No.1256| 

不実の抵当権実行と競売開始の阻止

民事|身に覚えのない抵当権設定契約の効力|真正な文書の推定(民事訴訟法228条4項)と反証|執行異議の申立ておよび執行停止の仮処分について

目次

  1. 質問
  2. 回答
  3. 解説
  4. 関連事例集
  5. 参照条文
  6. 参照判例

質問

先日、私宛てに知らない男性から内容証明郵便が届きました。内容を確認したところ、その男性が私の息子に500万円の貸付けをしているが、返済期限を過ぎても息子からの返済が一切ないので、このまま返済がなければ私の所有している土地に設定した抵当権を実行する、というものでした。

私はその男性との間で抵当権設定契約を締結したことなどなく、息子の借金のことも全く聞かされていなかったので、大変驚いています。息子に事情を聞いたところ、その男性から事業資金を借り入れた際に担保を立てるよう言われたため、私の実印や土地の権利証等を勝手に持ち出して、私の名前で抵当権設定契約書に署名・押印し、既に抵当権設定登記もされている、借り入れた500万円については事業がうまく行かず、返済の目途は立っていない、とのことでした。

私の土地は競売にかけられてしまうのでしょうか。競売を止めることはできないのでしょうか。

回答

1 まずは早急に土地の登記事項証明書を取得して、抵当権設定登記がされているかどうかを確認して下さい。抵当権設定登記がされている場合、いつ抵当権が実行され、競売開始決定が出されてもおかしくない状況であるといえます。

2 たとえ抵当権設定登記がされていたとして、土地の所有者であるあなた自身が合意していない以上、抵当権設定契約は不成立であり、相手方男性は抵当権を有していないことになります。もっとも、抵当権設定登記がある場合は、あなたから抵当権設定登記の抹消を請求する必要があり、相手が応じない場合は訴訟を提起する必要がありますが、抵当権設定契約書にあなたの実印が押されている以上、あなたが抵当権設定契約を締結したと推定されてしまうため、この推定を覆すための立証活動が必要となります。

3 競売を防ぐためには、抵当権不存在確認または抵当権設定登記抹消登記手続請求の民事訴訟を提起するとともに、「抵当権実行禁止の仮処分の申立」を行う必要があります。また、抵当権者の申立により既に裁判所で競売開始決定がされた後であれば、「執行異議の申立」が必要となります。これらはいずれも相当に専門的な手続きであり、緊急性もありますので、早急に弁護士にご相談されることを強くお勧めいたします。

4 その他本件に関連する事例集はこちらをご覧ください。

解説

1 抵当権とは

(1) 抵当権の意義

今回問題となっている抵当権とは、債権者が債権の担保として債務者や第三者から占有を移転しないで提供を受けた不動産等の交換価値について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受けることのできる担保物権であるとされ(民法369条1項)、要は、債権者が当該不動産を競売にかけるなどして換価することで、その債権を確実に回収できるようにするための担保権のことです。

今回の場合、あなたの息子さんが男性から500万円の貸付を受けているとのことですので、その男性が息子さんに対して500万円の貸金返還請求権を有していることになり(民法587条)、息子さんにお金を貸した男性がここで言う「債権者」に、そして所有不動産に抵当権を設定されたあなたが「第三者」に、それぞれ当たります。

抵当権は、抵当権によって担保される債権の債権者(抵当権者)と担保不動産の処分権者(一般的には不動産の所有者)との間で、直接抵当権の成立を目的とする契約(抵当権設定契約)が締結されることによって設定されます。

今回の場合、息子さんがあなたの印鑑を勝手に使って、あたかもあなたが息子さんに貸付けを行った男性との間で直接抵当権設定契約を締結したかのような抵当権設定契約書を作成していますが、実際には、あなたはその男性との間で抵当権設定契約を締結しておらず、抵当権設定契約の有効性が問題となります。

