新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.1000、2010/1/28 12:50 https://www.shinginza.com/jitsumu.htm

法の支配と民事訴訟実務入門(平成20年9月25日改訂)
【各論21、強制執行を自分でやる】

質問:貸金返還請求訴訟をして判決を貰いましたが債務者は支払いません。強制執行をしたいので、手続きについて教えて下さい。

回答

1. 総論17で述べたように金銭請求権を有する債権者は、債務名義及び強制執行の必要書類(執行文、送達証明)が備われば、不動産、動産、債権、その他の財産権(執行法43条以下、167条)に強制執行が可能です。金銭債権以外(例えば、目的物引き渡し請求)でも債権の目的が実現できるように手続きが用意されています(執行法168条以下)。

2. 総論で述べたように判決手続きと執行手続きは、権利の公正・公平の実現を果たすため分離されており、強制執行でも独自の手続きが必要となっています。

解説

1 自分で強制執行ができるか
  判決を得ることができれば、強制執行の申し立ては容易です。問題は、債務者の財産を見つけることができるかです。判決はただ、債務の履行を命じるだけで、強制執行は別に債務者の財産を特定して申し立てる必要があり、その特定の財産は債権者が明らかにして裁判所に申し立てる必要があるからです。裁判所が、債務者の一般財産に対して強制執行をするような手続きは破産等の特別な手続きを除いては残念ながらありません。なお、債務者の財産については弁護士でも調査することはできません。

2 どのような強制執行があるか
強制執行については民事執行法に定められています。大きく分けると金銭の支払いを目的とする請求権についての強制執行とそれ以外の請求権の強制執行に分けられます。
金銭の支払いを目的とするものには
@ 不動産執行(債務者所有の土地、建物を売却する強制競売と強制管理)
A 船舶執行(船舶を売却する強制競売)
B 動産執行(債務者所有の動産を売却する強制執行)
C 債権執行(債務者の預金や売掛金等の第三債務者に対する債権から回収する強制執行)
D その他の財産に対する強制執行
があります。また、少額訴訟による判決の場合は特に簡易裁判所による少額訴訟債権執行(民事執行法167の2以下)が定められています。
金銭の支払いを目的としないものには(民事執行法168以下)
@ 不動産等の引き渡し執行(建物を明け渡せという債務名義の強制執行)
A 動産引き渡し執行(特定の動産の引き渡しを命じる債務名義の強制執行)
B 代替執行(たとえば新聞に謝罪広告を出すことを命じる債務名義の強制執行)
C 間接強制(たとえば通行を妨害してはならないことを命じる債務名義の強制執行)
があります。

3 必要な書類 
請求権と強制執行の対象物により強制執行は上記のように分類されますが、必要な書類として共通のものがありますので、申し立てる準備として説明します。
@ 執行分の付与された債務名義の正本
A 債務名義送達証明書
この二点の書類は、強制執行するための根拠となる書類ですので、必ず必要になります。「債務名義」については民事執行法22条に規定されています。裁判をして獲得した確定判決や仮執行宣言付きの支払督促などで、強制執行する権利があることが裁判所(公正証書の場合は公証役場)において認めらえたことが記載されている書面です。執行文というのは、この債務名義に基づいて強制執行ができることを記載した文書で、「執行分付与の申し立て」を債務名義を発行した裁判所に対して別途申し立ててもらうことになっています。執行分の付与に、判決が確定していることの証明書が必要、あるいは条件が成就しないと強制執行ができない債務名義については条件が成就したことを証明する必要があるものもありますので、裁判所に確認したほうが良いでしょう。
次に各強制執行の概略を説明します。なお、これらの申立書や必要書類の書式については東京地方裁判所民事執行センターのホームページに詳しく記載されていますので、ダウンロードすると良いでしょう。

4 不動産強制競売について
    債務者の名義で登記された不動産(土地建物)について、その所在する地方裁判所が、差押登記をし、期間入札などの方法で強制的に売却しその代金から配当する手続きです。申立さえすれば差押えの登記から売却までの手続きを裁判所がしてくれますが、そのための費用(執行費用)は予納金と言ってあらかじめ申立人が裁判所に支払う必要があります(民事執行法14条。民事訴訟費用等に関する法律2条参照)。予納金の金額は、請求金額ごとに決められています。東京地方裁判所では次のとおりです。
請求債権額が2000万円未満…………………………  60万円
   請求債権額が2000万円以上5000万円未満………100万円
   請求債権額が5000万円以上1億円未満…………… 150万円
   請求債権額が1億円以上………………………………  200万円
また、申立書に請求権1個につき4000円の収入印紙を貼付することになっています。)。
予納金は競売をした代金から、はじめに返済に充てられますが(執行費用債務者負担の原則。執行法42条)、申し立ててから配当まで平均すると1年くらいかかりますから、負担となることは否定できません。また、不動産に抵当権が付いている場合は抵当権者が優先しますので、残余の金額しか配当にはなりません。そこで、申し立てをするか否かは優先順位の抵当権の登記があるか否か確認する必要があります。

5 不動産強制管理
これは、裁判所が不動産を差し押さえ、売却ではなく管理人に管理させて賃料等の収益をあげ、そこから配当して債権者に弁済する手続です。家賃収入がたくさんある場合は有効な方法ですが、管理人の費用や時間がかかるため、また、賃料の差し押さえという手続きもあることから、実務ではあまり見られない手続です。

6 船舶執行
総トン数20トン以上の船舶を差し押さえて地方裁判所が売却する手続です。それより小さい船舶については動産執行によりますから、船舶執行は一般市民にはあまり関係がない手続きです。

7 動産執行
動産とは、不動産以外の物をさすのですが(民法85)、土地の定着物も登記できないもの(たとえば植木)については動産執行の対象とされています(民執12)。
動産の執行は執行官が場所を特定して行うことになっていますから、債務者の動産が所在する土地を管轄する地方裁判所に所属している執行官に申し立てることになります。執行官は、動産の所在場所に出向き、動産を差し押さえ、後日これを入札やせり売り等の手続きで売却し代金を配当します。動産がなかったりあるいは債務者の所有でないと執行官が判断した場合には執行はできず終了します。申立の費用は東京地方裁判所で35,000円です
申立の際には、動産のある場所を特定するだけで、動産の内容について具体的に記載する必要はありません。現金も動産ですが、66万円以下の現金は差押禁止動産とされています(民執131.3)。

8 債権執行
債務者の第三者(「第三債務者」といいます。)に対する債権、たとえば債務者が第三者に不動産を売却したが、売買代金が未払いの場合の代金請求権に対する執行手続です。これは、裁判所(債務者又は第三債務者の住所地を管轄する裁判所、執行法144条)に債権差押命令を申し立てることによって行います。また、債務者の給料債権(執行法151条、152条。実質給料の4/1のみ対象。将来の給料支払いにも及びます)、銀行の預金も銀行に対する債権ですから差押命令の対象になります。 強制執行は債務者が任意に支払わないから必要となるので執行費用も請求債権になりますし金銭債権の場合手続き簡素化が認められ債務名義も不要です(執行法42条1項、2項、執行費用債務者負担の原則)。裁判所の債権差押命令はまず第三債務者に送達され、送達後第三債務者は返済してはならないことになり(執行法145条)、かりに債務者に返済しても差押権者との関係では弁済は無効となります。債権者は、命令の後、第三債務者に支払いを請求して回収します。債権があるのに第三債務者が支払わない場合は、第三債務者を被告として裁判をすることができます。これを取り立て訴訟と言います。

【書式 債権に対する強制執行】

―――――――――――――――――――――――――――――――――――   
      債権差押命令申立書

(印紙)
平成20年3月 1日

東京地方裁判所   部 御中

            (当事者)
(請求債権)
            (差押債権)
以上は別紙目録記載の通りである。

  債権者は、債務者に対して別紙請求債権目録記載の執行力ある判決正本に表示された上記請求債権を有しているが、債務者が支払いに応じないので、右債務者が第三債務者に対して有している別紙差押債権目録記載の債権の差押命令を求める。

         債権者     氏       名    印

以上

添 付 書 類

 執行力ある判決の正本   1通
 判決の送達証明書
 資格証明書(当事者が法人の場合)

