金47万円詐取、⑥保険金48万円詐取、⑦保険金62万円詐取)=懲役3年執行猶予5年 → 業務停止5年

柔道整復師、詐欺(①保険金31万円詐取、②保険金47万円詐取、③保険金28万円詐取、④保険金48万円詐取、⑤保険金43万円詐取、⑥保険金16万円詐取)=懲役3年執行猶予4年 → 業務停止5年

はり師、きゆう師、柔道整復師、詐欺及び詐欺未遂(①保険金66万円詐取、②保険金79万円詐取、③保険金65万円虚偽請求、④保険金76万円詐取、⑤保険金83万円詐取、⑥保険金23万円詐取、⑦保険金35万円詐取)=懲役2年10月執行猶予5年 → 業務停止5年

柔道整復師、詐欺罪(保険金133万円詐取)=懲役1年6月執行猶予3年 → 業務停止2年

あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゆう師、柔道整復師、法人税法違反(①法人税1114万円脱税、②法人税738万円脱税、③法人税956万円脱税、④法人税903万円脱税)=懲役10月執行猶予3年、法人への罰金900万円 → 業務停止1年

柔道整復師、銃刀法違反・火薬類取締法違反(改造けん銃8丁、けん銃実包5発、改造ライフル銃1丁、エアーガン1丁、空気銃1丁、改造空気銃1丁、準空気銃1丁、散弾銃用実包24発、手製実包2発、無煙火薬4グラム所持)=懲役3年執行猶予5年 → 業務停止6月

柔道整復師、療養費不正請求250万円=療養費受領委任の取扱い中止(健康保険取扱い中止)→業務停止3月

柔道整復師、療養費不正請求金額未確定=療養費受領委任の取扱い中止(健康保険取扱い中止)→業務停止3月

柔道整復師、療養費不正請求金額未確定=療養費受領委任の取扱い中止(健康保険取扱い中止)→業務停止3月

柔道整復師、療養費不正請求92万円=療養費受領委任の取扱い中止(健康保険取扱い中止)、→業務停止3月

柔道整復師、療養費不正請求金額未確定=療養費受領委任の取扱い中止(健康保険取扱い中止)→業務停止3月

柔道整復師、療養費不正請求285万円=療養費受領委任の取扱い中止(健康保険取扱い中止)→業務停止3月

柔道整復師、療養費不正請求44万円=療養費受領委任の取扱い中止(健康保険取扱い中止)→業務停止3月

柔道整復師、療養費不正請求13万円=療養費受領委任の取扱い中止(健康保険取扱い中止)→業務停止3月

柔道整復師、療養費不正請求490万円=療養費受領委任の取扱い中止(健康保険取扱い中止)→業務停止3月

柔道整復師、療養費不正請求24万円=療養費受領委任の取扱い中止(健康保険取扱い中止)→業務停止3月

柔道整復師、療養費不正請求158万円=療養費受領委任の取扱い中止(健康保険取扱い中止)→業務停止3月

柔道整復師、療養費不正請求金額未確定(同様前歴あり)=療養費受領委任の取扱い中止(健康保険取扱い中止)→業務停止6月

柔道整復師、療養費不正請求247万円=療養費受領委任の取扱い中止(健康保険取扱い中止)→業務停止3月

柔道整復師、療養費不正請求168万円=療養費受領委任の取扱い中止(健康保険取扱い中止)→業務停止3月

柔道整復師、療養費不正請求金額未確定=療養費受領委任の取扱い中止(健康保険取扱い中止)→業務停止3月

柔道整復師、療養費不正請求159万円=療養費受領委任の取扱い中止(健康保険取扱い中止)→業務停止3月

柔道整復師、療養費不正請求153万円=療養費受領委任の取扱い中止(健康保険取扱い中止)→業務停止3月

柔道整復師、療養費不正請求127万円=療養費受領委任の取扱い中止(健康保険取扱い中止)→業務停止3月

平成24年3月

臨床工学技士、医師法違反(医師と共謀してバルーンカテーテル施術6回)=罰金100万円 → 名称使用停止6月

柔道整復師、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律違反、廃棄物処理法違反(無免許はり及びきゆう施術、ステンレス針灸針90グラム不法投棄)=罰金70万円 → 業務停止7月

