新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.1116、2011/6/14 14:29

【商事・保険会社の相互会社から株式会社への組織変更・平成8年施行新保険業法】

質問:私の加入しているD保険会社が,今度,相互会社から株式会社に変わるとのお知らせが届いたのですが,一体どういうことなのでしょう。どのような変化があるのでしょうか。私に対する影響はあるのでしょうか。

回答:
1.今回の通知は,D保険会社が,相互会社という法人形態から株式会社という法人形態に組織変更したことを知らせるものです。会社の法人の性格に変更があり,それに伴って関係者間の法律関係も変わってきます。ただ,保険契約の内容については変わりありません。
2.組織変更によって変わった点は,大まかにいえば,保険加入者達が相互に扶助し合うという枠組み(相互会社)から,株式会社という営利目的団体が顧客として加入者と保険契約を締結するという枠組みになったという点です。保険会社自体についていえば,株式会社化で資本調達手段の拡大,経営の自由度拡大,経営の透明性や経営監視機能の向上といった面で強化される反面,買収リスク,株主対策,保険加入者間の公平確保調整,利益追求要請に起因する弊害等の問題を抱えることになります。
3.関係者間の法律関係が変わってくるとはいっても,保険の加入者としては保険契約の内容が重要ですから,実質的な面から見れば加入者への影響はそれほど大きくはありません。保険加入者は相互会社においては保険会社の社員(従業員という意味ではなく,会社の組織の一員)であったが,株式会社においてはその必要はなくなる(保険会社の株式を引き受けると株主として会社の構成員になります),組織変更の際に株式割当てや金銭分配を受けるといった影響がある程度です。ただ,経営の透明性の向上,保険料割高への不安,その他保険会社の経営・運営スタイルの変更に伴う間接的な影響はあるでしょう。

解説:
(相互会社とは何か)
1.相互会社とは,別名,相互保険会社といい保険業を行うことを目的として保険業法に基づき設立された会社であり,契約加入した保険契約者自身を会社の社員(株式会社の株主とは異なり,社員が数百万人になる場合もあり,社員代表者として総代を選びます。)としている営利を目的にしていない中間的社団法人です(保険業法2条5項)。現存する相互会社は,日本,住友,明治安田等の5つの大手生命保険会社です(損保はありません。)。会社とは本来株式会社のように営利を目的とする社団法人ですが,相互会社は会社という名称がついているのに営利を目的にしていない会社なので本来,株式会社と公益社団法人の中間的法人と言われています。商法上の会社ではありません。保険業は,この非営利の相互会社と営利を目的とする株式会社しか行うことはできません(保険業法5条の2)。保険業の重要性から資本金,又は基金(社員が会社に保険契約上支払った保険料が基金となります。)の額が10億円以上必要であり(保険業法6条),生命保険,損害保険に分かれ免許制となっています。営利を目的としていないという意味は,保険業を通して最終的に会社の利益追求,確保を目的としていないということです。従って,基本的に株式会社のように利益剰余金を認めず全て社員に分配し,損失が生じると社員に支払う予定の保険金が減額されることもあります。

  どうして株式会社の他に相互会社があるのでしょうか。それは保険業の性質に由来します。保険とは,突然の事故により生じる巨額な財産的損失による経済的困窮を回避するために事故発生の危険性の状況下にある者が集まり,統計的に算出された金額(保険料)を負担することにより,事故発生による損失を填補する金員(保険金)を受けとるというものです。従って,保険を業として行っても,保険金給付の他に別個の利益追求を求めない形態を認めています。保険は,沿革上14世紀地中海の海上保険に始まり,性質上一般人及び営業を行う者でも社会生活及び経済活動を永続的,円滑に行うため損失回避の手段として必要不可欠な社会制度として位置づけることができます(リスクヘッジのため適正な計算による保険料の負担による保険金の受け取りは偶然の確率で受け取るいわゆる賭博等とは本質的に異なります。)。リスク回避の担保となる資金,基金は巨大化しますのでたとえ営利を目的にしていなくても公正,公平な会社運営,契約内容等が社会的に要請されることになります。これは営利を目的として行う株式会社も同様です。

