新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.1282、2012/6/7 14:52 https://www.shinginza.com/qa-kojinsaisei.htm

【破産・個人再生中の自己破産申立ての可否と当否・再生計画の変更・ハードシップ免責】

質問:私は、現在個人再生中で毎月再生計画どおりに返済していたのですが、会社が急に倒産してしまい、今後再生計画通りに返済することが難しくなってしまいました。これから、自己破産することはできますか。

回答:
1.自己破産することはできます。ですが、まずは、自己破産以外の方法を考えてみてください。他にも、@再生計画の変更の申し立てや、Aハードシップ免責を受ける、などの方法もあります。これらが不可能あるいは不適切な場合に、改めて自己破産をすることを考えてみた方がよろしいかと思います。
2.関連事例集論文835番834番833番155番参照。

解説:
(民事再生、個人再生 (小規模個人再生 、給与所得者再生)の制度趣旨。)
  民事再生法は、支払不能の可能性等経済的窮地(破産原因が生じるおそれでよい。民事再生法21条)に陥り、社会経済生活において自由競争ができなくなった者の経済的再起更生を早期に実現し、公正な社会経済秩序を維持し、個人の尊厳を確保保障するために(法の支配)債務整理の一環として平成12年以降創設されました(民事再生法1条)。  我が国は、自由主義、個人主義の下、私的自治の原則、私有財産制により自由競争を基本としていますが、自由競争は結果として構造上必然的に敗者を生み、資本の論理により恒常的敗者すなわち債務整理を必要とする者を生じることになります。しかし、私的自治の原則は自由で公正な社会秩序を実現するための手段であり、制度に内在する公正公平の原則により、このような不平等状態は是正されなければならず、直ちに社会の構成員である個人、会社が再起更生し、再度自由競争社会への参加が認められなければなりません。  すなわち、債務整理制度は、法が債権者側の恩恵として認めたものではなく、自由競争社会で制度自体から必然的に導かれる個人、会社が有する当然の権利です。唯、債務整理の手続きは再起更生の他、本来支払われるべき債務の減額免除を内容としますので、債務者、債権者にとり公正で公平、迅速、低廉でなければいけません。そこで、法は第一義的に破産制度(破産法)を用意し、すべての財産を明らかにし公平、平等に配当清算することを条件に負債を免責しています。しかし、この制度はいままでの財産的基盤(自宅も)をすべて失うことになり、真の経済的再起更生としては不十分です。

  そこで、従来は、弁護士が介入し裁判所の監督を受けない私的整理(内整理)、民事調停による減額交渉、さらには裁判所の監督下の手続きによる、破産手続き中の強制和議(破産法、民事再生制定により廃止)、破産予防の和議(和議法、民事再生により廃止)、会社更生手続き等により債務者の早期実質的再起更生を図ってきました。しかし、私的整理、民事調停は各債権者の同意が障害となり、負債額が大きい場合にさほど有効ではありませんし、強制和議、和議法の予防和議は要件が厳しく(債権者数の過半数、債権額3分の2の議決)、抵当権等担保権の実行を阻止できませんし(結局生活の本拠である自宅を失う)、会社更生法も強制和議と同様成立要件が厳格で経営権が更生管財人に奪われ早期、自主的に再起更生を果たそうとする一般的個人、会社に十分活用されませんでした。

  そこで平成12年から民事再生法が制定され、申し立ての理由を広くし(破産原因が生じるおそれで足りる)、従来の経営者が引き続き経営権を有し、決議要件を緩和し(債権者数、額とも過半数で可、さらに債権者の同意で再生債権確定手続き、再生計画案決議手続きを省略簡易にすることも可能)、再起更生のため生活の本拠である住宅確保のための手続き(法196条、弁済猶予等による担保権実行の制限。住宅資金債権者は債務額を保証される関係上再生計画案について議決権を有しないので住宅資金特別条項は事実上確保されます。法201条。)、さらに特則として規模が小さい個人の債務整理に対応して小規模個人再生手続き(法221条以下、弁済期間、弁済額限定、消極的同意等による議決手続きの簡易化等。基準3年、20%、書面による議決権行使、)、小規模個人再生のさらに特則として給与所得者再生手続き(法239条以下、日常生活権が侵害される危険があり弁済額を厳しくして債権者同意を不要とする。)が制定され、債務者の経済状態に応じて再起更生がさらに確保、保障され容易になりました。以上の趣旨から民事再生は規定され、解釈されます。尚、民事再生法の施行により私的整理の整理案にも事実上の影響(弁済額10%−20%、負債額5000万円以上なら10%以下)があるものと思われます。

