都市再開発法における開発利益の取扱いについて

民事|都市再開発法|再開発参加の利益|東京高等裁判所平成21年11月12日判決

目次

  1. 質問
  2. 回答
  3. 解説
  4. 関連事例集
  5. 参考条文

質問:

当社は明治時代から小さな和菓子店を代々受け継いで経営してきた会社です。昭和になって鉄道の駅が出来て、現在も駅前の小型店舗として存続しています。小さいですが2階建ての戸建の店舗(土地建物当社所有)になっています。このたび、駅前の再開発事業の話が持ち上がり、事業を主催している不動産会社の担当者から、「貴社の土地は狭小なので建替え後のビルで店舗を経営することはできないから金銭給付を受けて退去した方が良いですよ」と言われました。この担当者の言うことは本当でしょうか、どのように対応したら良いでしょうか。

回答:

1、 不動産会社の担当者の説明は誤りと言ってよいでしょう。所有土地の面積が狭くても、再開発事業においては容積率の緩和措置の適用が考えられますので、再建築された場合どの程度の床積の建物が確保されるか検討する必要があります。

2、 平成12年(西暦2000年)のITバブル崩壊から、不動産価格の長期低迷が続き、景気刺激策として、容積率の緩和や、都市再開発法の改正など、様々な規制緩和が行われてきました。阪神大震災や東日本大震災などによる防災意識の高まりや長寿命高強度コンクリートや免震制震装置の開発などによって、建築基準法の耐震基準も改正が加えられています。これらの複合的な要因によって、市街地中心部の建替え事業が促進されています。

3、 都市再開発後の割り当て床面積を見積もるために、あなたの会社の土地について、規制緩和などにより、容積率の緩和措置があるかどうか、調査してみてください。建築基準法59条の2に規定されている総合設計制度の適用が受けられる場合は、最大で容積率を2倍に割り増しして建築確認を受けることが出来る場合があります。総合設計制度では500平米以上の敷地が必要ですが、貴社の土地が500平米未満でも、周りの土地と合わせて再開発する場合には容積率の割り増しの恩恵を受けることができます。

4、 容積率の割り増しを受けることが出来る場合、余った床面積を建設費用に充てる等価交換をするのと同じことですから、通常は、店舗を運営するための床面積に困るということは想定しづらいことになります。原則として退去の必要は無いと言えるでしょう。不動産会社の担当者が言っているのは、この問題についての抽象的なリスクを語っているに過ぎません。

5、 都市再開発法の権利変換計画では、事業計画決定の公告から30日を経過した日が、従前土地建物の評価基準日となっています。この日を基準として土地所有権の評価を行い、退去する場合の金銭給付も行われます。給付される金銭も公正な算定により行われ客観性が保証され支払時期も退去時と決まっています(都市再開発法97条、96条、79条2項後段、57条4項1号 )。

6、 判例上、この基準日における不動産の評価には、再開発の利益は加味されないと解釈されています。基準日現在では建物の建替えは行われておらず、開発利益があるということは擬制(みなしていること)に過ぎないとされています。

7、 都市再開発に参加せず、金銭給付を受ける申出をしてしまいますと、開発利益が加味されない評価に基づいた金銭給付を受けることになってしまいますので、都市開発が行われることを前提に考えると、貴社にとって逸失利益を生じてしまうことになります。将来的に貴社の不動産権利を処分するかどうかは別として、都市再開発法の手続きの期間中は、再開発物件に入居することを前提に検討された方が良いでしょう。都市再開発ビル建設期間中の営業補償等(引越し、内装、備品、従業員の休業補償。従業員給料の補償を受けておいて、仮に支店があればそこで補充し雇用する方法もあります。)すべての損害補償を受けることができなくなることも大きいです。都市再開発に参加しても借家人等と同様に損失補償を受けることができるのです。この額はかなりのものになり無視できません。都市再開発は公的面も合わせ有するので公的補助が事業費の数十パーセントの割合(かなりの額です)で行われます。参加しなければこの利益も事実上放棄することなり得策ではありません。

