新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.1073、2011/1/14 13:06

【知的財産権・工業所有権・商標権・先使用権が認められない場合でも保護される場合があるか】

質問:私は、関西のある町(人口20万人以上)で、20年前から「ガリレオ車両整備」という名で車両の整備、新・中古車販売をしています。地域ではかなり名称が知られており、従業員は60名程度です。支店は、市内、隣町に4店舗あります。先日、東京のある会社から、この名称は数年前に商標登録しているので使わないでほしいという連絡がありました。もう使えないでしょうか。「ガリレオ車両整備」を、「カンサイニューカーガリレオ」又は英語で「KANSAINEW.CARGARIREO」に名称変更して使用できるでしょうか。どうしたらいいでしょうか。インターネットで調べたら九州地方でも同様の名義を使っている業者もいるようで同じ様な通告を受けているという情報もあり困っているようです。

回答:
1.まずは、本当に商標登録がされているかどうか、念のため確認をしてください。インターネットで、特許庁、商標出願、登録情報を検索できます。http://www.ipdl.inpit.go.jp/homepg.ipdl
2.商標登録がされている場合、本件では貴方の商標について商標法32条の先使用権は、要件を満たさず認めらません。しかし、平成3年5月2日の商標法改正により商品だけでなく本件商標のような指定役務に関する商標(車両整備業務は商品ではありませんが、サービスマークといわれるものも保護されます。)も保護されることになったことから、改正法施行(平成4年4月1日施行)があった平成4年以前(正確には施行日から6カ月後である平成4年10月1日以前)に商標使用が立証できれば(会社であれば商業登記簿謄本の記載、個人であれば営業していた申告書等で)、商標法附則(平成3年5月2日法律第65号)第3条1項により救済されることになり、「ガリレオ車両整備」という商標を使用することが可能です。但し、附則の趣旨から前記平成4年10月1日以後に作られた支店での使用は認められないので、当該支店については商標変更の必要があると思います。
3.商標変更の場合、「カンサイニューカーガリレオ」又は英語で「KANSAINEW.CARGARIREO」と名称変更する場合でも、類似商標として、使用は禁止されます。そのため、名称を一新し、非類似商標で営業していくことになります。その際には、本件のようなことが再度起こらないよう、商標登録をされておくのが望ましいでしょう。
4.その他、東京の会社が不正競争行為として商標使用の禁止を申し出てきたというような事情があれば、権利濫用を主張して争うことは考えられます。
5.法律相談事例集キーワード検索:1004番参照。

解説:
(知的財産権と商標権の趣旨)
 まず、知的財産権と商標権の基本的趣旨について一般的説明をしておきます。商標とは、指定商品また指定役務に自ら使用する文字、図形、記号等の標識をいうのですが(商標法2条1項)、商標権とは、登録を受けた商標を排他的、独占的に使用できる権利をいいます(商標法25条、2条5項)。商標権は知的財産権の一つであり、知的財産権とは無体財産権とも言われ、人間の創作活動による創作物に対する権利(特許権、実用新案権、意匠権、著作権、各法律があります。)、営業活動において識別する標識に対する権利である商標権(商標は創作物ではありませんが、営業上の利益、顧客の信頼の面から保護の対象としている点に特色があります。)、その他(半導体集積回路の回路配置権、種苗育成権、各法律制定がされています。)の総称です。又、商標権は、工業所有権でもあり、工業所有権は、産業上の知的財産権をいい、著作権を除いた知的財産権を意味します。
 ただ、工業所有権を国際的に保護しようとするパリ条約(1883年、万国工業所有権保護同盟条約ともいう。)では、国際的保護の必要性から対象を広げ商号、原産地表示、原産地名称及び不正競争防止等に関する保護権をも含む旨規定されています(工業所有権条約1条2号)。無体財産権とは、その名の通り、人間が知的創作活動により得た創作自体を保護するのもので、所有権、債権のように対象を形あるもの(所有権なら物、債権なら行為)だけでなく、発明のように人間が考えた概念そのもの自体を保護しようとするものです。自由主義経済社会の基本は、私的自治の原則と所有権絶対の原則を柱としていますが、所有権の絶対保障は不動産、動産等の有体物を対象としただけでは、複雑化する社会経済、技術、思想芸術等の飛躍的発展、国際化に追いつけませんし、公正な社会秩序を維持し個人の尊厳(憲法13条)を最終的に保障することは困難です。
 そこで、このような無形の創作を法的に保護する必要性から特許法、実用新案法、意匠法、商標法が昭和34年に、著作権法が昭和45年に制定、その後改正され、パリ条約等、国際条約、協定も締結されています。今後も保護の対象となる正当な創作物等の利益が存在すれば形式の如何を問わず保護の対象として議論されることになります。所有権絶対の原則は、権利内容として、対象物を直接(妨害排除の効果)、排他的(両立する第三者の権利の存在を認めない)に支配する権利として現れ強力な権利なので登録等の公示を必要としますが、工業所有権等知的所有権についてもその内容、効果は基本的に同様です。 但し、著作権は、直接営業上の利益という特色がなく創作物自体を保護とするので、無方式で権利が発生します。従って、商標権も排他性(無許可の利用を侵害行為と認定する。商標法37条、38条)、直接支配性(差し止め請求権、商標法36条)を有し公示(登録)が必要となります。さらに、知的財産権は対象が有体物とは異なり、創作物等無形のものですから、第三者の既存の権利がすでに存在する可能性があり、このような利益を保護し調和するのかも重要な問題です。以上の趣旨を踏まえ知的財産法、商標法は解釈されることになります。

1.(商標登録制度)
 商標とは、文字・図形・記号・立体的形状もしくはこれらの結合、またはこれらと色彩との結合であって、@業として商品(商取引の目的となる物、例えば動産をいいます。不動産については商品と考える説もあります。)を生産・証明・譲渡する者がその商品について使用をするもの、またはA業として役務を提供・証明する者がその役務について使用をするものです(商標法2条1項)。すなわち、平たく言えば、商標とは、商取引の際に使用する標識・標章(マーク、ブランド)、しるし(シンボル)のことです。商標は、商品購入やサービス享受を受ける際、その商標に対する信用をもとに、いちいち詳細な調査・吟味を経ることなく、安心して消費者が商品購入等をできる点で、商取引上極めて重要なものです。それゆえ、この商標についての保護が必要となってきます。
 そこで、商標法は、設定登録により商標権が発生することとし(同法18条1項)、商標権者となった者は、他人の妨害を受けずに商標を使えるという専有使用権(同法25条本文)、登録商標が他人によって使用されてしまうことを防ぐ禁止権(同法37条)等を有するものと規定しています(このうち、本件で問題となるのは、商標権者の禁止権です。すなわち、商標権者である東京の会社が、「ガリレオ車両整備」という登録商標につき、ご相談者様による使用を禁止するというものです。)。
 なお、登録の効力発生範囲を登録者の本店所在地域等に限定する規定もないため、登録の効果は日本国内に及びます。したがって、東京の会社が商標登録をしていても、その効果は関西地域にも及ぶことになります。

