新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.1003、2010/2/17 14:23

【民事・著作権・複製権・著作者人格権・氏名表示権・同一性保持権】

質問:私は油絵の画家です。美術大学を出てから数十年活動を続け個展も開き有名な絵画展にも出品し賞もいただいております。先日、大手マンション販売のモデルルームのパンフレット広告を見たところ、偶然私の絵画が広告の写真中に出ていました。私が、以前ある住宅展示場に絵画を貸し出したことがあり、関連会社がその室内を参考に写真撮影してモデルルームの広告に使ったようです。広告写真の絵画は、壁にかかっており実物よりかなり小さく数十分の一の大きさで映っていますが、このようなことは許されるでしょうか。著作権侵害になりませんか。

回答:
1.貴方は、ご自分の絵画に著作権を有しており(著作権法2条、17条)、著作権の基本的内容として複製権を持っているので、モデルルームのパンフレットの写真に絵画を表示することは複製権を侵害するように思いますが、実物の数十分の一程度であれば、複製権の侵害にならないように思われます。
2.次に、パンフレットの写真に写っている当該絵画について貴方の氏名は表示されていませんが、著作人格権として氏名表示権(同法19条)を侵害することにならないでしょう。又、実物より数十分の一の大きさで絵画の写真を作成していますが、著作者人格権としての同一性保持権(同法20条)も害しないでしょう。
3.ただ、写真の大きさによっては、著作権侵害の疑いもありますので、内容証明等で相手方に警告、交渉も必要でしょう。その判断はお近くの弁護士とご相談ください。

解説:
1.(問題点)モデルルームの写真に写っている絵画について貴方は著作権を有していますし、(同法17条)著作権の内容として複製権を有しています(同法2条1項15号、21条)。複製権とは著作物について独占的に複製をなしうる権利ですから、絵画をコピーし、写真撮影するには複製権を有している貴方の許可を得なければならないはずです。しかし、複製した写真が、実物の数十分の一ですし、マンションのモデルルームに掲載されており、絵画の複製を目的にしていないので、そもそも、21条の「複製」に該当するかどうかが問題になります。

2.(著作権の意義、複製権とは何か)著作権とは、昭和45年の著作権法により認められた権利で、著作物を独占、排他的に利用して利益を受ける権利です。著作物とは思想、感情等の精神活動を創造的に表現したものですから、具体的には文芸、学術、美術、音楽の範囲に属するものを言います(同法2条1項1号、10条乃至12条の2)。その趣旨は、著作物に関する著作者の権利を多方面から保護して、文化的所産である著作物の公正な利用を図り、人類文化の発展を目的としています(同法1条)。すなわち法の理想たる公正、公平な社会秩序を文化的な側面から維持しているものです。公正な社会秩序を理想とする自由主義社会の基本は、私有財産制(憲法19条)と私的自治の原則によって支えられ、私有財産制の内容は当初経済的、財産的価値を目的とする権利(物権、債権、特許権等)の保障が目的とされましたが、社会構造が多様化することに伴い人間の思想、感情等による創造的な精神活動も経済的に保護の対象とすることが必然的に求められました。又、私有財産制の最終目的は個人の尊厳保障にありますので、その創造的精神活動を多方面から権利として認めて、人間が生まれながらに有する精神的活動の自由(憲法19条)を実質的に確保しなければ個人の尊厳確保、保障はありえないからです。
 従って、創造的精神活動を、経済的価値の側面から著作権(狭義の著作権、同法21条乃至28条)として種々の権利(2条1項15号の複製権、譲渡権、上演、翻訳権)を認め、さらに著作者の一身専属的な著作者人格権(公表権、氏名表示権、同一性保持権同法18条乃至20条)としても認め保護しています。ただ、著作権は、人間の精神的活動の自由を実質的に保障しようとするものですから思想、感情の創造性は、それ自体の創造性を必ずしも必要としませんし、その思想、感情の表現が、一定の表現形式(例えば、文章、音階、絵自体)の中で具体化する点において創造性があれば足り広く認められることになります。これに対し、精神的自由権よりも劣後する経済活動の自由(憲法22条、29条)を実質的に保障するため、特別に自然法則を利用し技術的思想自体の高度な創造性のみを内容とする発明(特許法2条1項)を独占排他的に利用する特許権(特許法68条、2条2項)とは異なります。以上の制度趣旨から著作権法は解釈されることになります。

3.(複製権)モデルルームのパンフレットに数十分の一の絵画の写真を掲載することは、複製したということにならないと思います。

4.(理由)同法21条の「複製」とは、形式的には絵画自体を復元すること自体を言うのですが、その復元は、著作物が示す、著作者の思想、感情の創造性の表現を一般人が具体的に覚知できる程度のものが必要だからです。著作権の保護が、著作者の思想、感情の創造性を保護しようとするものである以上、その一般人にとって思想感情の創造性を感じ取ることができないような複製であれば、著作者の思想感情の創造性を第三者が勝手に復元して侵害するような状態とは言えませんから、著作権法の制度趣旨から保護の対象にする必要性がないと考えられます。

5.(著作人格権、氏名表示権、同一性保持権について)モデルルームの写真は、貴方が作成した絵画であるにもかかわらず勝手に著作者としての氏名を表示していませんので、著作人格権としての氏名表示権(同法19条)を侵害しているか問題になります。さらに、本来の絵画の数十分の一にして表示していますので「その意に反してこれらの変更、切除その他の改変を受けないものとする」同一性保持権(同法20条)も犯すのではないかという問題があります。