8、開発利益に関する関連事例集参照。

解説:

1、 都市再開発法の意義

平成12年(西暦2000年)のITバブル崩壊から、不動産価格の長期低迷が続き、景気刺激策として、容積率の緩和や、都市再開発法の改正など、様々な規制緩和が行われてきました。阪神大震災や東日本大震災などによる防災意識の高まりや、長寿命高強度コンクリートや免震制震装置の開発などによって、建築基準法の耐震基準も改正が加えられています。これらの複合的な要因によって、市街地中心部の建替え事業が促進されています。

再開発事業について定める都市計画法では、各都道府県が公聴会などの手続きを経て「用途地域内の市街地における土地の合理的かつ健全な高度利用と都市機能の更新とを図るため、建築物の容積率の最高限度及び最低限度、建築物の建ぺい率の最高限度、建築物の建築面積の最低限度並びに壁面の位置の制限を定める地区」として高度利用地区を指定することができ、更に、地区計画として、「再開発等促進区」を定めることができます(都市計画法12条の5第3項)。

都市計画法12条の5(地区計画)

第3項 次に掲げる条件に該当する土地の区域における地区計画については、土地の合理的かつ健全な高度利用と都市機能の増進とを図るため、一体的かつ総合的な市街地の再開発又は開発整備を実施すべき区域(以下「再開発等促進区」という。)を都市計画に定めることができる。

一号 現に土地の利用状況が著しく変化しつつあり、又は著しく変化する ことが確実であると見込まれる土地の区域であること。

二号 土地の合理的かつ健全な高度利用を図るため、適正な配置及び規模 の公共施設を整備する必要がある土地の区域であること。

三号 当該区域内の土地の高度利用を図ることが、当該都市の機能の増進 に貢献することとなる土地の区域であること。

四号 用途地域が定められている土地の区域であること。

また、都市再開発法14条1項で、都市計画決定された地区の宅地所有権と借地権について、人数と面積で3分の2以上の同意があれば、市街地再開発組合の設立を申請できることを定め、都道府県知事の認可を受けて、組合を設立し登記して、市街地再開発事業を進めることができる旨定められています。同意しなかった地権者も強制的に組合に加入させられることになります(同法20条1項)。

都市再開発法の制度趣旨は、市街地の土地の合理的かつ健全な高度利用と都市機能の更新を図って公共の福祉に寄与することです。例えば駅前の建物が倒壊してしまったら近隣の多数の住民が危険にさらされてしまいますし、駅前に2階建ての建物が残ることにより、規制緩和された容積率が最大限に活用できなければ、駅前全体としては機能向上が阻害されてしまうことになります。

都市再開発法第1条(目的)この法律は、市街地の計画的な再開発に関 し必要な事項を定めることにより、都市における土地の合理的かつ健全な高度利用と都市機能の更新とを図り、もつて公共の福祉に寄与することを目的とする。

実際の再開発事業は、「権利変換手続き」によって遂行されます。権利変換とは、貴社が所有する土地所有権が、新しく建替えられるビルの区分所有権(将来の予定)と、その敷地の共有持分(敷地権)に変更される、という手続きです。権利変換計画が都道府県知事の認可決定を受けると、権利返還期日に、この変更が効力を生じて、従来の土地所有権は、権利返還計画に従って新しい所有者に割り当てられ、取り壊される予定の建物所有権は全て組合に所属することになります。

このように、貴社は長年にわたって土地建物を所有して店舗を経営されて来たとは言っても、それが駅前の土地建物である場合には、地区一帯の多数者の意向を無視することはできません。店舗の営業を存続させるために、都市再開発法の手続きが進行する可能性がある場合は、これらの手続きを研究し、地権者として執り得る最大限の権利主張をしていく必要があります。