            当事者目録

104-0010  東京都中央区銀座4丁目1番5号
      債権者     氏       名  
  
105-0021  東京都千代田区平河町5丁目1番6号
      債務者     氏       名 

106-0031  東京都新宿区高田馬場7丁目1番9号
      第三債務者   氏       名(株式会社  名前) 
              代表者代表取締役  氏    名 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

         請求債権目録

東京地方裁判所平成18年(ワ)第151事件判決正本に表示された下記金員
(1)元本   金 5,000,000円

(2)利息金   金  500,000円
       上記(1)に対する平成17年2月1日から平成19年1月31日まで年5分の割合による利息金

(3)損害金    金 250,000 円
 
上記(1)に対する平成19年2月1日から平成20年1月31日まで年5分の割合による損害金

(4)執行費用   金         円
     内訳 
       本件申立手数料   金       円
       資格証明交付手数料 金       円 
       差押命令送達料   金       円 
       執行文交付手数料  金       円
       債務名義送達費用  金       円 
     合計   金         円

        
差押債権目録

金        円
     
債務者が第三債務者から支給される給料(基本給、諸手当、ただし通勤手当を除く)及び賞与にして各支払い期における受ける金額から給与所得税、住民税、社会保険料を控除した残額の四分の一について、頭書の金額にみつるまで。
尚、前期によって弁済しないうちに退社した時は退職金から 給与所得税、住民税を控除した残額の四分の一につき頭書の金額にみつるまで。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

 以上が強制執行手続きの概略です。申立の際には書類がたくさん必要になりますが、それらは全て下記の裁判所民事執行センターのホームページでダウンロードできますし、裁判所で記載の方法も教えてくれます。また、動産執行の手続きは複雑ですので、執行官の意見に従って円滑に執行してもらう必要があります。

