歯科衛生士の行政処分について

刑事|行政|医師の行政処分との比較|最高裁判所昭和63年7月1日判決

目次

  1. 質問
  2. 回答
  3. 解説
  4. 関連事例集
  5. 参考条文

質問:

私は歯科衛生士として歯科医院に勤務していますが、家庭内のストレスなどからインターネットに知人の悪口を書き込みしてしまい、名誉毀損罪で被害届けを提出されてしまいました。警察署から連絡があり、今度調書を取りたいと言われています。私は、自分の行為を反省し、相手にも謝罪したいと思いますが、このまま刑事手続きが進行した場合、私の歯科衛生士としての資格が取り消されてしまうことがあるでしょうか。万引きの場合はどうでしょうか。

回答:

1. 歯科衛生士の場合、罰金刑以上の刑が確定すると、厚生労働省により歯科衛生士の資格を取り消され、又は期間を定めて業務停止処分がなされる可能性があります(歯科衛生士法4条及び8条1項)。

2. 歯科衛生士法4条各号に該当する歯科衛生士の把握については、厚生労働省から、各都道府県の医療行政担当部署(医事課など)に対して、毎年1回、事案把握依頼の連絡をしています。連絡を受けて、各都道府県では、該当事案を集計して、厚生労働省に報告します。

3. 厚生労働省では、過去の処分事例や、当該事例の事案内容を勘案して、予定される行政処分を決定し、行政手続法の規定に従い、「聴聞」または「弁明の機会の付与」がなされます。行政手続法29条1項で、「弁明の機会の付与」は、原則として書面の提出により行われると規定されていますが、実務上は、厚生労働省の職員に対して口頭で弁明を述べる機会が与えられることもあります。

4. 処分の基準ですが、医師や歯科医師や看護師や薬剤師等の事例と比較して、相対的に件数が少なく、行政処分の明確な基準や、過去の処分例が公表されるには至っていません。当事務所で厚生労働省に問い合わせをしたところ、「過去の処分例との均衡を図るために、過去の処分例との比較を行う」、「歯科衛生士法2条2項に規定されるように歯科診療の補助をなす資格なので、同様に医療補助資格である、保健士・助産師・看護師などの行政処分の考え方に近づく傾向はある」、「公表されている医師および歯科医師の行政処分の考え方について、というガイドラインが参考になる」という考え方が示されております。

5. 名誉毀損罪も、窃盗罪(万引き)も起訴されると罰金以上の刑に処せられてしまいます。そこで、起訴前であれば被害者との示談成立による不起訴処分を得るため最大限努力すべきですし、起訴後であっても、被害弁償や、その他の情状弁護などの努力を行い、有罪となる場合でも、低額の罰金刑に留まるように努力をなすべきです。更に、厚生労働省から、事案報告依頼や、聴聞手続や、弁明の機会の付与の連絡があった場合は、自分に有利な情状資料・証拠を添付して、行政処分が不当に重くならないように、最大限努力をなすべきでしょう。

6. 医道審議会に関する関連事例集参照。

解説:

1、歯科衛生士法4条

歯科衛生士の場合、罰金刑以上の刑が確定すると、厚生労働省により歯科衛生士の資格を取り消され、又は期間を定めて業務停止処分がなされる可能性があります(歯科衛生士法4条及び8条1項)。

歯科衛生士法4条各号を解説つきで引用します。

1号、罰金以上の刑に処せられた者→罰金・懲役・禁固などの有罪判決(略式命令)が確定したという意味です。

2号、前号に該当する者を除くほか、歯科衛生士の業務に関し犯罪又は不正の行為があつた者→有罪判決を受けなくても、重大な医療過誤事件に関与していたことが判明した場合などです。

3号、心身の障害により業務を適正に行うことができない者として厚生労働省令で定めるもの→具体的には「視覚、聴覚、音声機能若しくは言語機能又は精神の機能の障害により業務を適正に行うにあたって必要な認知、判断及び意思疎通を適切にお行うことができない者」とされています。

4号、麻薬、あへん又は大麻の中毒者→当然、これらの薬物の作用により、手指の動作が不確実になりますし、認知作用が減退しますので、歯科衛生士の業務には耐えられないことになります。本号に該当し、さらに、1号の刑事処分にも該当する場合は、行政処分も重くなってしまうことが懸念されます。

歯科衛生士法その他の法令では業務停止期間が明定されていませんが、他の医療系資格の規定を参考にすると、業務停止期間は、1月~5年以内が想定されます。

2、厚労省による事案把握

歯科衛生士法4条各号に該当する歯科衛生士の把握については、厚生労働省から、各都道府県の医療行政担当部署(医事課など)に対して、毎年1回、事案把握依頼の連絡をしています。連絡を受けて、各都道府県では、該当事案を集計して、厚生労働省に報告します。