  従って,保険業法は行政官庁の監督を認め(保険業法3条乃至5条),商法も規律を定めています。相互会社は,営利を目的としていないので,利益剰余金確保等の制度がなく,資金調達も容易でないことから経営基盤が弱く経済危機等の影響による経営の悪化,及び保険金額低下等保険の目的を達成することができない懸念がありました。又,社員は会社所有者である株主と異なり,会社側が選んだ総代を通し経営に間接的に関与するので公正,公平な経営を期待しにくい面があります。その対策として従来,相互会社から営利を目的としている株式会社への組織変更は認められませんでしたが(逆は可能),これを可能にしたのが平成8年(1996年)施行の保険業法改正です。企業経営体質を強化し,公正な企業(経営)統治(コーポレートガバナンス)を行おうとするものです。平成8年以後,三井生命等数社が株式会社に組織変更しています。その原因になったのは,20世紀末の通貨危機(貨幣価値の下落により経済が閉塞混乱しその影響で相互会社の経営が問題となった。)であるといわれています。具体的には,アジアの通貨危機,ロシアの通貨危機,欧州通貨危機等です。アジアの通貨危機は,1997年7月タイ,バーツの通貨危機が発端となりアジア全体の経済が停滞,混乱し,バブル崩壊から回復基調にあった輸出国の日本が影響を受けて経済危機が発生,債権回収が滞り巨大な不良債権を抱えた日本長期信用銀行(長銀,現在新生銀行),日債銀等が倒産,国有化された事件です。

1.相互会社から株式会社への組織変更
  保険会社は,株式会社または相互会社である必要があります(保険業法5条の2)。そして,一度とった形態を,他方の形態に変更することもできます(同法68条以下)。相互会社から株式会社への組織変更については,保険業法の85条から96条の16に規定されています。手続としては,組織変更計画を作成して社員総会(あるいは総代会)の決議で承認を受け(同法86条1項),内閣総理大臣の認可を受ける必要があります(同法96条の10第1項)。本件の通知は,この組織変更がなされたということを伝えるものです。それでは,組織形態が変更することによって,どのような変化があるのでしょうか。

2.相互会社と株式会社の比較
 (1)法人構成・保険加入者の地位・運営関係
  相互会社形態の保険会社と株式会社形態の保険会社(営利保険)は,どちらも法人ですが,その法律的な構成が異なります。相互会社は,保険業特有の法人形態(保険業法2条5項・18条以下参照)で,保険に加入したい者が集まって各々社員となり,自分達のために活動していくものです。他方,株式会社形態の保険会社は,会社の社員(株主)が保険会社を経営・運営し,保険加入者は,会社の顧客として保険に加入するというものです。そのため,相互会社形態では,保険加入者自身が社員であり,最高機関たる社員総会(または総代会,契約者が数百万人にもなるので総代という代表を選びます。)で意思決定がなされます(保険業法37条以下)。他方で,株式会社形態の保険会社では,保険加入者は社員ではなく,経営・運営にも一切関与しません。ただ,現実には社員総会の代わりに総代会が設置されており,社員が直接保険会社の意思決定に関与することはほとんどないようで,この点では,両者に実質的な相違はほとんどありません。

 (2)資本・資金関係
  資本・資金の関係について,まず,保険加入者の出資の面についてふれます。相互会社においては,保険加入者の拠出は保険料のみであって,別途出資金の拠出は不要です(保険業法31条)。当初の保険料の支払いを超えて保険料を追加支払いする義務もありません。他方,株式会社形態の保険会社では,保険加入者は顧客であるため,その拠出は当然契約上の保険料のみに限られます。この点では,両者に実質的な違いはありません。
次に,保険加入者への余剰金銭の支払いについてふれます。保険加入者への余剰金銭の支払いについては,大まかに言って,相互会社においては過大に拠出した分を事後的に精算するという形をとり,株式会社形態の保険会社においては利益分配の形をとります。ただ,これはあくまで法律構成上の相違点であって,経済的実態としての相違は小さいものです。
  保険会社全体としての資本・資金という観点から見ると,加入者がお互いに保険料を拠出し合って死亡等のリスクに備えるという相互会社の基本思想からは,資金不足の際は保険料の追加徴収ないし保険金の削減が必要となり,逆に余剰保険料はすべて加入者に分配することとなるはずです。しかし,相互会社においては,上述のとおり,保険加入者には当初の保険料の支払いを超えて保険料を追加支払いする義務はありませんし,平成8年4月施行の保険業法改正では,保険金削減条項が削除される一方で,内部留保可能な剰余金の割合が明示されたため,上に述べた面から見ても,より株式会社に近づきました。そのため,この点でも,両法人の実質的な相違は大きくはありません。