結論から申し上げますと、あなたの男性に対する抵当権設定の意思表示がないため、抵当権設定契約は不成立ですが、だからといって抵当権の実行を直ちに阻止できるかというと、話はそう簡単ではありません。この点については項目を改めてご説明いたします。

(2) 抵当権実行に必要な資料

抵当権者が抵当権を実行して競売を申し立てようとする場合、民事執行法上、裁判所に対して抵当権の存在を証する一定の文書を提出することが求められています(民事執行法181条各号)。同法は、この一定の法定文書として①抵当権の存在を証する確定判決等(1号)、②抵当権の存在を証する公証人が作成した公正証書の謄本(2号)、③抵当権の登記に関する登記事項証明書(3号)の3種類を定めており、抵当権を実行しようとする者は、これらのうちいずれかの文書を提出する必要があります。もっとも、実際上は文書入手の容易さから、上記③の登記事項証明書が提出されることがほとんどです。登記事項証明書は当該土地の地番が分かれば法務局で誰でも取得可能です。

今回の場合、息子さんのお話では既に抵当権設定登記手続きが済んでいるとのことですので、もしそれが本当であれば、いつ担保不動産競売の申立てをされ、抵当権実行の開始決定が出てもおかしくない状況であるといえます。したがって、まずは早急に問題の土地の登記事項証明書を取得して、抵当権設定登記がされているかどうかを確認する必要があるといえます。

2 抵当権設定契約の効力について

(1) 抵当権設定契約の成否

もし、息子さんが言うように、実際に抵当権設定登記がされていた場合、あなたとしては抵当権設定契約が不成立であること(すなわち、相手方の男性が抵当権を有していないこと)を主張して不動産競売の手続を阻止する必要があります。

そこで、本件の抵当権設定契約の成否についてご説明いたしますが、抵当権設定契約はその名のとおり契約の一種であり、売買や賃貸借と同様、複数の相対立する当事者が互いに意思を表示し合い、それらの意思表示が合致することにより成立するものです。

今回の場合、あなたと相手方男性との間であなたの所有する土地に抵当権を設定することについての意思表示の合致があったかどうかが問題となり、あなたがそのような意思表示をしていない以上、当然に契約は不成立であるといえます。よく契約書に署名・押印することによって契約が成立するものと勘違いをされている方がいらっしゃいますが、それは違います。契約書は、あくまで契約書記載の内容で双方の申込みと承諾の意思表示がなされたことを示す証拠資料という位置付けになります。

抵当権設定契約が不成立であれば、相手方男性は抵当権を有していないことになるので、あなたの土地に対して抵当権を実行することは当然出来ないことになります。

(2) 真正な文書の成立の推定

もっとも、契約書等の私文書については、その文書が特定人の意思に基づいて作成されたこと(これを「文書の成立の真正」といいます。)の立証の困難性を緩和するため、特別の推定規定が設けられています(民事訴訟法228条4項)。同条は、文書上に本人の意思に基づく署名・押印がある場合、その文書全体が真正に成立した(すなわち、契約書記載の契約当事者双方の意思に基づいて作成された)と推定する規定ですが、印影部分が実印等本人の印章によって顕出されたものである場合には、特段の事情がない限り本人の意思に基づいて顕出された印影であることが事実上推定されることになります(最判昭和39年5月12日)。

したがって、裁判手続上は、本件の抵当権設定契約書にあなたの印鑑が押されていれば、結局のところ、あなたの意思に基づいて抵当権設定契約を締結したことが推定されてしまうことになります。ただし、成立の推定ですから抵当権設定の内容が真実であるかどうかはまた別な問題となります。