罰金以上の刑が確定した場合は、検察官からその旨の連絡が厚労省にありますが、それ以外の場合は該当する事案につては各都道府県から厚生労働省に連絡されることになります。

各都道府県の医事課による事案把握の中心は、地方新聞も含む報道発表です。小さな記事であっても、歯科衛生士が犯罪行為を行ったことが報道されれば、原則として行政処分の手続きが開始されると考えて間違いありません。その他の事案把握方法について、厚生労働省では詳細を明らかにしていませんが、歯科衛生士法4条各号の事案に該当することが判明した場合には、随時、手続きを開始するということのようです。例えば、被害者のある犯罪で、被害者から、保健所や、都道府県の医事課や、厚生労働省に対して、「歯科衛生士法4条に該当する歯科衛生士が居る」という情報提供があった場合、何の資料も無く通知されただけであれば、行政としても全ての案件を調査することはできないと考えられますが、有力な資料を添付して通報があった場合には、無視できなくなってくることも考えられます。

このことから、歯科衛生士の刑事事件の場合は、第一に、警察から報道機関に対する情報提供を阻止することが大事ですし、第二に、被害者に対する被害弁償の提供による示談成立が極めて重要であることがわかります。警察署は、連日、報道機関からの執拗な取材攻勢を受けており、社会的意義の大きな事案については、一部の事件について取材に応じることもやむを得ないと考えられますし、取材に応じることは、寧ろ国民の知る権利に応えるために必要なことでもあります。弁護人としては、被害者に対する被害弁償の状況や、被疑者の更生のために必要であると主張して、報道機関に対する情報提供阻止を意識して弁護活動を行うことが必要です。そして、被害者との示談書・和解合意書には、「本件に関し双方今後一切異議を述べない」という、いわゆる清算条項の他に、「本件に関する事実を今後一切第三者に公表通知しない」という秘匿条項も締結することが必要です。

3、厚労省による聴聞・弁明手続き

厚生労働省では、過去の処分事例や、当該事例の事案内容を勘案して、予定される行政処分を決定し、行政手続法の規定に従い、「聴聞」または「弁明の機会の付与」がなされます。医師の行政処分の場合は、処分の前に医道審議会が意見を出すことになっていますが、歯科衛生士法にはそのような規定は無く、また処分例も少ないことから厚生労働省の担当職員が直接聴聞等の手続きを行うようになっています。

行政手続法13条1項1号により、免許取消相当事案の場合は、「聴聞」手続きが行われますし、それ以外の、業務停止処分の場合は、「弁明の機会の付与」が行われることになります。

聴聞手続の方式は、行政手続法20条に規定されますので引用します。

行政手続法第20条(聴聞の期日における審理の方式)

1項 主宰者は、最初の聴聞の期日の冒頭において、行政庁の職員に、予定される不利益処分の内容及び根拠となる法令の条項並びにその原因となる事実を聴聞の期日に出頭した者に対し説明させなければならない。

2項 当事者又は参加人は、聴聞の期日に出頭して、意見を述べ、及び証拠書類等を提出し、並びに主宰者の許可を得て行政庁の職員に対し質問を発することができる。

3項 前項の場合において、当事者又は参加人は、主宰者の許可を得て、補佐人とともに出頭することができる。

4項 主宰者は、聴聞の期日において必要があると認めるときは、当事者若しくは参加人に対し質問を発し、意見の陳述若しくは証拠書類等の提出を促し、又は行政庁の職員に対し説明を求めることができる。

5項 主宰者は、当事者又は参加人の一部が出頭しないときであっても、聴聞の期日における審理を行うことができる。

6項 聴聞の期日における審理は、行政庁が公開することを相当と認めるときを除き、公開しない。

聴聞手続は、弁護士を代理人として共に出頭させ弁明してもらうことができます(行政手続法16条1項)。代理人弁護士は、当事者のために、聴聞に関する一切の行為をすることができます(行政手続法16条2項)。

弁明の機会の付与の方式は、行政手続法29条に規定されますので引用します。

行政手続法29条(弁明の機会の付与の方式)

第1項 弁明は、行政庁が口頭ですることを認めたときを除き、弁明を記載した書面(以下「弁明書」という。)を提出してするものとする。

第2項 弁明をするときは、証拠書類等を提出することができる。

行政手続法29条1項で、「弁明の機会の付与」は、原則として書面の提出により行われると規定されていますが、実務上は、厚生労働省の職員に対して口頭で弁明を述べる機会が与えられる実務が行われることがあります。この口頭手続きにおいても、聴聞手続きと同様に、代理人弁護士を選任し、期日に同席して意見を述べてもらうことができます。