参考URL、東京地方裁判所民事執行センター
http://www3.ocn.ne.jp/~tdc21/

≪条文参照≫

民事執行法
第一章 総則
(趣旨)
第一条  強制執行、担保権の実行としての競売及び民法(明治二十九年法律第八十九号)、商法 (明治三十二年法律第四十八号)その他の法律の規定による換価のための競売並びに債務者の財産の開示(以下「民事執行」と総称する。)については、他の法令に定めるもののほか、この法律の定めるところによる。
(執行機関)
第二条  民事執行は、申立てにより、裁判所又は執行官が行う。
(執行裁判所)
第三条  裁判所が行う民事執行に関してはこの法律の規定により執行処分を行うべき裁判所をもつて、執行官が行う執行処分に関してはその執行官の所属する地方裁判所をもつて執行裁判所とする。
(任意的口頭弁論)
第四条  執行裁判所のする裁判は、口頭弁論を経ないですることができる。
(審尋)
第五条  執行裁判所は、執行処分をするに際し、必要があると認めるときは、利害関係を有する者その他参考人を審尋することができる。
(執行官等の職務の執行の確保)
第六条  執行官は、職務の執行に際し抵抗を受けるときは、その抵抗を排除するために、威力を用い、又は警察上の援助を求めることができる。ただし、第六十四条の二第五項(第百八十八条において準用する場合を含む。)の規定に基づく職務の執行については、この限りでない。
2  執行官以外の者で執行裁判所の命令により民事執行に関する職務を行うものは、職務の執行に際し抵抗を受けるときは、執行官に対し、援助を求めることができる。
(立会人)
第七条  執行官又は執行裁判所の命令により民事執行に関する職務を行う者(以下「執行官等」という。)は、人の住居に立ち入つて職務を執行するに際し、住居主、その代理人又は同居の親族若しくは使用人その他の従業者で相当のわきまえのあるものに出会わないときは、市町村の職員、警察官その他証人として相当と認められる者を立ち会わせなければならない。執行官が前条第一項の規定により威力を用い、又は警察上の援助を受けるときも、同様とする。
(休日又は夜間の執行)
第八条  執行官等は、日曜日その他の一般の休日又は午後七時から翌日の午前七時までの間に人の住居に立ち入つて職務を執行するには、執行裁判所の許可を受けなければならない。
2  執行官等は、職務の執行に当たり、前項の規定により許可を受けたことを証する文書を提示しなければならない。
(身分証明書等の携帯)
第九条  執行官等は、職務を執行する場合には、その身分又は資格を証する文書を携帯し、利害関係を有する者の請求があつたときは、これを提示しなければならない。
(執行抗告)
第十条  民事執行の手続に関する裁判に対しては、特別の定めがある場合に限り、執行抗告をすることができる。
2  執行抗告は、裁判の告知を受けた日から一週間の不変期間内に、抗告状を原裁判所に提出してしなければならない。
3  抗告状に執行抗告の理由の記載がないときは、抗告人は、抗告状を提出した日から一週間以内に、執行抗告の理由書を原裁判所に提出しなければならない。
4  執行抗告の理由は、最高裁判所規則で定めるところにより記載しなければならない。
5  次の各号に該当するときは、原裁判所は、執行抗告を却下しなければならない。
一  抗告人が第三項の規定による執行抗告の理由書の提出をしなかつたとき。
二  執行抗告の理由の記載が明らかに前項の規定に違反しているとき。
三  執行抗告が不適法であつてその不備を補正することができないことが明らかであるとき。
四  執行抗告が民事執行の手続を不当に遅延させることを目的としてされたものであるとき。
6  抗告裁判所は、執行抗告についての裁判が効力を生ずるまでの間、担保を立てさせ、若しくは立てさせないで原裁判の執行の停止若しくは民事執行の手続の全部若しくは一部の停止を命じ、又は担保を立てさせてこれらの続行を命ずることができる。事件の記録が原裁判所に存する間は、原裁判所も、これらの処分を命ずることができる。
7  抗告裁判所は、抗告状又は執行抗告の理由書に記載された理由に限り、調査する。ただし、原裁判に影響を及ぼすべき法令の違反又は事実の誤認の有無については、職権で調査することができる。
8  第五項の規定による決定に対しては、執行抗告をすることができる。
9  第六項の規定による決定に対しては、不服を申し立てることができない。
10  民事訴訟法 (平成八年法律第百九号)第三百四十九条の規定は、執行抗告をすることができる裁判が確定した場合について準用する。
(執行異議)
第十一条  執行裁判所の執行処分で執行抗告をすることができないものに対しては、執行裁判所に執行異議を申し立てることができる。執行官の執行処分及びその遅怠に対しても、同様とする。
2  前条第六項前段及び第九項の規定は、前項の規定による申立てがあつた場合について準用する。
(取消決定等に対する執行抗告)
第十二条  民事執行の手続を取り消す旨の決定に対しては、執行抗告をすることができる。民事執行の手続を取り消す執行官の処分に対する執行異議の申立てを却下する裁判又は執行官に民事執行の手続の取消しを命ずる決定に対しても、同様とする。
2  前項の規定により執行抗告をすることができる裁判は、確定しなければその効力を生じない。
(代理人)
第十三条  民事訴訟法第五十四条第一項 の規定により訴訟代理人となることができる者以外の者は、執行裁判所でする手続については、訴え又は執行抗告に係る手続を除き、執行裁判所の許可を受けて代理人となることができる。
2  執行裁判所は、いつでも前項の許可を取り消すことができる。
(費用の予納等)
第十四条  執行裁判所に対し民事執行の申立てをするときは、申立人は、民事執行の手続に必要な費用として裁判所書記官の定める金額を予納しなければならない。予納した費用が不足する場合において、裁判所書記官が相当の期間を定めてその不足する費用の予納を命じたときも、同様とする。
2  前項の規定による裁判所書記官の処分に対しては、その告知を受けた日から一週間の不変期間内に、執行裁判所に異議を申し立てることができる。
3  第一項の規定による裁判所書記官の処分は、確定しなければその効力を生じない。
4  申立人が費用を予納しないときは、執行裁判所は、民事執行の申立てを却下し、又は民事執行の手続を取り消すことができる。
5  前項の規定により申立てを却下する決定に対しては、執行抗告をすることができる。
(担保の提供)
第十五条  この法律の規定により担保を立てるには、担保を立てるべきことを命じた裁判所(以下この項において「発令裁判所」という。)又は執行裁判所の所在地を管轄する地方裁判所の管轄区域内の供託所に金銭又は発令裁判所が相当と認める有価証券(社債等の振替に関する法律(平成十三年法律第七十五号)第百二十九条第一項に規定する振替社債等を含む。)を供託する方法その他最高裁判所規則で定める方法によらなければならない。ただし、当事者が特別の契約をしたときは、その契約による。
2  民事訴訟法第七十七条 、第七十九条及び第八十条の規定は、前項の担保について準用する。
(送達の特例)
第十六条  民事執行の手続について、執行裁判所に対し申立て、申出若しくは届出をし、又は執行裁判所から文書の送達を受けた者は、送達を受けるべき場所(日本国内に限る。)を執行裁判所に届け出なければならない。この場合においては、送達受取人をも届け出ることができる。
2  民事訴訟法第百四条第二項 及び第三項並びに第百七条 の規定は、前項前段の場合について準用する。
3  第一項前段の規定による届出をしない者(前項において準用する民事訴訟法第百四条第三項に規定する者を除く。)に対する送達は、事件の記録に表れたその者の住所、居所、営業所又は事務所においてする。
4  前項の規定による送達をすべき場合において、第二十条において準用する民事訴訟法第百六条の規定により送達をすることができないときは、裁判所書記官は、同項の住所、居所、営業所又は事務所にあてて、書類を書留郵便又は民間事業者による信書の送達に関する法律(平成十四年法律第九十九号)第二条第六項に規定する一般信書便事業者若しくは同条第九項に規定する特定信書便事業者の提供する同条第二項に規定する信書便の役務のうち書留郵便に準ずるものとして最高裁判所規則で定めるものに付して発送することができる。この場合においては、民事訴訟法第百七条第二項及び第三項 の規定を準用する。
(民事執行の事件の記録の閲覧等)
第十七条  執行裁判所の行う民事執行について、利害関係を有する者は、裁判所書記官に対し、事件の記録の閲覧若しくは謄写、その正本、謄本若しくは抄本の交付又は事件に関する事項の証明書の交付を請求することができる。
(官庁等に対する援助請求等)
第十八条  民事執行のため必要がある場合には、執行裁判所又は執行官は、官庁又は公署に対し、援助を求めることができる。
2  前項に規定する場合には、執行裁判所又は執行官は、民事執行の目的である財産(財産が土地である場合にはその上にある建物を、財産が建物である場合にはその敷地を含む。)に対して課される租税その他の公課について、所管の官庁又は公署に対し、必要な証明書の交付を請求することができる。
3  前項の規定は、民事執行の申立てをしようとする者がその申立てのため同項の証明書を必要とする場合について準用する。
(専属管轄)
第十九条  この法律に規定する裁判所の管轄は、専属とする。
(民事訴訟法 の準用)
第二十条  特別の定めがある場合を除き、民事執行の手続に関しては、民事訴訟法の規定を準用する。
(最高裁判所規則)
第二十一条  この法律に定めるもののほか、民事執行の手続に関し必要な事項は、最高裁判所規則で定める。
第二章 強制執行
    第一節 総則
(債務名義)
第二十二条  強制執行は、次に掲げるもの(以下「債務名義」という。)により行う。
一  確定判決
二  仮執行の宣言を付した判決
