新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.1490、2014/03/13 18:29 https://www.shinginza.com/saikaihatsu.htm

都市再開発法対策

【民事 都市再開発法  第一種市街地再開発事業  「権利変換方式」に対する賃借人側の対策 ビル建築までの補償内容の検討と対策 定期賃借権への変更要請とその法的義務】

質問:

当社は、駅前のビルのテナント(店子)として入居して、雑貨店を20年以上営んで来ました。ところが、先日、「駅前の再開発でビルの建替え工事をするので立ち退いて欲しい」という連絡がありました。また、「賃貸借契約解除通知」という書類も送られてきてしまいました。不動産に詳しい知人に相談したら、「建物賃借権は借地借家法で保護されるから簡単には退去させられないはずだ」ということでしたが、大家側の不動産会社の担当者から、「今回の再開発は都市再開発法で強制的に手続するので借地借家法は適用されません。後になればなるほど条件が悪くなりますよ。早く立ち退き合意して下さい」、と言ってきます。この担当者の言うことは正しいことなのでしょうか?



回答:

1、(原則)
市区町村の都市計画で「高度利用地区」に指定されている地区内に存在する建物については、通常地権者が都市再開発組合を設立して都市再開発法の権利変換手続に従って手続すれば、借地借家法の賃貸借契約更新拒絶をすることなく、強制的に、旧建物の賃貸借契約の効力を消滅させることができます。但し、後述のように新建物についての借家権が認められますので安心してください(都市再開発法77条5項)。従来の賃借権(施行者側の土地所有権等も)が消滅し、新たなる建物に賃借権が認められるので権利変換手続きといわれています。その趣旨は、市街地の土地の合理的かつ健全な高度利用と都市機能の更新を図り、建物の安全性を高め、もつて公共の福祉に寄与することを目的としています(同1条)。このような大胆な手続きがアベノミックスの経済効果と共に注目されています。しかし、消滅する賃借権に代わる代償処置が定められ判例上保護されてきた賃借権をないがしろにすることはできませんので動揺することはありません。

2、(第一種市街地再開発事業と第二種市街地再開発事業)
都市再開発とは、都市再開発法に基づいて行われる、建物の建て替えを含む土地利用方法の新たな開発行為です。再開発事業には、地方公共団体や都市再生機構が施行する公共性の高い第二種市街地再開発事業(管理処分方式)と、一般の地権者も施行することができる、第一種市街地再開発事業(権利変換方式)があります。御相談のようなケースはほとんどが、第一種市街地再開発事業です。

3、第一種市街地再開発事業(権利変換方式)では、再開発の対象となる建物について借家権を有する者に対して、建替え後の建物について、新たに賃借権を与えるべきこととされています。つまり、建替えについては強制されてしまいますが、狭小テナントなどの特別な例外を除いて、原則として立ち退きまでは強制されませんので御安心下さい。分かりやすく言えば、従来建物の賃借権が新しい建物の賃借権に権利変換されることになります。前述のように賃借権の対象であった建物が取り壊しにより消滅しますので、新たに認められる賃借権は別個のものでありそういう意味で「権利変換」ということになります。なお、新しい建物の借家権の内容(占有面積や賃料等具体的内容)については、後述するように権利変換の手続きにより決定されますので、その手続きまで明確にはなりません。しかし、従前の賃借権と同価値の賃借権が再開発後のビルについて賃借人に与えられますが、賃貸人側の経済的利益により再開発がおこなわれる以上従前と同様に賃借人が営業できるよう配慮がなされます。従前の賃借面積は基本的に維持されるものと考えられます(再開発法74条2項の趣旨から同77条2項も準用されるものと解釈できます。)賃料ですが、基本的には従前のものが維持され新しい建物の賃借権といえども1割程度の値上げが予想されます。ただ、管理費用は値上げの可能性が残されます。重要なことは、判例上積み重ねられた建物賃借権の保護に関する基本的な考え方が、都市再開発法の権利変換手続きにおいても尊重されるということです。

4、(再開発ビルに残る自由とビル建築までの休業補償等)
 さらに、権利変換後当該建物は取り壊しになりますが再開発ビル建築までの休業損害、仮店舗費用等の損失補償も確保されますので安心です(再開発法97条、96条)。補償内容も公正適正なものでなければならず、施行者側の言いなりになる必要はありません(審査委員の過半数の同意を得、又は市街地再開発審査会の議決)。この費用は、万が一の明け渡しの立ち退き料の交渉、算定にも(組合設立前、設立後でも明け渡しの交渉は権利変換手続き開始、すなわち事業計画決定、認可公告まで行われます。変換手続き開始から30日以内に再開発に参加しないで借家人として補償をもらうこともできます。再開発法70条、71条。91条)賃貸人側の不利益事情として考慮する必要があります。

5、(再開発ビルに残る自由と残らない自由)
貴方の場合、再開発ビルに残らないで、建物賃借権の正当な補償を取得して退去する自由も当然あります。組合設立前であれば、賃貸人との交渉。組合設立後(個人の場合は個人の施行者と交渉)であれば組合側との交渉が権利変換計画開始登記(事業計画決定、認可公告)まで行われますが(補償を取得して退去も自由です。権利変換計画開始登記から30日以内の申出必要。当然補償額は申出期間経過後6カ月以内に通知され確認できます。)、再開発に参加しないで退去する場合は近隣借家権価格に従い適正な補償(公正な審査委員の関与があり、借家権については結局正式鑑定等が資料となるでしょう。84条)を取得できます(再開発法91条、80条)。又、借家権の補償内容を定める権利変換計画は事前に借家権者に通知され(同83条1項)2週間の間閲覧することができます。その閲覧期間内に価格が低額な場合は意見書を提出することができ(83条2項)、意見書の不採択の通知を受けた者は、価格について30日以内に都道府県収用委員会に裁決申請ができます。その裁決に不服であれば行政訴訟を提起できます。以上から、安易な地権者側の提案誘導に応ずる必要はありません。

6、(施行者の手法と問題点)
再開発事業者(施行者)担当者は、弁護士等の資格者でない限り(弁護士の場合再開発手続き、権利変換手続きについて誠実に説明する義務があり、万が一不十分な説明が行われると懲戒の危険があるので施行者側の作為的要請を承諾しません。)、巨大な利益関係を背景に再開発地に関連する権利関係者をまとめる必要性から、再開発法の具体的手続き内容を伝えず又は意図的に手続きを自らに有利に説明し交渉する場合が考えられます。例えば、再開発では賃借権者は権利者として法的に残れるという説明を省き立退き交渉を行う。組合設立後、権利変換手続開始後は、立退き料は現在より低額になるので合意解約に応じた方がいいなどという賃借人の無知に乗じた提案等があります。貴方の場合もその例と思われます。さらに、借家人が多数いるようなビルでは、一部の協力的借家人のみを種々の利益で同意させるなどして、当該借家人を通じ他の借家人に不確実な情報を伝えるなど同意に応じない借家人対策を取ることが考えられるので注意が必要です。このような場合、あくまで適正な権利変換手続を求め、弁護人等と協議が大切です。かなりの長期間を要する市街地再開発手続き(都市計画決定から権利変換手続き終了まで2年以上必要です。それからビルの取り壊しとなります。新しいビルはその数年後。都市計画決定までは、借家人にも情報は公開されずその期間は先行買収、権利者との根回し、測量調査等により基本構想、基本計画等が立てられますが規模により不確定ですが最低でも数年以上を要するでしょう。再開発法60条。以上当初の手続き開始から10年以上は必要です。)は、一般の賃借人にもなじみが薄く理解しにくいところから施行者側のペースで、従来の賃借権を適正に評価されないまま安易な妥協により立ち退く場合もありますので専門家との協議対策が必要です。