4、行政処分の基準

行政処分の基準ですが、医師や歯科医師や看護師や薬剤師等の事例と比較して、相対的に件数が少なくなっていることもあって、行政処分の明確な基準や、過去の処分例が公表されるには至っていません。当事務所で厚生労働省に問い合わせをしたところ、「過去の処分例との均衡を図るために、過去の処分例との比較を行う」、「歯科衛生士法2条2項に規定されるように歯科診療の補助をなす資格なので、同様に医療補助資格である、保健士・助産師・看護師などの行政処分の考え方に近づく傾向はある」、「公表されている医師および歯科医師の行政処分に医師の行政処分の考え方について、というガイドラインが参考になる」という考え方が示されております。参考のために、当該ガイドラインの総論部分(基本的な考え方)を引用します。

※「医師及び歯科医師に対する行政処分の考え方について」

平成14年12月13日 医道審議会医道分科会 平成24年3月4日改正

行政処分の考え方

(基本的考え方)

医師、歯科医師の行政処分は、公正、公平に行われなければならないことから、処分対象となるに至った行為の事実、経緯、過ちの軽重等を正確に判断する必要がある。そのため、処分内容の決定にあたっては、司法における刑事処分の量刑や刑の執行が猶予されたか否かといった判決内容を参考にすることを基本とし、その上で、医師、歯科医師に求められる倫理に反する行為と判断される場合は、これを考慮して厳しく判断することとする。

医師、歯科医師に求められる職業倫理に反する行為については、基本的には、以下のように考える。

(1)まず、医療提供上中心的な立場を担うべきことを期待される医師、歯科医師が、その業務を行うに当たって当然に負うべき義務を果たしていないことに起因する行為については、国民の医療に対する信用を失墜するものであり、厳正な対処が求められる。

その義務には、応招義務や診療録に真実を記載する義務など、医師、歯科医師の職業倫理として遵守することが当然に求められている義務を含む。

(2)次に、医師や歯科医師が、医療を提供する機会を利用したり、医師、歯科医師としての身分を利用して行った行為についても、同様の考え方から処分の対象となる。

(3)また、医師、歯科医師は、患者の生命・身体を直接預かる資格であることから、業務以外の場面においても、他人の生命・身体を軽んずる行為をした場合には、厳正な処分の対象となる。

(4)さらに、我が国において医業、歯科医業が非営利の事業と位置付けられていることにかんがみ、医業、歯科医業を行うに当たり自己の利潤を不正に追求する行為をなした場合については、厳正な処分の対象となるものである。また、医師、歯科医師の免許は、非営利原則に基づいて提供されるべき医療を担い得る者として与えられるものであることから、経済的利益を求めて不正行為が行われたときには、業務との直接の関係を有しない場合であっても、当然に処分の対象となるものである。

次に、前記ガイドラインの各論部分を引用します。

詐欺・窃盗(詐欺罪、詐欺幇助、同行使等)

詐欺・窃盗は、医師、歯科医師としての業務に直接関わる事犯ではないが、医師、

歯科医師としての品位を損ない、信頼感を喪失せしめることから、行政処分に付することとし、行政処分の程度は、基本的には、司法処分の量刑などを参考に決定する。

なお、特に、医師、歯科医師としての立場を利用して、虚偽の診断書を作成、交付

するなどの方法により詐欺罪に問われるような行為は、業務に関連した犯罪であり、

医師、歯科医師の社会的信用を失墜させる悪質な行為であるため、重い処分とする。

要するに、心身の病気や怪我などのために、医療を必要とする国民が安心して医療サービスを受けることができるように各資格制度が整備されていますので、診療行為に影響するような非違行為があれば、行政処分が重くなってしまうことが懸念されるということになります。歯科衛生士法1条の目的規定には、「この法律は、歯科衛生士の資格を定め、もつて歯科疾患の予防及び口くう衛生の向上を図ることを目的とする」と規定されています。従って、患者が被害者となるような犯罪行為があった場合には、特に注意して対応していく必要があると言えます。例えば、歯科医院に受診中の患者の財布を盗んでしまったような窃盗事案では、重い処分が懸念されることになります。被害者が患者でなくても、その犯罪行為が、歯科衛生士の業務に影響を及ぼす可能性があると考えられるような事情がある場合は、重い処分のおそれがあります。例えば、歯科衛生士は歯科疾患の予防と口くう衛生の向上を図ることが業務の目的ですから、人命を軽視するような犯罪行為や、人を傷つけるような暴行傷害などの犯罪行為があった場合は、疾患を予防し(歯科医を補助して)治癒させる歯科衛生士業務と反対の行為を行ってしまったことになりますので、重い処分が予想されてしまいます。他人の財産権を侵害する窃盗罪や、他人の名誉権を侵害する名誉毀損罪であっても、国民医療を向上させる業務の趣旨とは乖離が認められますので注意が必要です。