2、 権利変換手続きの内容 総合設計制度による容積率の緩和

再開発事業における権利変換手続きによって、従前の土地建物の権利は再建築される建物(土地を含む)の権利に変換されることになりますが、従前の権利と同様の権利が再建築後にも認められる必要があります。貴重な財産権ですから、再開発があったとしても少なくとも従前の権利は保護される必要があるからです。そこで、都市再開発後の新しい建物についての割り当て床面積を計算しておく必要があり、あなたの会社の土地について、規制緩和などにより容積率の緩和措置があるかどうか調査して、従前の権利がどのようなものであるのか確認しておく必要がありますみてください。

なぜ容積率が大事かといえば、通常の再開発事業は、土地所有権と建設費用の等価交換と同様の手法によって手続きが進行するためです。つまり、土地所有者が新たなビルの建設費用の現金支出をしなくて済むように、土地所有権の一部を不動産デベロッパーに売却し、再開発組合に参加させて事業費用を捻出させることが多いのです。

容積率の緩和に関しては建築基準法59条の2に規定されている総合設計制度の適用が受けられる場合は、最大で容積率を2倍に割り増しして建築確認を受けることが出来る場合があります。容積率が2倍となれば再開発後のビルについての権利も2倍となります。

建築基準法59条の2(敷地内に広い空地を有する建築物の容積率等の特例) 第1項 その敷地内に政令で定める空地を有し、かつ、その敷地面積が政 令で定める規模以上である建築物で、特定行政庁が交通上、安全上、防火上及び衛生上支障がなく、かつ、その建ぺい率、容積率及び各部分の高さについて総合的な配慮がなされていることにより市街地の環境の整備改善に資すると認めて許可したものの容積率又は各部分の高さは、その許可の範囲内において、第五十二条第一項から第九項まで、第五十五条第一項、第五十六条又は第五十七条の二第六項の規定による限度を超えるものとすることができる。

総合設計制度では500平米以上(建築基準法施行令136条3項)の敷地が必要ですが、貴社の土地が500平米未満でも、周りの土地と合わせて500平米を超えれば、再開発する場合には容積率の割り増しの恩恵を受けることができます。

総合設計制度については、各都道府県が条例で基準を定めていますので、所在地の都道府県庁に問い合わせしてみると良いでしょう。

<参考URL=総合設計制度、国土交通省の解説ページ>

https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/seido/kisei/59-2sogo.html

<参考URL=東京都の東京都総合設計許可要綱>

https://www.toshiseibi.metro.tokyo.jp/kenchiku/kijun/sougou_sinyoukou.pdf

3、 都市再開発によるビル建築費用の捻出法 等価交換等

容積率の割り増しを受けることが出来る場合、従来の床面積(権利床)に加えて、処分することができる床面積(処分床)を生ずることになりますので、再開発組合としては、これを不動産開発会社などに売却して建設費用の負担に充てることができます。これは通常の建替え事業における、建設費用の等価交換と同じ方式になります。通常は、店舗を運営するための床面積に困るということは想定しづらいことになります。原則として退去の必要は無いと言えるでしょう。

等価交換方式というのは、土地所有者が土地の持分を建設会社(不動産会社)に譲渡して、建設会社(不動産会社)が建物の建築費用を負担して、建物を建てる方式です。土地所有者としては、新たな建築費の負担無しに建物を建替えることができるメリットがあります。規制緩和によって容積率が緩和された区域では、等価交換方式による建替えがやり易くなっていると言えます。

再開発事業の費用(建設費用)については、等価交換であれば建設会社が負担しますが、場合によっては、再開発事業組合が費用を捻出しなければならない場合もあります。費用捻出のため土地所有権の一部を譲渡することになり、その場合は権利者が増えることにより、必然的に従来の地権者が確保できる床面積も少なくなってしまいます。不動産会社の担当者が言っているのは、この問題についての抽象的なリスクを語っているに過ぎません。貴社において独自に容積率を調査し、建設費用なども見積もって、割り当て可能な床面積を検討すれば、不動産会社担当者の言うことが間違いであるということに気付くことでしょう。