6.数十分の一程度の写真掲載では、これも侵害しないと考えられます。

7.(理由)氏名表示権とは、著作物(二次的著作物でも)について、実名等を著作者名として表示、または表示しないことを決定する権利であり、同一性保持権とは著作物、題号の同一性を保持し変更、改変、切除されない権利です。著作物について氏名の表示権は著作物内容と一体となるものであり、又同一性保持権を認めないと著作物の正確な創造的精神活動の表現が維持できません。以上これらの著作人格権が保護される理由は、著作者が著作物と通じて表現した人間が、生まれながらに有する自らの思想感情の創造的な精神活動の自由を種々の面から実質的に擁護しようとするものですから、複製されたものが、本来の原形よりもかなり小さく第三者から見て、著作者の思想感情の表現を感じ取ることができない程度のものであれば、著作者の思想感情の創造的精神活動を事実上侵害することはできず著作人格権の保護の対象にならないからです。

8.(本件)絵画の大きさが、数十分の一というだけでその程度かわかりませんが、当該写真がモデルルームのデザインの一部として、一般人が気にも留めないような形、大きさであれば、著作権、著作人格権の侵害とはいえないと思われます。従って、掲載差し止め請求(同法112条)、名誉回復の処置(同法115条)、損害賠償請求もできませんし罰則(同法119条)も科せられません。

9.(判例について)東京高裁平成14年2月18日判決。種々の賞を受賞している書道家の数枚の書が写されている写真を勝手に照明器具の宣伝広告用カタログに掲載し、これを制作、発行した行為が、著作権(複製権又は翻案権)及び著作者人格権(氏名表示権及び同一性保持権)を侵害するかどうか問題となった事案です。原審、控訴審はこれを否定しています。妥当な判断と思われます。
 判決内容「著作物の複製とは、既存の著作物に依拠し、その内容及び形式を覚知させるに足りるものを再製することであって、写真は再製の一手段ではあるが(著作権法2条1項15号)、書を写真により再製した場合に、その行為が美術の著作物としての書の複製に当たるといえるためには、一般人の通常の注意力を基準とした上、当該書の写真において、上記表現形式を通じ、単に字体や書体が再現されているにとどまらず、文字の形の独創性、線の美しさと微妙さ、文字群と余白の構成美、運筆の緩急と抑揚、墨色の冴えと変化、筆の勢いといった上記の美的要素を直接感得することができる程度に再現がされていることを要するものというべきである。
 イ このような観点から検討すると、本件各カタログ中の本件各作品部分は、上質紙に美麗な印刷でピントのぼけもなく比較的鮮明に写されているとはいえ、前記(1)ウ、エの紙面の大きさの対比から、本件各作品の現物のおおむね50分の1程度の大きさに縮小されていると推察されるものであって、「雪月花」、「吉祥」、「遊」の各文字は、縦が約5〜8mm、横が約3〜5mm程度の大きさで再現されているにすぎず、字体、書体や全体の構成は明確に認識することができるものの、墨の濃淡と潤渇等の表現形式までが再現されていると断定することは困難である。
 すなわち、この点については、本件各作品の現物が本件訴訟で証拠として提出されていないため、直接の厳密な比較は困難であるが、亡A自身が本件各作品を再現したという検甲1〜4を参考に検討してみると、例えば、本件作品A(雪月花)を再現したという検甲4の「雪」の1画目のわずかににじんだ濃い墨色での表現、同3画目の横線が右側でわずかにかすれ、切り返し部でいったん筆が止まって、左側に大きく筆を流している柔らかな崩し字の表現、「月」の1画目の起筆部分の繊細な筆の入り方、同2画目の力強い縦線の濃く太い線とその右に沿って看取できるわずかなかすれによる表現、「花」の草冠の2本の縦線のうち右側の「ノ」とその下の「一」の間にある微細な空げきによる筆の流れを示す表現等が、墨色の濃淡と潤渇といった表現形式から感得することができるのに対し、本件各カタログ中の本件各作品部分においても、また、検甲4を本件各カタログ中の本件各作品部分とほぼ同一の大きさに縮小したもの(甲19の比較図面)においても、こうした微妙な表現までは再現されていない。
 同様に、本件作品B(吉祥)を再現したという検甲3の「吉」の4画目に入る筆の勢い、「祥」の2本の縦線の肉太で直線的な筆の止め方の妙、本件作品C(遊)を再現したという検甲2及び本件作品D(遊)を再現したという検甲1の「遊」の字画中の「子」からしんにょうの起筆部分に至るまで一気に運筆して形成される流麗な崩し字の表現,かすれ痕を伴ったしんにょうの左から右に弧を描くような伸びやかな筆使いといった表現が、墨色の濃淡と潤渇等の表現形式から感得することができるのに対し、本件各カタログ中の本件各作品部分においても、また、検甲1〜3を本件各カタログ中の本件各作品部分とほぼ同一の大きさに縮小したもの(甲19の比較図面)においても、こうした微妙な表現までが再現されているとはいえない。
 そうすると、以上のような限定された範囲での再現しかされていない本件各カタログ中の本件各作品部分を一般人が通常の注意力をもって見た場合に、これを通じて、本件各作品が本来有していると考えられる線の美しさと微妙さ、運筆の緩急と抑揚、墨色の冴えと変化、筆の勢いといった美的要素を直接感得することは困難であるといわざるを得ない。なお、控訴人は、書に詳しくない控訴人が本件カタログ中に本件各作品が写されているのを偶然発見し、これが本件各作品であると認識した旨主張するが、ある書が特定の作者の特定の書であることを認識し得るかどうかということと、美術の著作物としての書の本質的な特徴を直接感得することができるかどうかということは、次元が異なるというべきであるから、上記の認定判断を左右するものではない。したがって、本件各カタログ中の本件各作品部分において、本件各作品の書の著作物としての本質的な特徴、すなわち思想、感情の創作的な表現部分が再現されているということはできず、本件各カタログに本件各作品が写された写真を掲載した被控訴人らの行為が、本件各作品の複製に当たるとはいえないというべきである。」