他の医療資格の行政処分事例のうち、参考になると思われるものを、いくつか引用ご紹介したいと思います。経済事犯である詐欺罪でも取消処分が出ていることに注意が必要です。前科前歴件数や、行為態様や、被害額によっては、経済事犯でも重い処分となってしまうことがあることになります。名誉毀損罪の処分例は少ないようですが、他人の名誉権という人格的権利を侵害する攻撃的な行為ですから、刑事処分の量刑比較の結果にもよりますが、窃盗罪と同程度の処分も予想されてしまうと考えられます。

平成25年3月

あん摩マッサージ指圧師、柔道整復師、整骨院内における傷害致死罪→免許取り消し

柔道整復師、接骨院内における施術中の患者に対する準強制わいせつ罪→免許取り消し

柔道整復師、施術日数の水増しによる保険金の詐欺罪→免許取り消し

平成23年2月

歯科医師、高校女子更衣室で下着窃盗で建造物侵入罪と窃盗罪→業務停止6月

医師、菓子パンなど万引き5件で窃盗罪→医業停止6月

裁判例では、医師の行政処分に関する医師法7条2項について、最高裁判所昭和63年7月1日判決は、以下に引用するとおり、同条項の趣旨についての解釈を示すとともに、医師が「罰金以上の刑に処せられた者」(医師法4条3号)に該当する場合にいかなる処分を命ずるかについては厚生労働大臣の合理的な裁量にゆだねられているとの判断を示しています。歯科衛生士の行政処分においても基本的に同じように裁量処分と捉えることができると思います。

「医師法七条二項によれば,医師が「罰金以上の刑に処せられた者」(同法四条二号[現行法では4条3号])に該当するときは,被上告人厚生大臣(以下「厚生大臣」という。)は,その免許を取り消し,又は一定の期間を定めて医業の停止を命ずることができる旨定められているが,この規定は,医師が同法四条二号の規定に該当することから,医師として品位を欠き人格的に適格性を有しないものと認められる場合には医師の資格を剥奪し,そうまでいえないとしても,医師としての品位を損ない,あるいは医師の職業倫理に違背したものと認められる場合には一定期間医業の停止を命じ反省を促すべきものとし,これによつて医療等の業務が適正に行われることを期するものであると解される。 したがつて,医師が同号の規定に該当する場合に,免許を取消し,又は医業の停止を命ずるかどうか,医業の停止を命ずるとしてその期間をどの程度にするかということは,当該刑事罰の対象となつた行為の種類,性質,違法性の程度,動機,目的,影響のほか,当該医師の性格,処分歴,反省の程度等,諸般の事情を考慮し,同法七条二項の規定の趣旨に照らして判断すべきものであるところ,その判断は,同法二五条の規定に基づき設置された医道審議会の意見を聴く前提のもとで,医師免許の免許権者である厚生大臣の合理的な裁量にゆだねられているものと解するのが相当である。それ故,厚生大臣がその裁量権の行使としてした医業の停止を命ずる処分は,それが社会観念上著しく妥当を欠いて裁量権を付与した目的を逸脱し,これを濫用したと認められる場合でない限り,その裁量権の範囲内にあるものとして,違法とならないものというべきである。」

この判例は,医師法7条2項に基づく行政処分の決定について,厚生労働大臣に広範な裁量権を認める一方,厚生労働大臣の裁量権の行使が裁量権付与の目的を逸脱し,これを濫用したと認められる場合については,当該処分は違法となると判断しています(行政事件訴訟法30条参照)。

いかなる場合に裁量権の逸脱,濫用が認められ,処分が違法となるかが問題となりますが,事実誤認に基づく処分や,法の趣旨・目的とは異なる目的や動機でなされた処分,平等原則や比例原則に反する処分,判断過程に過誤がある処分などが違法と判断されます。

平等原則違反とは,他の同種事案との関係で当該事案のみが差別的に取り扱われ,その結果不当に重い処分が課されたといえる場合をいいます。

次に比例原則ですが,行政処分の程度は、違反行為の程度に応じて決まるべきであるという考え方であり、違反行為の内容と比較して,処分の内容が不当に重いといえる場合には比例原則違反といえます。

最後に判断過程の違法ですが,処分を決定する判断の過程で本来考慮すべきではない事項を考慮した場合や,重要視すべき事項を不当に軽視したり,考慮すべき事項について考慮を尽くさなかった場合等には,判断過程に違法があるといえます。

5、名誉棄損罪と窃盗罪における行政処分対策

名誉毀損罪も、窃盗罪(万引き)も、被害者のある犯罪で、罰金刑も定められております。起訴前であれば被害者との示談成立による、不起訴処分を得るため最大限努力すべきですし、起訴後であっても、被害弁償や、その他の情状弁護などの努力を行い、有罪となる場合でも、低額の罰金刑に留まるように努力をなすべきです。