  民事再生法は平成12年4月1日から施行され、個人再生についても平成13年4月1日から施行され、現在まで多くの事例が蓄積されてきました。個人再生手続は、民事再生法第13章の「小規模個人再生及び給与所得者再生に関する特則」の適用ある再生手続きのことで(民事再生法221条以下)、非事業者の自然人及び零細な個人事業者にとって利用しやすい再生手続きとなっています。個人再生の手続きは、通常の民事再生手続きより恒常的負債からさらに公平公正を旨として、迅速、低廉に更生、解放される趣旨に基づき規定されています。後述の「個人再生中の破産申立て」「再生計画の変更」、「ハードシップ免責」も以上の趣旨から認められ解釈されています。

  尚、念のため個人再生の特色を具体的に説明しておきます。個人再生(民事再生手続きの特則であり小規模個人再生と給与所得者再生を言います。)
  個人再生は、民事再生の特則として5000万円(住宅ローン除く)以下の負債で定期的に収入がある人に限りについて裁判所の手続を通じ、債務者の将来の収入の一部分を返済に充てることにして(原則負債の20%。3000万円以上は10%以下になります。最低100万円。)原則3年間の分割弁済を行い(安定的収入があるので例外を認め5年まで可能にして柔軟に対応しています。)、残りの債務は免除を受けるという方法です(法221条)。通常の民事再生に対する基本的特色は、弁済総額、期間の限定、債権者の同意方式が消極的同意で簡易(給与所得者再生は同意も不要)、手続き期間の短縮(申立後6か月)等の迅速な再起更生です。債権確定手続きの簡易化(法227条、評価制度)もその制度の一つです。借金が多額である場合(一部免除を得ても返しきれない場合。)、借金よりも資産の方が多い場合、毎月の収入がない場合などは、この方法によることはできず、原則に戻り通常の民事再生手続き(同意は困難でしょう)、前述の任意整理(私的整理)か自己破産を検討することになります。

1. (民事再生終了前の破産申立てとその効果)
  民事再生手続開始の決定があった場合には、破産手続開始の申立てをすることはできないのが原則です(民事再生法39条1項)。民事再生手続きは、事業の再建を目的とする手続ですから、事業の廃止、清算を目的とする破産手続開始の申し立てができるとすると、再生手続きが円滑に進行されないことになってしまいますから、破産手続きの開始の申し立てを禁止することは当然のことと言えます。他方で、再生計画が履行できないことになれば、再生手続き廃止の決定がなされ、その後は、必要により破産手続開始の申し立てができることになります。又、そもそも民事再生手続きは、基本的に破産の原因発生のおそれ等がある者について債権者の了解を得て事業(生活基盤)を解体することなくして再度事業のやり直しを認める制度ですからやり直しが不可能になった以上、原則に戻り破産手続きに移行することができます。

  この点について、個人再生を規定する同法249条1項は、破産手続開始前の再生債務者について再生手続開始の決定の取消し、再生手続廃止若しくは再生計画不認可の決定又は再生計画取消しの決定(再生手続の終了前にされた申立てに基づくものに限る。)があった場合には、その決定が確定する前においても、再生裁判所に当該再生債務者についての破産手続開始の申立てをすることができるものと定めています。再生手続開始決定後は、再生手続廃止の決定が確定しない限りは効力を生じない訳ですから(民事再生法195条5項)、確定して初めて破産手続き開始の申し立てができることになりますが、確定前でも破産手続開始の申し立てができると定めたのが小規模個人再生(民事再生法249条1項)の規定です。
  その理由は、小規模な個人再生の場合、再生手続の終了と破産開始手続開始の申立てとの間に時間的間隙が生じると破産手続開始の申立てに基づく再生手続から破産手続への迅速、円滑な移行が妨げられることになるからです。