 (3)なお,相互会社と株式会社との相違点というわけではありませんが,相互会社から株式会社に組織変更することに伴い,社員への株式の割り当てや金銭の分配がなされます(保険業法90条)。この点は,組織形態の変更に伴って保険加入者に影響のあるところです。

 (4)小括
  両法人の相違点は,大要,以上のとおりです。保険加入者個人に直接的に関係する変化としては,法律上保険会社の社員ではなくなるなど法律構成レベルで何点かの変更があること,組織変更に伴う株式の割当てや金銭の分配があること程度で,実質的なところではあまり変化はありません。ただし,組織変更によって保険会社自体の経営・運営スタイルが変化するため,保険加入者個人も影響を受けると予想されます。そこで,以下,株式会社に組織変更した場合に保険会社自体にどのような変化があるのかについてふれます。

3.株式会社化のメリット・デメリット
 (1)株式会社化のメリット
  相互会社形態の保険会社が組織変更をして株式会社化するメリットとしては,まず,資金調達手段が拡大するという点が挙げられます。すなわち,募集株式発行(会社法199条以下)などによって,株式市場から柔軟性・機動性のある資金調達ができるようになる,異なる分野の金融機関などとの資本提携も容易になる,持株会社を中心とする様々な事業の複合化が可能になるなどの点で,資金調達の多様化を図ることができます。
  次に,経営の自由度が拡大するという点が挙げられます。すなわち,持株会社や株式交換(会社法772条以下)などを利用することで企業合併・企業買収が容易になり,また,事業展開においても,相互会社の枠を超えたリスクテイクが可能になるとされます。グループについて持株会社を中心とした体制に移行すれば,グループ全体の経営の効率化も期待できます。
  また,ガバナンス(企業統治)の強化という点もあげられます。すなわち,相互会社では,現実には社員総会の役割を総代会(保険業法42条以下)が担っていますが,その総代を実質的に決めるのが経営者であること,また,総代が社員に対して責任を負わないことによる弊害が指摘されており,株式会社化による経営の透明性や経営監視機能の向上にも期待がよせられます。

 (2)株式会社化のデメリット
  株式会社化するデメリットとしては,まず,買収されるリスクが生じる点が挙げられます。株式の譲渡が原則自由とされること(会社法127条)の帰結です。株式会社という形態上,諸々の株主対策が必要となるという点もあります。
  次に,保険加入者間の公平確保のための調整が難しいという点が挙げられます。すなわち,加入時期や特約の有無等で株式の割当てが変わってきてしまう,現在の契約者に割り当てる株式には過去の契約者の内部留保の価値も反映されてしまうなどの点に対して,どのようにして公平確保を図っていくかという困難な問題が生じることとなります。
  また,これは保険加入者個人の利害関係に関係する点でもありますが,保険加入者側から見て,相互会社という相互扶助団体から株式会社という営利目的団体となった保険会社が,会社のための利益追求に走り,保険料が割高になったり保険金が割安になったりするという不安が生じるという点も挙げられるでしょう。会社の利益追求という点に関連して,利益追求の要請と安定経営(顧客と長期的関係を続けていくことを前提とする経営)の要請とが相反するといった懸念もあるとされるところです。

4.結語
  以上見てきたとおり,保険加入者個人に直接関係する変化は,法律上保険会社の社員ではなくなる,組織変更の際に株式割当てや金銭分配を受けるといった程度で,実質的な面から見れば,変化する点はそれほど多くはありません。ただ,経営の透明性の向上は関係者の立場として望ましいことでしょうし,他方で保険料割高への不安も出てくるでしょうし,その他保険会社の経営・運営スタイルの変更に伴う影響は出てくるでしょう。