三  抗告によらなければ不服を申し立てることができない裁判(確定しなければその効力を生じない裁判にあつては、確定したものに限る。)
四  仮執行の宣言を付した支払督促
四の二  訴訟費用若しくは和解の費用の負担の額を定める裁判所書記官の処分又は第四十二条第四項に規定する執行費用及び返還すべき金銭の額を定める裁判所書記官の処分(後者の処分にあつては、確定したものに限る。)
五  金銭の一定の額の支払又はその他の代替物若しくは有価証券の一定の数量の給付を目的とする請求について公証人が作成した公正証書で、債務者が直ちに強制執行に服する旨の陳述が記載されているもの(以下「執行証書」という。)
六  確定した執行判決のある外国裁判所の判決
六の二  確定した執行決定のある仲裁判断
七  確定判決と同一の効力を有するもの(第三号に掲げる裁判を除く。)
(強制執行をすることができる者の範囲)
第二十三条  執行証書以外の債務名義による強制執行は、次に掲げる者に対し、又はその者のためにすることができる。
一  債務名義に表示された当事者
二  債務名義に表示された当事者が他人のために当事者となつた場合のその他人
三  前二号に掲げる者の債務名義成立後の承継人(前条第一号、第二号又は第六号に掲げる債務名義にあつては、口頭弁論終結後の承継人)
2  執行証書による強制執行は、執行証書に表示された当事者又は執行証書作成後のその承継人に対し、若しくはこれらの者のためにすることができる。
3  第一項に規定する債務名義による強制執行は、同項各号に掲げる者のために請求の目的物を所持する者に対しても、することができる。
(外国裁判所の判決の執行判決)
第二十四条  外国裁判所の判決についての執行判決を求める訴えは、債務者の普通裁判籍の所在地を管轄する地方裁判所が管轄し、この普通裁判籍がないときは、請求の目的又は差し押さえることができる債務者の財産の所在地を管轄する地方裁判所が管轄する。
2  執行判決は、裁判の当否を調査しないでしなければならない。
3  第一項の訴えは、外国裁判所の判決が、確定したことが証明されないとき、又は民事訴訟法第百十八条各号に掲げる要件を具備しないときは、却下しなければならない。
4  執行判決においては、外国裁判所の判決による強制執行を許す旨を宣言しなければならない。
(強制執行の実施)
第二十五条  強制執行は、執行文の付された債務名義の正本に基づいて実施する。ただし、少額訴訟における確定判決又は仮執行の宣言を付した少額訴訟の判決若しくは支払督促により、これに表示された当事者に対し、又はその者のためにする強制執行は、その正本に基づいて実施する。
(執行文の付与)
第二十六条  執行文は、申立てにより、執行証書以外の債務名義については事件の記録の存する裁判所の裁判所書記官が、執行証書についてはその原本を保存する公証人が付与する。
2  執行文の付与は、債権者が債務者に対しその債務名義により強制執行をすることができる場合に、その旨を債務名義の正本の末尾に付記する方法により行う。
第二十七条  請求が債権者の証明すべき事実の到来に係る場合においては、執行文は、債権者がその事実の到来したことを証する文書を提出したときに限り、付与することができる。
2  債務名義に表示された当事者以外の者を債権者又は債務者とする執行文は、その者に対し、又はその者のために強制執行をすることができることが裁判所書記官若しくは公証人に明白であるとき、又は債権者がそのことを証する文書を提出したときに限り、付与することができる。
3  執行文は、債務名義について次に掲げる事由のいずれかがあり、かつ、当該債務名義に基づく不動産の引渡し又は明渡しの強制執行をする前に当該不動産を占有する者を特定することを困難とする特別の事情がある場合において、債権者がこれらを証する文書を提出したときに限り、債務者を特定しないで、付与することができる。
一  債務名義が不動産の引渡し又は明渡しの請求権を表示したものであり、これを本案とする占有移転禁止の仮処分命令(民事保全法(平成元年法律第九十一号)第二十五条の二第一項に規定する占有移転禁止の仮処分命令をいう。)が執行され、かつ、同法第六十二条第一項の規定により当該不動産を占有する者に対して当該債務名義に基づく引渡し又は明渡しの強制執行をすることができるものであること。
二  債務名義が強制競売の手続(担保権の実行としての競売の手続を含む。以下この号において同じ。)における第八十三条第一項本文(第百八十八条において準用する場合を含む。)の規定による命令(以下「引渡命令」という。)であり、当該強制競売の手続において当該引渡命令の引渡義務者に対し次のイからハまでのいずれかの保全処分及び公示保全処分(第五十五条第一項に規定する公示保全処分をいう。以下この項において同じ。)が執行され、かつ、第八十三条の二第一項(第百八十七条第五項又は第百八十八条において準用する場合を含む。)の規定により当該不動産を占有する者に対して当該引渡命令に基づく引渡しの強制執行をすることができるものであること。
イ 第五十五条第一項第三号(第百八十八条において準用する場合を含む。)に掲げる保全処分及び公示保全処分
ロ 第七十七条第一項第三号(第百八十八条において準用する場合を含む。)に掲げる保全処分及び公示保全処分
ハ 第百八十七条第一項に規定する保全処分又は公示保全処分(第五十五条第一項第三号に掲げるものに限る。)
4  前項の執行文の付された債務名義の正本に基づく強制執行は、当該執行文の付与の日から四週間を経過する前であつて、当該強制執行において不動産の占有を解く際にその占有者を特定することができる場合に限り、することができる。
5  第三項の規定により付与された執行文については、前項の規定により当該執行文の付された債務名義の正本に基づく強制執行がされたときは、当該強制執行によつて当該不動産の占有を解かれた者が、債務者となる。
(執行文の再度付与等)
第二十八条  執行文は、債権の完全な弁済を得るため執行文の付された債務名義の正本が数通必要であるとき、又はこれが滅失したときに限り、更に付与することができる。
2  前項の規定は、少額訴訟における確定判決又は仮執行の宣言を付した少額訴訟の判決若しくは支払督促の正本を更に交付する場合について準用する。
(債務名義等の送達)
第二十九条  強制執行は、債務名義又は確定により債務名義となるべき裁判の正本又は謄本が、あらかじめ、又は同時に、債務者に送達されたときに限り、開始することができる。第二十七条の規定により執行文が付与された場合においては、執行文及び同条の規定により債権者が提出した文書の謄本も、あらかじめ、又は同時に、送達されなければならない。
(期限の到来又は担保の提供に係る場合の強制執行)
第三十条  請求が確定期限の到来に係る場合においては、強制執行は、その期限の到来後に限り、開始することができる。
2  担保を立てることを強制執行の実施の条件とする債務名義による強制執行は、債権者が担保を立てたことを証する文書を提出したときに限り、開始することができる。
(反対給付又は他の給付の不履行に係る場合の強制執行)
第三十一条  債務者の給付が反対給付と引換えにすべきものである場合においては、強制執行は、債権者が反対給付又はその提供のあつたことを証明したときに限り、開始することができる。
2  債務者の給付が、他の給付について強制執行の目的を達することができない場合に、他の給付に代えてすべきものであるときは、強制執行は、債権者が他の給付について強制執行の目的を達することができなかつたことを証明したときに限り、開始することができる。
(執行文の付与等に関する異議の申立て)
第三十二条  執行文の付与の申立てに関する処分に対しては、裁判所書記官の処分にあつてはその裁判所書記官の所属する裁判所に、公証人の処分にあつてはその公証人の役場の所在地を管轄する地方裁判所に異議を申し立てることができる。
2  執行文の付与に対し、異議の申立てがあつたときは、裁判所は、異議についての裁判をするまでの間、担保を立てさせ、若しくは立てさせないで強制執行の停止を命じ、又は担保を立てさせてその続行を命ずることができる。急迫の事情があるときは、裁判長も、これらの処分を命ずることができる。
3  第一項の規定による申立てについての裁判及び前項の規定による裁判は、口頭弁論を経ないですることができる。
4  前項に規定する裁判に対しては、不服を申し立てることができない。
5  前各項の規定は、第二十八条第二項の規定による少額訴訟における確定判決又は仮執行の宣言を付した少額訴訟の判決若しくは支払督促の正本の交付について準用する。
(執行文付与の訴え)
第三十三条  第二十七条第一項又は第二項に規定する文書の提出をすることができないときは、債権者は、執行文(同条第三項の規定により付与されるものを除く。)の付与を求めるために、執行文付与の訴えを提起することができる。
2  前項の訴えは、次の各号に掲げる債務名義の区分に応じ、それぞれ当該各号に定める裁判所が管轄する。
一  第二十二条第一号から第三号まで、第六号又は第六号の二に掲げる債務名義及び同条第七号に掲げる債務名義のうち第六号に掲げるもの以外のもの
     第一審裁判所
二  第二十二条第四号に掲げる債務名義のうち次号に掲げるもの以外のもの
     仮執行の宣言を付した支払督促を発した裁判所書記官の所属する簡易裁判所(仮執行の宣言を付した支払督促に係る請求が簡易裁判所の管轄に属しないものであるときは、その簡易裁判所の所在地を管轄する地方裁判所)
三  第二十二条第四号に掲げる債務名義のうち民事訴訟法第百三十二条の十第一項本文の規定による支払督促の申立て又は同法第四百二条第一項に規定する方式により記載された書面をもつてされた支払督促の申立てによるもの
     当該支払督促の申立てについて同法第三百九十八条(同法第四百二条第二項 において準用する場合を含む。)の規定により訴えの提起があつたものとみなされる裁判所
四  第二十二条第四号の二に掲げる債務名義
     同号の処分をした裁判所書記官の所属する裁判所