名誉毀損罪の法定刑(刑法230条)3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金

窃盗罪の法定刑(刑法235条)10年以下の懲役又は50万円以下の罰金

厚生労働省から、事案報告依頼や、聴聞手続や、弁明の機会の付与の連絡があった場合は、様々な情状資料・証拠を添付して、行政処分が不当に重くならないように、最大限努力をなすべきでしょう。

聴聞手続及び、弁明の機会の付与手続きにおいて、行政処分対象者は、証拠を提出して、不利益処分を回避すべきことを主張することができます。

行政手続法

第20条(聴聞の期日における審理の方式)第2項 当事者又は参加人は、聴聞の期日に出頭して、意見を述べ、及び証拠書類等を提出し、並びに主宰者の許可を得て行政庁の職員に対し質問を発することができる。

第29条(弁明の機会の付与の方式)第2項 弁明をするときは、証拠書類等を提出することができる。

被害者のある犯罪事件において、提出すべき証拠で最も重要なのは、被害者に対する被害弁償が完了していることを示す和解合意書及び和解金領収書ですし、可能であれば、被害者が対象者の行政処分を求めていないことを示す上申書を提出すると良いでしょう。インターネットの名誉毀損事案であれば、当該名誉毀損の書き込み記事が削除されたことを証明する資料の提出も必要でしょう。掲示板管理者やプロバイダと交渉し、削除依頼をすることが必要です。

代理人弁護士が作成する意見書における法的主張の主眼は、当該犯罪行為の情状面の主張と、刑事処分確定後の事情と、行政処分における過去の事例との処分の均衡(平等原則)、非違行為が軽微なものであったので行政処分も軽減されるべきであるという比例原則に基づく主張などが考えられます。行政処分の取消訴訟において争点となるような論点を、事前に詳細に主張立証しておくことが必要となります。

刑事処分についても、行政処分についても、法律専門家である弁護士があなたの力になってくれるはずです。お近くの弁護士事務所にご相談なさると良いでしょう。

以上

関連事例集

Yahoo! JAPAN

※参照条文

<参考条文>

※歯科衛生士法(抜粋)

第一条 この法律は、歯科衛生士の資格を定め、もつて歯科疾患の予防及び口くう衛生の向上を図ることを目的とする。

第二条 この法律において「歯科衛生士」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、歯科医師(歯科医業をなすことのできる医師を含む。以下同じ。)の直接の指導の下に、歯牙及び口腔の疾患の予防処置として次に掲げる行為を行うことを業とする女子をいう。

一 歯牙露出面及び正常な歯茎の遊離縁下の付着物及び沈着物を機械的操作によつて除去すること。

二 歯牙及び口腔に対して薬物を塗布すること。

2 歯科衛生士は、保健師助産師看護師法 (昭和二十三年法律第二百三号)第三十一条第一項 及び第三十二条 の規定にかかわらず、歯科診療の補助をなすことを業とすることができる。

3 歯科衛生士は、前二項に規定する業務のほか、歯科衛生士の名称を用いて、歯科保健指導をなすことを業とすることができる。

第三条 歯科衛生士になろうとする者は、歯科衛生士国家試験(以下「試験」という。)に合格し、厚生労働大臣の歯科衛生士免許(以下「免許」という。)を受けなければならない。

第四条 次の各号のいずれかに該当する者には、免許を与えないことがある。

一 罰金以上の刑に処せられた者

二 前号に該当する者を除くほか、歯科衛生士の業務(歯科診療の補助の業務及び歯科衛生士の名称を用いてなす歯科保健指導の業務を含む。次号、第六条第三項及び第八条第一項において「業務」という。)に関し犯罪又は不正の行為があつた者

三 心身の障害により業務を適正に行うことができない者として厚生労働省令で定めるもの

四 麻薬、あへん又は大麻の中毒者

第七条 厚生労働大臣は、免許を申請した者について、第四条第三号に掲げる者に該当すると認め、同条の規定により免許を与えないこととするときは、あらかじめ、当該申請者にその旨を通知し、その求めがあつたときは、厚生労働大臣の指定する職員にその意見を聴取させなければならない。

第八条 歯科衛生士が、第四条各号のいずれかに該当し、又は歯科衛生士としての品位を損するような行為のあつたときは、厚生労働大臣は、その免許を取り消し、又は期間を定めて業務の停止を命ずることができる。

2 前項の規定による取消処分を受けた者であつても、その者がその取消しの理由となつた事項に該当しなくなつたとき、その他その後の事情により再び免許を与えるのが適当であると認められるに至つたときは、再免許を与えることができる。この場合においては、第六条第一項及び第二項の規定を準用する。

