新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.1426、2013/03/19 00:00 https://www.shinginza.com/qa-souzoku.htm
【相続・相続人の不存在による相続財産法人は,被相続人が相続債権者と相続開始前に抵当権設定登記を合意した場合,その請求に応じる義務があるか・最高裁第一小法廷平成11年1月21日判決】

質問
 友人に300万円を貸したのですが、先日死亡し、相続人はいません。友人名義の不動産に抵当権を設定する約束は契約書もあるのですが抵当権設定登記はしていませんでした。他に債権者がいるようなのですが、いまから抵当権設定登記をすることはできますか。どのように回収すればよいでしょうか。相続人は全員放棄しています。私は,友人に対して300万円ほどの貸金がありました。自宅とその土地に抵当権を設定するのは忍びないと思い,他に持っていた別の土地に抵当権を設定する契約をしました。
本当は登記もしたかったところですが,登記は勘弁して欲しい,必ず返すから,と懇願され,友人のよしみで登記をすることはしませんでした。
 そうしていたところ,友人は病に倒れ,そのまま亡くなってしまいました。子どもたちに請求すれば良いだろうと思っていたところ,友人の子どもたちから兄弟に至るまで,次々と相続の放棄の手続きを行い,私が把握する限り,相続人は誰もいなくなってしまいました。
 このような場合,もはや私の貸金の回収は不可能でしょうか?今さら遅く,意味がないのかもしれませんが,抵当権の登記をしておくことだけでもできないのでしょうか?

回答
1 相続人の存在が明らかでない場合状態として,相続財産は,法律上当然に相続財産法人となります(民法951条)。利害関係を有する者は,相続財産法人の執行機関として,相続財産の管理人を選任する必要があります。この相続財産の管理人は,利害関係人または検察官の請求によって,家庭裁判所により選任されます(民法952条)。相続財産の管理人は,様々な手続きを経たのち,債権者に対して,その債権額の割合に応じた弁済をしていくことになりますが(民法957条2項,929条本文),抵当権者などの優先権を有する債権者の権利については害することができないと民法上規定されています(民法957条2項,929条ただし書)。相続財産に対して抵当権を有する債権者が居れば、その財産の精算に関して抵当権者が優先することになります。
2 被相続人の債権者は相続財産の利害関係人ですから、相続財産の管理人の選任を家庭裁判所に申し立てることができますから、債権回収のためには、まず、相続財産管理人の選任の申し立てをする必要があります。
3 財産管理人は、相続債務について調査して相続財産から返済に充てることになりますが、相続人が全員放棄していることから債務が財産より多い、債務超過の場合が考えられます。そこで、債権者全員に全額弁済できないことが考えら得ます。ご相談の場合のように抵当権の設定契約はしているものの,その登記はしていないという場合、他の債権者に優先できるかその「抵当権者などの優先権を有する債権者」にあたるか否かが問題となりますが,判例は,「相続人が存在しない場合には……,相続債権者は,被相続人からその生前に抵当権の設定を受けていたとしても,被相続人の死亡の時点において設定登記がされていなければ,他の債権者及び受遺者に対して抵当権に基づく優先権を対抗することができないし,被相続人の死亡後に設定登記がされたとしても,これによって優先権を取得することはない(被相続人の死亡前にされた抵当権設定の仮登記に基づいて被相続人の死亡後に本登記がされた場合を除く。)。」(最高裁第一小法廷平成11年1月21日判決民集53巻1号128頁)と判示して,被相続人の死亡前に登記をしていなければ優先権を主張できないとしました。
 したがって,被相続人である友人が亡くなっている現在においては,これから設定登記をする意味はあまりないと思われます。
 しかし,優先権を主張することはできないとしても,一般債権者と同じ立場としては手続きに関わって行くことは可能です。相続人となり得る人たちが次々と相続の放棄をしていることからすると,他の債権者,担保権付きの債権者で,その設定登記までしている者の存在が否定できませんが,不動産の評価額によっては債権の全部または一部の回収が可能となるでしょう。

 ↓

解説
1.相続人となりそうな人たちが次々と相続放棄をしてしまい,把握する限り,相続人となるべき人がいなくなってしまったとのことですが,相続放棄について少し触れておきたいと思います。
  相続の承認・放棄は,相続人の意思を尊重して,その選択を認める制度です。そして,相続の放棄は,相続債務の超過が明らかなときや,遺産を受けるのを潔しとしないときに行う意思表示であり,被相続人の権利義務の承継を全面的に拒否する行為です。
  