  破産手続開始の申立てをした場合、原則として同時に免責許可の申立てをしたものとみなされます(破産法248条4項本文)。そして、免責許可の決定(破産法252条1項2項)を得てそれが確定した場合には、一部の債権(例えば、税金に関するもの、養育費に関するもの、不法行為に関するものなど)を除いてではありますが、今まで負っていた債務についてはその支払義務を免れるというメリットはあります(破産法253条)。  しかしながら、その一方で、破産手続開始決定がなされると、ご自分が所有している不動産などは処分されてしまいますし、新たにクレジットカードを作成したりローンを組んだりすることは事実上難しくなるといったデメリットがあります。
  ですから、破産手続開始の申立てをすべきかは、このようなメリットとデメリットとを比較して決める必要があります。

2(その他の方法)
  では、仮に、デメリットの方が大きかったとして、債務の支払に苦しんでいる場合には、他にどのような方法が考えられるでしょうか。この点については、法は、再生計画の変更とハードシップ免責という2つの制度を設けています。以下、これらについて、説明致します。

1)再生計画の変更の申し立て
  民事再生法234条1項(・同法244条)によれば、@再生計画認可の決定があった後、Aやむを得ない事由で再生計画を遂行することが著しく困難となったときに、再生債務者の申立てにより、B再生計画で定められた債務の最終期限から2年以内の範囲で、債務の期限を延長することができるとされています。これらの要件について、説明を加えます。

 ア @再生計画認可の決定後
   ここでいう「再生計画認可の決定」には、決定が確定する前も含みます。
   通常の再生手続の場合、再生計画の変更は、再生手続終了前に限って認められているのですが(民事再生法187条1項)、個人再生手続では再生計画認可決定の確定により再生手続が当然に終了となるので(民事再生法233条、244条)、法187条1項のような制度としてしまうと個人再生手続において再生計画変更の余地が事実上なくなってしまいますので、広く再生計画の変更を認め迅速、低廉な再起更生を認める趣旨です。
 イ Aやむを得ない事由で再生計画を遂行することが著しく困難となったとき
   まず、法が規定する「やむを得ない事由」とは、再生計画の作成時点では予想していなかったが、仮に予想できていたならば、毎期の弁済額をより低くした再生計画を作成したであろう事情というような意味です。ここでは、後述のハードシップ免責の場合と異なり、債務者の責めに帰するべき事由があっても構いません。
   そして、法はこの要件に加え、「再生計画を遂行することが著しく困難となったとき」という要件を加えています。これは、通常の民事再生手続の再生計画変更(同法187条1項)にはないものです。

   このように個人再生手続においてこのような要件が付加されている趣旨は、個人再生手続において債務者は生活を切り詰めて弁済を行うことになるので、計画の遂行に多少の困難を伴うことはもともと織り込み済みといえ、そのような事情だけで安易に再生計画が変更されることのないようにする点にあります。
   この要件にあたる具体例としては、
   ・再生計画作成時以降に給与が引き下げられた
   ・再生計画作成時以降に失業して転職したが収入が失業前よりも下がった
   ・再生債務者本人や家族の病気等によって予想外に支出が増大した
   などの場合が考えられます。ただ、1〜2回程度の不履行が生じるだけで当然に要件を満たすものではないと言われています。

 ウ A債務の最終期限から2年以内の範囲
   個人再生手続においては、再生手続の終了後に再生計画の変更を認めてはいるのですが、弁済額の減額変更自体は認めておらず、弁済期間に関し2年を限度として延長することが認められているだけです。
   この趣旨は、個人再生手続においては再生債権の総額が5000万円以下ということになっておりますので、個々の債権者の債権は比較的少額であるにもかかわらず、再生計画によって権利変更されてさらに少額になった上に、原則3年間(例外的に5年間)の弁済期間が認められていることから(民事再生法229条2項2号)、債権者との公平を図る趣旨からこれを更に大幅に延長することは相当ではないという点にあります。

 エ 実務の運用状況
   このように@Aの要件があることから、実務では、再生計画の変更申立てが行われることは少なく、利用状況としても活発とはいえないと言われています。

2)(ハードシップ免責)
  個人再生を規定した民事再生法235条1項は、@再生債務者が、その責めに帰することができない事由により再生計画を遂行することが極めて困難となったこと、A再生計画における各債権につき、その4分の3以上の額の弁済を終えていること、B免責の決定をすることが再生債権者の一般の利益に反しないものであること(精算価値保障原則法、241条2項2号、法174条2項4号。)、C再生計画の変更をすることが極めて困難であること、という4要件を備えた場合に、免責の制度を設けております。これが小規模個人再生の迅速性を考えたいわゆるハードシップ免責の制度です。