4、 都市再開発法による退去選択の場合の権利変換手続きの内容

都市再開発法の権利変換計画では、事業計画決定の公告から30日を経過した日が、従前土地建物の評価基準日となっています。この日を基準として土地所有権の評価を行い、退去する場合の金銭給付も行われます。

都市再開発法第80条1項(宅地等の価額の算定基準)第七十三条第一項第三号、第十一号又は第十二号の価額は、第七十一条第一項又は第五項(同条第六項において読み替えて適用する場合を含む。)の規定による三十日の期間を経過した日における近傍類似の土地、近傍同種の建築物又は近傍類似の土地若しくは近傍同種の建築物に関する同種の権利の取引価格等を考慮して定める相当の価額とする。

第71条1項(権利変換を希望しない旨の申出等)個人施行者若しくは再開発会社の施行の認可の公告、第十九条第一項の公告又は事業計画の決定若しくは認可の公告があつたときは、施行地区内の宅地の所有者、その宅地について借地権を有する者又は施行地区内の土地に権原に基づき建築物を所有する者は、その公告があつた日から起算して三十日以内に、施行者に対し、第八十七条又は第八十八条第一項及び第二項の規定による権利の変換を希望せず、自己の有する宅地、借地権若しくは建築物に代えて金銭の給付を希望し、又は自己の有する建築物を他に移転すべき旨を申し出ることができる。

なお、組合施行の再開発事業の場合は、組合設立認可の公告日から30日が評価基準日となります(都市再開発法11条1項、19条1項、71条1項)。

5、 不動産評価と再開発の利益の関係、判例の見解

判例上、この基準日における不動産の評価には、再開発の利益は加味されないと解釈されています。基準日現在では建物の建替えは行われておらず、開発利益があるということは擬制(みなしていること)に過ぎないとされています。

東京高等裁判所平成21年11月12日判決『控訴人らは、都市再開発計画により土地価格形成要因の変更が確実であれば、それを織り込んだ開発利益が既に発生しているともいえるから、市街地再開発事業の完成によって発生する開発利益が評価基準日に発生していなくても、土地の価格に加算すべきである旨主張する。 しかしながら、都市再開発法80条1項は、同法73条1項3号の従前試算の価額を、評価基準日における近傍類似資産の取引価格等を考慮して定める「相当の価額」とする旨定めており、これは、権利変換の前後を通じてその者の有する財産価値を等しくさせることを目的として算定される金額であって、権利変換計画の決定前の日である評価基準日の時点における近傍類似資産の取引価格その他の諸事情を考慮して定められるべきものと解するのが相当であり、評価基準日の後に発生する開発利益は加算すべきではないことは、原判決判示のとおりである。土地価格形成要因の変更が確実であることから、それを織り込んだ開発利益が既に発生しているということは擬制にすぎず、そうであるからこそ、本件取扱基準が開発利益を「加えた価格」を宅地の価格とする旨定めているのであり、真に現実化しているなら、加える必要自体がないことになる。』

確かに、時価ということであれば、市街地再開発組合の設立が認可されて公告されて30日を経過した時点では、再開発が完成することがほぼ確実であると評価されて、事実上、再開発の利益を織り込んだ価格形成がなされることになり、この時点で任意に不動産売買契約を締結するのであれば、再開発の利益を加算した価格により契約が成立するものと言えます。

しかし、都市再開発法80条1項が、「時価」と規定せず、「近傍類似の土地、近傍同種の建築物又は近傍類似の土地若しくは近傍同種の建築物に関する同種の権利の取引価格等を考慮して定める相当の価額」と規定しているのは、権利変換計画に記載するための評価基準を定めているのであって、権利変換の前後を通じて権利者の有する資産を変化させないことを目的としていると考えられるのですから、広く周知される組合設立認可公告の30日後を基準日としていることには一定の合理性があると言えます。関係する権利者全員が同じ基準で評価されるのですから、権利変換の時点で、当事者間に不公平は無いと考えることもできるわけです。法改正がなされない限り、都市再開発法80条1項に関して法解釈の変更される見込みは薄いと言えるでしょう。