  この相続の放棄の意思表示により,その意思表示をした者は,初めから相続人とはならなかったものとみなされます(民法939条)。つまり,相続の放棄は,相続の開始のときに遡ってその効力を生ずるということになります。

2(1)考えられる相続人の全員が相続の放棄をすると,民法上「相続人不存在」という状態として取り扱われることになります(民法第五編 相続 第六章 相続人の不存在)。民法951条は,「相続人のあることが明らかでないとき」と規定しており,これは,相続開始の時に相続人の有無が不明である場合のこといいますが,相続人のいないことが明らかである場合のほか,相続の放棄,相続欠格(民法891条),推定相続人の廃除(民法892条以下)などによって相続人が不存在になった場合についても,相続人不存在の制度に従うべきであるとされています。この取扱いは,相続財産の管理や清算をし,相続債権者(被相続人の債権者のことです。)や受遺者の捜索をする必要がありますし,いくら他に相続人がいないと思っていたとしても,相続可能な人間が後に出てくる可能性はやはり否定ができないため(例えば,隠し子などの存在)行われています。
 (2)相続人の存否が明らかでない場合,相続財産は法人化し,相続財産法人となります(民法951条)。
相続財産を法人化するための手続きは不要であり,民法上当然に法人となります。相続人のあることが明らかでないことにより,相続財産が無主のものになるのを避けるため,被相続人の死亡のときに,何らの行為も要することなく相続財産法人が成立するとされています。どうして相続財産法人が必要なのでしょうか。それは、相続人の存在が不明な相続財産に関する権利関係を適正、公平に清算、処理するためです。被相続人が突然死亡した場合、相続債権者間に不公平がないようにするため特に法が認めた制度です。
 相続財産が法人になったあと,相続人の捜索や相続財産の管理・清算を行う必要がありますが,いくら法人になって人格が与えられたといっても,法人そのものは目に見えないものですから,実際にこれらの活動を行うための手足が必要となって来ます。その活動を行うのが相続財産の管理人です。
    この相続財産の管理人は,利害関係人または検察官の請求によって,家庭裁判所により選任されます(民法952条)。相続財産管理人は、相続財産法人の代理人として機能することになります(民法953条、28条、103条)。被相続人は既に死亡していますが、代理人により、精算するために必要な行為をすることができるようになります。
 (3)ご相談のケースでも,相続人と考えられそうな人たちが,みな相続の放棄をしてしまったとのことですので,友人の財産は,法人化していることになるかと思います。
    ただ,先に述べたとおり,法人化したといっても観念的なものであるため,実際に活動をするためには,相続財産の管理人の選任が必須です。勝手に友人の預金を持って行くという訳にも行かないですし,このすぐ後の3(1)おいて述べるとおり,相続財産の管理人が,相続債権者などに対して弁済をしていくことになっていますので,その意味でも相続財産の管理人の選任が必要だといえます。
    利害関係人には,相続債権者も含まれますので,ご自身で相続財産の管理人の選任を申立てるのも良いと思います。また,伺っているご事情からしますと,相続人になり得る人たちが次々と相続放棄をしており,亡くなった友人が自宅を含め複数の不動産を所有していたことを考えると,他にも債権者がいる可能性があります。更に,抵当権などの担保権が設定されている可能性もあります。これらの人たちが相続財産の管理人の選任申立てていたり,これから申立てをするということも考えられます。この場合には,その手続きに従っていけば良いでしょう。

3(1)相続財産の管理人は,すべての相続債権者及び受遺者に対し,一定期間内(2ヶ月以上とされています)にその請求の申出をすべき旨を公告又は催告しなければならないとされています(民法957条1項)。そして,この期間が満了した後においては,相続財産の管理人は,相続財産をもって,その期間内に申し出た債権者その他知れた債権者に対して,各々その債権額の割合に応じた弁済をしなければなりません(民法957条2項,929条本文)。これは,いわゆる配当弁済と呼ばれるものです。ただし,抵当権者などの優先権を有する債権者の権利については害することができないとされています(民法957条2項,929条ただし書)。

