新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.975、2010/1/26 12:05 https://www.shinginza.com/jitsumu.htm

法の支配と民事訴訟実務入門(平成20年9月2日改訂)
【各論1、内容証明郵便を自分で出す。普通郵便との違い、訴訟との関連。】

質問
 内容証明郵便、配達証明について知りたいので教えてください。
貸金の返還を請求したいのですが、裁判の準備として内容証明郵便で催促したほうが良いのでしょうか。普通の郵便との違いは。

回答
1 内容証明郵便とは
内容証明郵便とは、郵便として出した書面を郵便局(郵便事業株式会社)が証明し保存しておく郵便の形態です(郵便法48条)。具体的には同じ書面を3部作成し、1部を発信者、1部を郵便で相手に送り、残りの1部を郵便局が保管しておくことにより発信者の郵送した書面の内容を保存しておくことになります。このように、内容証明郵便により郵送した書面の内容と発信した日時は証明できます。なお、この郵便が相手に配達されたか否かは内容証明郵便だけでは明らかになりませんので、相手に配達されたことを明らかにしておくには別に配達証明が必要です。
内容証明郵便と配達証明により、あなたが保管している書面が郵便として発信され、相手に特定の日に配達されたことが証明されることになります。郵便局で差出を依頼する場合は、「配達証明つきの内容証明郵便でお願いします。」と言って依頼することができます。

2 内容証明郵便の法律上の意味
このように、内容証明郵便自体は郵便物の一形態にすぎませんが、特定の書面が相手方に配達されたことを証明することが法律上必要な場合は不可欠な制度となっています。
たとえば、訪問販売で購入した商品については契約した日から八日以内であれば理由なく売買契約の解除(クーリングオフ)を書面ですることができますが(最後にクーリングオフの場合の通知の書式を挙げておきます)、八日以内に契約の解除の書面を出したか否か証明する責任は解除する(買主)側にあります。このような場合、内容証明郵便で通知をしておけば、解除の意思が記載された書面が相手方に対して八日以内に発していることを容易に証明できることになります。

3 証拠としての内容証明郵便
このように、内容証明郵便は裁判での証拠として法律上の意味を持つのですが、理解のため少し詳しく説明します。
訪問販売であっても売買契約が成立すると、買主は代金を支払う義務を負い、売主は商品を引き渡す義務を負います。このように、契約により当事者は法律上の義務(債務といいます)を負うことになります。このような義務は法律上の義務であることから法律効果といいます。この法律効果を生じさせる事実を法律要件といいます。この場合の法律要件は売買契約です。つまり、売買契約という法律要件により買主は代金支払義務、売主は商品引渡義務という法律効果を負うことになるのです。法律はこのような法律要件と法律効果の組み合わせで成り立っています。さらに、あなたは、この契約を一方的に解除して売買契約を解消したいということですから、契約解除という法律要件が必要となります。クーリングオフの要件は法律(特定商取引に関する法律9条)で定められ、八日以内に書面で解除をすることが要件とされています。そして、この場合の法律効果はなんでしょうか。簡単ですね。代金支払い義務がなくなるということです。
このように、解除の通知が法律要件を満たすことを内容証明郵便で証明することができるのです。特に、法律要件に時間的な制限がある場合に(遺留分減殺請求等)、期間内に通知を完了したことを証明するには内容証明郵便は証拠として重要な意味を持ちます。

4 その他の効果
内容証明郵便に証拠としてあまり価値がない場合もあります。たとえば、貸金の返還の催促に内容証明郵便が必要でしょうか。貸金の契約は金銭消費貸借契約(民法587条)と呼ばれ、法律要件は、1、お金を渡すが後日返すことの合意と、2、金銭の交付です。法律効果は借主が期日に借りた金銭を返す義務を負うということです。ですから、貸主とすれば、証明すべき事実は1については借用証書や金銭消費貸借契約書、2については領収書や送金票の控えなどで証明できます。従って、返還を請求することは、証拠としての意味はないのです。但し、実際の裁判ではこのような催促の内容証明郵便が証拠として提出されています。
 それは、裁判になった経緯を裁判所に説明する為にすぎません。裁判所も法律要件を中心に考えますが、催促はしなかったのかな、と疑問を持つことはありますから、催促の経緯について内容証明郵便を証拠として提出ることで説明しているのです。
 ところで、金銭消費貸借契約書等がない場合はどうでしょうか。この場合、「金銭を返還することの合意」について証明できるか疑問が出てきます。借用証がない場合、相手は貰ったお金で返す必要はないと、返還の合意を否認する場合があります。この合意が証明できないと請求が認められません。請求する方としては、少しでも証拠があったほうが良いといことになります。そこで、借用証がない場合などは、事前に内容証明郵便で、貸金を返せ、という請求をしておくことが必要です。回答がなかったからと言って、それだけで貸金であることが証明されるわけではありませんが、何も回答がなかったということは、貸金である一つの証拠にはなり得ます。内容証明郵便の督促通知の最後に、「本書の内容に異議があれば直ちに反論する旨の通知を頂きたくお願い申し上げます。」と記載しておくことも考えられます。
 また、仮に相手が、貸金であることを認め返済を待ってほしいという趣旨の回答をすることもあります。そのそうな場合は、返還の合意があったことの証拠となりますから、借用証の代わりになります。
内容証明郵便にはこのような意味が考えられます。

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クーリングオフの内容証明郵便の例
クーリングオフ通知書
被通知人 ○県○市○町○○
株式会社○○○○ 代表取締役 △△△△ 殿
平成○年○月○日
通知人 ○県○市○町○○
    □□□□

前略 今般、貴社との間で、次の契約(以下本契約という)
の申し込みを行った□□□□と申します。しかし、本書面
を以ってクーリングオフします。商品も同時に返却発送致
しますので、受領お願いいたします。

契約の表示
契約締結日 平成00年00月00日
商品名    0000
売買代金  金0000円
                     草々
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内容証明郵便の形式については、下記の郵便局のHPを参考にしてください。概要をご紹介しますと、字数・行数は、(記号も1字と数えて)1行20字以内、1枚26行以内で作成します。横書きで作成するときは、1行13字以内、1枚40行以内または1行26字以内、1枚20行以内で作成することができます。これを3枚用意して郵便局に持参して下さい。

http://www.post.japanpost.jp/service/fuka_service/syomei/

≪条文参照≫

郵便法 第48条 (内容証明)  内容証明の取扱いにおいては、会社において、当該郵便物の内容である文書の内容を証明する。
2項  前項の取扱いにおいては、郵便認証司による第58条第1号の認証を受けるものとする。
同第58条(認証司の業務)郵便認証司は、次に掲げる事務(以下この章において「認証事務」という。)を行うことを職務とする。
1号 内容証明の取扱いに係る認証(総務省令で定めるところにより、当該取扱いをする郵便物の内容である文書の内容を証明するために必要な手続が適正に行われたことを確認し、当該郵便物の内容である文書に当該郵便物が差し出された年月日を記載することをいう。)をすること。

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