2.禁止権の及ぶ範囲(商標の類似性の問題)
(1)商標の類似性
 商標は、同一商標であれば専有使用権・禁止権ともに対象となりますが、類似商標についても、禁止権の対象となります(商標法25条本文、同法37条)。ここでいう「商標の類似」とは、取引において、対比されるそれぞれの商標が商品に使用されたとき、その商標を付した商品が出所混同を生ずるほど両商標が相紛らわしいことをいい (最判昭和36年6月27日民集15巻6号1730号,最判昭和43年2月27日民集22巻2号399頁など)、商標の類似は、混同のおそれのある場合であり、商標の非類似は、混同のおそれのない場合であるとされています(最判平成9年3月11日民集51巻3号1055頁など)。商標の類似の概念をこのように解釈する理由は、商標が自他商品の識別標識であり、商標法の目的が商標を保護することにより、商品または役務の出所混同を防止し、その商標の信用を維持することにあるからです(同法1条)。
 そして、商品の出所については、「外観」、「称呼」、「観念(意味)」によって連想・識別されるため、両商品間でこれらのいずれかにおいて相紛らわしいときには、両者は原則として類似であるとされます(東京高判昭和44年9月2日無体集1巻280号)。「称呼」の類似の判断については、言語学上文字商標のアルファベット等の近似の関係を観察して判断します。また、「観念」の類似は、想起される意味内容が知覚的に混同を起こす危険のある場合であり、日本語と、日本国民によく知られた同じ意味の外国語とは、観念の類似となります。

(2) 本件についての検討
 本件においては、まず、「ガリレオ車両整備」という商標については、同一商標として、専有使用権・禁止権の対象となってきます。また、「カンサイニューカーガリレオ」、「KANSAINEW.CARGARIREO」についても、ガリレオという共通部分は称呼において相紛らわしく、また、「車両」と「カー・CAR」とは、日本語と、日本国民によく知られた同じ意味の外国語として、観念において相紛らわしいため、商標が類似であるとされると考えられ、附則の規定により救済されない場合は、禁止権の及ぶ対象となると考えられます。

3.(先願登録主義とその例外)
(1) 原則
 商標法は、先願登録主義を採用しています(同法8条)。すなわち、誰が商標権者となるか、その優劣関係については、登録の有無、登録の先後によって決定するということです。これに対し、商標を実際に使用していた事実に着目して優劣関係を判断しようという、使用主義という概念もあります。しかし、使用主義を採用すると、いつ先使用者が出現し、法律関係がひっくり返るかわからず、営業取引関係上、反復繰り返し使用される状態を考えると法的安定性が害されること、また、事実を認定する上で困難性をともなうこと等の短所があり、他方、先願登録主義をとれば、一律に登録時点を基準とすることで業務上の権利関係を簡明にできること等の長所があるため、商標法は先願登録主義をとっています。商標権は、知的所有権(工業所有権)として、所有権と同様に(準じて)排他性、直接支配性を有し権利としての効力が大きく第三者の利益に対し重要な影響を伴うものですから、当然事前に権利内容を知らしめる必要があり、公示の原則が適用になります。唯、民法の一般原則では、登記等は契約自由の原則から対抗要件として位置付けられますが(民法177条等)商標権では成立要件になります。商標権は、一般社会の取引の中で、反復繰り返し行われる営業上の利益を保護の対象とするので、対抗要件とすると権利関係が複雑になり紛糾する可能性があり、画一的に処理し取引関係の安定を重視して成立要件としています。他の工業所有権も同様です。
 商標登録がなされれば、使用権、禁止権といった、「準物権」ともいわれる排他的・独占的権利が発生します。使用権は、指定商品・役務と同一の商品・役務について、登録商標と同一の商標に及びます。禁止権は、登録商標の指定商品・役務について登録商標と同一・類似の商標の使用、または指定商品・役務に類似する商品・役務について登録商標と同一・類似する商標に及びます。

(2) 例外:法定の使用権(先使用権)
 以上のとおり、先願登録主義が商標法の原則ですが、他方で、出願をしていなかったことのみで、直ちに善意の先使用者の利益状態をひっくり返すこともまた適当ではありません。そこで、登録主義・先願主義の例外として、出願前から当該商標を使用していた者につき、商標法32条1項前段の先使用権の規定が設けられました。これには、4つの要件が必要となります(同条項)。先使用権は、既存の権利者を保護しようとするものですが、基本となる所有権絶対の原則を制限するもので、解釈上厳格な要件が求められることになります。

(3) 先使用権の4つの要件(商標法32条1項前段)
 ア まず、他人の商品登録出願前から、日本国内において、指定商品・指定役務と同一か類似する商品・役務に、登録商標と同一か類似する商標を使用していることが、1つ目の要件となります。この場合、商品・役務との関係で使用されていなければなりませんから、家紋や屋号として使用しているというだけでは必ずしも十分ではありません。
 イ 次に、出願前から不正競争の目的でなく使用していたことが、2つ目の要件となります。この場合の不正競争の目的とは、元々使用している自らの商標の権利を保護するためではなく、他人の商標の信用を利用して不当に利益を得ようとする目的を指します。商標を利用する権利の取得経過、意図、行使態様等から判断されます。
 ウ また、他人の商標出願の際に、その商標が先使用者の業務にかかる商品・役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されていることが、3つ目の要件となります。
この周知性は、善意者の既存の利益状態を覆すのが適当かどうかの観点から判断します。 所有権絶対の原則、物権法定主義(民法175条)の趣旨から、商標権は(準)物権として権利の内容が強力であり、法的画一性、安定性が求められることになり、これを排除するには需要者認識の範囲はかなり広く解釈することになります。  
 裁判例では、コーヒーのような商品については、1県及びその隣接数県の一部程度では足りず相当広範な地域において認識されることを要するとされ(DDC事件。広島地裁福山支部昭和57年9月30日判決判タ499号211頁)、また、必ずしも日本国内全体に広く知られているまでの必要はないとしても、2,3の市町村の範囲のように狭い範囲の需要者に認識されている程度では足りないとされています(古潭ラーメン事件。大阪地判平成9年12月9日判タ967号237頁)。
 エ さらに、商標を継続してその商品・役務に使用していることが、4つ目の要件となります。