≪参照条文≫

保険業法
(定義)
第二条 5 この法律において「相互会社」とは,保険業を行うことを目的として,この法律に基づき設立された保険契約者をその社員とする社団をいう。
(機関)
第五条の二 保険会社は,株式会社又は相互会社であって次に掲げる機関を置くものでなければならない。
一 取締役会
二 監査役会又は委員会
三 会計監査人
(社員の責任)
第三十一条 社員の責任は,保険料を限度とする。
(総代会の設置及び総代の任期等)
第四十二条 相互会社は,定款で定めるところにより,社員総会に代わるべき機関として,社員のうちから選出された総代により構成される機関(以下「総代会」という。)を設けることができる。
2 前項の定款には,総代の定数,任期,選出の方法その他の内閣府令で定める事項を定めなければならない。
3 総代の任期は,四年を超えることはできない。
(組織変更)
第八十五条 保険会社である相互会社は,その組織を変更して保険会社である株式会社となることができる。
2 少額短期保険業者である相互会社は,その組織を変更して少額短期保険業者である株式会社となることができる。
(組織変更計画の承認)
第八十六条 相互会社は,前条の組織変更(以下この款において「組織変更」という。)をするには,組織変更計画を作成して,社員総会(総代会を設けているときは,総代会。以下この款において同じ。)の決議により,その承認を受けなければならない。
2 前項の場合には,第六十二条第二項に定める決議によらなければならない。
3 相互会社は,第一項の決議をする場合には,第四十一条第一項又は第四十九条第一項において準用する会社法第二百九十九条第一項 の通知において,組織変更計画の要領を示さなければならない。
4 相互会社は,組織変更計画において,次に掲げる事項を定めなければならない。
一 組織変更後の株式会社(以下この款において「組織変更後株式会社」という。)の目的,商号,本店の所在地及び発行可能株式総数
二 前号に掲げるもののほか,組織変更後株式会社の定款で定める事項
三 組織変更後株式会社の取締役の氏名
四 次に掲げる場合の区分に応じ,次に定める事項
イ 組織変更後株式会社が会計参与設置会社である場合 組織変更後株式会社の会計参与の氏名又は名称
ロ 組織変更後株式会社が監査役設置会社である場合 組織変更後株式会社の監査役の氏名
ハ 組織変更後株式会社が会計監査人設置会社である場合 組織変更後株式会社の会計監査人の氏名又は名称
五 組織変更をする相互会社の社員が組織変更に際して取得する組織変更後株式会社の株式の数(組織変更後株式会社が種類株式発行会社である場合にあっては,株式の種類及び種類ごとの数)又はその数の算定方法並びに組織変更後株式会社の資本金及び準備金に関する事項
六 組織変更をする相互会社の社員に対する前号の株式の割当てに関する事項
七 組織変更をする相互会社の社員に対して金銭を交付するときは,その額又はその算定方法
八 組織変更をする相互会社の社員に対する前号の金銭の割当てに関する事項
九 組織変更をする相互会社の社員に対する株式の割当てにより生ずる一株に満たない端数に係る部分につき新たに発行する株式の売却の方法その他売却に関し内閣府令で定める事項
十 前号の株式を買い受けるときは,買受けの方法その他当該買受けに関し内閣府令で定める事項
十一 組織変更後における保険契約者の権利に関する事項
十二 組織変更がその効力を生ずる日(以下この款において「効力発生日」という。)その他内閣府令で定める事項
5 相互会社は,前項第二号の定款で定める事項として,組織変更後株式会社における第百十四条第一項(第二百七十二条の十八において準用する場合を含む。)に規定する契約者配当に係る方針を定めなければならない。
(社員への株式又は金銭の割当て)
第九十条 組織変更をする相互会社の社員は,組織変更計画の定めるところにより,組織変更後株式会社の株式又は金銭の割当てを受けるものとする。
2 前項の株式又は金銭の割当ては,社員の寄与分(社員の支払った保険料及び当該保険料として収受した金銭を運用することによって得られた収益のうち,保険金,返戻金その他の給付金の支払,事業費の支出その他の支出に充てられていないものから当該社員に対する保険契約上の債務を履行するために確保すべき資産の額を控除した残額に相当するものとして内閣府令で定めるところにより計算した金額をいう。)に応じて,しなければならない。
3 会社法第二百三十四条第一項 (各号を除く。)及び第二項 から第五項 まで(一に満たない端数の処理),第八百六十八条第一項(非訟事件の管轄),第八百六十九条(疎明),第八百七十一条(理由の付記),第八百七十四条(第四号に係る部分に限る。)(不服申立ての制限),第八百七十五条(非訟事件手続法 の規定の適用除外)並びに第八百七十六条(最高裁判所規則)の規定は,前二項の規定により組織変更をする相互会社の社員に株式を割り当てる場合について準用する。この場合において,必要な技術的読替えは,政令で定める。
4 前三項に定めるもののほか,組織変更の場合における株式又は金銭の割当てに関し必要な事項は,政令で定める。
(組織変更の認可)
第九十六条の十 組織変更は,内閣総理大臣の認可を受けなければ,その効力を生じない。
2 内閣総理大臣は,前項の認可の申請があった場合には,次に掲げる基準に適合するかどうかを審査しなければならない。
一 組織変更後株式会社がその業務を健全かつ効率的に遂行するに足りる財産的基礎を有すること。
二 組織変更により,保険契約者の有する権利が害されるおそれがないこと。
三 第九十条又は第九十六条の六(第九十六条の八第二項において準用する場合を含む。)の規定による株式又は金銭の割当てが適正に行われていること。
四 前三号に掲げるもののほか,組織変更により,その業務の健全な運営に支障を生ずるおそれがないこと。

