新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.944、2010/1/12 11:31 https://www.shinginza.com/tousatsu.htm

【刑事・勾留と接見・強制捜査と在宅・捜索令状・盗撮行為・弁護人の依頼について・被害者と和解したのに処罰を言い渡された時の対応・北海道:公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例】

質問:私は、大手金融機関に勤務しており、札幌に出張しているときに、カメラ撮影が趣味なのですが街の風景を撮っている時、駅でつい出来心で携帯し持っていたカメラ(ビデオ)で女子高校生のスカートの中を何回か盗撮したのですが、周囲の人に見つかり、警察に突き出されてしまいました。一晩警察署に留置され、検察庁に送検後処分保留で釈放されました。私はどのような罪に問われるのでしょうか?今後の手続きについても教えて下さい。また、私は東京在住ですが、やはり札幌の弁護士に依頼をすべきなのでしょうか?被害者が許してくれて話し合いが出来れば不起訴になるということを聞いたのですが本当でしょうか。

回答:
1.つい出来心で盗撮をしてしまったということですから、常習性がないと判断され、刑事処分としては略式手続により50万円以内の罰金になると思われます。罰金でも有罪ですから、就業規則違反ということで勤務先との関係では懲戒解雇処分のおそれがあります。罰金刑でも前科となりますから前科がつくことを望まないのであれば、処分が決まる前に被害者と示談し、検察官に不起訴処分にするよう要請する必要があります。示談をするには弁護士に依頼する必要があります。弁護士については経験のある弁護士であれば東京、札幌どちらでも不都合はないと思います。
2.盗撮行為については、担当検察官の判断により社会的法益も含むという理由で(条文上公衆という条件が付いているので社会的法益も保護の対象となっている。)高額(例えば100万円、罰金は通常30万円程度、東京も同様。)で民事上の和解(示談)をしても略式手続を求めようとする場合がありますが、そのような場合には、検察官一体の原則(検察官の職務は検事総長の指揮のもとに組織上一体として遂行すること。検察法7条乃至10条、12条)により、最終決裁権を持つ検察庁の責任者(検事正、次席検事等)に文書、口頭で異議の申し立てが必要であります。起訴便宜主義(刑訴248条)の趣旨から納得する処分理由の説明を求めましょう。
 公益の代表者であり公訴提起権を独占する(起訴独占主義)検察官の判断は公正、公平でなければならないからです。大手金融機関に勤務の場合(その他公務員、資格者等処罰により職種に影響がある場合。)公的側面があり罰金でも自主退職を求められる場合がありますので、弁護人としては譲歩できません。
3.尚、警察官の捜査等に関し苦情を申し出たい時は、事例集883番参照。
4.本事例集は、事務所事例集691番を一部追加、修正したものですから合わせ参照してください。

解説:
1.(いわゆる迷惑防止条例について)女性に対する盗撮行為は、いわゆる迷惑防止条例によって禁止されています。正式には、「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」といいます。この迷惑防止条例は、各都道府県に制定されており、盗撮行為が行われた場所の都道府県が制定した迷惑防止条例が適用されることになります。盗撮行為については、ほぼ全ての都道府県の迷惑防止条例によって禁止されていますが、法定刑に微妙な違いがあります。盗撮行為は、その行為の性質上不特定多数の人が被害に遭う可能性が高いためその罪責は重いものと考えられています。また、盗撮行為により撮影された写真等が不正に流通し、被害が拡散する恐れもあり、その刑事責任が極めて重いといえます。したがって、厳格な取締りがなされており、その処罰も比較的厳しくなる傾向にあります。 北海道、札幌の場合も、直接接触する痴漢行為(最高10万円、常習20万円。)より刑が5倍程度(盗撮は50万円、常習100万円)になっています。

2.(北海道、札幌の迷惑防止条例)本件は、盗撮行為が行われた場所は札幌の駅ですので、北海道の迷惑防止条例が適用されることになります。北海道迷惑防止条例2条の2第2号では、「衣服等で覆われている身体又は下着をのぞき見し、又は撮影すること。」が禁止されております。そして、これに違反した場合には、「6月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。」、常習性が認定され場合には、「1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する」と規定されています。