   相続財産管理人が、相続財産を精算する手続きを簡単に図示します。

   相続人が明らかでない場合の、相続財産法人の成立(民法951条)
   ↓
   利害関係人又は検察官の請求により相続財産管理人の選任(民法952条)
   ↓
   相続財産管理人選任の公告(民法952条2項)
   ↓2ヶ月
   相続人不存在の場合、相続債権者と受遺者に対して請求額の申し出の催告(民法957条1項)
   ↓2ヶ月以上
   相続債権額と受遺額の確定、家庭裁判所による相続人捜索公告(民法958条)
   ↓6ヶ月以上
   相続人不存在が確定、内縁の妻など特別縁故者の分与請求開始
   ↓3ヶ月
   相続財産の国庫への帰属、相続財産管理人による管理の計算(精算、民法959条)
   

 (2)被相続人から抵当権の設定を受けた者がいた場合に,その抵当権の設定登記がなされているのであれば,優先権があるのは当然だといえるでしょうが,問題は,ご相談の場合のように抵当権の設定契約はしているものの,その登記はしていないという場合です。このような場合に,果たしてどうなるのかですが,この点について判断した判例がありますので,ご紹介します。
    「1 相続人が存在しない場合(法定相続人の全員が相続の放棄をした場合を含む。)には,利害関係人等の請求によって選任される相続財産の管理人が相続財産の清算を行う。管理人は,債権申出期間の公告をした上で(民法九五七条一項),相続財産をもって,各相続債権者に,その債権額の割合に応じて弁済をしなければならない(同条二項において準用する九二九条本文)。ただし,優先権を有する債権者の権利を害することができない(同条ただし書)。この「優先権を有する債権者の権利」に当たるというためには,対抗要件を必要とする権利については,被相続人の死亡の時までに対抗要件を具備していることを要すると解するのが相当である。相続債権者間の優劣は,相続開始の時点である被相続人の死亡の時を基準として決するのが当然だからである。この理は,所論の引用する判例(大審院昭和一三年(オ)第二三八五号同年一四年一二月二一日判決・民集一八巻一六二一頁)が,限定承認がされた場合について,現在の民法九二九条に相当する旧民法一〇三一条の解釈として判示するところであって,相続人が存在しない場合についてこれと別異に解すべき根拠を見いだすことができない。
    したがって,相続人が存在しない場合には(限定承認がされた場合も同じ。),相続債権者は,被相続人からその生前に抵当権の設定を受けていたとしても,被相続人の死亡の時点において設定登記がされていなければ,他の債権者及び受遺者に対して抵当権に基づく優先権を対抗することができないし,被相続人の死亡後に設定登記がされたとしても,これによって優先権を取得することはない(被相続人の死亡前にされた抵当権設定の仮登記に基づいて被相続人の死亡後に本登記がされた場合を除く。)。
    2 相続財産の管理人は,すべての相続債権者及び受遺者のために法律に従って弁済を行うのであるから,弁済に際して,他の相続債権者及び受遺者に対して対抗することができない抵当権の優先権を承認することは許されない。そして,優先権の承認されない抵当権の設定登記がされると,そのことが相続財産の換価(民法九五七条二項において準用する九三二条本文)をするのに障害となり,管理人による相続財産の清算に著しい支障を来たすことが明らかである。したがって,管理人は,被相続人から抵当権の設定を受けた者からの設定登記手続請求を拒絶することができるし,また,これを拒絶する義務を他の相続債権者及び受遺者に対して負うものというべきである。
 以上の理由により,相続債権者は,被相続人から抵当権の設定を受けていても,被相続人の死亡前に仮登記がされていた場合を除き,相続財産法人に対して抵当権設定登記手続を請求することができないと解するのが相当である。限定承認がされた場合における限定承認者に対する設定登記手続請求も,これと同様である(前掲大審院判例を参照)。」(最高裁第一小法廷平成11年1月21日判決民集53巻1号128頁)。相続財産法人は、相続開始時の権利関係を適正公平に処理するための手段として存在するのですから、相続開始時を基準として債権者間の優劣を公平に判断する必要がありますから、相続開始時に抵当権の登記のなされていない債権者は一般債権者と同一の地位にあります。又、相続財産法人は一般相続人と異なり、被相続人の権利義務を包括承継する法人ではありませんから相続債権者は法人に対して登記設定請求もできないことになります。これを認めると結果的に相続債権者間に不公平が生じることになります。相続は、私有財産制の帰結として相続人が遺産を包括承継する制度であるのに対し、相続財産法人は、相続開始時の債権債務の権利関係を公正に清算処理するために認められた便宜上の法主体です。破産法の破産財団と類似しています。尚、相続開始前に仮登記があればすでに順位が保全されているので、優先権を認めても相続債権者間に不公平が生じないということになります。