会社法
(株式の譲渡)
第百二十七条 株主は,その有する株式を譲渡することができる。
(株式移転計画の作成)
第七百七十二条 一又は二以上の株式会社は,株式移転をすることができる。この場合においては,株式移転計画を作成しなければならない。
2 二以上の株式会社が共同して株式移転をする場合には,当該二以上の株式会社は,共同して株式移転計画を作成しなければならない。
(株式移転計画)
第七百七十三条 一又は二以上の株式会社が株式移転をする場合には,株式移転計画において,次に掲げる事項を定めなければならない。
一 株式移転により設立する株式会社(以下この編において「株式移転設立完全親会社」という。)の目的,商号,本店の所在地及び発行可能株式総数
二 前号に掲げるもののほか,株式移転設立完全親会社の定款で定める事項
三 株式移転設立完全親会社の設立時取締役の氏名
四 次のイからハまでに掲げる場合の区分に応じ,当該イからハまでに定める事項
イ 株式移転設立完全親会社が会計参与設置会社である場合 株式移転設立完全親会社の設立時会計参与の氏名又は名称
ロ 株式移転設立完全親会社が監査役設置会社(監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある株式会社を含む。)である場合 株式移転設立完全親会社の設立時監査役の氏名
ハ 株式移転設立完全親会社が会計監査人設置会社である場合 株式移転設立完全親会社の設立時会計監査人の氏名又は名称
五 株式移転設立完全親会社が株式移転に際して株式移転をする株式会社(以下この編において「株式移転完全子会社」という。)の株主に対して交付するその株式に代わる当該株式移転設立完全親会社の株式の数(種類株式発行会社にあっては,株式の種類及び種類ごとの数)又はその数の算定方法並びに当該株式移転設立完全親会社の資本金及び準備金の額に関する事項
六 株式移転完全子会社の株主に対する前号の株式の割当てに関する事項
七 株式移転設立完全親会社が株式移転に際して株式移転完全子会社の株主に対してその株式に代わる当該株式移転設立完全親会社の社債等を交付するときは,当該社債等についての次に掲げる事項
イ 当該社債等が株式移転設立完全親会社の社債(新株予約権付社債についてのものを除く。)であるときは,当該社債の種類及び種類ごとの各社債の金額の合計額又はその算定方法
ロ 当該社債等が株式移転設立完全親会社の新株予約権(新株予約権付社債に付されたものを除く。)であるときは,当該新株予約権の内容及び数又はその算定方法
ハ 当該社債等が株式移転設立完全親会社の新株予約権付社債であるときは,当該新株予約権付社債についてのイに規定する事項及び当該新株予約権付社債に付された新株予約権についてのロに規定する事項
八 前号に規定する場合には,株式移転完全子会社の株主に対する同号の社債等の割当てに関する事項
九 株式移転設立完全親会社が株式移転に際して株式移転完全子会社の新株予約権の新株予約権者に対して当該新株予約権に代わる当該株式移転設立完全親会社の新株予約権を交付するときは,当該新株予約権についての次に掲げる事項
イ 当該株式移転設立完全親会社の新株予約権の交付を受ける株式移転完全子会社の新株予約権の新株予約権者の有する新株予約権(以下この編において「株式移転計画新株予約権」という。)の内容