五  第二十二条第五号に掲げる債務名義
     債務者の普通裁判籍の所在地を管轄する裁判所(この普通裁判籍がないときは、請求の目的又は差し押さえることができる債務者の財産の所在地を管轄する裁判所)
六  第二十二条第七号に掲げる債務名義のうち和解若しくは調停(上級裁判所において成立した和解及び調停を除く。)又は労働審判に係るもの
     和解若しくは調停が成立した簡易裁判所、地方裁判所若しくは家庭裁判所(簡易裁判所において成立した和解又は調停に係る請求が簡易裁判所の管轄に属しないものであるときは、その簡易裁判所の所在地を管轄する地方裁判所)又は労働審判が行われた際に労働審判事件が係属していた地方裁判所
(執行文付与に対する異議の訴え)
第三十四条  第二十七条の規定により執行文が付与された場合において、債権者の証明すべき事実の到来したこと又は債務名義に表示された当事者以外の者に対し、若しくはその者のために強制執行をすることができることについて異議のある債務者は、その執行文の付された債務名義の正本に基づく強制執行の不許を求めるために、執行文付与に対する異議の訴えを提起することができる。
2  異議の事由が数個あるときは、債務者は、同時に、これを主張しなければならない。
3  前条第二項の規定は、第一項の訴えについて準用する。
(請求異議の訴え)
第三十五条  債務名義(第二十二条第二号又は第四号に掲げる債務名義で確定前のものを除く。以下この項において同じ。)に係る請求権の存在又は内容について異議のある債務者は、その債務名義による強制執行の不許を求めるために、請求異議の訴えを提起することができる。裁判以外の債務名義の成立について異議のある債務者も、同様とする。
2  確定判決についての異議の事由は、口頭弁論の終結後に生じたものに限る。
3  第三十三条第二項及び前条第二項の規定は、第一項の訴えについて準用する。
(執行文付与に対する異議の訴え等に係る執行停止の裁判)
第三十六条  執行文付与に対する異議の訴え又は請求異議の訴えの提起があつた場合において、異議のため主張した事情が法律上理由があるとみえ、かつ、事実上の点について疎明があつたときは、受訴裁判所は、申立てにより、終局判決において次条第一項の裁判をするまでの間、担保を立てさせ、若しくは立てさせないで強制執行の停止を命じ、又はこれとともに、担保を立てさせて強制執行の続行を命じ、若しくは担保を立てさせて既にした執行処分の取消しを命ずることができる。急迫の事情があるときは、裁判長も、これらの処分を命ずることができる。
2  前項の申立てについての裁判は、口頭弁論を経ないですることができる。
3  第一項に規定する事由がある場合において、急迫の事情があるときは、執行裁判所は、申立てにより、同項の規定による裁判の正本を提出すべき期間を定めて、同項に規定する処分を命ずることができる。この裁判は、執行文付与に対する異議の訴え又は請求異議の訴えの提起前においても、することができる。
4  前項の規定により定められた期間を経過したとき、又はその期間内に第一項の規定による裁判が執行裁判所若しくは執行官に提出されたときは、前項の裁判は、その効力を失う。
5  第一項又は第三項の申立てについての裁判に対しては、不服を申し立てることができない。
(終局判決における執行停止の裁判等)
第三十七条  受訴裁判所は、執行文付与に対する異議の訴え又は請求異議の訴えについての終局判決において、前条第一項に規定する処分を命じ、又は既にした同項の規定による裁判を取り消し、変更し、若しくは認可することができる。この裁判については、仮執行の宣言をしなければならない。
2  前項の規定による裁判に対しては、不服を申し立てることができない。
(第三者異議の訴え)
第三十八条  強制執行の目的物について所有権その他目的物の譲渡又は引渡しを妨げる権利を有する第三者は、債権者に対し、その強制執行の不許を求めるために、第三者異議の訴えを提起することができる。
2  前項に規定する第三者は、同項の訴えに併合して、債務者に対する強制執行の目的物についての訴えを提起することができる。
3  第一項の訴えは、執行裁判所が管轄する。
4  前二条の規定は、第一項の訴えに係る執行停止の裁判について準用する。
(強制執行の停止)
第三十九条  強制執行は、次に掲げる文書の提出があつたときは、停止しなければならない。
一  債務名義(執行証書を除く。)若しくは仮執行の宣言を取り消す旨又は強制執行を許さない旨を記載した執行力のある裁判の正本
二  債務名義に係る和解、認諾、調停又は労働審判の効力がないことを宣言する確定判決の正本
三  第二十二条第二号から第四号の二までに掲げる債務名義が訴えの取下げその他の事由により効力を失つたことを証する調書の正本その他の裁判所書記官の作成した文書
四  強制執行をしない旨又はその申立てを取り下げる旨を記載した裁判上の和解若しくは調停の調書の正本又は労働審判法(平成十六年法律第四十五号)第二十一条第四項の規定により裁判上の和解と同一の効力を有する労働審判の審判書若しくは同法第二十条第七項の調書の正本
五  強制執行を免れるための担保を立てたことを証する文書
六  強制執行の停止及び執行処分の取消しを命ずる旨を記載した裁判の正本
七  強制執行の一時の停止を命ずる旨を記載した裁判の正本
八  債権者が、債務名義の成立後に、弁済を受け、又は弁済の猶予を承諾した旨を記載した文書
2  前項第八号に掲げる文書のうち弁済を受けた旨を記載した文書の提出による強制執行の停止は、四週間に限るものとする。
3  第一項第八号に掲げる文書のうち弁済の猶予を承諾した旨を記載した文書の提出による強制執行の停止は、二回に限り、かつ、通じて六月を超えることができない。
(執行処分の取消し)
第四十条  前条第一項第一号から第六号までに掲げる文書が提出されたときは、執行裁判所又は執行官は、既にした執行処分をも取り消さなければならない。
2  第十二条の規定は、前項の規定により執行処分を取り消す場合については適用しない。
(債務者が死亡した場合の強制執行の続行)
第四十一条  強制執行は、その開始後に債務者が死亡した場合においても、続行することができる。
2  前項の場合において、債務者の相続人の存在又はその所在が明らかでないときは、執行裁判所は、申立てにより、相続財産又は相続人のために、特別代理人を選任することができる。
3  民事訴訟法第三十五条第二項 及び第三項の規定は、前項の特別代理人について準用する。
(執行費用の負担)
第四十二条  強制執行の費用で必要なもの(以下「執行費用」という。)は、債務者の負担とする。
2  金銭の支払を目的とする債権についての強制執行にあつては、執行費用は、その執行手続において、債務名義を要しないで、同時に、取り立てることができる。
3  強制執行の基本となる債務名義(執行証書を除く。)を取り消す旨の裁判又は債務名義に係る和解、認諾、調停若しくは労働審判の効力がないことを宣言する判決が確定したときは、債権者は、支払を受けた執行費用に相当する金銭を債務者に返還しなければならない。
4  第一項の規定により債務者が負担すべき執行費用で第二項の規定により取り立てられたもの以外のもの及び前項の規定により債権者が返還すべき金銭の額は、申立てにより、執行裁判所の裁判所書記官が定める。
5  前項の申立てについての裁判所書記官の処分に対しては、その告知を受けた日から一週間の不変期間内に、執行裁判所に異議を申し立てることができる。
6  執行裁判所は、第四項の規定による裁判所書記官の処分に対する異議の申立てを理由があると認める場合において、同項に規定する執行費用及び返還すべき金銭の額を定めるべきときは、自らその額を定めなければならない。
7  第五項の規定による異議の申立てについての決定に対しては、執行抗告をすることができる。
8  第四項の規定による裁判所書記官の処分は、確定しなければその効力を生じない。
9  民事訴訟法第七十四条第一項 の規定は、第四項の規定による裁判所書記官の処分について準用する。この場合においては、第五項、第七項及び前項並びに同条第三項の規定を準用する。
(不動産執行の方法)
第四十三条  不動産(登記することができない土地の定着物を除く。以下この節において同じ。)に対する強制執行(以下「不動産執行」という。)は、強制競売又は強制管理の方法により行う。これらの方法は、併用することができる。
2  金銭の支払を目的とする債権についての強制執行については、不動産の共有持分、登記された地上権及び永小作権並びにこれらの権利の共有持分は、不動産とみなす。
(執行裁判所)
第四十四条  不動産執行については、その所在地(前条第二項の規定により不動産とみなされるものにあつては、その登記をすべき地)を管轄する地方裁判所が、執行裁判所として管轄する。
2  建物が数個の地方裁判所の管轄区域にまたがつて存在する場合には、その建物に対する強制執行については建物の存する土地の所在地を管轄する各地方裁判所が、その土地に対する強制執行については土地の所在地を管轄する地方裁判所又は建物に対する強制執行の申立てを受けた地方裁判所が、執行裁判所として管轄する。
3  前項の場合において、執行裁判所は、必要があると認めるときは、事件を他の管轄裁判所に移送することができる。
4  前項の規定による決定に対しては、不服を申し立てることができない。
第二款 船舶に対する強制執行
(船舶執行の方法)
第百十二条  総トン数二十トン以上の船舶(端舟その他ろかい又は主としてろかいをもつて運転する舟を除く。以下この節及び次章において「船舶」という。)に対する強制執行(以下「船舶執行」という。)は、強制競売の方法により行う。
第三款 動産に対する強制執行
(動産執行の開始等)
第百二十二条  動産(登記することができない土地の定着物、土地から分離する前の天然果実で一月以内に収穫することが確実であるもの及び裏書の禁止されている有価証券以外の有価証券を含む。以下この節、次章及び第四章において同じ。)に対する強制執行(以下「動産執行」という。)は、執行官の目的物に対する差押えにより開始する。