(4) 先使用権の効果
 そして、上述の4要件を充足して先使用権が認められた場合には、本来であれば禁止権の範囲にかかってくる場合にも商標使用を継続できるという効果が発生します。ただし、使用が認められるのは、登録商標の出願前に使用していた商標と同一の商標に限られ、類似商品・類似役務・類似商標を使用することはできません。

(5) 本件についての検討
 本件においては、まず、他人の商標登録出願時点である数年前の時点より前の20年前から、日本国内関西地域において、車両整備という同一役務に、「ガリレオ車両整備」という同一商標を使用しているため、1つ目のアの要件はみたします。次に、東京にある「ガリレオ車両整備」という会社の信用を利用して不当に利益を得ようとする目的でなく「ガリレオ車両整備」という商標を使用していたため、2つ目のイの要件もみたします。また、「ガリレオ車両整備」の商標は15年前から継続的に使用していたため、4つ目のエの要件もみたします。しかし、他人の商標出願の際に、その商標が先使用者の業務にかかる商品・役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されていることという3つ目のウの要件については、本件ではみたされていないと考えられます。
 本件では、ご相談者様の使われている「ガリレオ車両整備」という商標は、地域ではかなり名称が知られているということですが、支店があるのは市内、隣町に4店舗ということですので、具体的にはその範囲の地域での認識がされているということのようです。そうすると、認識は市及び隣接市町村という範囲にとどまっており、「2,3の市町村の範囲のように狭い範囲の需要者に認識されている程度」であるといわざるを得ません。そのため、「1県及びその隣接数県の一部程度では足りず相当広範な地域において認識されている」ような状態にはないといわざるを得ません。そうすると、本件では、先使用権は認められず、商標の使用を継続できるという効果も発生しません。そのため、原則どおり、登録商標の使用は禁止されてしまいます。

4.(平成3年の附則3条による救済の可能性)
 しかし、貴方は、20年ほど前から、当該商標をしようしているので、商標法附則(平成3年5月2日法律第65号)第3条1項により救済される可能性があります。平成3年5月2日の商標法改正により商品だけでなく本件商標のような指定役務(法2条1項2号、商標法施行令 別表)に関する商標(車両整備業務は商品ではないので役務に該当します。これをサービスマークといいます。)も保護されることになりました。ちなみに、役務とは他人のためにする労働又は便宜であり独立して取引の対象になるものをいいます。商標保護の目的は、商標を使用する者の業務上の信用と需要消費者の信頼を保護して公正な経済秩序を維持することにあるので、商品に関する商標に限定することなく、役務に関する商標も保護する必要があるわけです。商標は、前述のように先願主義が採用され、その例外として、先使用権を認めていますが、要件が厳格であり、商品より指定役務が商標権の対象となるかどうか周知されていない事情もあり救済処置として規定されました。さらに平成18年の改正では、小売業、卸売業の便宜提供も本来であれば商品を販売するだけで、商品陳列、企画などの便宜は付随業務、無報酬が一般なので(独立の取引対象ではない)役務と言えるかどうか疑問がありましたが役務として保護され、同様の救済規定があります(平成18年年6月7日法律第55号の附則6条)。
 従って、改正法施行(平成4年4月1日施行)があった平成4年以前(正確には施行日から6カ月後である平成4年10月1日以前)に商標使用が立証できれば(会社であれば商業登記簿謄本の記載、個人であれば営業していた申告書等で)、商標法附則(平成3年5月2日法律第65号)第3条1項により救済されることになり、「ガリレオ車両整備」という商標を使用することが可能です。但し、附則は例外的規定でありその趣旨から「この法律の施行の日から六月を経過する際現にその商標の使用をしてその役務に係る業務を行っている範囲内において」の解釈は限定的に行わなければならず、前記平成4年10月1日以後に作られた支店であればその範囲内を超えてしまうことになり商標使用は認められないので、当該支店については商標変更の必要があると思います。

5.(権利濫用論適用の可能性)
 なお、登録商標の禁止権の範囲内にあることを争うことは以上のとおりですが、その他、その禁止権の行使が権利濫用に当たり許されないと主張して争う方法も考えられます。 判例は、商標権者の不正競争行為は権利濫用として許されないとしており(最判昭和56年10月13日民集35巻7号1129頁など)、仮に、商標登録に商標法46条1項所定の無効理由が存在しない場合であっても、登録商標の取得経過や取得意図、商標権行使の態様等によっては、商標権の行使が、客観的に公正な競争秩序を乱すものとして権利の濫用に当たり、許されない場合があるとしています(ポパイマフラー事件。最判平成2年7月20日民集44巻5号876頁)。
 不正競争の目的による権利濫用論は、私的自治の原則に内在する信義誠実の原則(民法1条)の表れであり、契約自由、行為自由の原則の例外であり、要件として、判例のように商標権の取得経過、意図、行使態様等詳細な検討が必要です。
 したがって、本件でも、東京の会社に以上の基準に該当するような権利濫用の事実があれば、禁止権行使の権利濫用を主張して争っていくという方法は考えられます。

6.(結論)
 以上のように、本件では商標法32条の先使用権が認められませんが、平成3年の改正法施行日から6カ月後である平成4年10月1日以前に商標使用が立証できれば(会社であれば商業登記簿謄本の記載、個人であれば営業していた申告書等で)、商標法附則(平成3年5月2日法律第65号)第3条1項により救済されることになり、「ガリレオ車両整備」という商標を使用することが可能です。唯、平成4年10月1日以後の支店については、「ガリレオ車両整備」という商標を使用することはできません。その場合、「カンサイニューカーガリレオ」又は英語で「KANSAINEW.CARGARIREO」と名称変更した場合でも、類似商標として使用は禁止されます。ただし、東京の会社が不正競争行為として商標使用の禁止を申し出てきたというような事情があれば、権利濫用を主張して争うことは考えられます。
 そのような権利濫用が認められない場合には、名称を一新し、非類似商標で営業していくことになります。その際には、本件のようなことが再度起こらないよう、商標登録をされておくのが望ましいでしょう。

≪参照条文≫

民法
(物権の創設)
第百七十五条  物権は、この法律その他の法律に定めるもののほか、創設することができない。
(物権の設定及び移転)
第百七十六条  物権の設定及び移転は、当事者の意思表示のみによって、その効力を生ずる。
(不動産に関する物権の変動の対抗要件)
第百七十七条  不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法 (平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。
(動産に関する物権の譲渡の対抗要件)
第百七十八条  動産に関する物権の譲渡は、その動産の引渡しがなければ、第三者に対抗することができない。