「(3)翻案の成否について。言語の著作物の翻案とは、既存の著作物に依拠し、かつ、その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ、具体的表現に修正、増減、変更等を加えて、新たに思想又は感情を創作的に表現することにより、これに接する者が既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することができる別の著作物を創作する行為をいう(最高裁平成13年6月28日第一小法廷判決・民集55巻4号837頁)ところ、美術の著作物においても、この理を異にするものではないというべきであり、また、美術の著作物としての書の翻案の成否の判断に当たっても、書の著作物としての本質的特徴、すなわち思想、感情の創作的な表現部分のとらえ方については、上記(2)アに述べたところが妥当すると解すべきであるから、本件各カタログ中の本件各作品部分が、本件各作品の表現上の本質的な特徴の同一性を維持するものではなく、また、これに接する者がその表現上の本質的な特徴を直接感得することができないことは、前示(2)の判断に照らして明らかというべきである。そうすると、本件各カタログに本件各作品が写された写真を掲載した被控訴人らの行為は、本件各作品の翻案にも当たらないというべきである。
(4)したがって、本件各作品に係る亡Aの著作権(複製権又は翻案権)の侵害に基づく控訴人の請求は理由がない。
2 争点3(氏名表示権及び同一性保持権の侵害)について
 本件各カタログ中の本件各作品部分が本件各作品の著作物としての本質的な特徴、すなわち思想、感情の創作的な表現部分を有するものではなく、本件各カタログが本件各作品の複製物であるとも、その翻案に係る二次的著作物であるともいえないことは上記1のとおりであるから、亡Aの氏名表示権及び同一性保持権は本件各カタログに及ばないというべきである。したがって、本件各作品に係る亡Aの著作者人格権(氏名表示権及び同一性保持権)の侵害に基づく控訴人の請求も理由がない。」