2  動産執行においては、執行官は、差押債権者のためにその債権及び執行費用の弁済を受領することができる。
第四款 債権及びその他の財産権に対する強制執行
      第一目 債権執行等
(債権執行の開始)
第百四十三条  金銭の支払又は船舶若しくは動産の引渡しを目的とする債権(動産執行の目的となる有価証券が発行されている債権を除く。以下この節において「債権」という。)に対する強制執行(第百六十七条の二第二項に規定する少額訴訟債権執行を除く。以下この節において「債権執行」という。)は、執行裁判所の差押命令により開始する。
(執行裁判所)
第百四十四条  債権執行については、債務者の普通裁判籍の所在地を管轄する地方裁判所が、この普通裁判籍がないときは差し押さえるべき債権の所在地を管轄する地方裁判所が、執行裁判所として管轄する。
2  差し押さえるべき債権は、その債権の債務者(以下「第三債務者」という。)の普通裁判籍の所在地にあるものとする。ただし、船舶又は動産の引渡しを目的とする債権及び物上の担保権により担保される債権は、その物の所在地にあるものとする。
3  差押えに係る債権(差押命令により差し押さえられた債権に限る。以下この目において同じ。)について更に差押命令が発せられた場合において、差押命令を発した執行裁判所が異なるときは、執行裁判所は、事件を他の執行裁判所に移送することができる。
4  前項の規定による決定に対しては、不服を申し立てることができない。
(差押命令)
第百四十五条  執行裁判所は、差押命令において、債務者に対し債権の取立てその他の処分を禁止し、かつ、第三債務者に対し債務者への弁済を禁止しなければならない。
2  差押命令は、債務者及び第三債務者を審尋しないで発する。
3  差押命令は、債務者及び第三債務者に送達しなければならない。
4  差押えの効力は、差押命令が第三債務者に送達された時に生ずる。
5  差押命令の申立てについての裁判に対しては、執行抗告をすることができる。
(差押えの範囲)
第百四十六条  執行裁判所は、差し押さえるべき債権の全部について差押命令を発することができる。
2  差し押さえた債権の価額が差押債権者の債権及び執行費用の額を超えるときは、執行裁判所は、他の債権を差し押さえてはならない。
(第三債務者の陳述の催告)
第百四十七条  差押債権者の申立てがあるときは、裁判所書記官は、差押命令を送達するに際し、第三債務者に対し、差押命令の送達の日から二週間以内に差押えに係る債権の存否その他の最高裁判所規則で定める事項について陳述すべき旨を催告しなければならない。
2  第三債務者は、前項の規定による催告に対して、故意又は過失により、陳述をしなかつたとき、又は不実の陳述をしたときは、これによつて生じた損害を賠償する責めに任ずる。
(債権証書の引渡し)
第百四十八条  差押えに係る債権について証書があるときは、債務者は、差押債権者に対し、その証書を引き渡さなければならない。
2  差押債権者は、差押命令に基づいて、第百六十九条に規定する動産の引渡しの強制執行の方法により前項の証書の引渡しを受けることができる。
(差押えが一部競合した場合の効力)
第百四十九条  債権の一部が差し押さえられ、又は仮差押えの執行を受けた場合において、その残余の部分を超えて差押命令が発せられたときは、各差押え又は仮差押えの執行の効力は、その債権の全部に及ぶ。債権の全部が差し押さえられ、又は仮差押えの執行を受けた場合において、その債権の一部について差押命令が発せられたときのその差押えの効力も、同様とする。
(先取特権等によつて担保される債権の差押えの登記等の嘱託)
第百五十条  登記又は登録(以下「登記等」という。)のされた先取特権、質権又は抵当権によつて担保される債権に対する差押命令が効力を生じたときは、裁判所書記官は、申立てにより、その債権について差押えがされた旨の登記等を嘱託しなければならない。
(継続的給付の差押え)
第百五十一条  給料その他継続的給付に係る債権に対する差押えの効力は、差押債権者の債権及び執行費用の額を限度として、差押えの後に受けるべき給付に及ぶ。
(扶養義務等に係る定期金債権を請求する場合の特例)
第百五十一条の二  債権者が次に掲げる義務に係る確定期限の定めのある定期金債権を有する場合において、その一部に不履行があるときは、第三十条第一項の規定にかかわらず、当該定期金債権のうち確定期限が到来していないものについても、債権執行を開始することができる。
一  民法第七百五十二条 の規定による夫婦間の協力及び扶助の義務
二  民法第七百六十条 の規定による婚姻から生ずる費用の分担の義務
三  民法第七百六十六条 (同法第七百四十九条、第七百七十一条及び第七百八十八条において準用する場合を含む。)の規定による子の監護に関する義務
四  民法第八百七十七条 から第八百八十条までの規定による扶養の義務
2  前項の規定により開始する債権執行においては、各定期金債権について、その確定期限の到来後に弁済期が到来する給料その他継続的給付に係る債権のみを差し押さえることができる。
(差押禁止債権)
第百五十二条  次に掲げる債権については、その支払期に受けるべき給付の四分の三に相当する部分(その額が標準的な世帯の必要生計費を勘案して政令で定める額を超えるときは、政令で定める額に相当する部分)は、差し押さえてはならない。
一  債務者が国及び地方公共団体以外の者から生計を維持するために支給を受ける継続的給付に係る債権
二  給料、賃金、俸給、退職年金及び賞与並びにこれらの性質を有する給与に係る債権
2  退職手当及びその性質を有する給与に係る債権については、その給付の四分の三に相当する部分は、差し押さえてはならない。
3  債権者が前条第一項各号に掲げる義務に係る金銭債権(金銭の支払を目的とする債権をいう。以下同じ。)を請求する場合における前二項の規定の適用については、前二項中「四分の三」とあるのは、「二分の一」とする。
(差押禁止債権の範囲の変更)
第百五十三条  執行裁判所は、申立てにより、債務者及び債権者の生活の状況その他の事情を考慮して、差押命令の全部若しくは一部を取り消し、又は前条の規定により差し押さえてはならない債権の部分について差押命令を発することができる。
2  事情の変更があつたときは、執行裁判所は、申立てにより、前項の規定により差押命令が取り消された債権を差し押さえ、又は同項の規定による差押命令の全部若しくは一部を取り消すことができる。
3  前二項の申立てがあつたときは、執行裁判所は、その裁判が効力を生ずるまでの間、担保を立てさせ、又は立てさせないで、第三債務者に対し、支払その他の給付の禁止を命ずることができる。
4  第一項又は第二項の規定による差押命令の取消しの申立てを却下する決定に対しては、執行抗告をすることができる。
5  第三項の規定による決定に対しては、不服を申し立てることができない。
(その他の財産権に対する強制執行)
第百六十七条  不動産、船舶、動産及び債権以外の財産権(以下この条において「その他の財産権」という。)に対する強制執行については、特別の定めがあるもののほか、債権執行の例による。
2  その他の財産権で権利の移転について登記等を要するものは、強制執行の管轄については、その登記等の地にあるものとする。
3  その他の財産権で第三債務者又はこれに準ずる者がないものに対する差押えの効力は、差押命令が債務者に送達された時に生ずる。
4  その他の財産権で権利の移転について登記等を要するものについて差押えの登記等が差押命令の送達前にされた場合には、差押えの効力は、差押えの登記等がされた時に生ずる。ただし、その他の財産権で権利の処分の制限について登記等をしなければその効力が生じないものに対する差押えの効力は、差押えの登記等が差押命令の送達後にされた場合においても、差押えの登記等がされた時に生ずる。
5  第四十八条、第五十四条及び第八十二条の規定は、権利の移転について登記等を要するその他の財産権の強制執行に関する登記等について準用する。
第三節 金銭の支払を目的としない請求権についての強制執行
(不動産の引渡し等の強制執行)
第百六十八条  不動産等(不動産又は人の居住する船舶等をいう。以下この条及び次条において同じ。)の引渡し又は明渡しの強制執行は、執行官が債務者の不動産等に対する占有を解いて債権者にその占有を取得させる方法により行う。
2  執行官は、前項の強制執行をするため同項の不動産等の占有者を特定する必要があるときは、当該不動産等に在る者に対し、当該不動産等又はこれに近接する場所において、質問をし、又は文書の提示を求めることができる。
3  第一項の強制執行は、債権者又はその代理人が執行の場所に出頭したときに限り、することができる。
4  執行官は、第一項の強制執行をするに際し、債務者の占有する不動産等に立ち入り、必要があるときは、閉鎖した戸を開くため必要な処分をすることができる。
5  執行官は、第一項の強制執行においては、その目的物でない動産を取り除いて、債務者、その代理人又は同居の親族若しくは使用人その他の従業者で相当のわきまえのあるものに引き渡さなければならない。この場合において、その動産をこれらの者に引き渡すことができないときは、執行官は、最高裁判所規則で定めるところにより、これを売却することができる。
6  執行官は、前項の動産のうちに同項の規定による引渡し又は売却をしなかつたものがあるときは、これを保管しなければならない。この場合においては、前項後段の規定を準用する。
7  前項の規定による保管の費用は、執行費用とする。
8  第五項(第六項後段において準用する場合を含む。)の規定により動産を売却したときは、執行官は、その売得金から売却及び保管に要した費用を控除し、その残余を供託しなければならない。
9  第五十七条第五項の規定は、第一項の強制執行について準用する。