商標法
(目的)
第一条 この法律は、商標を保護することにより、商標の使用をする者の業務上の信用の維持を図り、もつて産業の発達に寄与し、あわせて需要者の利益を保護することを目的とする。
(定義等)
第二条 この法律で「商標」とは、文字、図形、記号若しくは立体的形状若しくはこれらの結合又はこれらと色彩との結合(以下「標章」という。)であつて、次に掲げるものをいう。
一 業として商品を生産し、証明し、又は譲渡する者がその商品について使用をするもの
二 業として役務を提供し、又は証明する者がその役務について使用をするもの(前号に掲げるものを除く。)
2 前項第二号の役務には、小売及び卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供が含まれるものとする。
3 この法律で標章について「使用」とは、次に掲げる行為をいう。
一 商品又は商品の包装に標章を付する行為
二 商品又は商品の包装に標章を付したものを譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、又は電気通信回線を通じて提供する行為
三 役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物(譲渡し、又は貸し渡す物を含む。以下同じ。)に標章を付する行為
四 役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物に標章を付したものを用いて役務を提供する行為
五 役務の提供の用に供する物(役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物を含む。以下同じ。)に標章を付したものを役務の提供のために展示する行為
六 役務の提供に当たりその提供を受ける者の当該役務の提供に係る物に標章を付する行為
七 電磁的方法(電子的方法、磁気的方法その他の人の知覚によつて認識することができない方法をいう。次号において同じ。)により行う映像面を介した役務の提供に当たりその映像面に標章を表示して役務を提供する行為
八 商品若しくは役務に関する広告、価格表若しくは取引書類に標章を付して展示し、若しくは頒布し、又はこれらを内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為
4 前項において、商品その他の物に標章を付することには、商品若しくは商品の包装、役務の提供の用に供する物又は商品若しくは役務に関する広告を標章の形状とすることが含まれるものとする。
5 この法律で「登録商標」とは、商標登録を受けている商標をいう。
6 この法律において、商品に類似するものの範囲には役務が含まれることがあるものとし、役務に類似するものの範囲には商品が含まれることがあるものとする。
(一商標一出願)
第6条  商標登録出願は、商標の使用をする一又は二以上の商品又は役務を指定して、商標ごとにしなければならない。
2  前項の指定は、政令で定める商品及び役務の区分に従つてしなければならない。
3  前項の商品及び役務の区分は、商品又は役務の類似の範囲を定めるものではない。 (商標権の設定の登録)
第十八条 商標権は、設定の登録により発生する。
2 第四十条第一項の規定による登録料又は第四十一条の二第一項の規定により商標登録をすべき旨の査定若しくは審決の謄本の送達があつた日から三十日以内に納付すべき登録料の納付があつたときは、商標権の設定の登録をする。
3 前項の登録があつたときは、次に掲げる事項を商標公報に掲載しなければならない。一 商標権者の氏名又は名称及び住所又は居所
二 商標登録出願の番号及び年月日
三 願書に記載した商標
四 指定商品又は指定役務
五 登録番号及び設定の登録の年月日
六 前各号に掲げるもののほか、必要な事項
4 特許庁長官は、前項の規定により同項各号に掲げる事項を掲載した商標公報(以下「商標掲載公報」という。)の発行の日から二月間、特許庁において出願書類及びその附属物件を公衆の縦覧に供しなければならない。ただし、個人の名誉又は生活の平穏を害するおそれがある書類又は物件及び公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある書類又は物件であつて、特許庁長官が秘密を保持する必要があると認めるものについては、この限りでない。
5 特許庁長官は、個人の名誉又は生活の平穏を害するおそれがある書類又は物件であつて、前項ただし書の規定により特許庁長官が秘密を保持する必要があると認めるもの以外のものを縦覧に供しようとするときは、当該書類又は物件を提出した者に対し、その旨及びその理由を通知しなければならない。
(商標権の効力)
第二十五条 商標権者は、指定商品又は指定役務について登録商標の使用をする権利を専有する。ただし、その商標権について専用使用権を設定したときは、専用使用権者がその登録商標の使用をする権利を専有する範囲については、この限りでない。
(先使用による商標の使用をする権利)
第三十二条 他人の商標登録出願前から日本国内において不正競争の目的でなくその商標登録出願に係る指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務についてその商標又はこれに類似する商標の使用をしていた結果、その商標登録出願の際(第九条の四の規定により、又は第十七条の二第一項若しくは第五十五条の二第三項(第六十条の二第二項において準用する場合を含む。)において準用する意匠法第十七条の三第一項 の規定により、その商標登録出願が手続補正書を提出した時にしたものとみなされたときは、もとの商標登録出願の際又は手続補正書を提出した際)現にその商標が自己の業務に係る商品又は役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されているときは、その者は、継続してその商品又は役務についてその商標の使用をする場合は、その商品又は役務についてその商標の使用をする権利を有する。当該業務を承継した者についても、同様とする。
2 当該商標権者又は専用使用権者は、前項の規定により商標の使用をする権利を有する者に対し、その者の業務に係る商品又は役務と自己の業務に係る商品又は役務との混同を防ぐのに適当な表示を付すべきことを請求することができる。
第二節 権利侵害
(差止請求権)
第三十六条  商標権者又は専用使用権者は、自己の商標権又は専用使用権を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる。2  商標権者又は専用使用権者は、前項の規定による請求をするに際し、侵害の行為を組成した物の廃棄、侵害の行為に供した設備の除却その他の侵害の予防に必要な行為を請求することができる。
(侵害とみなす行為)
第三十七条  次に掲げる行為は、当該商標権又は専用使用権を侵害するものとみなす。 一  指定商品若しくは指定役務についての登録商標に類似する商標の使用又は指定商品若しくは指定役務に類似する商品若しくは役務についての登録商標若しくはこれに類似する商標の使用
二  指定商品又は指定商品若しくは指定役務に類似する商品であつて、その商品又はその商品の包装に登録商標又はこれに類似する商標を付したものを譲渡、引渡し又は輸出のために所持する行為
三  指定役務又は指定役務若しくは指定商品に類似する役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物に登録商標又はこれに類似する商標を付したものを、これを用いて当該役務を提供するために所持し、又は輸入する行為
四  指定役務又は指定役務若しくは指定商品に類似する役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物に登録商標又はこれに類似する商標を付したものを、これを用いて当該役務を提供させるために譲渡し、引き渡し、又は譲渡若しくは引渡しのために所持し、若しくは輸入する行為
五  指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について登録商標又はこれに類似する商標の使用をするために登録商標又はこれに類似する商標を表示する物を所持する行為
六  指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について登録商標又はこれに類似する商標の使用をさせるために登録商標又はこれに類似する商標を表示する物を譲渡し、引き渡し、又は譲渡若しくは引渡しのために所持する行為
七  指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について登録商標又はこれに類似する商標の使用をし、又は使用をさせるために登録商標又はこれに類似する商標を表示する物を製造し、又は輸入する行為
八  登録商標又はこれに類似する商標を表示する物を製造するためにのみ用いる物を業として製造し、譲渡し、引き渡し、又は輸入する行為
(損害の額の推定等)
第三十八条  商標権者又は専用使用権者が故意又は過失により自己の商標権又は専用使用権を侵害した者に対しその侵害により自己が受けた損害の賠償を請求する場合において、その者がその侵害の行為を組成した商品を譲渡したときは、その譲渡した商品の数量(以下この項において「譲渡数量」という。)に、商標権者又は専用使用権者がその侵害の行為がなければ販売することができた商品の単位数量当たりの利益の額を乗じて得た額を、商標権者又は専用使用権者の使用の能力に応じた額を超えない限度において、商標権者又は専用使用権者が受けた損害の額とすることができる。ただし、譲渡数量の全部又は一部に相当する数量を商標権者又は専用使用権者が販売することができないとする事情があるときは、当該事情に相当する数量に応じた額を控除するものとする。
2  商標権者又は専用使用権者が故意又は過失により自己の商標権又は専用使用権を侵害した者に対しその侵害により自己が受けた損害の賠償を請求する場合において、その者がその侵害の行為により利益を受けているときは、その利益の額は、商標権者又は専用使用権者が受けた損害の額と推定する。
3  商標権者又は専用使用権者は、故意又は過失により自己の商標権又は専用使用権を侵害した者に対し、その登録商標の使用に対し受けるべき金銭の額に相当する額の金銭を、自己が受けた損害の額としてその賠償を請求することができる。
4  前項の規定は、同項に規定する金額を超える損害の賠償の請求を妨げない。この場合において、商標権又は専用使用権を侵害した者に故意又は重大な過失がなかつたときは、裁判所は、損害の賠償の額を定めるについて、これを参酌することができる。
(特許法 の準用)
第三十九条  特許法第百三条 (過失の推定)、第百四条の二から第百五条の六まで(具体的態様の明示義務、特許権者等の権利行使の制限、書類の提出等、損害計算のための鑑定、相当な損害額の認定、秘密保持命令、秘密保持命令の取消し及び訴訟記録の閲覧等の請求の通知等)及び第百六条(信用回復の措置)の規定は、商標権又は専用使用権の侵害に準用する。