 ア @再生債務者が、その責めに帰することができない事由により再生計画を遂行することが極めて困難となったこと。債権者側の利益を考慮し公平を図っています。再生計画の変更の場合と異なり、債務者に責任がないことや計画遂行の困難性の程度など要件が加重されています。
   具体例としては、
   ・交通事故に遭って働くことができなくなった
   ・務めていた会社を解雇された
  などが考えられます。そのため、申立てをする際には、診断書、離職証明書、陳述書などを添付する必要があります。

 イ A再生計画における各債権につき、その4分の3以上の額の弁済を終えていること再生計画における各債権とは、届出(法225条によるみなし届出を含む)がなされて所定の異議申述期間内に異議が述べられなかった再生債権(無異議債権)および異議によって評価の申立てがなされ裁判所が額を定めた再生債権(評価済債権。法238条8項)であって、再生計画の定めに従い権利変更された後の債権(法232条2項)をいいます。弁済をしたかの証拠として、領収書を貼付するのが通常です。

 ウ B免責の決定をすることが再生債権者の一般の利益に反しないものであること
   具体的には、再生計画の認可決定時に債務者について破産による清算が行われたとした場合の配当総額以上の弁済が終わっている場合です。(精算価値保障原則法、241条2項2号、法174条2項4号。)債権者の利益を考慮した当然の原則です。証拠としては、弁済をしたかの証拠に加え、再生計画認可の決定があった時点における再生債務者の財産目録などを貼付する必要があります。

 エ C再生計画の変更をすることが極めて困難であること
ハードシップ免責は、再生計画の変更(法234条)によってもなお弁済ができない債務者を救済するための補充的な位置づけということができます。

 オ 免責効
   免責決定の確定により、債務者は、法229条3項各号に掲げる請求権および再生手続開始前の罰金等(法97条)を除いて、再生債権の残額の全部について責任を免れることになります(法235条6項)。

 カ 実務の運用状況  
   実例は全国的にわずかな件数にとどまるとされ、実際に認められることは難しいといえます。

4 終わりに
  このように、自己破産申立て以外の手段が認められる可能性は、現実問題としてそれほど大きいものではありません。ですが、破産をすることの影響は想像以上に大きいも
のです。破産という選択肢を選ぶ前に、他の選択肢の利用をまずは考えてみてください。
【参照条文】