6、 再開発不参加による不利益の内容

都市再開発に参加せず、金銭給付を受ける申出(都市再開発法71条1項の権利変換を希望しない旨の申出)をしてしまいますと、開発利益が加味されない評価に基づいた金銭給付を受けることになってしまいますので、都市開発が行われることを前提に考えると、貴社にとって逸失利益を生じてしまうことになります。将来的に貴社の不動産権利を処分するかどうかは別として、都市再開発法の手続きの期間中は、再開発物件に入居することを前提に検討された方が良いでしょう。

前記の通り、権利変換計画に定められる不動産の権利の価額は、市街地再開発組合設立認可公告の30日後における、近傍類似不動産の時価であって、開発利益が加算されることはありませんので、開発利益を享受するのであれば、再開発に参加して、権利変換を経た、新しい建物の権利を取得する他に方法はありません。

万一、権利を処分して、他の場所に移転するということを希望されるのであれば、一旦、再開発に参加して、新しい不動産の権利を取得した後に、この不動産を市場価格で売却して(会社売買等の方法もあります。)、これを原資として新しい不動産を探されるという方法も検討されたら良いでしょう。さらに、都市再開発ビル建設期間中(通常3-4年)の営業補償等(引越し、内装、備品、従業員の休業補償。従業員給料の補償を受けておいて、仮に支店があればそこで補充し雇用する方法もあります。)すべての損害補償を受けることができなくなることも大きいです。都市再開発に参加しても借家人等と同様に損失補償を受けることができます。この額はかなりのものになるはずです。

7、 まとめ

このように、権利変換計画に定められる不動産評価には開発利益は加算されていませんので、都市再開発法71条1項の「権利変換を希望しない旨の申出」を行うということは、経済的に見て大きな逸失利益を生じてしまいますのでお勧めできません。法律上は都市再開発に参加しないための手続きが整備されていますが、利用する場合は、その内容を十分に理解した上で利用すべきです。

地権者の3分の2以上の合意(都市再開発法14条1項)により再開発組合が設立された以上、従来の建物から退去して再建築に協力する必要がありますが、貴社の損失を最小限にするためには、再開発に参加し、手続きの中で権利主張していくという選択が次善の策となります。新たなビルに割り当てられる床面積については、不動産会社の担当者が「狭小で店舗を継続できない」等と言ってきたとしても抽象的なリスクを述べているに過ぎないと考えて、貴社独自の調査をして交渉していく必要があります。

都市再開発における交渉では、事業計画決定(市街地再開発組合設立認可)前の段階の主要地権者との交渉も重要となってきますし、組合設立後も、権利変換計画の策定時に貴社の意見を主張したり、また、権利変換計画が縦覧されたときは意見書を提出したりすることにより、貴社の店舗が建替え後も問題なく継続できるように権利を主張していく必要があります。手続きが複雑で御心配の場合は経験のある弁護士に相談して一緒に手続きを進めると良いでしょう。

以上

関連事例集

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※参照条文

都市再開発法

第14条第1項(宅地の所有者及び借地権者の同意)第十一条第一項又は第二項の規定による認可を申請しようとする者は、組合の設立について、施行地区となるべき区域内の宅地について所有権を有するすべての者及びその区域内の宅地について借地権を有するすべての者のそれぞれの三分の二以上の同意を得なければならない。この場合においては、同意した者が所有するその区域内の宅地の地積と同意した者のその区域内の借地の地積との合計が、その区域内の宅地の総地積と借地の総地積との合計の三分の二以上でなければならない。

第2項 第七条の二第五項の規定は、前項の規定により同意を得る場合について準用する。

第20条(組合員)

第1項 組合が施行する第一種市街地再開発事業に係る施行地区内の宅地について所有権又は借地権を有する者は、すべてその組合の組合員とする。

第2項 宅地又は借地権が数人の共有に属するときは、その数人を一人の組合員とみなす。

第80条第1項(宅地等の価額の算定基準)第七十三条第一項第三号、第十一号又は第十二号の価額は、第七十一条第一項又は第五項(同条第六項において読み替えて適用する場合を含む。)の規定による三十日の期間を経過した日における近傍類似の土地、近傍同種の建築物又は近傍類似の土地若しくは近傍同種の建築物に関する同種の権利の取引価格等を考慮して定める相当の価額とする。