ロ 株式移転計画新株予約権の新株予約権者に対して交付する株式移転設立完全親会社の新株予約権の内容及び数又はその算定方法
ハ 株式移転計画新株予約権が新株予約権付社債に付された新株予約権であるときは,株式移転設立完全親会社が当該新株予約権付社債についての社債に係る債務を承継する旨並びにその承継に係る社債の種類及び種類ごとの各社債の金額の合計額又はその算定方法
十 前号に規定する場合には,株式移転計画新株予約権の新株予約権者に対する同号の株式移転設立完全親会社の新株予約権の割当てに関する事項
2 前項に規定する場合において,株式移転完全子会社が種類株式発行会社であるときは,株式移転完全子会社は,その発行する種類の株式の内容に応じ,同項第六号に掲げる事項として次に掲げる事項を定めることができる。
一 ある種類の株式の株主に対して株式移転設立完全親会社の株式の割当てをしないこととするときは,その旨及び当該株式の種類
二 前号に掲げる事項のほか,株式移転設立完全親会社の株式の割当てについて株式の種類ごとに異なる取扱いを行うこととするときは,その旨及び当該異なる取扱いの内容
3 第一項に規定する場合には,同項第六号に掲げる事項についての定めは,株式移転完全子会社の株主(前項第一号の種類の株式の株主を除く。)の有する株式の数(前項第二号に掲げる事項についての定めがある場合にあっては,各種類の株式の数)に応じて株式移転設立完全親会社の株式を交付することを内容とするものでなければならない。
4 前二項の規定は,第一項第八号に掲げる事項について準用する。この場合において,前二項中「株式移転設立完全親会社の株式」とあるのは,「株式移転設立完全親会社の社債等」と読み替えるものとする。
(株式移転の効力の発生等)
第七百七十四条 株式移転設立完全親会社は,その成立の日に,株式移転完全子会社の発行済株式の全部を取得する。
2 株式移転完全子会社の株主は,株式移転設立完全親会社の成立の日に,前条第一項第六号に掲げる事項についての定めに従い,同項第五号の株式の株主となる。
3 次の各号に掲げる場合には,株式移転完全子会社の株主は,株式移転設立完全親会社の成立の日に,前条第一項第八号に掲げる事項についての定めに従い,当該各号に定める者となる。
一 前条第一項第七号イに掲げる事項についての定めがある場合 同号イの社債の社債権者
二 前条第一項第七号ロに掲げる事項についての定めがある場合 同号ロの新株予約権の新株予約権者
三 前条第一項第七号ハに掲げる事項についての定めがある場合 同号ハの新株予約権付社債についての社債の社債権者及び当該新株予約権付社債に付された新株予約権の新株予約権者
4 前条第一項第九号に規定する場合には,株式移転設立完全親会社の成立の日に,株式移転計画新株予約権は,消滅し,当該株式移転計画新株予約権の新株予約権者は,同項第十号に掲げる事項についての定めに従い,同項第九号ロの株式移転設立完全親会社の新株予約権の新株予約権者となる。
5 前条第一項第九号ハに規定する場合には,株式移転設立完全親会社は,その成立の日に,同号ハの新株予約権付社債についての社債に係る債務を承継する。

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