 (3)ご相談のケースや判例の事案とは異なり,被相続人に相続人がおり,相続がなされた場合には,相続債権者は,相続人に対して抵当権の設定登記手続請求は可能だと考えられます。なぜなら,相続人は,被相続人の一切の権利義務を承継するとされているところ(包括承継。民法896条本文。),相続人は,被相続人の抵当権の設定者たる地位を承継しているからです。
    相続人がおらず,相続財産法人となった場合についても,上記とパラレルに考えた方がバランスが良いと思われるのに,判例はどうしてそのようにしなかったのだろうか,と思われるかもしれません。
    この点についてですが,相続人がいて,相続がなされた場合には,先に述べたとおり,相続人は被相続人の一切の権利義務を包括的に承継しますので,相続人が承継した被相続人の財産に加えて,ひいては相続人が元々持っている相続人の財産をもって,最終的に支払いをさせるということが可能だといえます。
    しかしながら,相続人がいない場合には,相続債権者の引き当てとなる財産としては,相続人がいない訳なのですから,被相続人の財産のみということになります。この場合に,抵当権者に対して,設定登記手続請求を認めてしまうと,この人についてのみ,債権の確実な回収をさせてしまうことになり,他の債権者との関係で公平を欠いてしまう結果となってしまいます。判例は,相続制度の趣旨と相続法人の趣旨から以上のような結論を採っていると考えられます。
 (4)相続財産の管理人が選任されてしまうから,このようなことになってしまうのであって,友人が亡くなったことを知らない振りをして,抵当権の設定登記の申請をしてしまえば良いのではないかと思われるかもしれませんが,上記判例は「被相続人の死亡後に設定登記がされたとしても,これによって優先権を取得することはない」と述べ,その点も排除をしています。
    そもそも,死亡後に設定登記ができる場合があるのかとの疑問も持たれるかもしれませんが,これについては,例えば,あなたが友人から生前に,後日設定登記をしても良いと,登記関係書類を受領していた場合が該当し,この場合には,本来,抵当権者と抵当権設定者が共同で申請しなければならないとされている抵当権の設定を(不動産登記法60条),事実上1人で行うことができてしまいます。しかし,上記判例は,このようなケースについても言及し,優先権がないことを判示したということです。
    したがって,「抵当権の登記をしておくことだけでもできないのでしょうか?」とのご質問に対しては,一応できる,との回答とはなりますが,上記のとおり,生前に登記関係書類を受け取っている必要がある上,登記ができたとしても優先権を主張することができない以上,あまり意味がないものとなってしまいます。
 (5)更に,上記判例では,続けて,かっこ書きにて,「(被相続人の死亡前にされた抵当権設定の仮登記に基づいて被相続人の死亡後に本登記がされた場合を除く。)」と判示しています。仮登記というのは,将来されるべき登記の順位を予め保全するために行う特別な登記のことです。仮登記には対抗力はありませんが,順位保全効があります。順位保全効とはどういうことかといいますと,例えば,順位1番で抵当権の設定仮登記がされている場合,その後順位2番,3番と抵当権の設定本登記がされたとしても,抵当権設定仮登記に基づいて本登記をした場合には,この本登記の順位は仮登記をした際の順位によることになるということです(不動産登記法106条)。
    友人が生前に認めてくれたかどうか定かではありませんが,仮登記は本登記と異なり,仮登記の登記義務者の承諾があるなどの場合には,単独で申請をすることが可能となっていますので(不動産登記法107条1項),認めてくれたかもしれません。もし,友人が亡くなる前に抵当権設定仮登記をしておいた場合には,友人が亡くなった現在においても,相続財産の管理人に対して,その仮登記に基づいて本登記をするように請求できたということです。
 (6)以上から,あなたは抵当権の設定契約をしてはいるものの,友人が亡くなる前に設定登記をしていないため,優先権を主張することができないということになってしまいます。ただ,優先権を主張することはできませんが,一般債権者の立場として手続きに関与することは可能です。