附 則 (平成三年五月二日法律第六五号) 抄
(施行期日等)
第三条  この法律の施行の日から六月を経過する前から日本国内において不正競争の目的でなく他人の登録商標(この法律の施行後の商標登録出願に係るものを含む。)に係る指定役務又は指定商品若しくは指定役務に類似する役務についてその登録商標又はこれに類似する商標の使用をしていた者は、継続してその役務についてその商標の使用をする場合は、この法律の施行の日から六月を経過する際現にその商標の使用をしてその役務に係る業務を行っている範囲内において、その役務についてその商標の使用をする権利を有する。当該業務を承継した者についても、同様とする。
2  当該商標権者又は専用使用権者は、前項の規定により商標の使用をする権利を有する者に対し、その者の業務に係る役務と自己の業務に係る商品又は役務との混同を防ぐのに適当な表示を付すべきことを請求することができる。
3  前二項の規定は、防護標章登録に基づく権利に準用する。

附 則 (平成一八年六月七日法律第五五号) 抄
(施行前からの使用に基づく商標の使用をする権利)
第六条  この法律の施行前から日本国内において不正競争の目的でなく他人の商標登録に係る指定役務又はこれに類似する役務(小売等役務に限る。)についてその登録商標又はこれに類似する商標の使用をしていた者は、継続してその役務についてその商標の使用をする場合は、この法律の施行の際現にその商標の使用をしてその役務に係る業務を行っている範囲内において、その役務についてその商標の使用をする権利を有する。当該業務を承継した者についても、同様とする。
2  前項の登録商標に係る商標権者又は専用使用権者は、同項の規定により商標の使用をする権利を有する者に対し、その者の業務に係る役務と自己の業務に係る役務との混同を防ぐのに適当な表示を付すべきことを請求することができる。
3  第一項の規定により商標の使用をする権利を有する者は、この法律の施行の際現にその商標がその者の業務に係る役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されているときは、同項の規定にかかわらず、その役務についてその商標の使用をする権利を有する。当該業務を承継した者についても、同様とする。
4  第二項の規定は、前項の場合に準用する。
5  前各項の規定は、防護標章登録に基づく権利に準用する。