7、(供託手続き)
尚、大家側が、「既に解除通知を出している」ということで賃料の受け取りを拒否する場合は、賃料供託の手続が必要となります。

8、(定期建物賃貸借契約への変更について)
貴殿の質問にはありませんが、都市再開発の賃借人交渉の過程で、再開発後完成したビルの賃借権について、従来の普通賃借権(法定更新あり)を定期賃借権(法定更新なし)に変更するように種々の理由をつけて要請してくる場合があります。この要請に応じてはいけません。なぜなら、借地借家法の賃借権と定期賃借権とはその財産的価値が全く異なるからです。又、応ずる法的義務もありません。仮に応ずるのであれば、借家権価格の賠償など、その公正な補償が必要です。

9、ショッピングセンターの立ち退き問題については、当事務所相談事例集1448番も参照下さい。


解説:

1、 (都市再開発法に基づく市街地再開発事業)

本件の建替え事業は、「第一種市街地再開発事業」として処理されることが計画されていると思われます。第一種市街地再開発事業は、都市再開発法に基づいて行われる、都市再開発事業です。

都市再開発法の制度趣旨は、「この法律は、市街地の計画的な再開発に関し必要な事項を定めることにより、都市における土地の合理的かつ健全な高度利用と都市機能の更新とを図り、もつて公共の福祉に寄与することを目的とする。(都市再開発法1条)」とされています。つまり、市街地の高度利用を促進することにより、公共の利益を増進させるということになります。

 市区町村の都市計画で「高度利用地区(都市計画法第9条第18項)」に指定されている地区内に存在する建物については、地権者が市街地再開発組合を設立して(個人でもできます)都市再開発法の権利変換手続に従って手続すれば、借地借家法の賃貸借契約更新拒絶をすることなく、権利変換手続きにより強制的に賃貸借契約の効力を消滅させることができます(都市再開発法3条1号、87条1項)。市役所で、営業されている店舗の地域の都市計画図を確認してみると良いでしょう。高度利用地区の指定がなされていれば、大家側不動産業者担当者の言っていることにも、一定の根拠があるということになります。

今回の再開発で言えば、駅前地区の機能を向上させ、駅周辺一帯としての利便性を向上させるという目的で再開発事業が行われることになります。都市再開発法では、当事者の権利の公平性を図りつつ、「市街地の再開発」については、公共の利益が高いものについては、どんどん認めていく、ということになります。借家権者に対して、金銭補償したり、新しい建物の借家権を割り当てたりしますが、公共の利益が高い案件について、建替えや再開発については強制的に行う、というのが、都市再開発法の基本的な考え方です。このようなことは、私有財産制の保障(憲法29条)という観点から問題がないとは言えませんが、公共の福祉という権利保障の内在的制約である理論により制限は可能と考えられています。しかし、判例上の集積により認めれてきた借家権の保障も当然代償的手続きの中で考えられています。


2、(第一種市街地再開発事業と、第二種市街地再開発事業)

市街地再開発事業には、第1種と第2種があり、第1種が「権利変換方式」であり、第2種が「管理処分方式」とされています。「管理処分方式」とは、再開発地域に不動産の権利を所有する者の権利を強制的に買い取ることを認める方式です。公共的観点から考えて再開発事業の必要性と緊急性が高い事業において認可される方式です。第2種市街地再開発事業では、事業主体として、「個人施行」や「(地権者の)市街地再開発組合」による手続が認められず、主に、市区町村や都道府県などの地方自治体や、独立行政法人都市再生機構が、市役所整備などの公共性の高い事業において用いることができる手続方法です。その他、例えば、オリンピック開催をするために必要だということで競技場を建設したりするような場合にも、利用することができると考えられます。具体的には阪神淡路大震災被災地再開発、東京亀戸、大島、小松川再開発があります。

これに対し、第一種市街地再開発事業は、前記の第2種事業よりは緊急性や公共性が認められませんが、一定の必要性が認められる事案で、都市再開発法の定める手続に従って処理することにより、「権利変換」をすることが認められるものです。権利変換とは、権利変換期日において、市街地再開発区域内の土地建物の旧来の権利が全て消滅し、代わりに、市街地再開発後の新しい土地や建物等の権利が与えられることを意味します。権利変換により、円滑な建物の建替え工事が促進されることになります。

都市再開発法第87条(権利変換期日における権利の変換)
第1項 施行地区内の土地は、権利変換期日において、権利変換計画の定めるところに従い、新たに所有者となるべき者に帰属する。この場合において、従前の土地を目的とする所有権以外の権利は、この法律に別段の定めがあるものを除き、消滅する。
第2項 権利変換期日において、施行地区内の土地に権原に基づき建築物を所有する者の当該建築物は、施行者に帰属し、当該建築物を目的とする所有権以外の権利は、この法律に別段の定めがあるものを除き、消滅する。ただし、第六十六条第七項の承認を受けないで新築された建築物及び他に移転すべき旨の第七十一条第一項の申出があつた建築物については、この限りでない。


3、(第一種市街地再開発事業における借家権の扱い)

市街地再開発区域内に借家権を有する権利者の権利は、前記の「権利変換」により、新しい再開発後の建物の借家権を付与されることが原則となります。

都市再開発法第77条(施設建築物の一部等)
第5項 権利変換計画においては、第七十一条第三項の申出をした者を除き、施行地区内の土地に権原に基づき建築物を所有する者から当該建築物について借家権の設定を受けている者(その者がさらに借家権を設定しているときは、その借家権の設定を受けた者)に対しては、第一項の規定により当該建築物の所有者に与えられることとなる施設建築物の一部について、借家権が与えられるように定めなければならない。ただし、当該建築物の所有者が第七十一条第一項の申出をしたときは、前項の規定により施行者に帰属することとなる施設建築物の一部について、借家権が与えられるように定めなければならない。

現在、大家側不動産業者は、「解除通知を出した借家権」として、貴社の建物賃貸借契約を扱っておりますが、貴社が、現実に建物を占有使用し、また、賃料供託を行い続ける限り、簡単に借家権を消滅させることはできません。市街地再開発組合が設立された場合は、大家から、再開発組合に対して、「解除通知を出した借家権」が引き継がれることになります。

再開発組合も、借家権の消滅を法的に確認するためには、裁判所への提訴をすることが必要ですが、その時間が無い場合は、都市再開発法の定める権利変換計画のなかで、貴社の新しい建物における賃借床面積を定める必要があることになります。今回の貴社ように、現実に占有が残っているケースでは、権利変換計画の中に、新しい建物の借家権を定める必要があることが原則となります。


4、(権利変換計画に対する異議申立手続)

今回の再開発における権利変換計画において、貴社の借家権が定められていなかったり、定められていても床面積が著しく不利な定められ方をしていた場合の、異議申立手続は、都市再開発法83〜84条に規定されています。つまり、権利変換計画の縦覧が行われた時に、借家人は、「権利変換計画に関する意見書」を施行者に提出することができ、権利変換計画及び意見書に対する対応方法について、「審査委員の過半数の同意」、又は、「市街地再開発審査会の議決」を得ることが必要です。

都市再開発法第83条(権利変換計画の縦覧等)
第1項 個人施行者以外の施行者は、権利変換計画を定めようとするときは、権利変換計画を二週間公衆の縦覧に供しなければならない。この場合においては、あらかじめ、縦覧の開始の日、縦覧の場所及び縦覧の時間を公告するとともに、施行地区内の土地又は土地に定着する物件に関し権利を有する者及び参加組合員又は特定事業参加者にこれらの事項を通知しなければならない。
第2項 施行地区内の土地又は土地に定着する物件に関し権利を有する者及び参加組合員又は特定事業参加者は、縦覧期間内に、権利変換計画について施行者に意見書を提出することができる。
第3項 施行者は、前項の規定により意見書の提出があつたときは、その内容を審査し、その意見書に係る意見を採択すべきであると認めるときは権利変換計画に必要な修正を加え、その意見書に係る意見を採択すべきでないと認めるときはその旨を意見書を提出した者に通知しなければならない。
第4項 施行者が権利変換計画に必要な修正を加えたときは、その修正に係る部分についてさらに第一項からこの項までに規定する手続を行なうべきものとする。ただし、その修正が政令で定める軽微なものであるときは、その修正部分に係る者にその内容を通知することをもつて足りる。
第5項 第一項から前項までの規定は、権利変換計画を変更する場合(政令で定める軽微な変更をする場合を除く。)に準用する。