※行政手続法(抜粋)

第三章 不利益処分

第一節 通則

(処分の基準)

第十二条 行政庁は、処分基準を定め、かつ、これを公にしておくよう努めなければならない。

2 行政庁は、処分基準を定めるに当たっては、不利益処分の性質に照らしてできる限り具体的なものとしなければならない。

(不利益処分をしようとする場合の手続)

第十三条 行政庁は、不利益処分をしようとする場合には、次の各号の区分に従い、この章の定めるところにより、当該不利益処分の名あて人となるべき者について、当該各号に定める意見陳述のための手続を執らなければならない。

一 次のいずれかに該当するとき 聴聞

イ 許認可等を取り消す不利益処分をしようとするとき。

ロ イに規定するもののほか、名あて人の資格又は地位を直接にはく奪する不利益処分をしようとするとき。

ハ 名あて人が法人である場合におけるその役員の解任を命ずる不利益処分、名あて人の業務に従事する者の解任を命ずる不利益処分又は名あて人の会員である者の除名を命ずる不利益処分をしようとするとき。

ニ イからハまでに掲げる場合以外の場合であって行政庁が相当と認めるとき。

二 前号イからニまでのいずれにも該当しないとき 弁明の機会の付与

2 次の各号のいずれかに該当するときは、前項の規定は、適用しない。

一 公益上、緊急に不利益処分をする必要があるため、前項に規定する意見陳述のための手続を執ることができないとき。

二 法令上必要とされる資格がなかったこと又は失われるに至ったことが判明した場合に必ずすることとされている不利益処分であって、その資格の不存在又は喪失の事実が裁判所の判決書又は決定書、一定の職に就いたことを証する当該任命権者の書類その他の客観的な資料により直接証明されたものをしようとするとき。

三 施設若しくは設備の設置、維持若しくは管理又は物の製造、販売その他の取扱いについて遵守すべき事項が法令において技術的な基準をもって明確にされている場合において、専ら当該基準が充足されていないことを理由として当該基準に従うべきことを命ずる不利益処分であってその不充足の事実が計測、実験その他客観的な認定方法によって確認されたものをしようとするとき。

四 納付すべき金銭の額を確定し、一定の額の金銭の納付を命じ、又は金銭の給付決定の取消しその他の金銭の給付を制限する不利益処分をしようとするとき。

五 当該不利益処分の性質上、それによって課される義務の内容が著しく軽微なものであるため名あて人となるべき者の意見をあらかじめ聴くことを要しないものとして政令で定める処分をしようとするとき。

(不利益処分の理由の提示)

第十四条 行政庁は、不利益処分をする場合には、その名あて人に対し、同時に、当該不利益処分の理由を示さなければならない。ただし、当該理由を示さないで処分をすべき差し迫った必要がある場合は、この限りでない。

2 行政庁は、前項ただし書の場合においては、当該名あて人の所在が判明しなくなったときその他処分後において理由を示すことが困難な事情があるときを除き、処分後相当の期間内に、同項の理由を示さなければならない。

3 不利益処分を書面でするときは、前二項の理由は、書面により示さなければならない。

第二節 聴聞

(聴聞の通知の方式)

第十五条 行政庁は、聴聞を行うに当たっては、聴聞を行うべき期日までに相当な期間をおいて、不利益処分の名あて人となるべき者に対し、次に掲げる事項を書面により通知しなければならない。

一 予定される不利益処分の内容及び根拠となる法令の条項

二 不利益処分の原因となる事実

三 聴聞の期日及び場所

四 聴聞に関する事務を所掌する組織の名称及び所在地

2 前項の書面においては、次に掲げる事項を教示しなければならない。

一 聴聞の期日に出頭して意見を述べ、及び証拠書類又は証拠物(以下「証拠書類等」という。)を提出し、又は聴聞の期日への出頭に代えて陳述書及び証拠書類等を提出することができること。

二 聴聞が終結する時までの間、当該不利益処分の原因となる事実を証する資料の閲覧を求めることができること。

3 行政庁は、不利益処分の名あて人となるべき者の所在が判明しない場合においては、第一項の規定による通知を、その者の氏名、同項第三号及び第四号に掲げる事項並びに当該行政庁が同項各号に掲げる事項を記載した書面をいつでもその者に交付する旨を当該行政庁の事務所の掲示場に掲示することによって行うことができる。この場合においては、掲示を始めた日から二週間を経過したときに、当該通知がその者に到達したものとみなす。

(代理人)

第十六条 前条第一項の通知を受けた者(同条第三項後段の規定により当該通知が到達したものとみなされる者を含む。以下「当事者」という。)は、代理人を選任することができる。