商標法施行令
(昭和三十五年三月八日政令第十九号)
最終改正:平成一八年一〇月二七日政令第三四二号
 内閣は、商標法 (昭和三十四年法律第百二十七号)の規定に基づき、この政令を制定する。
(商品及び役務の区分)
第一条  商標法第六条第二項 の政令で定める商品及び役務の区分は、別表のとおりとし、各区分に属する商品又は役務は、千九百六十七年七月十四日にストックホルムで及び千九百七十七年五月十三日にジュネーヴで改正され並びに千九百七十九年十月二日に修正された標章の登録のための商品及びサービスの国際分類に関する千九百五十七年六月十五日のニース協定第一条に規定する国際分類に即して、経済産業省令で定める。
別表
第一類工業用、科学用又は農業用の化学品
第二類塗料、着色料及び腐食の防止用の調製品
第三類洗浄剤及び化粧品
第四類工業用油、工業用油脂、燃料及び光剤
第五類薬剤
第六類卑金属及びその製品
第七類加工機械、原動機(陸上の乗物用のものを除く。)その他の機械
第八類手動工具
第九類科学用、航海用、測量用、写真用、音響用、映像用、計量用、信号用、検査用、救命用、教育用、計算用又は情報処理用の機械器具、光学式の機械器具及び電気の伝導用、電気回路の開閉用、変圧用、蓄電用、電圧調整用又は電気制御用の機械器具
第十類医療用機械器具及び医療用品
第十一類照明用、加熱用、蒸気発生用、調理用、冷却用、乾燥用、換気用、給水用又は衛生用の装置
第十二類乗物その他移動用の装置
第十三類火器及び火工品
第十四類貴金属、貴金属製品であって他の類に属しないもの、宝飾品及び時計
第十五類楽器
第十六類紙、紙製品及び事務用品
第十七類電気絶縁用、断熱用又は防音用の材料及び材料用のプラスチック
第十八類革及びその模造品、旅行用品並びに馬具
第十九類金属製でない建築材料
第二十類家具及びプラスチック製品であって他の類に属しないもの
第二十一類家庭用又は台所用の手動式の器具、化粧用具、ガラス製品及び磁器製品
第二十二類ロープ製品、帆布製品、詰物用の材料及び織物用の原料繊維
第二十三類織物用の糸
第二十四類織物及び家庭用の織物製カバー
第二十五類被服及び履物
第二十六類裁縫用品
第二十七類床敷物及び織物製でない壁掛け
第二十八類がん具、遊戯用具及び運動用具
第二十九類動物性の食品及び加工した野菜その他の食用園芸作物
第三十類加工した植物性の食品(他の類に属するものを除く。)及び調味料
第三十一類加工していない陸産物、生きている動植物及び飼料
第三十二類アルコールを含有しない飲料及びビール
第三十三類ビールを除くアルコール飲料
第三十四類たばこ、喫煙用具及びマッチ
第三十五類広告、事業の管理又は運営、事務処理及び小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供
第三十六類金融、保険及び不動産の取引
第三十七類建設、設置工事及び修理
第三十八類電気通信
第三十九類輸送、こん包及び保管並びに旅行の手配
第四十類物品の加工その他の処理
第四十一類教育、訓練、娯楽、スポーツ及び文化活動
第四十二類科学技術又は産業に関する調査研究及び設計並びに電子計算機又はソフトウェアの設計及び開発
第四十三類飲食物の提供及び宿泊施設の提供
第四十四類医療、動物の治療、人又は動物に関する衛生及び美容並びに農業、園芸又は林業に係る役務
第四十五類冠婚葬祭に係る役務その他の個人の需要に応じて提供する役務(他の類に属するものを除く。)、警備及び法律事務

知的財産基本法
(平成十四年十二月四日法律第百二十二号)
第一章 総則(第一条―第十一条)
 第二章 基本的施策(第十二条―第二十二条)
 第三章 知的財産の創造、保護及び活用に関する推進計画(第二十三条)
 第四章 知的財産戦略本部(第二十四条―第三十三条)
第一章 総則
(目的)
第一条  この法律は、内外の社会経済情勢の変化に伴い、我が国産業の国際競争力の強化を図ることの必要性が増大している状況にかんがみ、新たな知的財産の創造及びその効果的な活用による付加価値の創出を基軸とする活力ある経済社会を実現するため、知的財産の創造、保護及び活用に関し、基本理念及びその実現を図るために基本となる事項を定め、国、地方公共団体、大学等及び事業者の責務を明らかにし、並びに知的財産の創造、保護及び活用に関する推進計画の作成について定めるとともに、知的財産戦略本部を設置することにより、知的財産の創造、保護及び活用に関する施策を集中的かつ計画的に推進することを目的とする。
(定義)
第二条  この法律で「知的財産」とは、発明、考案、植物の新品種、意匠、著作物その他の人間の創造的活動により生み出されるもの(発見又は解明がされた自然の法則又は現象であって、産業上の利用可能性があるものを含む。)、商標、商号その他事業活動に用いられる商品又は役務を表示するもの及び営業秘密その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報をいう。
2  この法律で「知的財産権」とは、特許権、実用新案権、育成者権、意匠権、著作権、商標権その他の知的財産に関して法令により定められた権利又は法律上保護される利益に係る権利をいう。
3  この法律で「大学等」とは、大学及び高等専門学校(学校教育法 (昭和二十二年法律第二十六号)第一条 に規定する大学及び高等専門学校をいう。第七条第三項において同じ。)、大学共同利用機関(国立大学法人法 (平成十五年法律第百十二号)第二条第四項 に規定する大学共同利用機関をいう。第七条第三項において同じ。)、独立行政法人(独立行政法人通則法 (平成十一年法律第百三号)第二条第一項 に規定する独立行政法人をいう。第三十条第一項において同じ。)及び地方独立行政法人(地方独立行政法人法 (平成十五年法律第百十八号)第二条第一項 に規定する地方独立行政法人をいう。第三十条第一項において同じ。)であって試験研究に関する業務を行うもの、特殊法人(法律により直接に設立された法人又は特別の法律により特別の設立行為をもって設立された法人であって、総務省設置法 (平成十一年法律第九十一号)第四条第十五号 の規定の適用を受けるものをいう。第三十条第一項において同じ。)であって研究開発を目的とするもの並びに国及び地方公共団体の試験研究機関をいう。
(国民経済の健全な発展及び豊かな文化の創造)
第三条  知的財産の創造、保護及び活用に関する施策の推進は、創造力の豊かな人材が育成され、その創造力が十分に発揮され、技術革新の進展にも対応した知的財産の国内及び国外における迅速かつ適正な保護が図られ、並びに経済社会において知的財産が積極的に活用されつつ、その価値が最大限に発揮されるために必要な環境の整備を行うことにより、広く国民が知的財産の恵沢を享受できる社会を実現するとともに、将来にわたり新たな知的財産の創造がなされる基盤を確立し、もって国民経済の健全な発展及び豊かな文化の創造に寄与するものとなることを旨として、行われなければならない。
(我が国産業の国際競争力の強化及び持続的な発展)
第四条  知的財産の創造、保護及び活用に関する施策の推進は、創造性のある研究及び開発の成果の円滑な企業化を図り、知的財産を基軸とする新たな事業分野の開拓並びに経営の革新及び創業を促進することにより、我が国産業の技術力の強化及び活力の再生、地域における経済の活性化、並びに就業機会の増大をもたらし、もって我が国産業の国際競争力の強化及び内外の経済的環境の変化に的確に対応した我が国産業の持続的な発展に寄与するものとなることを旨として、行われなければならない。
(国の責務)
第五条  国は、前二条に規定する知的財産の創造、保護及び活用に関する基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、知的財産の創造、保護及び活用に関する施策を策定し、及び実施する責務を有する。
(地方公共団体の責務)
第六条  地方公共団体は、基本理念にのっとり、知的財産の創造、保護及び活用に関し、国との適切な役割分担を踏まえて、その地方公共団体の区域の特性を生かした自主的な施策を策定し、及び実施する責務を有する。
(大学等の責務等)
第七条  大学等は、その活動が社会全体における知的財産の創造に資するものであることにかんがみ、人材の育成並びに研究及びその成果の普及に自主的かつ積極的に努めるものとする。
2  大学等は、研究者及び技術者の職務及び職場環境がその重要性にふさわしい魅力あるものとなるよう、研究者及び技術者の適切な処遇の確保並びに研究施設の整備及び充実に努めるものとする。
3  国及び地方公共団体は、知的財産の創造、保護及び活用に関する施策であって、大学及び高等専門学校並びに大学共同利用機関に係るものを策定し、並びにこれを実施するに当たっては、研究者の自主性の尊重その他大学及び高等専門学校並びに大学共同利用機関における研究の特性に配慮しなければならない。
(事業者の責務)
第八条  事業者は、我が国産業の発展において知的財産が果たす役割の重要性にかんがみ、基本理念にのっとり、活力ある事業活動を通じた生産性の向上、事業基盤の強化等を図ることができるよう、当該事業者若しくは他の事業者が創造した知的財産又は大学等で創造された知的財産の積極的な活用を図るとともに、当該事業者が有する知的財産の適切な管理に努めるものとする。
2  事業者は、発明者その他の創造的活動を行う者の職務がその重要性にふさわしい魅力あるものとなるよう、発明者その他の創造的活動を行う者の適切な処遇の確保に努めるものとする。
(連携の強化)
第九条  国は、国、地方公共団体、大学等及び事業者が相互に連携を図りながら協力することにより、知的財産の創造、保護及び活用の効果的な実施が図られることにかんがみ、これらの者の間の連携の強化に必要な施策を講ずるものとする。
(競争促進への配慮)
第十条  知的財産の保護及び活用に関する施策を推進するに当たっては、その公正な利用及び公共の利益の確保に留意するとともに、公正かつ自由な競争の促進が図られるよう配慮するものとする。
(法制上の措置等)
第十一条  政府は、知的財産の創造、保護及び活用に関する施策を実施するため必要な法制上又は財政上の措置その他の措置を講じなければならない。