3.(迷惑防止条例の法的性質)ここで良い機会ですから各都道府県の迷惑防止条例の卑猥な言動(痴漢)、盗撮行為の法的性質について説明いたします。法律上、犯罪は犯罪の性質によって刑法によって守るべき利益(法益といいます)が何かという観点から分類されます。通常は、国家、社会全体、個人の利益に分類されます。刑法の条文上もおおむねその様に順序良く規定されています(77条―264条)。例えば、贈賄、汚職などは国家の利益であり、放火などは危険性から社会全体の公共の利益、殺人は被害者個人の利益です。本条例は、盗撮等卑猥な言動を受けているのは被害を受けた個人ですから、被害者個人の性的羞恥心が保護法益になることは間違いありません。しかし、条文をよく読んでみると、これらの条文の内容(刑法上構成要件といいます)には、「公共の場所又は公共の乗物において、」という条件が付いています。
 例えば、自分のアパートの室内で、意に反して女性の衣服の中を盗撮しても本罪は成立しないのです(少なくとも駅、路上、人が出入りする建物等で行われる必要があります)。本来、性的羞恥心を保護するという意味であれば、アパートの中の行為でも同じはずです。すなわち本罪は、個人法益とともに、公共の場所で卑猥な言動を禁止し、性に関する善良な社会的道徳、慣習、風俗、秩序を併せて保護法益(社会的法益)としているのです。条例の正式名称が、「公衆に著しく迷惑をかける」としているのはその意味を含んでいますし、同じく、性に関する社会的法益を保護している刑法174条の公然わいせつ罪、175条わいせつ物頒布罪も同様の趣旨から「公然」である事を要件としています。このような性質から、盗撮は被害者が広範囲に及び、社会全体の利益を侵害することになり、重い処罰が予想されるのです。更に、被疑者の弁護活動として被害者への謝罪、被害回復が行われますが、被害者個人だけでなく、社会全体への謝罪をどうするか問題になってきます(被害者との示談が成立しても不起訴処分には出来ない、という立場から)。処分・ 量刑についてこの点を過度に強調する検察官もおりますので注意する必要があります。

4.(刑事手続きの流れ)次に刑事処分の手続きについて、説明します。犯罪行為が行われた場合の捜査の手続きとしては、逮捕勾留して身柄を拘束しておこなう強制捜査と犯罪者の任意の出頭を前提にした在宅捜査の大きく分けて二つの手続きがあります(刑事訴訟法197条、198条)。どちらの手続きによるかは、事案の重大性、常習性、逃走、罪障隠滅の恐れなど総合的考慮して、捜査機関が判断することになります。盗撮行為の場合には、被害が軽微であれば、在宅捜査になることもあります。しかし、常習性があると判断された場合(前科がなくても常習的に犯行が繰り返されていると思われる状況が認められる場合も含まれます。例えば、多数の盗撮写真、ビデオが発見された場合。)、前科がある場合、住所が不定の場合などは、強制捜査がなされます。また、一旦在宅捜査となっても、出頭に応じなかった場合、逃走した場合などは、逮捕され強制捜査に移ることがあります。
 特に問題となるのは、盗撮行為の常習性です。常習性については、被疑者の供述や同種事案の前科があるかによって判断されることが多いですが、それ以外にも盗撮行為の態様からも判断されることが多いです。具体的には、普段通常の人が持ち歩かないような特殊カメラを使用していた場合や、鞄、靴などに盗撮の細工を施して撮影をしている場合などは、当然検挙された盗撮行為以外にも多数の余罪があると推測されるからです。このような場合には、常習性や余罪の存在が強く推認され、強制捜査によって取調べがなされる可能性が高いようです。強制捜査の場合、最長20日間の勾留が裁判所の許可により執行されますし、余罪を捜査するため逮捕後直ちに自宅を捜索し、差し押さえ手続きにより、盗撮に関する一切のビデオ、CD、書籍、パソコンの記録(パソコンは消去されても復元が出来るのでこれも証拠物となります。)などが差押、押収されるでしょう。本件のような場合、家族に事前連絡があり令状(捜索差し押さえ許可状、刑訴218条、219条。)を持って複数の捜査員がやってくることが多いと思います。この場合の対応については、事例集801番を参考にしてください。
 また、事件は軽微でも単に否認しているような場合も証拠隠滅を理由に勾留請求、強制捜査が行われることがあり、もし認められると最長20数日の身柄拘束が続くので、警察官による逮捕当日、検察官による勾留請求前、裁判官による勾留質問前いずれかの時間帯に弁護人が被疑者と接見、面会し対策を立てることが絶対に必要です(事案によりこの3日間の対応が被疑者の命運を決定する場合があります。)。早朝警察署から所轄検察庁にバスで護送されても検察庁において取り調べ前に接見することができます(実務上検察官は接見を認める義務があります)。勾留質問前も同じです。勿論、護送車が出発する前(午前8時前、食事等の必要上午前7時前に面会する必要があります。被疑者は6時に起床しています。)でも警察署で接見が可能です。
 本件では、相談者に前科がないこと、反省の姿勢を示していること、住所が明確であること、犯罪の対応から常習性があるとは判断できない事などの事情が考慮されて、在宅捜査の扱いになったものと考えられます。ただ、前述したとおり、盗撮行為の悪質性は高く、厳しい処罰をする傾向にあり、事態の進展によっては逮捕の危険性はありますので、捜査機関の出頭要請には素直に応じて捜査への協力の姿勢を維持すべきでしょう。