救急救命士、道路交通法違反(酒気帯び運転)=罰金20万円 → 名称使用停止1月

はり師、きゆう師、柔道整復師、準強制わいせつ致傷(13歳の患者に対するわいせつ行為)=懲役2年6月執行猶予5年 → 免許取消

はり師、きゆう師、柔道整復師、道路交通法違反(高速道路48キロ速度違反)=罰金7万円、法人税法違反(①法人税770万円脱税、②法人税1695万円脱税、③法人税1751万円脱税)=法人への罰金1000万円、詐欺(保険金1587万円詐取)=懲役3年執行猶予5年 → 業務停止5年

はり師、きゆう師、柔道整復師、詐欺(①保険金443万円詐取、②保険金499万円詐取、③保険金465万円詐取)=懲役3年執行猶予4年 → 業務停止5年

柔道整復師、詐欺(①保険金132万円詐取、②保険金217万円詐取、③保険金164万円詐取)=懲役3年執行猶予4年 → 業務停止5年

臨床工学技士、詐欺(①保険金33万円詐取、②保険金295万円詐取)=懲役1年実刑→ 免許取消

あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゆう師、詐欺(①保険金4万円詐取、②保険金67万円詐取、保険金67万円詐取)=懲役2年6月執行猶予4年 → 業務停止3年

あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゆう師、柔道整復師、詐欺(保険金91万円詐取)=懲役2年執行猶予4年 → 業務停止3年

臨床工学技士、児童買春禁止法違反=罰金30万円 → 業務停止3月

救急救命士、迷惑防止条例違反(公共の駐車場で下半身露出)=罰金30万円 → 名称使用停止3月

柔道整復師、療養費不正請求1156万円=療養費受領委任の取扱い中止(健康保険取扱い中止)→業務停止3月

柔道整復師、療養費不正請求1057万円=療養費受領委任の取扱い中止(健康保険取扱い中止)→業務停止3月

はり師、きゆう師、施術費不正請求601万円=療養費受領委任の取扱い中止(健康保険取扱い中止)→業務停止3月

あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゆう師、施術費不正請求495万円=療養費受領委任の取扱い中止(健康保険取扱い中止)→業務停止3月

柔道整復師、療養費不正請求486万円=療養費受領委任の取扱い中止(健康保険取扱い中止)→業務停止3月

柔道整復師、療養費不正請求373万円=療養費受領委任の取扱い中止(健康保険取扱い中止)→業務停止3月

柔道整復師、療養費不正請求338万円=療養費受領委任の取扱い中止(健康保険取扱い中止)→業務停止3月

柔道整復師、療養費不正請求335万円=療養費受領委任の取扱い中止(健康保険取扱い中止)→業務停止3月

柔道整復師、療養費不正請求273万円=療養費受領委任の取扱い中止(健康保険取扱い中止)→業務停止3月

柔道整復師、療養費不正請求248万円=療養費受領委任の取扱い中止(健康保険取扱い中止)→業務停止3月

柔道整復師、療養費不正請求159万円=療養費受領委任の取扱い中止(健康保険取扱い中止)→業務停止3月

柔道整復師、療養費不正請求157万円=療養費受領委任の取扱い中止(健康保険取扱い中止)→業務停止3月

柔道整復師、療養費不正請求140万円=療養費受領委任の取扱い中止(健康保険取扱い中止)→業務停止3月

柔道整復師、療養費不正請求125万円=療養費受領委任の取扱い中止(健康保険取扱い中止)→業務停止3月

柔道整復師、療養費不正請求40万円=療養費受領委任の取扱い中止(健康保険取扱い中止)→業務停止3月

柔道整復師、療養費不正請求18万円=療養費受領委任の取扱い中止(健康保険取扱い中止)→業務停止3月

4、医療資格者の行政処分の基準

これら「医療関係資格者」の行政処分の基準について、当事務所で法令関係調査及び厚生労働省への聞き取り調査を行ったところ、各法令の制度趣旨により裁量権に基づいて行政処分を下しているということです。明確な基準は公表されていませんが、基本的な考え方は、国民医療の維持向上を図るという医師法の行政処分と類似するものであるということです。