<民事再生法>
(再生計画の変更)
第234条  小規模個人再生においては、再生計画認可の決定があった後やむを得ない事由で再生計画を遂行することが著しく困難となったときは、再生債務者の申立てにより、再生計画で定められた債務の期限を延長することができる。この場合においては、変更後の債務の最終の期限は、再生計画で定められた債務の最終の期限から2年を超えない範囲で定めなければならない。
2  前項の規定により再生計画の変更の申立てがあった場合には、再生計画案の提出があった場合の手続に関する規定を準用する。
3  第175条(第2項を除く。)及び第176条の規定は、再生計画の変更の決定があった場合について準用する。
(小規模個人再生の規定の準用)
第244条  第221条第3項から第5項まで、第222条から第229条まで、第232条から第235条まで及び第237条第2項の規定は、給与所得者等再生について準用する。
(再生計画の変更)
第187条  再生計画認可の決定があった後やむを得ない事由で再生計画に定める事項を変更する必要が生じたときは、裁判所は、再生手続終了前に限り、再生債務者、管財人、監督委員又は届出再生債権者の申立てにより、再生計画を変更することができる。
2  前項の規定により再生債権者に不利な影響を及ぼすものと認められる再生計画の変更の申立てがあった場合には、再生計画案の提出があった場合の手続に関する規定を準用する。ただし、再生計画の変更によって不利な影響を受けない再生債権者は、手続に参加させることを要せず、また、変更計画案について議決権を行使しない者(変更計画案について決議をするための債権者集会に出席した者を除く。)であって従前の再生計画に同意したものは、変更計画案に同意したものとみなす。
3  第175条及び第176条の規定は、再生計画変更の決定があった場合について準用する。
(手続開始の要件等)
第221条  個人である債務者のうち、将来において継続的に又は反復して収入を得る見込みがあり、かつ、再生債権の総額(住宅資金貸付債権の額、別除権の行使によって弁済を受けることができると見込まれる再生債権の額及び再生手続開始前の罰金等の額を除く。)が5千万円を超えないものは、この節に規定する特則の適用を受ける再生手続(以下「小規模個人再生」という。)を行うことを求めることができる。
2  小規模個人再生を行うことを求める旨の申述は、再生手続開始の申立ての際(債権者が再生手続開始の申立てをした場合にあっては、再生手続開始の決定があるまで)にしなければならない。
3  前項の申述をするには、次に掲げる事項を記載した書面(以下「債権者一覧表」という。)を提出しなければならない。
一  再生債権者の氏名又は名称並びに各再生債権の額及び原因
二  別除権者については、その別除権の目的である財産及び別除権の行使によって弁済を受けることができないと見込まれる再生債権の額(以下「担保不足見込額」という。)三  住宅資金貸付債権については、その旨
四  住宅資金特別条項を定めた再生計画案を提出する意思があるときは、その旨
五  その他最高裁判所規則で定める事項
4  再生債務者は、債権者一覧表に各再生債権についての再生債権の額及び担保不足見込額を記載するに当たっては、当該額の全部又は一部につき異議を述べることがある旨をも記載することができる。
5  第1項に規定する再生債権の総額の算定及び債権者一覧表への再生債権の額の記載に関しては、第87条第1項第1号から第3号までに掲げる再生債権は、当該各号に掲げる債権の区分に従い、それぞれ当該各号に定める金額の債権として取り扱うものとする。6  再生債務者は、第2項の申述をするときは、当該申述が第1項又は第3項に規定する要件に該当しないことが明らかになった場合においても再生手続の開始を求める意思があるか否かを明らかにしなければならない。ただし、債権者が再生手続開始の申立てをした場合については、この限りでない。
7  裁判所は、第2項の申述が前項本文に規定する要件に該当しないことが明らかであると認めるときは、再生手続開始の決定前に限り、再生事件を通常の再生手続により行う旨の決定をする。ただし、再生債務者が前項本文の規定により再生手続の開始を求める意思がない旨を明らかにしていたときは、裁判所は、再生手続開始の申立てを棄却しなければならない。
(計画遂行が極めて困難となった場合の免責)
第235条  再生債務者がその責めに帰することができない事由により再生計画を遂行することが極めて困難となり、かつ、次の各号のいずれにも該当する場合には、裁判所は、再生債務者の申立てにより、免責の決定をすることができる。
一  第232条第2項の規定により変更された後の各基準債権及び同条第三項ただし書に規定する各再生債権に対してその4分の3以上の額の弁済を終えていること。
二  第229条第3項各号に掲げる請求権(第232条第4項(同条第5項ただし書において準用する場合を含む。)の規定により第156条の一般的基準に従って弁済される部分に限る。)に対してその4分の3以上の額の弁済を終えていること。
三  免責の決定をすることが再生債権者の一般の利益に反するものでないこと。
四  前条の規定による再生計画の変更をすることが極めて困難であること。
2  前項の申立てがあったときは、裁判所は、届出再生債権者の意見を聴かなければならない。
3  免責の決定があったときは、再生債務者及び届出再生債権者に対して、その主文及び理由の要旨を記載した書面を送達しなければならない。
4  第1項の申立てについての裁判に対しては、即時抗告をすることができる。
5  免責の決定は、確定しなければその効力を生じない。
6  免責の決定が確定した場合には、再生債務者は、履行した部分を除き、再生債権者に対する債務(第229条第3項各号に掲げる請求権及び再生手続開始前の罰金等を除く。)の全部についてその責任を免れる。
7  免責の決定の確定は、別除権者が有する第53条第1項に規定する担保権、再生債権者が再生債務者の保証人その他再生債務者と共に債務を負担する者に対して有する権利及び再生債務者以外の者が再生債権者のために提供した担保に影響を及ぼさない。
8  再生計画が住宅資金特別条項を定めたものである場合における第二項及び第三項の規定の適用については、第2項中「届出再生債権者」とあるのは「届出再生債権者及び住宅資金特別条項によって権利の変更を受けた者」と、第3項中「及び届出再生債権者」とあるのは、「届出再生債権者及び住宅資金特別条項によって権利の変更を受けた者」とする。