民事訴訟において、権利関係について争いがあり、これを証拠によって確定するのですが、裁判所は、当該証拠(書証といいます。)について、まず成立の真正を確認し(偽造かどうか)、その上でその内容の真実性を検討するという2段構えの証拠調べを行います。成立の真正が立証できなければ、内容の真偽は確認することなく証拠として採用されません。これは、訴訟の迅速化と2重の証拠調べにより証拠の真正を高め公正、公平な裁判を実現するために行われます。裁判所に行くと相手方提出書証の認否をまず裁判官から聞かれますが、これは成立の真正の意見を事情を良く知っていると思われる当事者である本人、代理人に確認しているのです。

息子さんは、おそらく相手方男性にあなたの実印の印鑑証明書を交付しているでしょうから、抵当権設定契約書上の印影があなたの印章によるものであることの証明は容易と考えられます。そのため、あなたとしては、上記「特段の事情」として、あなたの印鑑が無断で持ち出されて使用されたことを、契約書上の筆跡の相違の指摘、実印の保管状況についての客観的な資料、息子さんの陳述書等証拠資料を駆使して立証し、最終的に民事訴訟法228条4項の推定を働かせないようにする必要があるといえます。

(3) 表見代理の成立について

あなたが抵当権設定契約について了解していなかったとしても、過去に息子さんに対して、委任状を発行していたり、実印を預けていたり、印鑑証明書を渡していたような場合には、民法109条の表見代理が成立して、抵当権設定契約が有効となる可能性があります。但し相手方が息子さんに代理権が無い事を知っているか、又は過失により知らなかった場合には、あなたはこの責任を免れることができます(民法109条但し書き)。

3 抵当権の実行を阻止するための手続

(1) 執行異議の申し立て

問題は、抵当権設定契約の不成立をいかなる手続きによって主張していくかですが、裁判所で競売開始決定がされた後であれば(競売開始決定は所有者であるあなたに郵便で通知されることになっていますから決定があれば知ることができますし、また、不動産登記にも記載されますから登記事項証明書を確認すれば開始決定があったか否かは知ることができます)「執行異議」と呼ばれる手続きの申立てが必要となります。

担保不動産競売の場合、通常の強制執行手続き(確定判決や公正証書等の債務名義が必要)とは異なり、抵当権設定契約の不成立により抵当権が存在しないといった実体法上の瑕疵を理由とする異議申立てが認められています(民事執行法182条、11条、10条 これに対し、債務名義による強制執行の場合は、「請求異議」という訴訟により債務名義にかかる権利について争うことになります。)。

民事執行法上、執行機関(執行裁判所、執行官)の違法な執行処分(裁判)については、救済手段として執行異議と執行抗告の2つの不服申し立てが用意されています。執行異議は、執行機関(執行裁判所、執行官)の執行処分に対する原則的不服申立て方法です(法11条)。執行抗告は執行裁判所(執行官は含まれません)の違法な処分(裁判)に対して要件が限定され特に法が認めた場合(執行の関係者に影響が大きい執行処分 法10条8項、74条1項等)に限られます(法10条)。

執行手続きは、すでに受訴裁判所で確定された権利関係を公正、公平、迅速に実現するものですから、執行異議で主張できるのは、執行処分の手続的瑕疵に限定されるのが原則です。

しかし、抵当権の執行処分については、実体的理由を持ち出して争うことが認められています(法182条、被担保債権が弁済された、抵当権設定が不成立、他に191条、動産担保権。)。抵当権の設定は、単なる当事者の合意による申請に基づき登記官の形式的審査権より登記されますので、確定判決等と異なり公的に権利確定がされていませんから債務者側の執行手続き上簡易な救済方法として執行異議を認めています。

ただ、この執行異議は、対審手続(憲法82条)をとらずに(民執4条任意的口頭弁論、民執規則8条、書面主義)、簡易な証拠調べに基づき判断し、担保権の執行を停止する効果を有するだけですから(民執11条2項、10条6項で執行の一時停止もできるが、同11条2項、10条9項で原則不服申し立てができない。例外は同12条)、実態上の登記抹消請求権の存否までは効力が及びません。