医師法における行政処分の考え方(医道審議会医道分科会 平成24年3月4日改正)から、総論部分を引用します。

『行政処分の考え方

(基本的考え方)

医師、歯科医師の行政処分は、公正、公平に行われなければならないことから、処分

対象となるに至った行為の事実、経緯、過ちの軽重等を正確に判断する必要がある。そ

のため、処分内容の決定にあたっては、司法における刑事処分の量刑や刑の執行が猶予

されたか否かといった判決内容を参考にすることを基本とし、その上で、医師、歯科医

師に求められる倫理に反する行為と判断される場合は、これを考慮して厳しく判断する

こととする。

医師、歯科医師に求められる職業倫理に反する行為については、基本的には、以下の

ように考える。

① まず、医療提供上中心的な立場を担うべきことを期待される医師、歯科医師が、そ

の業務を行うに当たって当然に負うべき義務を果たしていないことに起因する行為に

ついては、国民の医療に対する信用を失墜するものであり、厳正な対処が求められる。

その義務には、応招義務や診療録に真実を記載する義務など、医師、歯科医師の職業

倫理として遵守することが当然に求められている義務を含む。

② 次に、医師や歯科医師が、医療を提供する機会を利用したり、医師、歯科医師とし

ての身分を利用して行った行為についても、同様の考え方から処分の対象となる。

③ また、医師、歯科医師は、患者の生命・身体を直接預かる資格であることから、業

務以外の場面においても、他人の生命・身体を軽んずる行為をした場合には、厳正な

処分の対象となる。

④ さらに、我が国において医業、歯科医業が非営利の事業と位置付けられていること

にかんがみ、医業、歯科医業を行うに当たり自己の利潤を不正に追求する行為をなし

た場合については、厳正な処分の対象となるものである。また、医師、歯科医師の免

許は、非営利原則に基づいて提供されるべき医療を担い得る者として与えられるもの

であることから、経済的利益を求めて不正行為が行われたときには、業務との直接の

関係を有しない場合であっても、当然に処分の対象となるものである。』

次に、詐欺罪の項目を引用します。

『9)詐欺・窃盗(詐欺罪、詐欺幇助、同行使等)

詐欺・窃盗は、医師、歯科医師としての業務に直接関わる事犯ではないが、医師、

歯科医師としての品位を損ない、信頼感を喪失せしめることから、行政処分に付する

こととし、行政処分の程度は、基本的には、司法処分の量刑などを参考に決定する。

なお、特に、医師、歯科医師としての立場を利用して、虚偽の診断書を作成、交付

するなどの方法により詐欺罪に問われるような行為は、業務に関連した犯罪であり、

医師、歯科医師の社会的信用を失墜させる悪質な行為であるため、重い処分とする。』

やはり、医療関係資格者の品位を損ね、信頼感を喪失せしめることから、国民医療の増進に大きな悪影響のある行為として処分対象となることが示唆されます。また、医療関係資格者の地位を利用して「施術証明書兼明細書」を作成して、保険金詐欺事件が起きた場合は、業務関連犯罪として社会的信用を失墜させる悪質な行為であるとして重い処分が予定されています。過去の処分例をみると、いくつか免許取り消し処分も散見されており、注意を要する事案と言えます。

5、まとめ

以上の通り、ご相談の案件は、免許の取り消し処分にも繋がりうる重大な問題ですから、早期に被害者との和解を成立させ、刑事処分に発展しないよう努力することが必要です。また、万一刑事事件に発展してしまった場合でも、行政処分に際して刑事処分の量刑も影響を与えると考えられることから、最大限の情状資料を主張立証するなどして、刑事処分を軽減させておく努力が必要です。そして、刑事事件後の行政処分の弁明聴取段階においても、有利な事情を最大限主張するべきと思われます。免許取消となってしまっては患者さんのために努力して社会に償っていく道が断たれてしまいますので、至急弁護士と相談して必要な措置を取るようにして下さい。