2 代理人は、各自、当事者のために、聴聞に関する一切の行為をすることができる。

3 代理人の資格は、書面で証明しなければならない。

4 代理人がその資格を失ったときは、当該代理人を選任した当事者は、書面でその旨を行政庁に届け出なければならない。

(参加人)

第十七条 第十九条の規定により聴聞を主宰する者(以下「主宰者」という。)は、必要があると認めるときは、当事者以外の者であって当該不利益処分の根拠となる法令に照らし当該不利益処分につき利害関係を有するものと認められる者(同条第二項第六号において「関係人」という。)に対し、当該聴聞に関する手続に参加することを求め、又は当該聴聞に関する手続に参加することを許可することができる。

2 前項の規定により当該聴聞に関する手続に参加する者(以下「参加人」という。)は、代理人を選任することができる。

3 前条第二項から第四項までの規定は、前項の代理人について準用する。この場合において、同条第二項及び第四項中「当事者」とあるのは、「参加人」と読み替えるものとする。

(文書等の閲覧)

第十八条 当事者及び当該不利益処分がされた場合に自己の利益を害されることとなる参加人(以下この条及び第二十四条第三項において「当事者等」という。)は、聴聞の通知があった時から聴聞が終結する時までの間、行政庁に対し、当該事案についてした調査の結果に係る調書その他の当該不利益処分の原因となる事実を証する資料の閲覧を求めることができる。この場合において、行政庁は、第三者の利益を害するおそれがあるときその他正当な理由があるときでなければ、その閲覧を拒むことができない。

2 前項の規定は、当事者等が聴聞の期日における審理の進行に応じて必要となった資料の閲覧を更に求めることを妨げない。

3 行政庁は、前二項の閲覧について日時及び場所を指定することができる。

(聴聞の主宰)

第十九条 聴聞は、行政庁が指名する職員その他政令で定める者が主宰する。

2 次の各号のいずれかに該当する者は、聴聞を主宰することができない。

一 当該聴聞の当事者又は参加人

二 前号に規定する者の配偶者、四親等内の親族又は同居の親族

三 第一号に規定する者の代理人又は次条第三項に規定する補佐人

四 前三号に規定する者であったことのある者

五 第一号に規定する者の後見人、後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人又は補助監督人

六 参加人以外の関係人

(聴聞の期日における審理の方式)

第二十条 主宰者は、最初の聴聞の期日の冒頭において、行政庁の職員に、予定される不利益処分の内容及び根拠となる法令の条項並びにその原因となる事実を聴聞の期日に出頭した者に対し説明させなければならない。

2 当事者又は参加人は、聴聞の期日に出頭して、意見を述べ、及び証拠書類等を提出し、並びに主宰者の許可を得て行政庁の職員に対し質問を発することができる。

3 前項の場合において、当事者又は参加人は、主宰者の許可を得て、補佐人とともに出頭することができる。

4 主宰者は、聴聞の期日において必要があると認めるときは、当事者若しくは参加人に対し質問を発し、意見の陳述若しくは証拠書類等の提出を促し、又は行政庁の職員に対し説明を求めることができる。

5 主宰者は、当事者又は参加人の一部が出頭しないときであっても、聴聞の期日における審理を行うことができる。

6 聴聞の期日における審理は、行政庁が公開することを相当と認めるときを除き、公開しない。

(陳述書等の提出)

第二十一条 当事者又は参加人は、聴聞の期日への出頭に代えて、主宰者に対し、聴聞の期日までに陳述書及び証拠書類等を提出することができる。

2 主宰者は、聴聞の期日に出頭した者に対し、その求めに応じて、前項の陳述書及び証拠書類等を示すことができる。

(続行期日の指定)

第二十二条 主宰者は、聴聞の期日における審理の結果、なお聴聞を続行する必要があると認めるときは、さらに新たな期日を定めることができる。

2 前項の場合においては、当事者及び参加人に対し、あらかじめ、次回の聴聞の期日及び場所を書面により通知しなければならない。ただし、聴聞の期日に出頭した当事者及び参加人に対しては、当該聴聞の期日においてこれを告知すれば足りる。

3 第十五条第三項の規定は、前項本文の場合において、当事者又は参加人の所在が判明しないときにおける通知の方法について準用する。この場合において、同条第三項中「不利益処分の名あて人となるべき者」とあるのは「当事者又は参加人」と、「掲示を始めた日から二週間を経過したとき」とあるのは「掲示を始めた日から二週間を経過したとき(同一の当事者又は参加人に対する二回目以降の通知にあっては、掲示を始めた日の翌日)」と読み替えるものとする。

(当事者の不出頭等の場合における聴聞の終結)