従って、登記上の抵当権抹消を求めるには、抵当権抹消訴訟を提起して確定判決を取得する必要があります。また、本訴提起前の保全処分である仮処分も他の権利と同様に認められます。

具体的には、抵当権設定契約書を偽造した当の息子さんに偽造の経緯等を陳述書等の形で書面化してもらうとともに、裁判所の審尋の際に同様の旨陳述してもらい、抵当権設定契約の成否について裁判所の判断を仰ぐことになります(民事執行法5条、20条、民事訴訟法87条2項)。その結果、裁判所が執行異議に理由があると判断した場合、競売開始決定を取り消す決定がなされ、執行手続は終了することになります。

(2) 執行停止の仮処分の必要性

もっとも、執行異議の申立てをしただけでは抵当権実行の手続きは停止しません(執行異議の裁判は進行しますが、抵当権設定が無効と判断されるまでは抵当権は有効であるとされ、競売の手続きも進むため執行異議の結論が出る前に競売が終了してしまうことも考えられます)。

これを停止させるためには、抵当権実行禁止の仮処分(抵当権の存否に争いがある場合に抵当権設定者に生じる著しい損害や急迫の危険を避けるために暫定的な法律上の地位を定めるための民事保全法上の手続きです。)と呼ばれる手続きの申し立てを行う必要があります(民事執行法183条1項7号、民事保全法23条2項)。

相手方男性からあなたの所有している土地に設定した抵当権を実行する旨の内容証明が送付されていることからすれば、抵当権実行前の段階であったとしても実行手続き開始のおそれが大きいといえ、裁判所に保全の必要性が認められやすいと思われます。

(3) 登記抹消の請求という本訴の必要性

また、執行異議の申し立てが認められ競売開始決定が取り消されたとしても、抵当権設定登記は抹消されるわけではありませんから、別途抵当権設定登記の抹消登記請求訴訟を提起する必要があります。

いずれにしても、これらの手続きは相当に専門的であり、本人の力だけでは如何ともしがたいことが多いと思われます。また、上記の回答はあくまで一般論であり、具体的なご事情を伺ったうえで法的手段を検討する必要があります。上記のとおり、あなたは相手方男性からいつ抵当権を実行されてもおかしくない状況にあるといえ、緊急性も高いといえますので、早急に弁護士にご相談されることを強くお勧めいたします。

4 抵当権設定登記をした司法書士に対する損害賠償請求

抵当権を設定する為に必要な書類を息子さんが用意したとしても、これを実際に登記所に登記申請するのは通常は資格者である司法書士や弁護士が行うことになります。この際、これらの資格者は、抵当権設定者の意思確認を確実に行うべき職務上の義務を負担していることになります。親子間の代理であっても、司法書士はあなたに直接面会したり、電話連絡の上で本人限定受取郵便を用いて書面による意思確認をすることが必要です。

あなたが抵当権設定に気付かなかったということであれば、司法書士がこれらの確認行為を過失により怠ったということになりますので、万一、競売手続により不動産の所有権を失った場合でも、損害額について、登記申請を担当した司法書士に損害賠償請求する手段が考えられます。あなたと司法書士の間には契約関係がありませんので、請求する根拠条文は、民法415条の債務不履行責任ではなく、民法709条の一般不法行為になります。

5 私文書偽造罪、詐欺罪について補足説明

念のため、息子さんの刑事責任についても補足説明致します。息子さんは、権限無く抵当権設定登記に必要な書類を相手方に担保として提供し、金銭の貸付を受けた(500万円を受領した)のですから、刑法246条詐欺罪が成立する可能性があります。貸付をした相手方から見れば、抵当権設定契約が無効であれば、つまり、担保が無いのであれば500万円の貸付は行わなかったのであり、欺罔行為により財物の交付があったという主張をすることになります。あなたが抵当権設定契約の無効主張を行うと、相手方が、息子さんを詐欺罪の犯人として刑事告訴する可能性があります。