第84条(審査委員及び市街地再開発審査会の関与)
第1項 施行者は、権利変換計画を定め、又は変更しようとするとき(政令で定める軽微な変更をしようとする場合を除く。)は、審査委員の過半数の同意を得、又は市街地再開発審査会の議決を経なければならない。この場合においては、第七十九条第二項後段の規定を準用する。
第2項 前項の規定は、前条第二項の意見書の提出があつた場合において、その採否を決定するときに準用する。


審査委員は、「土地及び建物の権利関係又は評価について特別の知識経験を有し、かつ、公正な判断をすることができる者のうちから総会で選任する。(都市再開発法43条2項)」とされており、一定の公平な判断が期待できる機関です。市街地再開発審査会は、「土地及び建物の権利関係又は評価について特別の知識経験を有し、かつ、公正な判断をすることができる者(都市再開発法57条4項)」として地方公共団体の長から任命された5〜20名の委員による機関で、これも一定の公平な判断が期待できる機関と言えます。公正な判断のため当然法的専門家、不動産鑑定士の参加も予定されています。

この、審査委員による同意や、市街地再開発審査会の議決において、不公平な判断が出てしまった場合や、これに対して異議がある場合には、権利変換計画の認可を受けた通知に対して、「行政不服審査請求」又は「行政処分取消訴訟」を提起することになります。


都市計画法第86条(権利変換の処分)
第1項 施行者は、権利変換計画若しくはその変更の認可を受けたとき、又は権利変換計画について第七十二条第四項の政令で定める軽微な変更をしたときは、遅滞なく、国土交通省令で定めるところにより、その旨を公告し、及び関係権利者に関係事項を書面で通知しなければならない。
第2項 権利変換に関する処分は、前項の通知をすることによつて行なう。
第3項 権利変換に関する処分については、行政手続法 (平成五年法律第八十八号)第三章 の規定は、適用しない。

実際には、権利変換計画の策定前の期間や、縦覧や意見書を提出する期間内に、市街地再開発組合との間で、借家権をどうするか、実質的な交渉を行うことになります。新しい借家権の権利内容を貴社にとって有利なものとするために、交渉段階から弁護士を介入させるという手段が有効と考えられます。


新しいビルの借家権について、賃料、管理費、売上等に不安な場合、再開発に参加しないこともできますので、権利変換計画で賃借権補償の内容を知ることができます。不参加の期限は、事業計画決定後の権利変換手続き開始登記後30日以内です。再開発法70条、71条。参加しない意思表示を行うと30日の期間経過後通常6カ月以内に賃借人に通知がきて権利変換計画に示された借家権補償の額を知ることができます。前述のようにこの額は、公的機関も介入し適正公正なものとして算出されます。額に不満であれば、これに対し異議の申し立てとして、意見書の提出、都道府県収用委員会に裁決申立て、行政訴訟の手続きを取ることができますので適正な補償額が予想されます(再開発法72条乃至85条、91条)。従って、従来の借家権が消滅するとしても何もあわてる必要性はないわけです。


5、(新しい建物の借家権を取得した場合)

都市再開発法の規定に従って、貴社が、新しい建物の借家権床面積を取得した場合でも、大家としては、引き続き、建物の退去を希望してくると思います。今回の再開発が、駅ビル周辺の利便性向上にありますので、新しいテナントも大家の事業計画に従って選定したいと考えられるからです。その場合は、貴社と、大家との間で、新しい建物の借家権を買い取りする交渉を行うことができます。この時の買取価格の交渉が、事実上、現在の借地借家法における立退料の交渉と同様の交渉になると考えられます。どうしても大家との買取交渉がまとまらない場合は、貴社の株式を、新しい建物での営業を希望する第三者に買い取りしてもらうことを検討しても良いでしょう。

以上の様にして、大家が都市再開発法の手続を選択し、不動産業者を経由してその旨を連絡してきたとしても、あわてる必要はありません。貴社は、長年駅前で借家権に基づき営業されてきたので、その利益は重大であり、正当な借家権価格を基準とした立退料をベースとして交渉を継続する必要があるでしょう。都市再開発法の手続や、賃料供託の手続について御心配であれば、お近くの法律事務所に御相談なさってみると良いでしょう。

※ 参考条文

都市計画法
第9条第18項 高度利用地区は、用途地域内の市街地における土地の合理的かつ健全な高度利用と都市機能の更新とを図るため、建築物の容積率の最高限度及び最低限度、建築物の建ぺい率の最高限度、建築物の建築面積の最低限度並びに壁面の位置の制限を定める地区とする。



都市再開発法

(目的)
第一条  この法律は、市街地の計画的な再開発に関し必要な事項を定めることにより、都市における土地の合理的かつ健全な高度利用と都市機能の更新とを図り、もつて公共の福祉に寄与することを目的とする。