半導体集積回路の回路配置に関する法律
(昭和六十年五月三十一日法律第四十三号)
(目的)
第一条  この法律は、半導体集積回路の回路配置の適正な利用の確保を図るための制度を創設することにより、半導体集積回路の開発を促進し、もつて国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。
(定義)
第二条  この法律において「半導体集積回路」とは、半導体材料若しくは絶縁材料の表面又は半導体材料の内部に、トランジスターその他の回路素子を生成させ、かつ、不可分の状態にした製品であつて、電子回路の機能を有するように設計したものをいう。
2  この法律において「回路配置」とは、半導体集積回路における回路素子及びこれらを接続する導線の配置をいう。
3  この法律において回路配置について「利用」とは、次に掲げる行為をいう。
一  その回路配置を用いて半導体集積回路を製造する行為
二  その回路配置を用いて製造した半導体集積回路(当該半導体集積回路を組み込んだ物品を含む。)を譲渡し、貸し渡し、譲渡若しくは貸渡しのために展示し、又は輸入する行為

種苗法
(平成十年五月二十九日法律第八十三号)
 種苗法(昭和二十二年法律第百十五号)の全部を改正する。
   第一章 総則
(目的)
第一条  この法律は、新品種の保護のための品種登録に関する制度、指定種苗の表示に関する規制等について定めることにより、品種の育成の振興と種苗の流通の適正化を図り、もって農林水産業の発展に寄与することを目的とする。
(定義等)
第二条  この法律において「農林水産植物」とは、農産物、林産物及び水産物の生産のために栽培される種子植物、しだ類、せんたい類、多細胞の藻類その他政令で定める植物をいい、「植物体」とは、農林水産植物の個体をいう。
2  この法律において「品種」とは、重要な形質に係る特性(以下単に「特性」という。)の全部又は一部によって他の植物体の集合と区別することができ、かつ、その特性の全部を保持しつつ繁殖させることができる一の植物体の集合をいう。
3  この法律において「種苗」とは、植物体の全部又は一部で繁殖の用に供されるものをいう。
4  この法律において「加工品」とは、種苗を用いることにより得られる収穫物から直接に生産される加工品であって政令で定めるものをいう。
5  この法律において品種について「利用」とは、次に掲げる行為をいう。
一  その品種の種苗を生産し、調整し、譲渡の申出をし、譲渡し、輸出し、輸入し、又はこれらの行為をする目的をもって保管する行為
二  その品種の種苗を用いることにより得られる収穫物を生産し、譲渡若しくは貸渡しの申出をし、譲渡し、貸し渡し、輸出し、輸入し、又はこれらの行為をする目的をもって保管する行為(育成者権者又は専用利用権者が前号に掲げる行為について権利を行使する適当な機会がなかった場合に限る。)
三  その品種の加工品を生産し、譲渡若しくは貸渡しの申出をし、譲渡し、貸し渡し、輸出し、輸入し、又はこれらの行為をする目的をもって保管する行為(育成者権者又は専用利用権者が前二号に掲げる行為について権利を行使する適当な機会がなかった場合に限る。)
6  この法律において「指定種苗」とは、種苗(林業の用に供される樹木の種苗を除く。)のうち、種子、胞子、茎、根、苗、苗木、穂木、台木、種菌その他政令で定めるもので品質の識別を容易にするため販売に際して一定の事項を表示する必要があるものとして農林水産大臣が指定するものをいい、「種苗業者」とは、指定種苗の販売を業とする者をいう。
7  農林水産大臣は、農業資材審議会の意見を聴いて、農林水産植物について農林水産省令で定める区分ごとに、第二項の重要な形質を定め、これを公示するものとする。

≪参照判例(抜粋)≫

審決取消請求事件
昭和三三年(オ)第一一〇四号
同三六年六月二七日最高裁第三小法廷判決より抜粋
「商標が類似のものであるかどうかは、その商標を或る商品につき使用した場合に、商品の出所について誤認混同を生ずる虞があると認められるものであるかどうかということにより判定すべきものと解するのが相当である。そして、指定商品が類似のものであるかどうかは、原判示のように、商品自体が取引上誤認混同の虞があるかどうかにより判定すべきものではなく、それらの商品が通常同一営業主により製造又は販売されている等の事情により、それらの商品に同一又は類似の商標を使用するときは同一営業主の製造又は販売にかかる商品と誤認される虞があると認められる関係にある場合には、たとえ、商品自体が互に誤認混同を生ずる虞がないものであつても、それらの商標は商標法(大正一〇年法律九九号)二条九号にいう類似の商品にあたると解するのが相当である。」