≪条文参照≫

著作権法
(定義)
第二条  この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一  著作物 思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。
二  著作者 著作物を創作する者をいう。
三  実演 著作物を、演劇的に演じ、舞い、演奏し、歌い、口演し、朗詠し、又はその他の方法により演ずること(これらに類する行為で、著作物を演じないが芸能的な性質を有するものを含む。)をいう。
四  実演家 俳優、舞踊家、演奏家、歌手その他実演を行なう者及び実演を指揮し、又は演出する者をいう。
五  レコード 蓄音機用音盤、録音テープその他の物に音を固定したもの(音をもつぱら影像とともに再生することを目的とするものを除く。)をいう。
六  レコード製作者 レコードに固定されている音を最初に固定した者をいう。
七  商業用レコード 市販の目的をもつて製作されるレコードの複製物をいう。
七の二  公衆送信 公衆によつて直接受信されることを目的として無線通信又は有線電気通信の送信(電気通信設備で、その一の部分の設置の場所が他の部分の設置の場所と同一の構内(その構内が二以上の者の占有に属している場合には、同一の者の占有に属する区域内)にあるものによる送信(プログラムの著作物の送信を除く。)を除く。)を行うことをいう。
八  放送 公衆送信のうち、公衆によつて同一の内容の送信が同時に受信されることを目的として行う無線通信の送信をいう。
九  放送事業者 放送を業として行なう者をいう。
九の二  有線放送 公衆送信のうち、公衆によつて同一の内容の送信が同時に受信されることを目的として行う有線電気通信の送信をいう。
九の三  有線放送事業者 有線放送を業として行う者をいう。
九の四  自動公衆送信 公衆送信のうち、公衆からの求めに応じ自動的に行うもの(放送又は有線放送に該当するものを除く。)をいう。
九の五  送信可能化 次のいずれかに掲げる行為により自動公衆送信し得るようにすることをいう。
イ 公衆の用に供されている電気通信回線に接続している自動公衆送信装置(公衆の用に供する電気通信回線に接続することにより、その記録媒体のうち自動公衆送信の用に供する部分(以下この号において「公衆送信用記録媒体」という。)に記録され、又は当該装置に入力される情報を自動公衆送信する機能を有する装置をいう。以下同じ。)の公衆送信用記録媒体に情報を記録し、情報が記録された記録媒体を当該自動公衆送信装置の公衆送信用記録媒体として加え、若しくは情報が記録された記録媒体を当該自動公衆送信装置の公衆送信用記録媒体に変換し、又は当該自動公衆送信装置に情報を入力すること。
ロ その公衆送信用記録媒体に情報が記録され、又は当該自動公衆送信装置に情報が入力されている自動公衆送信装置について、公衆の用に供されている電気通信回線への接続(配線、自動公衆送信装置の始動、送受信用プログラムの起動その他の一連の行為により行われる場合には、当該一連の行為のうち最後のものをいう。)を行うこと。
十  映画製作者 映画の著作物の製作に発意と責任を有する者をいう。
十の二  プログラム 電子計算機を機能させて一の結果を得ることができるようにこれに対する指令を組み合わせたものとして表現したものをいう。
十の三  データベース 論文、数値、図形その他の情報の集合物であつて、それらの情報を電子計算機を用いて検索することができるように体系的に構成したものをいう。
十一  二次的著作物 著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案することにより創作した著作物をいう。
十二  共同著作物 二人以上の者が共同して創作した著作物であつて、その各人の寄与を分離して個別的に利用することができないものをいう。
十三  録音 音を物に固定し、又はその固定物を増製することをいう。
十四  録画 影像を連続して物に固定し、又はその固定物を増製することをいう。
十五  複製 印刷、写真、複写、録音、録画その他の方法により有形的に再製することをいい、次に掲げるものについては、それぞれ次に掲げる行為を含むものとする。
イ 脚本その他これに類する演劇用の著作物 当該著作物の上演、放送又は有線放送を録音し、又は録画すること。
ロ 建築の著作物 建築に関する図面に従つて建築物を完成すること。
十六  上演 演奏(歌唱を含む。以下同じ。)以外の方法により著作物を演ずることをいう。
十七  上映 著作物(公衆送信されるものを除く。)を映写幕その他の物に映写することをいい、これに伴つて映画の著作物において固定されている音を再生することを含むものとする。
十八  口述 朗読その他の方法により著作物を口頭で伝達すること(実演に該当するものを除く。)をいう。
十九  頒布 有償であるか又は無償であるかを問わず、複製物を公衆に譲渡し、又は貸与することをいい、映画の著作物又は映画の著作物において複製されている著作物にあつては、これらの著作物を公衆に提示することを目的として当該映画の著作物の複製物を譲渡し、又は貸与することを含むものとする。
二十  技術的保護手段 電子的方法、磁気的方法その他の人の知覚によつて認識することができない方法(次号において「電磁的方法」という。)により、第十七条第一項に規定する著作者人格権若しくは著作権又は第八十九条第一項に規定する実演家人格権若しくは同条第六項に規定する著作隣接権(以下この号において「著作権等」という。)を侵害する行為の防止又は抑止(著作権等を侵害する行為の結果に著しい障害を生じさせることによる当該行為の抑止をいう。第三十条第一項第二号において同じ。)をする手段(著作権等を有する者の意思に基づくことなく用いられているものを除く。)であつて、著作物、実演、レコード、放送又は有線放送(次号において「著作物等」という。)の利用(著作者又は実演家の同意を得ないで行つたとしたならば著作者人格権又は実演家人格権の侵害となるべき行為を含む。)に際しこれに用いられる機器が特定の反応をする信号を著作物、実演、レコード又は放送若しくは有線放送に係る音若しくは影像とともに記録媒体に記録し、又は送信する方式によるものをいう。