(定義)
第二条  この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一  市街地再開発事業 市街地の土地の合理的かつ健全な高度利用と都市機能の更新とを図るため、都市計画法 (昭和四十三年法律第百号)及びこの法律(第七章を除く。)で定めるところに従つて行われる建築物及び建築敷地の整備並びに公共施設の整備に関する事業並びにこれに附帯する事業をいい、第三章の規定により行われる第一種市街地再開発事業と第四章の規定により行われる第二種市街地再開発事業とに区分する。
二  施行者 市街地再開発事業を施行する者をいう。
三  施行地区 市街地再開発事業を施行する土地の区域をいう。
四  公共施設 道路、公園、広場その他政令で定める公共の用に供する施設をいう。
五  宅地 公共施設の用に供されている国、地方公共団体その他政令で定める者の所有する土地以外の土地をいう。
六  施設建築物 市街地再開発事業によつて建築される建築物をいう。
七  施設建築敷地 市街地再開発事業によつて造成される建築敷地をいう。
八  施設建築物の一部 建物の区分所有等に関する法律 (昭和三十七年法律第六十九号)第二条第一項 に規定する区分所有権の目的たる施設建築物の部分(同条第四項 に規定する共用部分の共有持分を含む。)をいう。
九  施設建築物の一部等 施設建築物の一部及び当該施設建築物の所有を目的とする地上権の共有持分をいう。
十  建築施設の部分 施設建築物の一部及び当該施設建築物の存する施設建築敷地の共有持分をいう。
十一  借地権 建物の所有を目的とする地上権及び賃借権をいう。ただし、臨時設備その他一時使用のため設定されたことが明らかなものを除く。
十二  借地 借地権の目的となつている宅地をいう。
十三  借家権 建物の賃借権をいう。ただし、一時使用のため設定されたことが明らかなものを除く。
(市街地再開発事業の施行)
第二条の二  次に掲げる区域内の宅地について所有権若しくは借地権を有する者又はこれらの宅地について所有権若しくは借地権を有する者の同意を得た者は、一人で、又は数人共同して、当該権利の目的である宅地について、又はその宅地及び一定の区域内の宅地以外の土地について第一種市街地再開発事業を施行することができる。
一  高度利用地区(都市計画法第八条第一項第三号 の高度利用地区をいう。以下同じ。)の区域
二  都市再生特別地区(都市再生特別措置法(平成十四年法律第二十二号)第三十六条第一項の規定による都市再生特別地区をいう。以下同じ。)の区域
三  都市計画法第十二条の四第一項第一号 の地区計画、密集市街地における防災街区の整備の促進に関する法律 (平成九年法律第四十九号。以下「密集市街地整備法」という。)第三十二条第一項 の規定による防災街区整備地区計画又は幹線道路の沿道の整備に関する法律 (昭和五十五年法律第三十四号)第九条第一項 の規定による沿道地区計画の区域(次に掲げる条件の全てに該当するものに限る。第三条において「特定地区計画等区域」という。)
イ 地区整備計画(都市計画法第十二条の五第二項第一号 の地区整備計画をいう。以下同じ。)、密集市街地整備法第三十二条第二項第一号 に規定する特定建築物地区整備計画若しくは同項第二号 に規定する防災街区整備地区整備計画又は幹線道路の沿道の整備に関する法律第九条第二項第一号 の沿道地区整備計画(ロにおいて「地区整備計画等」という。)が定められている区域であること。
ロ 地区整備計画等において都市計画法第八条第三項第二号 チに規定する高度利用地区について定めるべき事項(特定建築物地区整備計画において建築物の特定地区防災施設に係る間口率(密集市街地整備法第三十二条第三項 に規定する建築物の特定地区防災施設に係る間口率をいう。)の最低限度及び建築物の高さの最低限度が定められている場合並びに沿道地区整備計画において建築物の沿道整備道路に係る間口率(幹線道路の沿道の整備に関する法律第九条第六項第二号 に規定する建築物の沿道整備道路に係る間口率をいう。)の最低限度及び建築物の高さの最低限度が定められている場合にあつては、建築物の容積率(延べ面積の敷地面積に対する割合をいう。以下同じ。)の最低限度を除く。)が定められていること。
ハ 建築基準法 (昭和二十五年法律第二百一号)第六十八条の二第一項 の規定に基づく条例で、ロに規定する事項に関する制限が定められていること。
2  市街地再開発組合は、第一種市街地再開発事業の施行区域内の土地について第一種市街地再開発事業を施行することができる。
3  次に掲げる要件のすべてに該当する株式会社は、市街地再開発事業の施行区域内の土地について市街地再開発事業を施行することができる。
一 市街地再開発事業の施行を主たる目的とするものであること。
二  公開会社(会社法 (平成十七年法律第八十六号)第二条第五号 に規定する公開会社をいう。)でないこと。
三 施行地区となるべき区域内の宅地について所有権又は借地権を有する者が、総株主の議決権の過半数を保有していること。
四 前号の議決権の過半数を保有している者及び当該株式会社が所有する施行地区となるべき区域内の宅地の地積とそれらの者が有するその区域内の借地の地積との合計が、その区域内の宅地の総地積と借地の総地積との合計の三分の二以上であること。この場合において、所有権又は借地権が数人の共有に属する宅地又は借地について前段に規定する者が共有持分を有しているときは、当該宅地又は借地の地積に当該者が有する所有権又は借地権の共有持分の割合を乗じて得た面積を、当該宅地又は借地について当該者が有する宅地又は借地の地積とみなす。
4  地方公共団体は、市街地再開発事業の施行区域内の土地について市街地再開発事業を施行することができる。
5  独立行政法人都市再生機構は、国土交通大臣が次に掲げる事業を施行する必要があると認めるときは、市街地再開発事業の施行区域内の土地について当該事業を施行することができる。
一  一体的かつ総合的に市街地の再開発を促進すべき相当規模の地区の計画的な整備改善を図るため当該地区の全部又は一部について行う市街地再開発事業
二  前号に規定するもののほか、国の施策上特に供給が必要な賃貸住宅の建設と併せてこれと関連する市街地の再開発を行うための市街地再開発事業
6  地方住宅供給公社は、国土交通大臣(市のみが設立した地方住宅供給公社にあつては、都道府県知事)が地方住宅供給公社の行う住宅の建設と併せてこれと関連する市街地の再開発を行うための市街地再開発事業を施行する必要があると認めるときは、市街地再開発事業の施行区域内の土地について当該市街地再開発事業を施行することができる。
(都市再開発方針)
第二条の三  人口の集中の特に著しい政令で定める大都市を含む都市計画区域内の市街化区域(都市計画法第七条第一項 に規定する市街化区域をいう。以下同じ。)においては、都市計画に、次の各号に掲げる事項を明らかにした都市再開発の方針を定めるよう努めるものとする。
一  当該都市計画区域内にある計画的な再開発が必要な市街地に係る再開発の目標並びに当該市街地の土地の合理的かつ健全な高度利用及び都市機能の更新に関する方針
二  前号の市街地のうち特に一体的かつ総合的に市街地の再開発を促進すべき相当規模の地区及び当該地区の整備又は開発の計画の概要
2  前項の都市計画区域以外の都市計画区域内の市街化区域においては、都市計画に、当該市街化区域内にある計画的な再開発が必要な市街地のうち特に一体的かつ総合的に市街地の再開発を促進すべき相当規模の地区及び当該地区の整備又は開発の計画の概要を明らかにした都市再開発の方針を定めることができる。
3  国及び地方公共団体は、前二項の都市再開発の方針に従い、第一項第二号又は前項の地区の再開発を促進するため、市街地の再開発に関する事業の実施その他の必要な措置を講ずるよう努めなければならない。



第一章の二 第一種市街地再開発事業及び第二種市街地再開発事業に関する都市計画

(第一種市街地再開発事業の施行区域)
第三条  都市計画法第十二条第二項 の規定により第一種市街地再開発事業について都市計画に定めるべき施行区域は、第七条第一項の規定による市街地再開発促進区域内の土地の区域又は次に掲げる条件に該当する土地の区域でなければならない。
一  当該区域が高度利用地区、都市再生特別地区又は特定地区計画等区域内にあること。
二  当該区域内にある耐火建築物(建築基準法第二条第九号の二 に規定する耐火建築物をいう。以下同じ。)で次に掲げるもの以外のものの建築面積の合計が、当該区域内にあるすべての建築物の建築面積の合計のおおむね三分の一以下であること又は当該区域内にある耐火建築物で次に掲げるもの以外のものの敷地面積の合計が、当該区域内のすべての宅地の面積の合計のおおむね三分の一以下であること。
イ 地階を除く階数が二以下であるもの
ロ 政令で定める耐用年限の三分の二を経過しているもの
ハ 災害その他の理由によりロに掲げるものと同程度の機能低下を生じているもの
ニ 建築面積が百五十平方メートル未満であるもの
ホ 容積率(同一敷地内に二以上の建築物がある場合においては、その延べ面積の合計を算定の基礎とする容積率。以下同じ。)が、当該区域に係る高度利用地区、都市再生特別地区、地区計画、防災街区整備地区計画又は沿道地区計画に関する都市計画において定められた建築物の容積率の最高限度の三分の一未満であるもの
ヘ 都市計画法第四条第六項 に規定する都市計画施設(以下「都市計画施設」という。)である公共施設の整備に伴い除却すべきもの
三  当該区域内に十分な公共施設がないこと、当該区域内の土地の利用が細分されていること等により、当該区域内の土地の利用状況が著しく不健全であること。
四  当該区域内の土地の高度利用を図ることが、当該都市の機能の更新に貢献すること。






第一節の二 市街地再開発組合

(審査委員)
第四十三条  組合に、この法律及び定款で定める権限を行なわせるため、審査委員三人以上を置く。
2  審査委員は、土地及び建物の権利関係又は評価について特別の知識経験を有し、かつ、公正な判断をすることができる者のうちから総会で選任する。
3  前二項に規定するもののほか、審査委員に関し必要な事項は、政令で定める。