(再生計画の取消し)
第189条  再生計画認可の決定が確定した場合において、次の各号のいずれかに該当する事由があるときは、裁判所は、再生債権者の申立てにより、再生計画取消しの決定をすることができる。
一  再生計画が不正の方法により成立したこと。
二  再生債務者等が再生計画の履行を怠ったこと。
三  再生債務者が第41条第1項若しくは第42条第1項の規定に違反し、又は第54条第2項に規定する監督委員の同意を得ないで同項の行為をしたこと。
2  前項第1号に掲げる事由を理由とする同項の申立ては、再生債権者が再生計画認可の決定に対する即時抗告により同号の事由を主張したとき、若しくはこれを知りながら主張しなかったとき、再生債権者が同号に該当する事由があることを知った時から1月を経過したとき、又は再生計画認可の決定が確定した時から2年を経過したときは、することができない。
3  第1項第2号に掲げる事由を理由とする同項の申立ては、再生計画の定めによって認められた権利の全部(履行された部分を除く。)について裁判所が評価した額の10分の1以上に当たる権利を有する再生債権者であって、その有する履行期限が到来した当該権利の全部又は一部について履行を受けていないものに限り、することができる。
4  裁判所は、再生計画取消しの決定をしたときは、直ちに、その裁判書を第1項の申立てをした者及び再生債務者等に送達し、かつ、その主文及び理由の要旨を公告しなければならない。
5  第1項の申立てについての裁判に対しては、即時抗告をすることができる。
6  第4項の決定は、確定しなければその効力を生じない。
7  第4項の決定が確定した場合には、再生計画によって変更された再生債権は、原状に復する。ただし、再生債権者が再生計画によって得た権利に影響を及ぼさない。
8  第185条の規定は第四項の決定が確定した場合について、前条第4項の規定は再生手続終了前に第四項の決定が確定した場合について準用する。