二十一  権利管理情報 第十七条第一項に規定する著作者人格権若しくは著作権又は第八十九条第一項から第四項までの権利(以下この号において「著作権等」という。)に関する情報であつて、イからハまでのいずれかに該当するもののうち、電磁的方法により著作物、実演、レコード又は放送若しくは有線放送に係る音若しくは影像とともに記録媒体に記録され、又は送信されるもの(著作物等の利用状況の把握、著作物等の利用の許諾に係る事務処理その他の著作権等の管理(電子計算機によるものに限る。)に用いられていないものを除く。)をいう。
イ 著作物等、著作権等を有する者その他政令で定める事項を特定する情報
ロ 著作物等の利用を許諾する場合の利用方法及び条件に関する情報
ハ 他の情報と照合することによりイ又はロに掲げる事項を特定することができることとなる情報
二十二  国内 この法律の施行地をいう。
二十三  国外 この法律の施行地外の地域をいう。
2  この法律にいう「美術の著作物」には、美術工芸品を含むものとする。
3  この法律にいう「映画の著作物」には、映画の効果に類似する視覚的又は視聴覚的効果を生じさせる方法で表現され、かつ、物に固定されている著作物を含むものとする。
4  この法律にいう「写真の著作物」には、写真の製作方法に類似する方法を用いて表現される著作物を含むものとする。
5  この法律にいう「公衆」には、特定かつ多数の者を含むものとする。
6  この法律にいう「法人」には、法人格を有しない社団又は財団で代表者又は管理人の定めがあるものを含むものとする。
7  この法律において、「上演」、「演奏」又は「口述」には、著作物の上演、演奏又は口述で録音され、又は録画されたものを再生すること(公衆送信又は上映に該当するものを除く。)及び著作物の上演、演奏又は口述を電気通信設備を用いて伝達すること(公衆送信に該当するものを除く。)を含むものとする。
8  この法律にいう「貸与」には、いずれの名義又は方法をもつてするかを問わず、これと同様の使用の権原を取得させる行為を含むものとする。
9  この法律において、第一項第七号の二、第八号、第九号の二、第九号の四、第九号の五若しくは第十三号から第十九号まで又は前二項に掲げる用語については、それぞれこれらを動詞の語幹として用いる場合を含むものとする。
(著作物の例示)
第十条  この法律にいう著作物を例示すると、おおむね次のとおりである。
一  小説、脚本、論文、講演その他の言語の著作物
二  音楽の著作物
三  舞踊又は無言劇の著作物
四  絵画、版画、彫刻その他の美術の著作物
五  建築の著作物
六  地図又は学術的な性質を有する図面、図表、模型その他の図形の著作物
七  映画の著作物
八  写真の著作物
九  プログラムの著作物
2  事実の伝達にすぎない雑報及び時事の報道は、前項第一号に掲げる著作物に該当しない。
3  第一項第九号に掲げる著作物に対するこの法律による保護は、その著作物を作成するために用いるプログラム言語、規約及び解法に及ばない。この場合において、これらの用語の意義は、次の各号に定めるところによる。
一  プログラム言語 プログラムを表現する手段としての文字その他の記号及びその体系をいう。
二  規約 特定のプログラムにおける前号のプログラム言語の用法についての特別の約束をいう。
三  解法 プログラムにおける電子計算機に対する指令の組合せの方法をいう。
(侵害とみなす行為)
第三節 権利の内容
     第一款 総則
(著作者の権利)
第十七条  著作者は、次条第一項、第十九条第一項及び第二十条第一項に規定する権利(以下「著作者人格権」という。)並びに第二十一条から第二十八条までに規定する権利(以下「著作権」という。)を享有する。
2  著作者人格権及び著作権の享有には、いかなる方式の履行をも要しない。
     第二款 著作者人格権
(公表権)
第十八条  著作者は、その著作物でまだ公表されていないもの(その同意を得ないで公表された著作物を含む。以下この条において同じ。)を公衆に提供し、又は提示する権利を有する。当該著作物を原著作物とする二次的著作物についても、同様とする。
2  著作者は、次の各号に掲げる場合には、当該各号に掲げる行為について同意したものと推定する。
一  その著作物でまだ公表されていないものの著作権を譲渡した場合 当該著作物をその著作権の行使により公衆に提供し、又は提示すること。
二  その美術の著作物又は写真の著作物でまだ公表されていないものの原作品を譲渡した場合 これらの著作物をその原作品による展示の方法で公衆に提示すること。
三  第二十九条の規定によりその映画の著作物の著作権が映画製作者に帰属した場合 当該著作物をその著作権の行使により公衆に提供し、又は提示すること。
3  著作者は、次の各号に掲げる場合には、当該各号に掲げる行為について同意したものとみなす。
一  その著作物でまだ公表されていないものを行政機関(行政機関の保有する情報の公開に関する法律 (平成十一年法律第四十二号。以下「行政機関情報公開法」という。)第二条第一項 に規定する行政機関をいう。以下同じ。)に提供した場合(行政機関情報公開法第九条第一項 の規定による開示する旨の決定の時までに別段の意思表示をした場合を除く。) 行政機関情報公開法 の規定により行政機関の長が当該著作物を公衆に提供し、又は提示すること。
二  その著作物でまだ公表されていないものを独立行政法人等(独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律 (平成十三年法律第百四十号。以下「独立行政法人等情報公開法」という。)第二条第一項 に規定する独立行政法人等をいう。以下同じ。)に提供した場合(独立行政法人等情報公開法第九条第一項 の規定による開示する旨の決定の時までに別段の意思表示をした場合を除く。) 独立行政法人等情報公開法 の規定により当該独立行政法人等が当該著作物を公衆に提供し、又は提示すること。
三  その著作物でまだ公表されていないものを地方公共団体又は地方独立行政法人に提供した場合(開示する旨の決定の時までに別段の意思表示をした場合を除く。) 情報公開条例(地方公共団体又は地方独立行政法人の保有する情報の公開を請求する住民等の権利について定める当該地方公共団体の条例をいう。以下同じ。)の規定により当該地方公共団体の機関又は地方独立行政法人が当該著作物を公衆に提供し、又は提示すること。