 第三章 第一種市街地再開発事業
    第一節 測量、調査等
(測量及び調査のための土地の立入り等)
第六十条  施行者となろうとする者若しくは組合を設立しようとする者又は施行者は、第一種市街地再開発事業の施行の準備又は施行のため他人の占有する土地に立ち入つて測量又は調査を行う必要があるときは、その必要の限度において、他人の占有する土地に、自ら立ち入り、又はその命じた者若しくは委任した者に立ち入らせることができる。ただし、個人施行者若しくは再開発会社となろうとする者若しくは組合を設立しようとする者又は個人施行者、組合若しくは再開発会社にあつては、あらかじめ、都道府県知事(市の区域内にあつては、当該市の長。第六十二条第一項及び第百四十二条第一号において「立入許可権者」という。)の許可を受けた場合に限る。
2  前項の規定は、次に掲げる公告があつた日後、施行者が第一種市街地再開発事業の施行の準備又は施行のため他人の占有する建築物その他の工作物に立ち入つて測量又は調査を行う必要がある場合について準用する。
一  個人施行者が施行する第一種市街地再開発事業にあつては、その施行についての認可の公告又は新たな施行地区の編入に係る事業計画の変更の認可の公告
二  組合が施行する第一種市街地再開発事業にあつては、第十九条第一項の公告又は新たな施行地区の編入に係る事業計画の変更の認可の公告
三  再開発会社が施行する第一種市街地再開発事業にあつては、その施行についての認可の公告又は新たな施行地区の編入に係る事業計画の変更の認可の公告
四  地方公共団体が施行する第一種市街地再開発事業にあつては、事業計画の決定の公告又は新たな施行地区の編入に係る事業計画の変更の公告
五  機構等が施行する第一種市街地再開発事業にあつては、施行規程及び事業計画の認可の公告又は新たな施行地区の編入に係る事業計画の変更の認可の公告
3  前二項の規定により他人の占有する土地又は工作物に立ち入ろうとする者は、立ち入ろうとする日の三日前までに、その旨を当該土地又は工作物の占有者に通知しなければならない。
4  第一項の規定により建築物が存し、若しくはかき、さく等で囲まれた他人の占有する土地に立ち入ろうとするとき、又は第二項の規定により他人の占有する工作物に立ち入ろうとするときは、その立ち入ろうとする者は、立入りの際、あらかじめ、その旨を当該土地又は工作物の占有者に告げなければならない。
5  日出前及び日没後においては、土地又は工作物の占有者の承諾があつた場合を除き、前項に規定する土地又は工作物に立ち入つてはならない。
6  土地又は工作物の占有者は、正当な理由がない限り、第一項又は第二項の規定による立入りを拒み、又は妨げてはならない。
(障害物の伐除及び土地の試掘等)
第六十一条  前条第一項の規定により他人の占有する土地に立ち入つて測量又は調査を行う者は、その測量又は調査を行うに当たり、やむを得ない必要があつて、障害となる植物若しくは垣、柵等(以下「障害物」という。)を伐除しようとする場合又は当該土地に試掘若しくはボーリング若しくはこれらに伴う障害物の伐除(以下「試掘等」という。)を行おうとする場合において、当該障害物又は当該土地の所有者及び占有者の同意を得ることができないときは、当該障害物の所在地を管轄する市町村長の許可を受けて当該障害物を伐除し、又は当該土地の所在地を管轄する都道府県知事(市の区域内において施行者(第二条の二第四項の規定により第一種市街地再開発事業を施行する地方公共団体を除く。以下この項において同じ。)となろうとする者若しくは組合を設立しようとする者若しくは施行者が試掘等を行おうとし、又は第二条の二第四項の規定により第一種市街地再開発事業を施行し、若しくは施行しようとする市が試掘等を行おうとする場合にあつては、当該市の長。以下この項、次条第二項及び第百四十二条第三号において「試掘等許可権者」という。)の許可を受けて当該土地に試掘等を行うことができる。この場合において、市町村長が許可を与えようとするときは障害物の所有者及び占有者に、試掘等許可権者が許可を与えようとするときは土地又は障害物の所有者及び占有者に、あらかじめ、意見を述べる機会を与えなければならない。
2  前項の規定により障害物を伐除しようとする者又は土地に試掘等を行なおうとする者は、伐除しようとする日又は試掘等を行なおうとする日の三日前までに、その旨を当該障害物又は当該土地若しくは障害物の所有者及び占有者に通知しなければならない。
3  第一項の規定により障害物を伐除しようとする場合(土地の試掘又はボーリングに伴う障害物の伐除をしようとする場合を除く。)において、当該障害物の所有者及び占有者がその場所にいないためその同意を得ることが困難であり、かつ、その現状を著しく損傷しないときは、施行者となろうとする者、組合を設立しようとする者若しくは施行者又はその命じた者若しくは委任した者は、前二項の規定にかかわらず、当該障害物の所在地を管轄する市町村長の許可を受けて、ただちに、当該障害物を伐除することができる。この場合においては、当該障害物を伐除した後、遅滞なく、その旨をその所有者及び占有者に通知しなければならない。
(証明書等の携帯)
第六十二条  第六十条第一項又は第二項の規定により他人の占有する土地又は工作物に立ち入ろうとする者は、その身分を示す証明書(個人施行者若しくは再開発会社となろうとする者若しくは組合を設立しようとする者又は個人施行者、組合若しくは再開発会社にあつては、その身分を示す証明書及び立入許可権者の許可証)を携帯しなければならない。
2  前条の規定により障害物を伐除しようとする者又は土地に試掘等を行おうとする者は、その身分を示す証明書及び市町村長又は試掘等許可権者の許可証を携帯しなければならない。
3  前二項に規定する証明書又は許可証は、関係人の請求があつたときは、これを提示しなければならない。
(土地の立入り等に伴う損失の補償)
第六十三条  施行者となろうとする者若しくは組合を設立しようとする者又は施行者は、第六十条第一項若しくは第二項又は第六十一条第一項若しくは第三項の規定による行為により他人に損失を与えたときは、その損失を受けた者に対して、通常生ずべき損失を補償しなければならない。
2  前項の規定による損失の補償については、損失を与えた者と損失を受けた者とが協議しなければならない。
3  前項の規定による協議が成立しないときは、損失を与えた者又は損失を受けた者は、政令で定めるところにより、収用委員会に土地収用法 (昭和二十六年法律第二百十九号)第九十四条第二項 の規定による裁決を申請することができる。
(測量のための標識の設置)
第六十四条  施行者となろうとする者若しくは組合を設立しようとする者又は施行者は、第一種市街地再開発事業の施行の準備又は施行に必要な測量を行うため必要があるときは、国土交通省令で定める標識を設けることができる。
2  何人も、前項の規定により設けられた標識を設置者の承諾を得ないで移転し、若しくは除却し、又は汚損し、若しくは損壊してはならない。
(関係簿書の閲覧等)
第六十五条  施行者となろうとする者若しくは組合を設立しようとする者又は施行者は、第一種市街地再開発事業の施行の準備又は施行のため必要があるときは、施行地区となるべき区域若しくは施行地区を管轄する登記所に対し、又はその他の官公署の長に対し、無償で必要な簿書の閲覧若しくは謄写又はその謄本若しくは抄本若しくは登記事項証明書の交付を求めることができる。
(建築行為等の制限)
第六十六条  第六十条第二項各号に掲げる公告があつた後は、施行地区内において、第一種市街地再開発事業の施行の障害となるおそれがある土地の形質の変更若しくは建築物その他の工作物の新築、改築若しくは増築を行い、又は政令で定める移動の容易でない物件の設置若しくは堆積を行おうとする者は、都道府県知事(市の区域内において個人施行者、組合、再開発会社若しくは機構等が施行し、又は市が第二条の二第四項の規定により施行する第一種市街地再開発事業にあつては、当該市の長。以下この条、第九十八条及び第百四十一条の二第二号において「都道府県知事等」という。)の許可を受けなければならない。
2  都道府県知事等は、前項の許可の申請があつた場合において、その許可をしようとするときは、あらかじめ、施行者の意見を聴かなければならない。
3  都道府県知事等は、第一項の許可をする場合において、第一種市街地再開発事業の施行のため必要があると認めるときは、許可に期限その他必要な条件を付けることができる。この場合において、これらの条件は、当該許可を受けた者に不当な義務を課するものであつてはならない。
4  都道府県知事等は、第一項の規定に違反し、又は前項の規定により付けた条件に違反した者があるときは、これらの者又はこれらの者から当該土地、建築物その他の工作物若しくは物件についての権利を承継した者に対して、相当の期限を定めて、第一種市街地再開発事業の施行に対する障害を排除するため必要な限度において、当該土地の原状回復又は当該建築物その他の工作物若しくは物件の移転若しくは除却を命ずることができる。
5  前項の規定により土地の原状回復又は建築物その他の工作物若しくは物件の移転若しくは除却を命じようとする場合において、過失がなくてその原状回復又は移転若しくは除却を命ずべき者を確知することができないときは、都道府県知事等は、それらの者の負担において、その措置を自ら行い、又はその命じた者若しくは委任した者にこれを行わせることができる。この場合においては、相当の期限を定めて、これを原状回復し、又は移転し、若しくは除却すべき旨及びその期限までに原状回復し、又は移転し、若しくは除却しないときは、都道府県知事等又はその命じた者若しくは委任した者が、原状回復し、又は移転し、若しくは除却する旨を公告しなければならない。
6  前項の規定により土地を原状回復し、又は建築物その他の工作物若しくは物件を移転し、若しくは除却しようとする者は、その身分を示す証明書を携帯し、関係人の請求があつたときは、これを提示しなければならない。
7  第六十条第二項各号に掲げる公告があつた後に、施行地区内において土地の形質の変更、建築物その他の工作物の新築、改築、増築若しくは大修繕又は物件の付加増置(以下この条において「土地の形質の変更等」と総称する。)がされたときは、当該土地の形質の変更等について都道府県知事等の承認があつた場合を除き、当該土地、工作物又は物件に関する権利を有する者は、当該土地の形質の変更等が行われる前の土地、工作物又は物件の状況に基づいてのみ、次節の規定による施行者に対する権利を主張することができる。
8  前項の承認の申請があつたときは、都道府県知事等は、あらかじめ、施行者の意見を聴いて、当該土地の形質の変更等が災害の防止その他やむを得ない理由に基づき必要があると認められる場合に限り、その承認をするものとする。
9  第一項の許可があつたときは、当該許可に係る土地の形質の変更等について第七項の承認があつたものとみなす。
(第一種市街地再開発事業の施行についての周知措置)
第六十七条  第六十条第二項各号に掲げる公告があつたときは、施行者は、速やかに、国土交通省令で定めるところにより、関係権利者に当該第一種市街地再開発事業の概要を周知させるため必要な措置を講ずることにより、第一種市街地再開発事業の施行についてその協力が得られるように努めなければならない。
(土地調書及び物件調書)
第六十八条  第六十条第二項各号に掲げる公告があつた後、施行者は、土地調書及び物件調書を作成しなければならない。
2  土地収用法第三十六条第二項 から第六項 まで及び第三十七条 から第三十八条 までの規定は、前項の土地調書及び物件調書について準用する。この場合において、同法第三十七条第一項 及び第二項 並びに第三十七条の二 中「第三十六条第一項 」とあるのは「都市再開発法第六十八条第一項」と、同法第三十七条第一項及び第二項中「収用し、又は使用しようとする土地」とあるのは「施行地区内の各個の土地」と、同法第三十七条の二中「第三十五条第一項」とあるのは「同法第六十条第一項又は第二項」と、「同項の」とあるのは「これらの」と読み替えるものとする。
3  土地調書又は物件調書の記載について関係権利者のすべてに異議がないときは、前項において準用する土地収用法第三十六条 の規定による立会いは、省略することができる。
(土地の使用)
第六十九条  地方公共団体又は機構等は、施行地区内の土地に存する建築物に居住する者で施設建築物に入居することとなるものを一時収容するため必要な施設その他第一種市街地再開発事業の施行のため欠くことのできない材料置場等の施設を設置するため必要な施行地区外の土地又はこれに関する所有権以外の権利を使用することができる。
2  前項の規定による使用に関しては、土地収用法 の規定を適用する。