<破産法>
(免責許可の申立て)
第248条  個人である債務者(破産手続開始の決定後にあっては、破産者。第四項を除き、以下この節において同じ。)は、破産手続開始の申立てがあった日から破産手続開始の決定が確定した日以後1月を経過する日までの間に、破産裁判所に対し、免責許可の申立てをすることができる。
2  前項の債務者(以下この節において「債務者」という。)は、その責めに帰することができない事由により同項に規定する期間内に免責許可の申立てをすることができなかった場合には、その事由が消滅した後1月以内に限り、当該申立てをすることができる。3  免責許可の申立てをするには、最高裁判所規則で定める事項を記載した債権者名簿を提出しなければならない。ただし、当該申立てと同時に債権者名簿を提出することができないときは、当該申立ての後遅滞なくこれを提出すれば足りる。
4  債務者が破産手続開始の申立てをした場合には、当該申立てと同時に免責許可の申立てをしたものとみなす。ただし、当該債務者が破産手続開始の申立ての際に反対の意思を表示しているときは、この限りでない。
5  前項本文の規定により免責許可の申立てをしたものとみなされたときは、第20条第2項の債権者一覧表を第3項本文の債権者名簿とみなす。
6  債務者は、免責許可の申立てをしたときは、第218条第1項の申立て又は再生手続開始の申立てをすることができない。
7  債務者は、次の各号に掲げる申立てをしたときは、第1項及び第2項の規定にかかわらず、当該各号に定める決定が確定した後でなければ、免責許可の申立てをすることができない。
一  第218条第1項の申立て 当該申立ての棄却の決定
二  再生手続開始の申立て 当該申立ての棄却、再生手続廃止又は再生計画不認可の決定
(免責許可の決定の要件等)
第252条  裁判所は、破産者について、次の各号に掲げる事由のいずれにも該当しない場合には、免責許可の決定をする。
一  債権者を害する目的で、破産財団に属し、又は属すべき財産の隠匿、損壊、債権者に不利益な処分その他の破産財団の価値を不当に減少させる行為をしたこと。
二  破産手続の開始を遅延させる目的で、著しく不利益な条件で債務を負担し、又は信用取引により商品を買い入れてこれを著しく不利益な条件で処分したこと。
三  特定の債権者に対する債務について、当該債権者に特別の利益を与える目的又は他の債権者を害する目的で、担保の供与又は債務の消滅に関する行為であって、債務者の義務に属せず、又はその方法若しくは時期が債務者の義務に属しないものをしたこと。
四  浪費又は賭博その他の射幸行為をしたことによって著しく財産を減少させ、又は過大な債務を負担したこと。
五  破産手続開始の申立てがあった日の1年前の日から破産手続開始の決定があった日までの間に、破産手続開始の原因となる事実があることを知りながら、当該事実がないと信じさせるため、詐術を用いて信用取引により財産を取得したこと。
六  業務及び財産の状況に関する帳簿、書類その他の物件を隠滅し、偽造し、又は変造したこと。
七  虚偽の債権者名簿(第248条第5項の規定により債権者名簿とみなされる債権者一覧表を含む。次条第一項第六号において同じ。)を提出したこと。
八  破産手続において裁判所が行う調査において、説明を拒み、又は虚偽の説明をしたこと。
九  不正の手段により、破産管財人、保全管理人、破産管財人代理又は保全管理人代理の職務を妨害したこと。
十  次のイからハまでに掲げる事由のいずれかがある場合において、それぞれイからハまでに定める日から7年以内に免責許可の申立てがあったこと。
イ 免責許可の決定が確定したこと 当該免責許可の決定の確定の日
ロ 民事再生法 (平成11年法律第225号)第239条第1項 に規定する給与所得者等再生における再生計画が遂行されたこと 当該再生計画認可の決定の確定の日
ハ 民事再生法第235条第1項 (同法第244条 において準用する場合を含む。)に規定する免責の決定が確定したこと 当該免責の決定に係る再生計画認可の決定の確定の日
十一  第40条第1項第1号、第41条又は第250条第2項に規定する義務その他この法律に定める義務に違反したこと。
2  前項の規定にかかわらず、同項各号に掲げる事由のいずれかに該当する場合であっても、裁判所は、破産手続開始の決定に至った経緯その他一切の事情を考慮して免責を許可することが相当であると認めるときは、免責許可の決定をすることができる。
3  裁判所は、免責許可の決定をしたときは、直ちに、その裁判書を破産者及び破産管財人に、その決定の主文を記載した書面を破産債権者に、それぞれ送達しなければならない。この場合において、裁判書の送達については、第10条第3項本文の規定は、適用しない。
4  裁判所は、免責不許可の決定をしたときは、直ちに、その裁判書を破産者に送達しなければならない。この場合においては、第10条第3項本文の規定は、適用しない。
5  免責許可の申立てについての裁判に対しては、即時抗告をすることができる。
6  前項の即時抗告についての裁判があった場合には、その裁判書を当事者に送達しなければならない。この場合においては、第10条第3項本文の規定は、適用しない。
7  免責許可の決定は、確定しなければその効力を生じない。
(免責許可の決定の効力等)
第253条  免責許可の決定が確定したときは、破産者は、破産手続による配当を除き、破産債権について、その責任を免れる。ただし、次に掲げる請求権については、この限りでない。
一  租税等の請求権
二  破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権
三  破産者が故意又は重大な過失により加えた人の生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権(前号に掲げる請求権を除く。)
四  次に掲げる義務に係る請求権
イ 民法第752条 の規定による夫婦間の協力及び扶助の義務
ロ 民法第760条 の規定による婚姻から生ずる費用の分担の義務
ハ 民法第766条 (同法第749条 、第771条及び第788条において準用する場合を含む。)の規定による子の監護に関する義務
ニ 民法第877条 から第880条 までの規定による扶養の義務
ホ イからニまでに掲げる義務に類する義務であって、契約に基づくもの
五  雇用関係に基づいて生じた使用人の請求権及び使用人の預り金の返還請求権
六  破産者が知りながら債権者名簿に記載しなかった請求権(当該破産者について破産手続開始の決定があったことを知っていた者の有する請求権を除く。)
七  罰金等の請求権
2  免責許可の決定は、破産債権者が破産者の保証人その他破産者と共に債務を負担する者に対して有する権利及び破産者以外の者が破産債権者のために供した担保に影響を及ぼさない。
3  免責許可の決定が確定した場合において、破産債権者表があるときは、裁判所書記官は、これに免責許可の決定が確定した旨を記載しなければならない。

【参考文献】
・個人再生の実務Q&A100問〜全倒ネットメーリングリストの質疑から
  (全国倒産処理弁護士ネットワーク偏・社団法人金融財政事情研究会)
・2012年クレサラ事件処理研修会「自己破産」
・大コンメンタール破産法
・新注釈民事再生法上・下(第2版)

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