民事訴訟費用等に関する法律
(昭和四十六年四月六日法律第四十号)
最終改正:平成一九年七月一一日法律第一一三号
 第一章 総則(第一条・第二条)
 第二章 裁判所に納める費用
  第一節 手数料(第三条―第十条)
  第二節 手数料以外の費用(第十一条―第十三条の二)
  第三節 費用の取立て(第十四条―第十七条)
 第三章 証人等に対する給付(第十八条―第二十八条の二)
 第四章 雑則(第二十九条・第三十条)
 附則
   第一章 総則
(趣旨)
第一条  民事訴訟手続、民事執行手続、民事保全手続、行政事件訴訟手続、非訟事件手続、家事審判手続その他の裁判所における民事事件、行政事件及び家事事件に関する手続(以下「民事訴訟等」という。)の費用については、他の法令に定めるもののほか、この法律の定めるところによる。
(当事者その他の者が負担すべき民事訴訟等の費用の範囲及び額)
第二条  民事訴訟法 (平成八年法律第百九号)その他の民事訴訟等に関する法令の規定により当事者等(当事者又は事件の関係人をいう。第四号及び第五号を除き、以下同じ。)又はその他の者が負担すべき民事訴訟等の費用の範囲は、次の各号に掲げるものとし、その額は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一  次条の規定による手数料
                 その手数料の額(第九条第三項又は第五項の規定により還付される額があるときは、その額を控除した額)
二  第十一条第一項の費用
                 その費用の額
三  執行官法 (昭和四十一年法律第百十一号)の規定による手数料及び費用
                 その手数料及び費用の額
四  当事者等(当事者若しくは事件の関係人、その法定代理人若しくは代表者又はこれらに準ずる者をいう。以下この号及び次号において同じ。)が口頭弁論又は審問の期日その他裁判所が定めた期日に出頭するための旅費、日当及び宿泊料(親権者以外の法定代理人、法人の代表者又はこれらに準ずる者が二人以上出頭したときは、そのうちの最も低額となる一人についての旅費、日当及び宿泊料) 次に掲げるところにより算定した旅費、日当及び宿泊料の額
イ 旅費
(1) 旅行が本邦(国家公務員等の旅費に関する法律(昭和二十五年法律第百十四号)第二条第一項第四号に規定する本邦をいう。以下同じ。)と外国(本邦以外の領域(公海を含む。)をいう。以下同じ。)との間のものを含まない場合においては、当事者等の普通裁判籍の所在地を管轄する簡易裁判所の主たる庁舎の所在する場所と出頭した場所を管轄する簡易裁判所の主たる庁舎の所在する場所との間の距離を基準として、その距離を旅行するときに通常要する交通費の額として最高裁判所が定める額(これらの場所が同一となるときは、最高裁判所が定める額)。ただし、旅行が通常の経路及び方法によるものであること並びに現に支払つた交通費の額が当該最高裁判所が定める額を超えることを明らかにする領収書、乗車券、航空機の搭乗券の控え等の文書が提出されたときは、現に支払つた交通費の額
(2) 旅行が本邦と外国との間のものを含む場合において、当該旅行が通常の経路及び方法によるものであるときは、現に支払つた交通費の額(当該旅行が通常の経路又は方法によるものでないときは、証人に支給する旅費の例により算定した額)
ロ 日当 出頭及びそのための旅行(通常の経路及び方法によるものに限る。)に現に要した日数に応じて、最高裁判所が定める額。ただし、旅行が通常の経路若しくは方法によるものでない場合又は本邦と外国との間のものを含む場合には、証人に支給する日当の例により算定した額
ハ 宿泊料 出頭及びそのための旅行(通常の経路及び方法によるものに限る。)のために現に宿泊した夜数に応じて、宿泊地を区分して最高裁判所が定める額。ただし、旅行が通常の経路若しくは方法によるものでない場合又は本邦と外国との間のものを含む場合には、証人に支給する宿泊料の例により算定した額
五  代理人(法定代理人及び特別代理人を除く。以下この号において同じ。)が前号に規定する期日に出頭した場合(当事者等が出頭命令又は呼出しを受けない期日に出頭した場合を除く。)における旅費、日当及び宿泊料(代理人が二人以上出頭したときは、そのうちの最も低額となる一人についての旅費、日当及び宿泊料)
                 前号の例により算定した額。ただし、当事者等が出頭した場合における旅費、日当及び宿泊料の額として裁判所が相当と認める額を超えることができない。
六  訴状その他の申立書、準備書面、書証の写し、訳文等の書類(当該民事訴訟等の資料とされたものに限る。)の作成及び提出の費用
                 事件一件につき、事件の種類、当事者等の数並びに書類の種類及び通数(事件の記録が電磁的記録で作成されている場合にあつては、当該電磁的記録に記録された情報の内容を書面に出力したときのその通数)を基準として、通常要する書類の作成及び提出の費用の額として最高裁判所が定める額
七  官庁その他の公の団体又は公証人から前号の書類の交付を受けるために要する費用
                 当該官庁等に支払うべき手数料の額に交付一回につき第一種郵便物の最低料金の二倍の額の範囲内において最高裁判所が定める額を加えた額
八  第六号の訳文の翻訳料
                 用紙一枚につき最高裁判所が定める額
九  文書又は物(裁判所が取り調べたものに限る。)を裁判所に送付した費用
                 通常の方法により送付した場合における実費の額
十  民事訴訟等に関する法令の規定により裁判所が選任を命じた場合において当事者等が選任した弁護士又は裁判所が選任した弁護士に支払つた報酬及び費用
                 裁判所が相当と認める額
十一  裁判所が嘱託する登記又は登録につき納める登録免許税
                 その登録免許税の額
十二  強制執行の申立て若しくは配当要求のための債務名義の正本の交付、執行文の付与又は民事執行法(昭和五十四年法律第四号)第二十九条 の規定により送達すべき書類の交付を受けるために要する費用
                 裁判所その他の官庁又は公証人に支払うべき手数料の額に交付又は付与一回につき第一種郵便物の最低料金の二倍の額に書留料を加えた額の範囲内において最高裁判所が定める額を加えた額
十三  公証人法 (明治四十一年法律第五十三号)第五十七条ノ二の規定により公証人がする書類の送達のために要する費用
                 公証人に支払うべき手数料及び送達に要する料金の額
十四  第十二号の交付若しくは付与を受け、又は前号の送達を申し立てるために裁判所以外の官庁又は公証人に提出すべき書類で官庁等の作成に係るものの交付を受けるために要する費用
                 第七号の例により算定した費用の額
十五  裁判所が支払うものを除き、強制執行、仮差押えの執行又は担保権の実行(その例による競売を含む。)に関する法令の定めるところにより裁判所が選任した管理人又は管財人が受ける報酬及び費用
                 当該法令の規定により裁判所が定める額
十六  差押債権者が民事執行法第五十六条第一項(これを準用し、又はその例による場合を含む。)の許可を得て支払つた地代又は借賃
                 その地代又は借賃の額
十七  第二十八条の二第一項の費用
                 同項の規定により算定した額
十八  民法 (明治二十九年法律第八十九号)第三百八十五条(同法 その他の法令において準用する場合を含む。)の規定による通知を書面でした場合の通知の費用
                 通知一回につき第一種郵便物の最低料金に書留料を加えた額の範囲内において最高裁判所が定める額
   第二章 裁判所に納める費用
    第一節 手数料
(申立ての手数料)
第三条  別表第一の上欄に掲げる申立てをするには、申立ての区分に応じ、それぞれ同表の下欄に掲げる額の手数料を納めなければならない。
2  次の各号に掲げる場合には、当該各号の申立てをした者は、訴えを提起する場合の手数料の額から当該申立てについて納めた手数料の額を控除した額の手数料を納めなければならない。
一  民事訴訟法第二百七十五条第二項 又は第三百九十五条若しくは第三百九十八条第一項 (同法第四百二条第二項において準用する場合を含む。)の規定により和解又は支払督促の申立ての時に訴えの提起があつたものとみなされたとき。
二  労働審判法 (平成十六年法律第四十五号)第二十二条第一項(同法第二十三条第二項 及び第二十四条第二項において準用する場合を含む。)の規定により労働審判手続の申立ての時に訴えの提起があつたものとみなされたとき。
3  一の判決に対して上告の提起及び上告受理の申立てをする場合において、その主張する利益が共通であるときは、その限度において、その一方について納めた手数料は、他の一方についても納めたものとみなす。一の決定又は命令に対して民事訴訟法第三百三十六条第一項(これを準用し、又はその例による場合を含む。)の規定による抗告の提起及び同法第三百三十七条第二項(これを準用し、又はその例による場合を含む。)の規定による抗告の許可の申立てをする場合も、同様とする。