 第二節 権利変換手続
     第一款 手続の開始


(権利変換手続開始の登記)
第七十条  施行者は、第六十条第二項各号に掲げる公告があつたときは、遅滞なく、登記所に、施行地区内の宅地及び建築物並びにその宅地に存する既登記の借地権について、権利変換手続開始の登記を申請し、又は嘱託しなければならない。
2  前項の登記があつた後においては、当該登記に係る宅地若しくは建築物の所有権を有する者又は当該登記に係る借地権を有する者は、これらの権利を処分するには、国土交通省令で定めるところにより、施行者の承認を得なければならない。
3  施行者は、事業の遂行に重大な支障が生ずることその他正当な理由がなければ、前項の承認を拒むことができない。
4  第二項の承認を得ないでした処分は、施行者に対抗することができない。
5  権利変換期日前において第四十五条第六項、第百二十四条の二第三項又は第百二十五条の二第五項の公告があつたときは、施行者(組合にあつては、その清算人)は、遅滞なく、登記所に、権利変換手続開始の登記の抹消を申請しなければならない。
(権利変換を希望しない旨の申出等)
第七十一条  個人施行者若しくは再開発会社の施行の認可の公告、第十九条第一項の公告又は事業計画の決定若しくは認可の公告があつたときは、施行地区内の宅地の所有者、その宅地について借地権を有する者又は施行地区内の土地に権原に基づき建築物を所有する者は、その公告があつた日から起算して三十日以内に、施行者に対し、第八十七条又は第八十八条第一項及び第二項の規定による権利の変換を希望せず、自己の有する宅地、借地権若しくは建築物に代えて金銭の給付を希望し、又は自己の有する建築物を他に移転すべき旨を申し出ることができる。
2  前項の宅地、借地権若しくは建築物について仮登記上の権利、買戻しの特約その他権利の消滅に関する事項の定めの登記若しくは処分の制限の登記があるとき、又は同項の未登記の借地権の存否若しくは帰属について争いがあるときは、それらの権利者又は争いの相手方の同意を得なければ、同項の規定による金銭の給付の希望を申し出ることができない。
3  施行地区内の建築物について借家権を有する者(その者がさらに借家権を設定しているときは、その借家権の設定を受けた者)は、第一項の期間内に施行者に対し、第八十八条第五項の規定による借家権の取得を希望しない旨を申し出ることができる。
4  施行者が第十一条第一項の規定により設立された組合である場合においては、最初の役員が選挙され、又は選任されるまでの間は、第一項又は前項の規定による申出は、第十一条第一項の規定による認可を受けた者が受理するものとする。
5  第一項の期間経過後六月以内に第八十三条の規定による権利変換計画の縦覧の開始(個人施行者が施行する第一種市街地再開発事業にあつては、次条第一項後段の規定による権利変換計画の認可。以下この項において同じ。)がされないときは、当該六月の期間経過後三十日以内に、第一項若しくは第三項の規定による申出を撤回し、又は新たに第一項若しくは第三項の規定による申出をすることができる。その三十日の期間経過後更に六月を経過しても第八十三条の規定による権利変換計画の縦覧の開始がされないときも、同様とする。
6  事業計画を変更して従前の施行地区外の土地を新たに施行地区に編入した場合においては、前項前段中「第一項の期間経過後六月以内に第八十三条の規定による権利変換計画の縦覧の開始(個人施行者が施行する第一種市街地再開発事業にあつては、次条第一項後段の規定による権利変換計画の認可。以下この項において同じ。)がされないときは、当該六月の期間経過後」とあるのは、「新たな施行地区の編入に係る事業計画の変更の公告又はその変更の認可の公告があつたときは、その公告があつた日から起算して」とする。
7  第一項、第三項又は前二項の申出又は申出の撤回は、国土交通省令で定めるところにより、書面でしなければならない。