4  第一項の規定は、次の各号のいずれかに該当するときは、適用しない。
一  行政機関情報公開法第五条 の規定により行政機関の長が同条第一号 ロ若しくはハ若しくは同条第二号 ただし書に規定する情報が記録されている著作物でまだ公表されていないものを公衆に提供し、若しくは提示するとき、又は行政機関情報公開法第七条 の規定により行政機関の長が著作物でまだ公表されていないものを公衆に提供し、若しくは提示するとき。
二  独立行政法人等情報公開法第五条 の規定により独立行政法人等が同条第一号 ロ若しくはハ若しくは同条第二号 ただし書に規定する情報が記録されている著作物でまだ公表されていないものを公衆に提供し、若しくは提示するとき、又は独立行政法人等情報公開法第七条 の規定により独立行政法人等が著作物でまだ公表されていないものを公衆に提供し、若しくは提示するとき。
三  情報公開条例(行政機関情報公開法第十三条第二項 及び第三項 に相当する規定を設けているものに限る。第五号において同じ。)の規定により地方公共団体の機関又は地方独立行政法人が著作物でまだ公表されていないもの(行政機関情報公開法第五条第一号 ロ又は同条第二号 ただし書に規定する情報に相当する情報が記録されているものに限る。)を公衆に提供し、又は提示するとき。
四  情報公開条例の規定により地方公共団体の機関又は地方独立行政法人が著作物でまだ公表されていないもの(行政機関情報公開法第五条第一号 ハに規定する情報に相当する情報が記録されているものに限る。)を公衆に提供し、又は提示するとき。
五  情報公開条例の規定で行政機関情報公開法第七条 の規定に相当するものにより地方公共団体の機関又は地方独立行政法人が著作物でまだ公表されていないものを公衆に提供し、又は提示するとき。
(氏名表示権)
第十九条  著作者は、その著作物の原作品に、又はその著作物の公衆への提供若しくは提示に際し、その実名若しくは変名を著作者名として表示し、又は著作者名を表示しないこととする権利を有する。その著作物を原著作物とする二次的著作物の公衆への提供又は提示に際しての原著作物の著作者名の表示についても、同様とする。
2  著作物を利用する者は、その著作者の別段の意思表示がない限り、その著作物につきすでに著作者が表示しているところに従つて著作者名を表示することができる。
3  著作者名の表示は、著作物の利用の目的及び態様に照らし著作者が創作者であることを主張する利益を害するおそれがないと認められるときは、公正な慣行に反しない限り、省略することができる。
4  第一項の規定は、次の各号のいずれかに該当するときは、適用しない。
一  行政機関情報公開法 、独立行政法人等情報公開法 又は情報公開条例の規定により行政機関の長、独立行政法人等又は地方公共団体の機関若しくは地方独立行政法人が著作物を公衆に提供し、又は提示する場合において、当該著作物につき既にその著作者が表示しているところに従つて著作者名を表示するとき。
二  行政機関情報公開法第六条第二項 の規定、独立行政法人等情報公開法第六条第二項 の規定又は情報公開条例の規定で行政機関情報公開法第六条第二項 の規定に相当するものにより行政機関の長、独立行政法人等又は地方公共団体の機関若しくは地方独立行政法人が著作物を公衆に提供し、又は提示する場合において、当該著作物の著作者名の表示を省略することとなるとき。
(同一性保持権)
第二十条  著作者は、その著作物及びその題号の同一性を保持する権利を有し、その意に反してこれらの変更、切除その他の改変を受けないものとする。
2  前項の規定は、次の各号のいずれかに該当する改変については、適用しない。
一  第三十三条第一項(同条第四項において準用する場合を含む。)、第三十三条の二第一項又は第三十四条第一項の規定により著作物を利用する場合における用字又は用語の変更その他の改変で、学校教育の目的上やむを得ないと認められるもの
二  建築物の増築、改築、修繕又は模様替えによる改変
三  特定の電子計算機においては利用し得ないプログラムの著作物を当該電子計算機において利用し得るようにするため、又はプログラムの著作物を電子計算機においてより効果的に利用し得るようにするために必要な改変
四  前三号に掲げるもののほか、著作物の性質並びにその利用の目的及び態様に照らしやむを得ないと認められる改変
     第三款 著作権に含まれる権利の種類
(複製権)
第二十一条  著作者は、その著作物を複製する権利を専有する。
(上演権及び演奏権)
第二十二条  著作者は、その著作物を、公衆に直接見せ又は聞かせることを目的として(以下「公に」という。)上演し、又は演奏する権利を専有する。
(上映権)
第二十二条の二  著作者は、その著作物を公に上映する権利を専有する。
(公衆送信権等)
第二十三条  著作者は、その著作物について、公衆送信(自動公衆送信の場合にあつては、送信可能化を含む。)を行う権利を専有する。
2  著作者は、公衆送信されるその著作物を受信装置を用いて公に伝達する権利を専有する。
(口述権)
第二十四条  著作者は、その言語の著作物を公に口述する権利を専有する。
(展示権)
第二十五条  著作者は、その美術の著作物又はまだ発行されていない写真の著作物をこれらの原作品により公に展示する権利を専有する。
(頒布権)
第二十六条  著作者は、その映画の著作物をその複製物により頒布する権利を専有する。
2  著作者は、映画の著作物において複製されているその著作物を当該映画の著作物の複製物により頒布する権利を専有する。
(譲渡権)
第二十六条の二  著作者は、その著作物(映画の著作物を除く。以下この条において同じ。)をその原作品又は複製物(映画の著作物において複製されている著作物にあつては、当該映画の著作物の複製物を除く。以下この条において同じ。)の譲渡により公衆に提供する権利を専有する。
2  前項の規定は、著作物の原作品又は複製物で次の各号のいずれかに該当するものの譲渡による場合には、適用しない。
一  前項に規定する権利を有する者又はその許諾を得た者により公衆に譲渡された著作物の原作品又は複製物