以上

関連事例集

Yahoo! JAPAN

※参照条文

※柔道整復師法

第3条(免許) 柔道整復師の免許(以下「免許」という。)は、柔道整復師国家試験(以下「試験」という。)に合格した者に対して、厚生労働大臣が与える。

第4条(欠格事由)次の各号のいずれかに該当する者には、免許を与えないことがある。

一号 心身の障害により柔道整復師の業務を適正に行うことができない者として厚生労働省令で定めるもの

二号 麻薬、大麻又はあへんの中毒者

三号 罰金以上の刑に処せられた者

四号 前号に該当する者を除くほか、柔道整復の業務に関し犯罪又は不正の行為があつた者

第5条(柔道整復師名簿)厚生労働省に柔道整復師名簿を備え、免許に関する事項を登録する。

第6条(登録及び免許証の交付)

第1項 免許は、試験に合格した者の申請により、柔道整復師名簿に登録することによつて行う。

第2項 厚生労働大臣は、免許を与えたときは、柔道整復師免許証(以下「免許証」という。)を交付する。

第7条(意見の聴取) 厚生労働大臣は、免許を申請した者について、第四条第一号に掲げる者に該当すると認め、同条の規定により免許を与えないこととするときは、あらかじめ、当該申請者にその旨を通知し、その求めがあつたときは、厚生労働大臣の指定する職員にその意見を聴取させなければならない。

第8条(免許の取消し等)

第1項 柔道整復師が、第四条各号のいずれかに該当するに至つたときは、厚生労働大臣は、その免許を取り消し、又は期間を定めてその業務の停止を命ずることができる。

第2項 前項の規定により免許を取り消された者であつても、その者がその取消しの理由となつた事項に該当しなくなつたとき、その他その後の事情により再び免許を与えることが適当であると認められるに至つたときは、再免許を与えることができる。

※あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律

第3条 次の各号のいずれかに該当する者には、免許を与えないことがある。

一号 心身の障害によりあん摩マツサージ指圧師、はり師又はきゆう師の業務を適正に行うことができない者として厚生労働省令で定めるもの

二号 麻薬、大麻又はあへんの中毒者

三号 罰金以上の刑に処せられた者

四号 前号に該当する者を除くほか、第一条に規定する業務に関し犯罪又は不正の行為があつた者

第9条第1項 施術者が、第三条各号の一に掲げる者に該当するときは、厚生労働大臣は期間を定めてその業務を停止し、又はその免許を取り消すことができる。

第2項 前項の規定により免許を取り消された者であつても、その者がその取消しの理由となつた事項に該当しなくなつたとき、その他その後の事情により再び免許を与えることが適当であると認められるに至つたときは、再免許を与えることができる。

※臨床工学技士法

第1条(目的) この法律は、臨床工学技士の資格を定めるとともに、その業務が適正に運用されるように規律し、もつて医療の普及及び向上に寄与することを目的とする。

第2条(定義)

第1項 この法律で「生命維持管理装置」とは、人の呼吸、循環又は代謝の機能の一部を代替し、又は補助することが目的とされている装置をいう。

第2項 この法律で「臨床工学技士」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、臨床工学技士の名称を用いて、医師の指示の下に、生命維持管理装置の操作(生命維持管理装置の先端部の身体への接続又は身体からの除去であつて政令で定めるものを含む。以下同じ。)及び保守点検を行うことを業とする者をいう。

第3条(免許) 臨床工学技士になろうとする者は、臨床工学技士国家試験(以下「試験」という。)に合格し、厚生労働大臣の免許(以下「免許」という。)を受けなければならない。

第4条(欠格事由)次の各号のいずれかに該当する者には、免許を与えないことがある。

一号 罰金以上の刑に処せられた者

二号 前号に該当する者を除くほか、臨床工学技士の業務に関し犯罪又は不正の行為があつた者

三号 心身の障害により臨床工学技士の業務を適正に行うことができない者として厚生労働省令で定めるもの

四号 麻薬、大麻又はあへんの中毒者

第5条(臨床工学技士名簿)厚生労働省に臨床工学技士名簿を備え、免許に関する事項を登録する。

第6条(登録及び免許証の交付)