(権利変換計画の内容)
第七十三条  権利変換計画においては、国土交通省令で定めるところにより、次に掲げる事項を定めなければならない。
一  配置設計
二  施行地区内に宅地、借地権又は権原に基づき建築物を有する者で、当該権利に対応して、施設建築敷地若しくはその共有持分又は施設建築物の一部等を与えられることとなるものの氏名又は名称及び住所
三  前号に掲げる者が施行地区内に有する宅地、借地権又は建築物及びその価額
四  第二号に掲げる者に前号に掲げる宅地、借地権又は建築物に対応して与えられることとなる施設建築敷地若しくはその共有持分又は施設建築物の一部等の明細及びその価額の概算額
五  第三号に掲げる宅地、借地権又は建築物について先取特権、質権若しくは抵当権の登記、仮登記、買戻しの特約その他権利の消滅に関する事項の定めの登記又は処分の制限の登記(以下「担保権等の登記」と総称する。)に係る権利を有する者の氏名又は名称及び住所並びにその権利
六  前号に掲げる者が施設建築敷地若しくはその共有持分又は施設建築物の一部等に関する権利の上に有することとなる権利
七  施行地区内の建築物について借家権を有する者(その者がさらに借家権を設定しているときは、その借家権の設定を受けた者)で、当該権利に対応して、施設建築物の一部について借家権を与えられることとなるものの氏名又は名称及び住所
八  前号に掲げる者に借家権が与えられることとなる施設建築物の一部
九  施設建築敷地の地代の概算額及び地代以外の借地条件の概要
十  施行者が施設建築物の一部を賃貸しする場合における標準家賃の概算額及び家賃以外の借家条件の概要
十一  第七十九条第三項の規定が適用されることとなる者の氏名又は名称及び住所並びにこれらの者が施行地区内に有する宅地、借地権又は建築物及びその価額
十二  施行地区内の宅地若しくは建築物又はこれらに関する権利を有する者で、この法律の規定により、権利変換期日において当該権利を失い、かつ、当該権利に対応して、施設建築敷地若しくはその共有持分、施設建築物の一部等又は施設建築物の一部についての借家権を与えられないものの氏名又は名称及び住所、失われる宅地若しくは建築物又は権利並びにその価額
十三  組合の参加組合員に与えられることとなる施設建築物の一部等の明細並びにその参加組合員の氏名又は名称及び住所
十四  第五十条の三第一項第五号又は第五十二条第二項第五号(第五十八条第三項において準用する場合を含む。)に規定する特定事業参加者(以下単に「特定事業参加者」という。)に与えられることとなる施設建築物の一部等の明細並びにその特定事業参加者の氏名又は名称及び住所
十五  第四号及び前二号に掲げるもののほか、施設建築敷地又はその共有持分及び施設建築物の一部等の明細、その帰属並びにその管理処分の方法
十六  新たな公共施設の用に供する土地の帰属に関する事項
十七  権利変換期日、土地明渡しの予定時期及び工事完了の予定時期
十八  その他国土交通省令で定める事項
2  宅地又は借地権を有する者が当該宅地の上に建築物を有する場合において、当該宅地、借地権又は建築物について担保権等の登記に係る権利があるときは、これらの宅地、借地権又は建築物は、それぞれ別個の権利者に属するものとみなして権利変換計画を定めなければならない。ただし、次の各号の一に該当する場合は、この限りでない。
一  担保権等の登記に係る権利の消滅について関係権利者のすべての同意があつたとき。
二  宅地と建築物又は借地権と建築物とが同一の担保権等の登記に係る権利の目的となつており、かつ、それらのすべての権利の順位が、宅地と建築物又は借地権と建築物とにおいてそれぞれ同一であるとき。
3  借地権の設定に係る仮登記上の権利があるときは、仮登記権利者が当該借地権を有する場合を除き、宅地の所有者が当該借地権を別個の権利者として有するものとみなして、権利変換計画を定めなければならない。
4  宅地又は建築物に関する権利に関して争いがある場合において、その権利の存否又は帰属が確定しないときは、当該権利が存するものとして、又は当該権利が現在の名義人に属するものとして権利変換計画を定めなければならない。ただし、借地権以外の宅地を使用し、又は収益する権利の存否が確定しない場合にあつては、その宅地の所有者に対しては、当該権利が存しないものとして、その者に与える施設建築物の一部等を定めなければならない。


(権利変換計画の決定の基準)

第七十四条  権利変換計画は、災害を防止し、衛生を向上し、その他居住条件を改善するとともに、施設建築物及び施設建築敷地の合理的利用を図るように定めなければならない。
2  権利変換計画は、関係権利者間の利害の衡平に十分の考慮を払つて定めなければならない。


(施設建築物の一部等)
第七十七条  権利変換計画においては、第七十一条第一項の申出をした者を除き、施行地区内に借地権を有する者及び施行地区内の土地に権原に基づき建築物を所有する者に対しては、施設建築物の一部等が与えられるように定めなければならない。組合の定款により施設建築物の一部等が与えられるように定められた参加組合員又は特定事業参加者に対しても、同様とする。
2  前項前段に規定する者に対して与えられる施設建築物の一部等は、それらの者が権利を有する施行地区内の土地又は建築物の位置、地積又は床面積、環境及び利用状況とそれらの者に与えられる施設建築物の一部の位置、床面積及び環境とを総合的に勘案して、それらの者の相互間に不均衡が生じないように、かつ、その価額と従前の価額との間に著しい差額が生じないように定めなければならない。この場合において、二以上の施設建築敷地があるときは、その施設建築物の一部は、特別の事情がない限り、それらの者の権利に係る土地の所有者に前条第一項及び第二項の規定により与えられることと定められる施設建築敷地に建築される施設建築物の一部としなければならない。
3  宅地の所有者である者に対しては、その者に与えられる施設建築敷地に第八十八条第一項の規定により地上権が設定されることによる損失の補償として施設建築物の一部等が与えられるように定めなければならない。
4  権利変換計画においては、第一項又は前項の規定により与えられるように定められる施設建築物の一部等以外の部分は、施行者に帰属するように定めなければならない。
5  権利変換計画においては、第七十一条第三項の申出をした者を除き、施行地区内の土地に権原に基づき建築物を所有する者から当該建築物について借家権の設定を受けている者(その者がさらに借家権を設定しているときは、その借家権の設定を受けた者)に対しては、第一項の規定により当該建築物の所有者に与えられることとなる施設建築物の一部について、借家権が与えられるように定めなければならない。ただし、当該建築物の所有者が第七十一条第一項の申出をしたときは、前項の規定により施行者に帰属することとなる施設建築物の一部について、借家権が与えられるように定めなければならない。

(宅地等の価額の算定基準)
第八十条  第七十三条第一項第三号、第十一号又は第十二号の価額は、第七十一条第一項又は第五項(同条第六項において読み替えて適用する場合を含む。)の規定による三十日の期間を経過した日における近傍類似の土地、近傍同種の建築物又は近傍類似の土地若しくは近傍同種の建築物に関する同種の権利の取引価格等を考慮して定める相当の価額とする。
2  第七十六条第三項の割合の基準となる宅地の価額は、当該宅地に関する所有権以外の権利が存しないものとして、前項の規定を適用して算定した相当の価額とする。
(施設建築敷地の価額等の概算額の算定基準)
第八十一条  権利変換計画においては、第七十三条第一項第四号、第九号又は第十号の概算額は、政令で定めるところにより、第一種市街地再開発事業に要する費用及び前条第一項に規定する三十日の期間を経過した日における近傍類似の土地、近傍同種の建築物又は近傍類似の土地若しくは近傍同種の建築物に関する同種の権利の取引価格等を考慮して定める相当の価額を基準として定めなければならない。