二  第六十七条第一項若しくは第六十九条の規定による裁定又は万国著作権条約の実施に伴う著作権法の特例に関する法律 (昭和三十一年法律第八十六号)第五条第一項 の規定による許可を受けて公衆に譲渡された著作物の複製物
三  第六十七条の二第一項の規定の適用を受けて公衆に譲渡された著作物の複製物
四  前項に規定する権利を有する者又はその承諾を得た者により特定かつ少数の者に譲渡された著作物の原作品又は複製物
五  国外において、前項に規定する権利に相当する権利を害することなく、又は同項に規定する権利に相当する権利を有する者若しくはその承諾を得た者により譲渡された著作物の原作品又は複製物
(貸与権)
第二十六条の三  著作者は、その著作物(映画の著作物を除く。)をその複製物(映画の著作物において複製されている著作物にあつては、当該映画の著作物の複製物を除く。)の貸与により公衆に提供する権利を専有する。
(翻訳権、翻案権等)
第二十七条  著作者は、その著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案する権利を専有する。
(二次的著作物の利用に関する原著作者の権利)
第二十八条  二次的著作物の原著作物の著作者は、当該二次的著作物の利用に関し、この款に規定する権利で当該二次的著作物の著作者が有するものと同一の種類の権利を専有する。
(差止請求権)
第百十二条  著作者、著作権者、出版権者、実演家又は著作隣接権者は、その著作者人格権、著作権、出版権、実演家人格権又は著作隣接権を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる。
2  著作者、著作権者、出版権者、実演家又は著作隣接権者は、前項の規定による請求をするに際し、侵害の行為を組成した物、侵害の行為によつて作成された物又は専ら侵害の行為に供された機械若しくは器具の廃棄その他の侵害の停止又は予防に必要な措置を請求することができる。
第百十三条  次に掲げる行為は、当該著作者人格権、著作権、出版権、実演家人格権又は著作隣接権を侵害する行為とみなす。
一  国内において頒布する目的をもつて、輸入の時において国内で作成したとしたならば著作者人格権、著作権、出版権、実演家人格権又は著作隣接権の侵害となるべき行為によつて作成された物を輸入する行為
二  著作者人格権、著作権、出版権、実演家人格権又は著作隣接権を侵害する行為によつて作成された物(前号の輸入に係る物を含む。)を、情を知つて、頒布し、若しくは頒布の目的をもつて所持し、又は業として輸出し、若しくは業としての輸出の目的をもつて所持する行為
2  プログラムの著作物の著作権を侵害する行為によつて作成された複製物(当該複製物の所有者によつて第四十七条の二第一項の規定により作成された複製物並びに前項第一号の輸入に係るプログラムの著作物の複製物及び当該複製物の所有者によつて同条第一項の規定により作成された複製物を含む。)を業務上電子計算機において使用する行為は、これらの複製物を使用する権原を取得した時に情を知つていた場合に限り、当該著作権を侵害する行為とみなす。
3  次に掲げる行為は、当該権利管理情報に係る著作者人格権、著作権、実演家人格権又は著作隣接権を侵害する行為とみなす。
一  権利管理情報として虚偽の情報を故意に付加する行為
二  権利管理情報を故意に除去し、又は改変する行為(記録又は送信の方式の変換に伴う技術的な制約による場合その他の著作物又は実演等の利用の目的及び態様に照らしやむを得ないと認められる場合を除く。)
三  前二号の行為が行われた著作物若しくは実演等の複製物を、情を知つて、頒布し、若しくは頒布の目的をもつて輸入し、若しくは所持し、又は当該著作物若しくは実演等を情を知つて公衆送信し、若しくは送信可能化する行為
4  第九十四条の二、第九十五条の三第三項若しくは第九十七条の三第三項に規定する報酬又は第九十五条第一項若しくは第九十七条第一項に規定する二次使用料を受ける権利は、前項の規定の適用については、著作隣接権とみなす。この場合において、前条中「著作隣接権者」とあるのは「著作隣接権者(次条第四項の規定により著作隣接権とみなされる権利を有する者を含む。)」と、同条第一項中「著作隣接権」とあるのは「著作隣接権(同項の規定により著作隣接権とみなされる権利を含む。)」とする。
5  国内において頒布することを目的とする商業用レコード(以下この項において「国内頒布目的商業用レコード」という。)を自ら発行し、又は他の者に発行させている著作権者又は著作隣接権者が、当該国内頒布目的商業用レコードと同一の商業用レコードであつて、専ら国外において頒布することを目的とするもの(以下この項において「国外頒布目的商業用レコード」という。)を国外において自ら発行し、又は他の者に発行させている場合において、情を知つて、当該国外頒布目的商業用レコードを国内において頒布する目的をもつて輸入する行為又は当該国外頒布目的商業用レコードを国内において頒布し、若しくは国内において頒布する目的をもつて所持する行為は、当該国外頒布目的商業用レコードが国内で頒布されることにより当該国内頒布目的商業用レコードの発行により当該著作権者又は著作隣接権者の得ることが見込まれる利益が不当に害されることとなる場合に限り、それらの著作権又は著作隣接権を侵害する行為とみなす。ただし、国内において最初に発行された日から起算して七年を超えない範囲内において政令で定める期間を経過した国内頒布目的商業用レコードと同一の国外頒布目的商業用レコードを輸入する行為又は当該国外頒布目的商業用レコードを国内において頒布し、若しくは国内において頒布する目的をもつて所持する行為については、この限りでない。
6  著作者の名誉又は声望を害する方法によりその著作物を利用する行為は、その著作者人格権を侵害する行為とみなす。
(損害の額の推定等)