また、抵当権設定契約書や登記申請の委任状に記載された、あなた名義の署名捺印について、あなたが、「署名捺印したこともないし、了解したこともない」という主張を強くし続けた場合は、相手方は、刑法159条私文書偽造罪で息子さんのことを刑事告発する可能性があります。行使の目的で他人の印章もしくは署名を使用して、権利・義務もしくは事実証明に関する文書を偽造した、という構成要件に該当することになるからです。文書偽造罪と詐欺罪は手段と結果の関係がありますから、牽連犯(刑法54条)として重い方の文書偽造罪の科刑により処断されることになります。

本稿で述べた民事上の主張や手続は、これらの刑事責任との関係も考えて主張していく必要があるでしょう。一度お近くの法律事務所にご相談なさると良いでしょう。

以上

関連事例集

  • その他の事例集は下記のサイト内検索で調べることができます。

Yahoo! JAPAN

参照条文

民法

(抵当権の内容)
第三百六十九条 抵当権者は、債務者又は第三者が占有を移転しないで債務の担保に供した不動産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。

(消費貸借)
第五百八十七条 消費貸借は、当事者の一方が種類、品質及び数量の同じ物をもって返還をすることを約して相手方から金銭その他の物を受け取ることによって、その効力を生ずる。

民事訴訟法

(口頭弁論の必要性)
第八十七条 当事者は、訴訟について、裁判所において口頭弁論をしなければならない。ただし、決定で完結すべき事件については、裁判所が、口頭弁論をすべきか否かを定める。
2 前項ただし書の規定により口頭弁論をしない場合には、裁判所は、当事者を審尋することができる。
3 前二項の規定は、特別の定めがある場合には、適用しない。

(文書の成立)
第二百二十八条 文書は、その成立が真正であることを証明しなければならない。
4 私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する。

民事執行法

(任意的口頭弁論)
第四条 執行裁判所のする裁判は、口頭弁論を経ないですることができる。

(審尋)
第五条 執行裁判所は、執行処分をするに際し、必要があると認めるときは、利害関係を有する者その他参考人を審尋することができる。

(執行抗告)
第十条 民事執行の手続に関する裁判に対しては、特別の定めがある場合に限り、執行抗告をすることができる。
2 執行抗告は、裁判の告知を受けた日から一週間の不変期間内に、抗告状を原裁判所に提出してしなければならない。
3 抗告状に執行抗告の理由の記載がないときは、抗告人は、抗告状を提出した日から一週間以内に、執行抗告の理由書を原裁判所に提出しなければならない。
4 執行抗告の理由は、最高裁判所規則で定めるところにより記載しなければならない。
5 次の各号に該当するときは、原裁判所は、執行抗告を却下しなければならない。
一 抗告人が第三項の規定による執行抗告の理由書の提出をしなかつたとき。
二 執行抗告の理由の記載が明らかに前項の規定に違反しているとき。
三 執行抗告が不適法であつてその不備を補正することができないことが明らかであるとき。
四 執行抗告が民事執行の手続を不当に遅延させることを目的としてされたものであるとき。
6 抗告裁判所は、執行抗告についての裁判が効力を生ずるまでの間、担保を立てさせ、若しくは立てさせないで原裁判の執行の停止若しくは民事執行の手続の全部若しくは一部の停止を命じ、又は担保を立てさせてこれらの続行を命ずることができる。事件の記録が原裁判所に存する間は、原裁判所も、これらの処分を命ずることができる。
7 抗告裁判所は、抗告状又は執行抗告の理由書に記載された理由に限り、調査する。ただし、原裁判に影響を及ぼすべき法令の違反又は事実の誤認の有無については、職権で調査することができる。
8 第五項の規定による決定に対しては、執行抗告をすることができる。
9 第六項の規定による決定に対しては、不服を申し立てることができない。
10 民事訴訟法(平成八年法律第百九号)第三百四十九条の規定は、執行抗告をすることができる裁判が確定した場合について準用する。