(公共施設の用に供する土地の帰属に関する定め)
第八十二条  権利変換計画においては、第一種市街地再開発事業により従前の公共施設に代えて設置される新たな公共施設の用に供する土地は、従前の公共施設の用に供される土地の所有者が国であるときは国に、地方公共団体であるときは当該地方公共団体に帰属し、その他の新たな公共施設の用に供する土地は、当該公共施設を管理すべき者(その者が地方自治法 (昭和二十二年法律第六十七号)第二条第九項第一号 に規定する第一号 法定受託事務(以下単に「第一号法定受託事務」という。)として当該公共施設を管理する地方公共団体であるときは、国)に帰属するように定めなければならない。
(権利変換計画の縦覧等)
第八十三条  個人施行者以外の施行者は、権利変換計画を定めようとするときは、権利変換計画を二週間公衆の縦覧に供しなければならない。この場合においては、あらかじめ、縦覧の開始の日、縦覧の場所及び縦覧の時間を公告するとともに、施行地区内の土地又は土地に定着する物件に関し権利を有する者及び参加組合員又は特定事業参加者にこれらの事項を通知しなければならない。
2  施行地区内の土地又は土地に定着する物件に関し権利を有する者及び参加組合員又は特定事業参加者は、縦覧期間内に、権利変換計画について施行者に意見書を提出することができる。
3  施行者は、前項の規定により意見書の提出があつたときは、その内容を審査し、その意見書に係る意見を採択すべきであると認めるときは権利変換計画に必要な修正を加え、その意見書に係る意見を採択すべきでないと認めるときはその旨を意見書を提出した者に通知しなければならない。
4  施行者が権利変換計画に必要な修正を加えたときは、その修正に係る部分についてさらに第一項からこの項までに規定する手続を行なうべきものとする。ただし、その修正が政令で定める軽微なものであるときは、その修正部分に係る者にその内容を通知することをもつて足りる。
5  第一項から前項までの規定は、権利変換計画を変更する場合(政令で定める軽微な変更をする場合を除く。)に準用する。
(審査委員及び市街地再開発審査会の関与)
第八十四条  施行者は、権利変換計画を定め、又は変更しようとするとき(政令で定める軽微な変更をしようとする場合を除く。)は、審査委員の過半数の同意を得、又は市街地再開発審査会の議決を経なければならない。この場合においては、第七十九条第二項後段の規定を準用する。
2  前項の規定は、前条第二項の意見書の提出があつた場合において、その採否を決定するときに準用する。
(価額についての裁決申請等)
第八十五条  第七十三条第一項第三号、第十一号又は第十二号の価額について第八十三条第三項の規定により同条第二項の意見書を採択しない旨の通知を受けた者は、その通知を受けた日から起算して三十日以内に、収用委員会にその価額の裁決を申請することができる。
2  前項の規定による裁決の申請は、事業の進行を停止しない。
3  土地収用法第九十四条第三項 から第八項 まで、第百三十三条及び第百三十四条の規定は、第一項の規定による収用委員会の裁決及びその裁決に不服がある場合の訴えについて準用する。この場合において必要な技術的読替えは、政令で定める。
4  第一項の規定による収用委員会の裁決及び前項の規定による訴えに対する裁判は、権利変換計画において与えられることと定められた施設建築敷地の共有持分又は施設建築物の一部等には影響を及ぼさないものとする。





第三款 権利の変換
(権利変換の処分)
第八十六条  施行者は、権利変換計画若しくはその変更の認可を受けたとき、又は権利変換計画について第七十二条第四項の政令で定める軽微な変更をしたときは、遅滞なく、国土交通省令で定めるところにより、その旨を公告し、及び関係権利者に関係事項を書面で通知しなければならない。
2  権利変換に関する処分は、前項の通知をすることによつて行なう。
3  権利変換に関する処分については、行政手続法 (平成五年法律第八十八号)第三章 の規定は、適用しない。
(権利変換期日等の通知)
第八十六条の二  施行者は、権利変換計画若しくはその変更(権利変換期日に係るものに限る。以下この条において同じ。)の認可を受けたとき、又は第七十二条第四項の政令で定める軽微な変更をしたときは、遅滞なく、国土交通省令で定めるところにより、施行地区を管轄する登記所に、権利変換期日その他国土交通省令で定める事項を通知しなければならない。


第87条第1項(権利変換期日における権利の変換)施行地区内の土地は、権利変換期日において、権利変換計画の定めるところに従い、新たに所有者となるべき者に帰属する。この場合において、従前の土地を目的とする所有権以外の権利は、この法律に別段の定めがあるものを除き、消滅する。


(補償金等)
第九十一条  施行者は、施行地区内の宅地若しくは建築物又はこれらに関する権利を有する者で、この法律の規定により、権利変換期日において当該権利を失い、かつ、当該権利に対応して、施設建築敷地若しくはその共有持分、施設建築物の一部等又は施設建築物の一部についての借家権を与えられないものに対し、その補償として、権利変換期日までに、第八十条第一項の規定により算定した相当の価額に同項に規定する三十日の期間を経過した日から権利変換計画の認可の公告の日までの物価の変動に応ずる修正率を乗じて得た額に、当該権利変換計画の認可の公告の日から補償金を支払う日までの期間につき年六パーセントの割合により算定した利息相当額を付してこれを支払わなければならない。この場合において、その修正率は、政令で定める方法によつて算定するものとする。
2  収用委員会は、前項の規定による補償を受けるべき者に対し第八十五条第一項の規定による裁決をする場合において、その裁決で定められた価額が前項に規定する相当の価額として施行者が支払つた額を超えるときは、次に掲げる額の合計額を支払うべき旨の裁決をあわせてしなければならない。
一  その差額につき第八十条第一項に規定する三十日を経過した日から権利変換計画の認可の公告の日までの前項に規定する物価の変動に応ずる修正率を乗じて得た額及び権利変換計画の認可の公告の日から権利変換期日までの間の同項に規定する利息相当額
二  前号の額につき権利変換期日後その支払いを完了する日までの日数に応じ年十四・五パーセントの割合による過怠金
3  土地収用法第九十四条第十項 から第十二項 までの規定は、前項の裁決に関し、第八十五条第三項の規定による訴えの提起がなかつた場合に準用する。


(土地の明渡し)
第九十六条  施行者は、権利変換期日後第一種市街地再開発事業に係る工事のため必要があるときは、施行地区内の土地又は当該土地にある物件を占有している者に対し、期限を定めて、土地の明渡しを求めることができる。
2  前項の規定による明渡しの期限は、同項の請求をした日の翌日から起算して三十日を経過した後の日でなければならない。
3  第一項の規定による明渡しの請求があつた土地又は当該土地にある物件を占有している者は、明渡しの期限までに、施行者に土地若しくは物件を引き渡し、又は物件を移転しなければならない。ただし、第九十一条第一項又は次条第三項の規定による支払がないときは、この限りでない。
4  前条の規定により建築物を占有する者が施行者に当該建築物を引き渡す場合において、当該建築物に、第六十六条第七項の承認を受けないで改築、増築若しくは大修繕が行われ、又は物件が付加増置された部分があるときは、第八十七条第二項の規定により当該建築物の所有権を失つた者は、当該部分又は物件を除却して、これを取得することができる。
5  第一項に規定する処分については、行政手続法第三章 の規定は、適用しない。


(土地の明渡しに伴う損失補償)
第九十七条  施行者は、前条の規定による土地若しくは物件の引渡し又は物件の移転により同条第一項の土地の占有者及び物件に関し権利を有する者が通常受ける損失を補償しなければならない。
2  前項の規定による損失の補償額については、施行者と前条第一項の土地の占有者又は物件に関し権利を有する者とが協議しなければならない。
3  施行者は、前条第二項の明渡しの期限までに第一項の規定による補償額を支払わなければならない。この場合において、その期限までに前項の協議が成立していないときは、審査委員の過半数の同意を得、又は市街地再開発審査会の議決を経て定めた金額を支払わなければならないものとし、その議決については、第七十九条第二項後段の規定を準用する。
4  第二項の規定による協議が成立しないときは、施行者又は損失を受けた者は、収用委員会に土地収用法第九十四条第二項 の規定による補償額の裁決を申請することができる。
5  第八十五条第二項及び第三項、第九十一条第二項及び第三項、第九十二条並びに第九十三条の規定は、第二項の規定による損失の補償について準用する。


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