第百十四条  著作権者、出版権者又は著作隣接権者(以下この項において「著作権者等」という。)が故意又は過失により自己の著作権、出版権又は著作隣接権を侵害した者に対しその侵害により自己が受けた損害の賠償を請求する場合において、その者がその侵害の行為によつて作成された物を譲渡し、又はその侵害の行為を組成する公衆送信(自動公衆送信の場合にあつては、送信可能化を含む。)を行つたときは、その譲渡した物の数量又はその公衆送信が公衆によつて受信されることにより作成された著作物若しくは実演等の複製物(以下この項において「受信複製物」という。)の数量(以下この項において「譲渡等数量」という。)に、著作権者等がその侵害の行為がなければ販売することができた物(受信複製物を含む。)の単位数量当たりの利益の額を乗じて得た額を、著作権者等の当該物に係る販売その他の行為を行う能力に応じた額を超えない限度において、著作権者等が受けた損害の額とすることができる。ただし、譲渡等数量の全部又は一部に相当する数量を著作権者等が販売することができないとする事情があるときは、当該事情に相当する数量に応じた額を控除するものとする。
2  著作権者、出版権者又は著作隣接権者が故意又は過失によりその著作権、出版権又は著作隣接権を侵害した者に対しその侵害により自己が受けた損害の賠償を請求する場合において、その者がその侵害の行為により利益を受けているときは、その利益の額は、当該著作権者、出版権者又は著作隣接権者が受けた損害の額と推定する。
3  著作権者又は著作隣接権者は、故意又は過失によりその著作権又は著作隣接権を侵害した者に対し、その著作権又は著作隣接権の行使につき受けるべき金銭の額に相当する額を自己が受けた損害の額として、その賠償を請求することができる。
4  前項の規定は、同項に規定する金額を超える損害の賠償の請求を妨げない。この場合において、著作権又は著作隣接権を侵害した者に故意又は重大な過失がなかつたときは、裁判所は、損害の賠償の額を定めるについて、これを参酌することができる。
(具体的態様の明示義務)
第百十四条の二  著作者人格権、著作権、出版権、実演家人格権又は著作隣接権の侵害に係る訴訟において、著作者、著作権者、出版権者、実演家又は著作隣接権者が侵害の行為を組成したもの又は侵害の行為によつて作成されたものとして主張する物の具体的態様を否認するときは、相手方は、自己の行為の具体的態様を明らかにしなければならない。ただし、相手方において明らかにすることができない相当の理由があるときは、この限りでない。
(書類の提出等)
第百十四条の三  裁判所は、著作者人格権、著作権、出版権、実演家人格権又は著作隣接権の侵害に係る訴訟においては、当事者の申立てにより、当事者に対し、当該侵害の行為について立証するため、又は当該侵害の行為による損害の計算をするため必要な書類の提出を命ずることができる。ただし、その書類の所持者においてその提出を拒むことについて正当な理由があるときは、この限りでない。
2  裁判所は、前項ただし書に規定する正当な理由があるかどうかの判断をするため必要があると認めるときは、書類の所持者にその提示をさせることができる。この場合においては、何人も、その提示された書類の開示を求めることができない。
3  裁判所は、前項の場合において、第一項ただし書に規定する正当な理由があるかどうかについて前項後段の書類を開示してその意見を聴くことが必要であると認めるときは、当事者等(当事者(法人である場合にあつては、その代表者)又は当事者の代理人(訴訟代理人及び補佐人を除く。)、使用人その他の従業者をいう。第百十四条の六第一項において同じ。)、訴訟代理人又は補佐人に対し、当該書類を開示することができる。
4  前三項の規定は、著作者人格権、著作権、出版権、実演家人格権又は著作隣接権の侵害に係る訴訟における当該侵害の行為について立証するため必要な検証の目的の提示について準用する。
(鑑定人に対する当事者の説明義務)
第百十四条の四  著作権、出版権又は著作隣接権の侵害に係る訴訟において、当事者の申立てにより、裁判所が当該侵害の行為による損害の計算をするため必要な事項について鑑定を命じたときは、当事者は、鑑定人に対し、当該鑑定をするため必要な事項について説明しなければならない。
(相当な損害額の認定)
第百十四条の五  著作権、出版権又は著作隣接権の侵害に係る訴訟において、損害が生じたことが認められる場合において、損害額を立証するために必要な事実を立証することが当該事実の性質上極めて困難であるときは、裁判所は、口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果に基づき、相当な損害額を認定することができる。
(名誉回復等の措置)
第百十五条  著作者又は実演家は、故意又は過失によりその著作者人格権又は実演家人格権を侵害した者に対し、損害の賠償に代えて、又は損害の賠償とともに、著作者又は実演家であることを確保し、又は訂正その他著作者若しくは実演家の名誉若しくは声望を回復するために適当な措置を請求することができる。
第八章 罰則
第百十九条  著作権、出版権又は著作隣接権を侵害した者(第三十条第一項(第百二条第一項において準用する場合を含む。)に定める私的使用の目的をもつて自ら著作物若しくは実演等の複製を行つた者、第百十三条第三項の規定により著作権若しくは著作隣接権(同条第四項の規定により著作隣接権とみなされる権利を含む。第百二十条の二第三号において同じ。)を侵害する行為とみなされる行為を行つた者、第百十三条第五項の規定により著作権若しくは著作隣接権を侵害する行為とみなされる行為を行つた者又は次項第三号若しくは第四号に掲げる者を除く。)は、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
2  次の各号のいずれかに該当する者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一  著作者人格権又は実演家人格権を侵害した者(第百十三条第三項の規定により著作者人格権又は実演家人格権を侵害する行為とみなされる行為を行つた者を除く。)
二  営利を目的として、第三十条第一項第一号に規定する自動複製機器を著作権、出版権又は著作隣接権の侵害となる著作物又は実演等の複製に使用させた者
三  第百十三条第一項の規定により著作権、出版権又は著作隣接権を侵害する行為とみなされる行為を行つた者
四  第百十三条第二項の規定により著作権を侵害する行為とみなされる行為を行つた者

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