4.友人が所有していた不動産に担保権の設定登記をしている人がいるのか,その人たちの債権額はいくらなのか,不動産の評価額はいくらなのかなどによって,あなたの債権が回収可能なのか,可能としても,いくら回収できるのかが変わってきます。相続人になり得る人たちが次々と相続放棄をしていることから考えると,他にも債権者がいる可能性が高く,回収が全くできないことも考えられます。しかし,前述のとおり,一部でも弁済を受けるためには,相続財産の管理人が選任されることが必要となります。他の債権者の選任申立てを待つという方法もありますが,ご自身で選任申立てをされるのも一つの方法です。
  友人の所有していた不動産の登記事項証明書を確認すれば,担保権の設定登記の有無を調査することができます。登記事項証明書は,誰でも,手数料さえ支払えば取得することが可能なものですので(不動産登記法119条1項),まずは,ここから始められたら良いのではないでしょうか。一度お近くの法律事務所へご相談なさってみてください。


<参照条文>
民法
(相続人の欠格事由)
第八百九十一条 次に掲げる者は、相続人となることができない。
 一 故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者
 二 被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず、又は告訴しなかった者。ただし、その者に是非の弁別がないとき、又は殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族であったときは、この限りでない。
 三 詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、又は変更することを妨げた者
 四 詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又は変更させた者
 五 相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者
(推定相続人の廃除)
第八百九十二条 遺留分を有する推定相続人(相続が開始した場合に相続人となるべき者をいう。以下同じ。)が、被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき、又は推定相続人にその他の著しい非行があったときは、被相続人は、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができる。
(遺言による推定相続人の廃除)
第八百九十三条 被相続人が遺言で推定相続人を廃除する意思を表示したときは、遺言執行者は、その遺言が効力を生じた後、遅滞なく、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求しなければならない。この場合において、その推定相続人の廃除は、被相続人の死亡の時にさかのぼってその効力を生ずる。
(相続の一般的効力)
第八百九十六条 相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。
(相続の承認又は放棄をすべき期間)
第九百十五条 相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。
2 相続人は、相続の承認又は放棄をする前に、相続財産の調査をすることができる。
(相続債権者及び受遺者に対する公告及び催告)
第九百二十七条 限定承認者は、限定承認をした後五日以内に、すべての相続債権者(相続財産に属する債務の債権者をいう。以下同じ。)及び受遺者に対し、限定承認をしたこと及び一定の期間内にその請求の申出をすべき旨を公告しなければならない。この場合において、その期間は、二箇月を下ることができない。
2 前項の規定による公告には、相続債権者及び受遺者がその期間内に申出をしないときは弁済から除斥されるべき旨を付記しなければならない。ただし、限定承認者は、知れている相続債権者及び受遺者を除斥することができない。
3 限定承認者は、知れている相続債権者及び受遺者には、各別にその申出の催告をしなければならない。
4 第一項の規定による公告は、官報に掲載してする。
(公告期間満了前の弁済の拒絶)
第九百二十八条 限定承認者は、前条第一項の期間の満了前には、相続債権者及び受遺者に対して弁済を拒むことができる。
(公告期間満了後の弁済)
第九百二十九条 第九百二十七条第一項の期間が満了した後は、限定承認者は、相続財産をもって、その期間内に同項の申出をした相続債権者その他知れている相続債権者に、それぞれその債権額の割合に応じて弁済をしなければならない。ただし、優先権を有する債権者の権利を害することはできない。
(期限前の債務等の弁済)
第九百三十条 限定承認者は、弁済期に至らない債権であっても、前条の規定に従って弁済をしなければならない。
2 条件付きの債権又は存続期間の不確定な債権は、家庭裁判所が選任した鑑定人の評価に従って弁済をしなければならない。
(受遺者に対する弁済)
第九百三十一条 限定承認者は、前二条の規定に従って各相続債権者に弁済をした後でなければ、受遺者に弁済をすることができない。
(弁済のための相続財産の換価)
第九百三十二条 前三条の規定に従って弁済をするにつき相続財産を売却する必要があるときは、限定承認者は、これを競売に付さなければならない。ただし、家庭裁判所が選任した鑑定人の評価に従い相続財産の全部又は一部の価額を弁済して、その競売を止めることができる。
(相続の放棄の方式)
第九百三十八条 相続の放棄をしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。
(相続の放棄の効力)
第九百三十九条 相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす。
(相続財産法人の成立)
第九百五十一条 相続人のあることが明らかでないときは、相続財産は、法人とする。
(相続財産の管理人の選任)
第九百五十二条 前条の場合には、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求によって、相続財産の管理人を選任しなければならない。
2 前項の規定により相続財産の管理人を選任したときは、家庭裁判所は、遅滞なくこれを公告しなければならない。
(相続債権者及び受遺者に対する弁済)
第九百五十七条 第九百五十二条第二項の公告があった後二箇月以内に相続人のあることが明らかにならなかったときは、相続財産の管理人は、遅滞なく、すべての相続債権者及び受遺者に対し、一定の期間内にその請求の申出をすべき旨を公告しなければならない。この場合において、その期間は、二箇月を下ることができない。
2 第九百二十七条第二項から第四項まで及び第九百二十八条から第九百三十五条まで(第九百三十二条ただし書を除く。)の規定は、前項の場合について準用する。