第二十三条 主宰者は、当事者の全部若しくは一部が正当な理由なく聴聞の期日に出頭せず、かつ、第二十一条第一項に規定する陳述書若しくは証拠書類等を提出しない場合、又は参加人の全部若しくは一部が聴聞の期日に出頭しない場合には、これらの者に対し改めて意見を述べ、及び証拠書類等を提出する機会を与えることなく、聴聞を終結することができる。

2 主宰者は、前項に規定する場合のほか、当事者の全部又は一部が聴聞の期日に出頭せず、かつ、第二十一条第一項に規定する陳述書又は証拠書類等を提出しない場合において、これらの者の聴聞の期日への出頭が相当期間引き続き見込めないときは、これらの者に対し、期限を定めて陳述書及び証拠書類等の提出を求め、当該期限が到来したときに聴聞を終結することとすることができる。

(聴聞調書及び報告書)

第二十四条 主宰者は、聴聞の審理の経過を記載した調書を作成し、当該調書において、不利益処分の原因となる事実に対する当事者及び参加人の陳述の要旨を明らかにしておかなければならない。

2 前項の調書は、聴聞の期日における審理が行われた場合には各期日ごとに、当該審理が行われなかった場合には聴聞の終結後速やかに作成しなければならない。

3 主宰者は、聴聞の終結後速やかに、不利益処分の原因となる事実に対する当事者等の主張に理由があるかどうかについての意見を記載した報告書を作成し、第一項の調書とともに行政庁に提出しなければならない。

4 当事者又は参加人は、第一項の調書及び前項の報告書の閲覧を求めることができる。

(聴聞の再開)

第二十五条 行政庁は、聴聞の終結後に生じた事情にかんがみ必要があると認めるときは、主宰者に対し、前条第三項の規定により提出された報告書を返戻して聴聞の再開を命ずることができる。第二十二条第二項本文及び第三項の規定は、この場合について準用する。

(聴聞を経てされる不利益処分の決定)

第二十六条 行政庁は、不利益処分の決定をするときは、第二十四条第一項の調書の内容及び同条第三項の報告書に記載された主宰者の意見を十分に参酌してこれをしなければならない。

(不服申立ての制限)

第二十七条 行政庁又は主宰者がこの節の規定に基づいてした処分については、行政不服審査法 (昭和三十七年法律第百六十号)による不服申立てをすることができない。

2 聴聞を経てされた不利益処分については、当事者及び参加人は、行政不服審査法 による異議申立てをすることができない。ただし、第十五条第三項後段の規定により当該通知が到達したものとみなされる結果当事者の地位を取得した者であって同項に規定する同条第一項第三号(第二十二条第三項において準用する場合を含む。)に掲げる聴聞の期日のいずれにも出頭しなかった者については、この限りでない。

(役員等の解任等を命ずる不利益処分をしようとする場合の聴聞等の特例)

第二十八条 第十三条第一項第一号ハに該当する不利益処分に係る聴聞において第十五条第一項の通知があった場合におけるこの節の規定の適用については、名あて人である法人の役員、名あて人の業務に従事する者又は名あて人の会員である者(当該処分において解任し又は除名すべきこととされている者に限る。)は、同項の通知を受けた者とみなす。

2 前項の不利益処分のうち名あて人である法人の役員又は名あて人の業務に従事する者(以下この項において「役員等」という。)の解任を命ずるものに係る聴聞が行われた場合においては、当該処分にその名あて人が従わないことを理由として法令の規定によりされる当該役員等を解任する不利益処分については、第十三条第一項の規定にかかわらず、行政庁は、当該役員等について聴聞を行うことを要しない。

第三節 弁明の機会の付与

(弁明の機会の付与の方式)

第二十九条 弁明は、行政庁が口頭ですることを認めたときを除き、弁明を記載した書面(以下「弁明書」という。)を提出してするものとする。

2 弁明をするときは、証拠書類等を提出することができる。

(弁明の機会の付与の通知の方式)

第三十条 行政庁は、弁明書の提出期限(口頭による弁明の機会の付与を行う場合には、その日時)までに相当な期間をおいて、不利益処分の名あて人となるべき者に対し、次に掲げる事項を書面により通知しなければならない。

一 予定される不利益処分の内容及び根拠となる法令の条項

二 不利益処分の原因となる事実

三 弁明書の提出先及び提出期限(口頭による弁明の機会の付与を行う場合には、その旨並びに出頭すべき日時及び場所)

(聴聞に関する手続の準用)

第三十一条 第十五条第三項及び第十六条の規定は、弁明の機会の付与について準用する。この場合において、第十五条第三項中「第一項」とあるのは「第三十条」と、「同項第三号及び第四号」とあるのは「同条第三号」と、第十六条第一項中「前条第一項」とあるのは「第三十条」と、「同条第三項後段」とあるのは「第三十一条において準用する第十五条第三項後段」と読み替えるものとする。