第2項 第七十六条第三項の割合の基準となる宅地の価額は、当該宅地に関する所有権以外の権利が存しないものとして、前項の規定を適用して算定した相当の価額とする。

第71条(権利変換を希望しない旨の申出等)

第1項 個人施行者若しくは再開発会社の施行の認可の公告、第十九条第一項の公告又は事業計画の決定若しくは認可の公告があつたときは、施行地区内の宅地の所有者、その宅地について借地権を有する者又は施行地区内の土地に権原に基づき建築物を所有する者は、その公告があつた日から起算して三十日以内に、施行者に対し、第八十七条又は第八十八条第一項及び第二項の規定による権利の変換を希望せず、自己の有する宅地、借地権若しくは建築物に代えて金銭の給付を希望し、又は自己の有する建築物を他に移転すべき旨を申し出ることができる。

第2項 前項の宅地、借地権若しくは建築物について仮登記上の権利、買戻しの特約その他権利の消滅に関する事項の定めの登記若しくは処分の制限の登記があるとき、又は同項の未登記の借地権の存否若しくは帰属について争いがあるときは、それらの権利者又は争いの相手方の同意を得なければ、同項の規定による金銭の給付の希望を申し出ることができない。

第3項 施行地区内の建築物について借家権を有する者(その者がさらに借家権を設定しているときは、その借家権の設定を受けた者)は、第一項の期間内に施行者に対し、第八十八条第五項の規定による借家権の取得を希望しない旨を申し出ることができる。

第4項 施行者が第十一条第一項の規定により設立された組合である場合においては、最初の役員が選挙され、又は選任されるまでの間は、第一項又は前項の規定による申出は、第十一条第一項の規定による認可を受けた者が受理するものとする。

第5項 第一項の期間経過後六月以内に第八十三条の規定による権利変換計画の縦覧の開始(個人施行者が施行する第一種市街地再開発事業にあつては、次条第一項後段の規定による権利変換計画の認可。以下この項において同じ。)がされないときは、当該六月の期間経過後三十日以内に、第一項若しくは第三項の規定による申出を撤回し、又は新たに第一項若しくは第三項の規定による申出をすることができる。その三十日の期間経過後更に六月を経過しても第八十三条の規定による権利変換計画の縦覧の開始がされないときも、同様とする。

第6項 事業計画を変更して従前の施行地区外の土地を新たに施行地区に編入した場合においては、前項前段中「第一項の期間経過後六月以内に第八十三条の規定による権利変換計画の縦覧の開始(個人施行者が施行する第一種市街地再開発事業にあつては、次条第一項後段の規定による権利変換計画の認可。以下この項において同じ。)がされないときは、当該六月の期間経過後」とあるのは、「新たな施行地区の編入に係る事業計画の変更の公告又はその変更の認可の公告があつたときは、その公告があつた日から起算して」とする。

第7項 第一項、第三項又は前二項の申出又は申出の撤回は、国土交通省令で定めるところにより、書面でしなければならない。

第87条(権利変換期日における権利の変換)

第1項 施行地区内の土地は、権利変換期日において、権利変換計画の定めるところに従い、新たに所有者となるべき者に帰属する。この場合において、従前の土地を目的とする所有権以外の権利は、この法律に別段の定めがあるものを除き、消滅する。

第2項 権利変換期日において、施行地区内の土地に権原に基づき建築物を所有する者の当該建築物は、施行者に帰属し、当該建築物を目的とする所有権以外の権利は、この法律に別段の定めがあるものを除き、消滅する。ただし、第六十六条第七項の承認を受けないで新築された建築物及び他に移転すべき旨の第七十一条第一項の申出があつた建築物については、この限りでない。