4  破産法 (平成十六年法律第七十五号)第二百四十八条第四項本文の規定により破産手続開始の申立てと同時に免責許可の申立てをしたものとみなされたときは、当該破産手続開始の申立てをした者は、免責許可の申立ての手数料をも納めなければならない。
(訴訟の目的の価額等)
第四条  別表第一において手数料の額の算出の基礎とされている訴訟の目的の価額は、民事訴訟法第八条第一項及び第九条 の規定により算定する。
2  財産権上の請求でない請求に係る訴えについては、訴訟の目的の価額は、百六十万円とみなす。
 財産権上の請求に係る訴えで訴訟の目的の価額を算定することが極めて困難なものについても、同様とする。
3  一の訴えにより財産権上の請求でない請求とその原因である事実から生ずる財産権上の請求とをあわせてするときは、多額である訴訟の目的の価額による。
4  第一項の規定は、別表第一の一〇の項の手数料の額の算出の基礎とされている価額について準用する。
5  民事訴訟法第九条第一項 の規定は、別表第一の一三の項の手数料の額の算出の基礎とされている額について準用する。
6  第一項及び第三項の規定は、別表第一の一四の項の手数料の額の算出の基礎とされている価額について準用する。
7  前項の価額は、これを算定することができないか又は極めて困難であるときは、百六十万円とみなす。
(手数料を納めたものとみなす場合)
第五条  民事訴訟法第三百五十五条第二項 (第三百六十七条第二項において準用する場合を含む。)、民事調停法(昭和二十六年法律第二百二十二号)第十九条(特定債務等の調整の促進のための特定調停に関する法律(平成十一年法律第百五十八号)第十八条第二項(第十九条において準用する場合を含む。)において準用する場合を含む。)又は家事審判法(昭和二十二年法律第百五十二号)第二十六条第二項の訴えの提起の手数料については、前の訴えの提起又は調停の申立てについて納めた手数料の額に相当する額は、納めたものとみなす。
2  前項の規定は、民事調停法第十四条 (第十五条において準用する場合を含む。)の規定により調停事件が終了し、又は同法第十八条第二項の規定により調停に代わる決定が効力を失つた場合において、調停の申立人がその旨の通知を受けた日から二週間以内に調停の目的となつた請求についてする借地借家法(平成三年法律第九十号)第十七条第一項 、第二項若しくは第五項(第十八条第三項において準用する場合を含む。)、第十八条第一項、第十九条第一項(同条第七項において準用する場合を含む。)又は第二十条第一項(同条第五項において準用する場合を含む。)の規定による申立ての手数料について準用する。
(手数料未納の申立て)
第六条  手数料を納めなければならない申立てでその納付がないものは、不適法な申立てとする。
(裁判所書記官が保管する記録の閲覧、謄写等の手数料)
第七条  別表第二の上欄に掲げる事項の手数料は、同表の下欄に掲げる額とする。
(納付の方法)
第八条  手数料は、訴状その他の申立書又は申立ての趣意を記載した調書に収入印紙をはつて納めなければならない。ただし、最高裁判所規則で定める場合には、最高裁判所規則で定めるところにより、現金をもつて納めることができる。
(過納手数料の還付等)
第九条  手数料が過大に納められた場合においては、裁判所は、申立てにより、決定で、過大に納められた手数料の額に相当する金額の金銭を還付しなければならない。
2  前項の規定にかかわらず、支払督促若しくは差押処分の申立ての手数料又は別表第二の上欄に掲げる事項の手数料が過大に納められた場合の還付は、申立てにより、裁判所書記官が行う。
3  次の各号に掲げる申立てについてそれぞれ当該各号に定める事由が生じた場合においては、裁判所は、申立てにより、決定で、納められた手数料の額(第五条の規定により納めたものとみなされた額を除く。)から納めるべき手数料の額(同条の規定により納めたものとみなされた額を除くものとし、民事訴訟法第九条第一項に規定する合算が行われた場合における数個の請求の一に係る手数料にあつては、各請求の価額に応じて案分して得た額)の二分の一の額(その額が四千円に満たないときは、四千円)を控除した金額の金銭を還付しなければならない。
一  訴え若しくは控訴の提起又は民事訴訟法第四十七条第一項若しくは第五十二条第一項 の規定若しくはこれらの規定の例による参加の申出
                 口頭弁論を経ない却下の裁判の確定又は最初にすべき口頭弁論の期日の終了前における取下げ
二  民事調停法 による調停の申立て
                 却下の裁判の確定又は最初にすべき調停の期日の終了前における取下げ
三  労働審判法 による労働審判手続の申立て  却下の裁判の確定又は最初にすべき労働審判手続の期日の終了前における取下げ
四  借地借家法第四十一条 の事件の申立て、同条の事件における参加の申出(申立人として参加する場合に限る。)又はその申立て若しくは申出についての裁判に対する抗告(次号に掲げるものを除く。)の提起
                 却下の裁判の確定又は最初にすべき審問の期日の終了前における取下げ
五  上告の提起若しくは上告受理の申立て又は前号の申立て若しくは申出についての裁判に対する借地借家法第四十二条第一項において準用する非訟事件手続法 (明治三十一年法律第十四号)第二十五条において準用する民事訴訟法第三百三十条 若しくは第三百三十六条第一項の規定による抗告の提起若しくは第三百三十七条第二項の規定による抗告の許可の申立て
                 原裁判所(抗告の許可の申立てにあつては、その申立てを受けた裁判所。以下この号において同じ。)における却下の裁判の確定又は原裁判所が上告裁判所若しくは抗告裁判所に事件を送付する前における取下げ
4  前項の規定は、数個の請求の一部について同項各号に定める事由が生じた場合において、既に納めた手数料の全部又は一部がなお係属する請求についても納められたものであるときは、その限度においては、適用しない。同項第五号に掲げる申立てについて同号に定める事由が生じた場合において、既に納めた手数料の全部又は一部がなお係属する他の同号に掲げる申立てについても納められたものであるときも、その限度において、同様とする。
5  支払督促の申立てについて、却下の処分の確定又は支払督促の送達前における取下げがあつた場合においては、裁判所書記官は、申立てにより、第三項の規定に準じて算出した金額の金銭を還付しなければならない。ただし、前項前段に規定する場合には、その限度においては、この限りでない。
6  第一項から第三項まで及び前項の申立ては、一の手数料に係る申立ての申立人が二人以上ある場合においては、当該各申立人がすることができる。
7  第一項から第三項まで及び第五項の申立ては、その申立てをすることができる事由が生じた日から五年以内にしなければならない。
8  第二項又は第五項の申立てについてされた裁判所書記官の処分に対しては、その告知を受けた日から一週間の不変期間内に、その裁判所書記官の所属する裁判所に異議を申し立てることができる。
9  第一項若しくは第三項の申立て又は前項の規定による異議の申立てについてされた決定に対しては、即時抗告をすることができる。
10  第一項から第三項まで及び第五項の申立て並びにその申立てについての裁判又は裁判所書記官の処分並びに第八項の規定による異議の申立て及びその異議の申立てについての裁判に関しては、その性質に反しない限り、非訟事件手続法第一編の規定を準用する。ただし、同法第十五条 及び第三十二条の規定は、この限りでない。
(再使用証明)
第十条  前条第一項から第三項まで及び第五項の申立てにおいて、第八条の規定により納めた収入印紙を当該裁判所における他の手数料の納付について再使用したい旨の申出があつたときは、金銭による還付に代えて、還付の日から一年以内に限り再使用をすることができる旨の裁判所書記官の証明を付して還付すべき金額に相当する収入印紙を交付することができる。
2  前項の証明の付された収入印紙の交付を受けた者が、同項の証明に係る期間内に、当該収入印紙を提出してその額に相当する金額の金銭の還付を受けたい旨の申立てをしたときは、同項の裁判所は、決定で、当該収入印紙の額に相当する金額の金銭を還付しなければならない。
3  前条第九項及び第十項の規定は、前項の決定について準用する。
    第二節 手数料以外の費用
(納付義務)
第十一条  次に掲げる金額は、費用として、当事者等が納めるものとする。
一  裁判所が証拠調べ、書類の送達その他の民事訴訟等における手続上の行為をするため必要な次章に定める給付その他の給付に相当する金額
二  証拠調べ又は調停事件以外の民事事件若しくは行政事件における事実の調査その他の行為を裁判所外でする場合に必要な裁判官及び裁判所書記官の旅費及び宿泊料で、証人の例により算定したものに相当する金額
2  前項の費用を納めるべき当事者等は、他の法令に別段の定めがある場合を除き、申立てによつてする行為に係る費用についてはその申立人とし、職権でする行為に係る費用については裁判所が定める者とする。

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