商標登録出願拒絶査定不服抗告審判審決取消請求事件
昭和三九年(行ツ)第一一〇号
同四三年二月二七日最高裁第三小法廷判決より抜粋
「商標の類否は、対比される両商標が同一または類似の商品に使用された場合に、商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによつて決すべきであるが、それには、そのような商品に使用された商標がその外観、観念、称呼等によつて取引者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すべく、しかもその商品の取引の実情を明らかにしうるかぎり、その具体的な取引状況に基づいて判断するのを相当とする。」

商標権侵害禁止等請求事件
最高裁判所平成六年(オ)第一一〇二号
平成九年三月一一日第三小法廷判決より抜粋
「商標の類否は、同一又は類似の商品に使用された商標が外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すべきであり、かつ、その商品の取引の実情を明らかにし得る限り、その具体的な取引状況に基づいて判断すべきものである。右のとおり、商標の外観、観念又は称呼の類似は、その商標を使用した商品につき出所を誤認混同するおそれを推測させる一応の基準にすぎず、したがって、右三点のうち類似する点があるとしても、他の点において著しく相違するか、又は取引の実情等によって、何ら商品の出所を誤認混同するおそれが認められないものについては、これを類似商標と解することはできないというべきである(最高裁昭和三九年(行ツ)第一一〇号同四三年二月二七日第三小法廷判決・民集二二巻二号三九九頁参照)。」

昭和四三年(行ケ)九二号
昭和四四年九月二日東高民六判より抜粋
「指定商品が牴触する両商標がその外観、称呼及び観念のうち一点において類似する場合は、指定商品の取引の一般的実情等により、商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるとは認めがたい客観的な事情のある場合は格別、そのような事情がない限り、両者は相類似するものというを相当とするから、このような事情の認むべきもののない本件において、その指定商品において類似し、かつ、称呼において類似すること前記のとおり当事者間に争いのない本願商標と引用商標とは、相類似するものといわざるをえない。」

商標権侵害差止請求事件
広島地裁福山支部昭五〇(ワ)第二二七号
昭57・9・30判決より抜粋
「〈証拠〉によれば、コーヒー豆は、わが国では産出せず、すべて輸入品であること、その香りや味覚は品種により特徴があるが、持味である芳香は荒挽きコーヒーにする際の焙煎法に左右されることが認められるが、被告製品が独自の焙煎法によりその風味に他と際立つた評価を得ているとの証拠はなく、また、コーヒーは既に全国的に流通する商品であり地域的嗜好特性も格別認め難いことは弁論の全趣旨から明らかである。そして、前認定の如く広島県内だけでも一〇社ほどの同業者が営業していることからすれば、被告のような荒挽きコーヒー加工販売業者の使用商標が需要者の間に広く認識されたといえるためには、一県及びその隣接県の一部程度にとどまらず、相当広範な地域において認識されることを要すると解すべきである。被告は、風味保持の点からしてコーヒーの加工販売範囲は自ら限定されると主張するが、右は一加工拠点からの配送の物理的限界をいうものにすぎず採用できない。」

商標権侵害行為差止等請求事件
大阪地裁平七(ワ)第一三二二五号
平9・12・9第二一民事部判決より抜粋
「右規定にいう、商標登録出願の際現にその商標が自己の業務に係る役務を表示するものとして『需要者の間に広く認識されているとき』との要件については、先使用権に係る商標が未登録商標でありながら、登録商標に係る商標権の禁止権を排除して日本国内全域においてこれを使用することが許されるという、商標権の効力に対する重大な制約をもたらすものであるから、当該商標が必ずしも日本国内全体に広く知られているまでの必要はないとしても、せいぜい二、三の市町村の範囲内のような狭い範囲の需要者に認識されている程度では足りないと解すべきである。右周知性の程度についての被告の主張は、これに反する限度で採用することができない。」

商標権侵害排除等請求参加事件
最高裁判所昭和六〇年(オ)第一五七六号
平成二年七月二〇日第二小法廷判決より抜粋
「被上告人は、乙標章は、商標としての機能を備えて使用されていて、かつ本件商標に類似しており、しかも、単に『ポパイ』の漫画の主人公の名称を英文で表したものであるから、『ポパイ』の漫画から独立した著作物性がなく、著作物の複製とはいえないことを理由に、乙標章につき本件商標権に基づいてその侵害を理由に損害賠償を求めることが、本件商標権の行使に当たるとして、本訴請求をしている。しかしながら、前記事実関係からすると、本件商標登録出願当時既に、連載漫画の主人公『ポパイ』は、一貫した性格を持つ架空の人物像として、広く大衆の人気を得て世界に知られており、『ポパイ』の人物像は、日本国内を含む全世界に定着していたものということができる。そして、漫画の主人公『ポパイ』が想像上の人物であって、『POPEYE』ないし『ポパイ』なる語は、右主人公以外の何ものをも意味しない点を併せ考えると、『ポパイ』の名称は、漫画に描かれた主人公として想起される人物像と不可分一体のものとして世人に親しまれてきたものというべきである。したがって、乙標章がそれのみで成り立っている『POPEYE』の文字からは、『ポパイ』の人物像を直ちに連想するというのが、現在においてはもちろん、本件商標登録出願当時においても一般の理解であったのであり、本件商標も、『ポパイ』の漫画の主人公の人物像の観念、称呼を生じさせる以外の何ものでもないといわなければならない。以上によれば、本件商標は右人物像の著名性を無償で利用しているものに外ならないというべきであり、客観的に公正な競業秩序を維持することが商標法の法目的の一つとなっていることに照らすと、被上告人が、『ポパイ』の漫画の著作権者の許諾を得て乙標章を付した商品を販売している者に対して本件商標権の侵害を主張するのは、客観的に公正な競業秩序を乱すものとして、正に権利の濫用というほかない。」

≪参考文献≫

『新・商標法概説』(小野昌延・三山峻司著 青林書院)
パリ条約
第1条 同盟の形成・工業所有権の保護の対象
(1) この条約が適用される国は,工業所有権の保護のための同盟を形成する。
(2) 工業所有権の保護は,特許,実用新案,意匠,商標,サービス・マーク,商号,原産地表示又は原産地名称及び不正競争の防止に関するものとする。
(3) 工業所有権の語は,最も広義に解釈するものとし,本来の工業及び商業のみならず,農業及び採取産業の分野並びに製造した又は天然のすべての産品(例えば,ぶどう酒,穀物,たばこの葉,果実,家畜,鉱物,鉱水,ビール,花,穀粉)についても用いられる。
(4) 特許には,輸入特許,改良特許,追加特許等の同盟国の法令によつて認められる各種の特許が含まれる。

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