(執行異議)
第十一条 執行裁判所の執行処分で執行抗告をすることができないものに対しては、執行裁判所に執行異議を申し立てることができる。執行官の執行処分及びその遅怠に対しても、同様とする。
2 前条第六項前段及び第九項の規定は、前項の規定による申立てがあつた場合について準用する。

(民事訴訟法の準用)
第二十条 特別の定めがある場合を除き、民事執行の手続に関しては、民事訴訟法の規定を準用する。

(開始決定に対する執行抗告等)
第百八十二条 不動産担保権の実行の開始決定に対する執行抗告又は執行異議の申立てにおいては、債務者又は不動産の所有者(不動産とみなされるものにあつては、その権利者。以下同じ。)は、担保権の不存在又は消滅を理由とすることができる。

(不動産担保権の実行の手続の停止)
第百八十三条 不動産担保権の実行の手続は、次に掲げる文書の提出があつたときは、停止しなければならない。
一 担保権のないことを証する確定判決(確定判決と同一の効力を有するものを含む。次号において同じ。)の謄本
二 第百八十一条第一項第一号に掲げる裁判若しくはこれと同一の効力を有するものを取り消し、若しくはその効力がないことを宣言し、又は同項第三号に掲げる登記を抹消すべき旨を命ずる確定判決の謄本
三 担保権の実行をしない旨、その実行の申立てを取り下げる旨又は債権者が担保権によつて担保される債権の弁済を受け、若しくはその債権の弁済の猶予をした旨を記載した裁判上の和解の調書その他の公文書の謄本
四 担保権の登記の抹消に関する登記事項証明書
五 不動産担保権の実行の手続の停止及び執行処分の取消しを命ずる旨を記載した裁判の謄本
六 不動産担保権の実行の手続の一時の停止を命ずる旨を記載した裁判の謄本
七 担保権の実行を一時禁止する裁判の謄本

(執行異議の申立ての方式)
第八条
1 執行異議の申立ては、期日においてする場合を除き、書面でしなければならない。
2 執行異議の申立てをするときは、異議の理由を明らかにしなければならない。

民事保全法

(仮処分命令の必要性等)
第二十三条
2 仮の地位を定める仮処分命令は、争いがある権利関係について債権者に生ずる著しい損害又は急迫の危険を避けるためこれを必要とするときに発することができる。

参考判例

最高裁第三小法廷昭和39年5月12日判決

民訴三二六条に「本人又ハ其ノ代理人ノ署名又ハ捺印アルトキ」というのは、該署名または捺印が、本人またはその代理人の意思に基づいて、真正に成立したときの謂であるが、文書中の印影が本人または代理人の印章によつて顕出された事実が確定された場合には、反証がない限り、該印影は本人または代理人の意思に基づいて成立したものと推定するのが相当であり、右推定がなされる結果、当該文書は、民訴三二六条にいう「本人又ハ其ノ代理人ノ(中略)捺印アルトキ」の要件を充たし、その全体が真正に成立したものと推定されることとなるのである。

原判決が、甲第一号証の一(保証委託契約書)、甲第三号証の一(委任状)、同二(調書)、甲第四号証の一(手形割引約定書)、同二(約束手形)について、右各証中上告人名下の印影が同人の印をもつて顕出されたことは当事者間に争いがないので、右各証は民訴三二六条により真正なものと推定されると判示したのは、右各証中上告人名下の印影が同人の印章によつて顕出された以上、該印影は上告人の意思に基づいて、真正に成立したものと推定することができ、したがつて、民訴三二六条により文書全体が真正に成立したものと推定されるとの趣旨に出でたものと解せられるのであり、右判断は、前説示に徴し、正当として是認できる。

(注)本判決中の民訴三二六条は、現行民事訴訟法の第228条4項に相当する規定です。