不動産登記法
(共同申請)
第六十条 権利に関する登記の申請は、法令に別段の定めがある場合を除き、登記権利者及び登記義務者が共同してしなければならない。
(仮登記)
第百五条 仮登記は、次に掲げる場合にすることができる。
 一 第三条各号に掲げる権利について保存等があった場合において、当該保存等に係る登記の申請をするために登記所に対し提供しなければならない情報であって、第二十五条第九号の申請情報と併せて提供しなければならないものとされているもののうち法務省令で定めるものを提供することができないとき。
 二 第三条各号に掲げる権利の設定、移転、変更又は消滅に関して請求権(始期付き又は停止条件付きのものその他将来確定することが見込まれるものを含む。)を保全しようとするとき。
(仮登記に基づく本登記の順位)
第百六条 仮登記に基づいて本登記(仮登記がされた後、これと同一の不動産についてされる同一の権利についての権利に関する登記であって、当該不動産に係る登記記録に当該仮登記に基づく登記であることが記録されているものをいう。以下同じ。)をした場合は、当該本登記の順位は、当該仮登記の順位による。
(仮登記の申請方法)
第百七条 仮登記は、仮登記の登記義務者の承諾があるとき及び次条に規定する仮登記を命ずる処分があるときは、第六十条の規定にかかわらず、当該仮登記の登記権利者が単独で申請することができる。
2 仮登記の登記権利者及び登記義務者が共同して仮登記を申請する場合については、第二十二条本文の規定は、適用しない。
(仮登記を命ずる処分)
第百八条 裁判所は、仮登記の登記権利者の申立てにより、仮登記を命ずる処分をすることができる。
2 前項の申立てをするときは、仮登記の原因となる事実を疎明しなければならない。
3 第一項の申立てに係る事件は、不動産の所在地を管轄する地方裁判所の管轄に専属する。
4 第一項の申立てを却下した決定に対しては、即時抗告をすることができる。
5 非訟事件手続法第五条から第十四条まで、第十六条から第十八条まで、第十九条第二項及び第三項、第二十二条、第二十三条並びに第二十五条から第三十二条までの規定は、前項の即時抗告について準用する。
(仮登記に基づく本登記)
第百九条 所有権に関する仮登記に基づく本登記は、登記上の利害関係を有する第三者(本登記につき利害関係を有する抵当証券の所持人又は裏書人を含む。以下この条において同じ。)がある場合には、当該第三者の承諾があるときに限り、申請することができる。
2 登記官は、前項の規定による申請に基づいて登記をするときは、職権で、同項の第三者の権利に関する登記を抹消しなければならない。
(登記事項証明書の交付等)
第百十九条 何人も、登記官に対し、手数料を納付して、登記記録に記録されている事項の全部又は一部を証明した書面(以下「登記事項証明書」という。)の交付を請求することができる。
2 何人も、登記官に対し、手数料を納付して、登記記録に記録されている事項の概要を記載した書面の交付を請求することができる。
3 前二項の手数料の額は、物価の状況、登記事項証明書の交付に要する実費その他一切の事情を考慮して政令で定める。
4 第一項及び第二項の手数料の納付は、収入印紙をもってしなければならない。ただし、法務省令で定める方法で登記事項証明書の交付を請求するときは、法務省令で定めるところにより、現金をもってすることができる。
5 第一項の交付の請求は、法務省令で定める場合を除き、請求に係る不動産の所在地を管轄する登記所以外の登記所の登記官に対してもすることができる。


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