第1項 免許は、試験に合格した者の申請により、臨床工学技士名簿に登録することによつて行う。

第2項 厚生労働大臣は、免許を与えたときは、臨床工学技士免許証を交付する。

第7条(意見の聴取) 厚生労働大臣は、免許を申請した者について、第四条第三号に掲げる者に該当すると認め、同条の規定により免許を与えないこととするときは、あらかじめ、当該申請者にその旨を通知し、その求めがあつたときは、厚生労働大臣の指定する職員にその意見を聴取させなければならない。

第8条(免許の取消し等)

第1項 臨床工学技士が第四条各号のいずれかに該当するに至つたときは、厚生労働大臣は、その免許を取り消し、又は期間を定めて臨床工学技士の名称の使用の停止を命ずることができる。

第2項 前項の規定により免許を取り消された者であつても、その者がその取消しの理由となつた事項に該当しなくなつたとき、その他その後の事情により再び免許を与えるのが適当であると認められるに至つたときは、再免許を与えることができる。この場合においては、第六条の規定を準用する。

※救急救命士法

第1条(目的) この法律は、救急救命士の資格を定めるとともに、その業務が適正に運用されるように規律し、もって医療の普及及び向上に寄与することを目的とする。

第2条(定義)

第1項 この法律で「救急救命処置」とは、その症状が著しく悪化するおそれがあり、又はその生命が危険な状態にある傷病者(以下この項及び第四十四条第二項において「重度傷病者」という。)が病院又は診療所に搬送されるまでの間に、当該重度傷病者に対して行われる気道の確保、心拍の回復その他の処置であって、当該重度傷病者の症状の著しい悪化を防止し、又はその生命の危険を回避するために緊急に必要なものをいう。

第2項 この法律で「救急救命士」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、救急救命士の名称を用いて、医師の指示の下に、救急救命処置を行うことを業とする者をいう。

第3条(免許)救急救命士になろうとする者は、救急救命士国家試験(以下「試験」という。)に合格し、厚生労働大臣の免許(第三十四条第五号を除き、以下「免許」という。)を受けなければならない。

第4条(欠格事由)次の各号のいずれかに該当する者には、免許を与えないことがある。

一号 罰金以上の刑に処せられた者

二号 前号に該当する者を除くほか、救急救命士の業務に関し犯罪又は不正の行為があった者

三号 心身の障害により救急救命士の業務を適正に行うことができない者として厚生労働省令で定めるもの

四号 麻薬、大麻又はあへんの中毒者

第5条(救急救命士名簿)厚生労働省に救急救命士名簿を備え、免許に関する事項を登録する。

第6条(登録及び免許証の交付)

第1項 免許は、試験に合格した者の申請により、救急救命士名簿に登録することによって行う。

第2項 厚生労働大臣は、免許を与えたときは、救急救命士免許証を交付する。

第7条(意見の聴取) 厚生労働大臣は、免許を申請した者について、第四条第三号に掲げる者に該当すると認め、同条の規定により免許を与えないこととするときは、あらかじめ、当該申請者にその旨を通知し、その求めがあったときは、厚生労働大臣の指定する職員にその意見を聴取させなければならない。

第8条(救急救命士名簿の訂正) 救急救命士は、救急救命士名簿に登録された免許に関する事項に変更があったときは、三十日以内に、当該事項の変更を厚生労働大臣に申請しなければならない。

第9条(免許の取消し等)

第1項 救急救命士が第四条各号のいずれかに該当するに至ったときは、厚生労働大臣は、その免許を取り消し、又は期間を定めて救急救命士の名称の使用の停止を命ずることができる。

第2項 前項の規定により免許を取り消された者であっても、その者がその取消しの理由となった事項に該当しなくなったとき、その他その後の事情により再び免許を与えるのが適当であると認められるに至ったときは、再免許を与えることができる。この場合においては、第六条の規定を準用する。