5.(在宅捜査の概要について)在宅捜査の場合の一般的な捜査の流れについて、説明します。在宅捜査の場合、警察署から検察庁に捜査書類のみが移されます(刑訴246条、いわゆる、書類送検です。被疑者逮捕のまま送検することは身柄送検といいます。)。その後、検察官により、取調べがなされ、捜査が熟した場合には、検察官により被疑者の処分がなされます。検察官は、犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の状況一切を総合的に判断して、被疑者の処分を決定します(起訴便宜主義、刑事訴訟法248条)。検察官の判断材料としては、これらの他に、被疑者の自白、前科の有無、被害者との示談、被害感情等が考慮されます。また、盗撮行為の特殊性から、被害者が不特定多数の人に拡散していないかどうか、盗撮により取得した写真、映像等の状況なども重視されます。そして、事件の社会的な影響も考慮されます。被疑者が教師、警察官、公務員など高度な社会的品位を求められる地位にある場合には、その社会的な影響から一般の人に比べ厳しい処分がなされる可能性があります。ただ、逆に社会的地位を失うなど既に社会的制裁を受けている場合には、さらに刑事処分をする必要はないとして処分に考慮される可能性もあります。
 これらの中で、特に重要なのは被害者との示談、被害賠償です。盗撮行為のような被害者が存在する犯罪の場合、被害者の保護が最大の目的ですので、その被害者と示談が成立して、被害が補填され、さらに被害者の処分意思がなくなれば(刑罰の存在理由が自力救済禁止の趣旨からも導き出されていますので。)、検察官としても厳しい処分をする必要がなくなるからです。 唯、公正な社会秩序維持も刑罰本来の目的ですから、再度罪を繰り返さないという誓約書等を用意する必要があります。

6.(検察官の公訴権独占、起訴裁量)検察官の処分の内容としては、一般的に公訴提起、略式命令請求、不起訴処分があげられます。公訴提起は、懲役刑の処分を念頭に裁判所に公判を請求する手続きです。略式命令請求は、罰金又は科料の処分を念頭に、簡易裁判所に簡略な手続きを請求する手続きです(刑訴461条)。不起訴処分とは、犯罪の証明ができないため(嫌疑不十分)または被疑者に一定の情状が認められ今回に限り処分を猶予するため(起訴猶予)起訴をしない手続きです。本件の迷惑防止条例違反の場合には、常習でない場合、略式命令請求か不起訴処分のいずれかとなります。なお、例外的な処分として、事案が極めて軽微で処罰を必要としないと判断された場合には、微罪処分として警察から検察庁への送検を猶予する手続きがなされることもあります(刑訴246条但し書き、犯罪捜査規範214条)。 起訴裁量権は検察官が有するのですが、適正で、迅速な事件処理のため、一部の軽微な事案については司法警察職員に対してその権限を事前に指定し委任していると理論的に考えられます(刑訴193条1項、検察官の司法警察職員に対する一般指示権が根拠になります。)。

7.(弁護活動)捜査の流れは以上の通りとなりますが、捜査段階での被疑者の弁護活動として重要となるのは、前述の通り、被害者との示談交渉となります。示談が成立すれば不起訴処分となる可能際が高いからです。惟、勾留されてしまうと検察官は勾留の期間が満了するまでに処分を決める必要があるため示談交渉の期間は最長でも勾留の期限である20日間(延長された場合)しかありません。そこで、逮捕されたらすぐに、弁護人と協議し、送検を防ぐか、送検されても検察官と交渉し勾留請求しないように警察や検察官と協議する必要があります。そして、勾留請求されても裁判官の勾留質問(刑訴207条、60条)で勾留請求却下を求めることが弁護活動として必要になります。勾留請求前に検察官に勾留請求しないように書類を準備し意見書を提出しなければなりませんが、勾留請求された後であってもけっして諦めてはいけません。「勾留請求されたら却下は無理」という実務家がいますが、そのようなことは断言できません。担当裁判官による適正公正な判断を得られるように、勾留を許可しないように積極的に意見書、書面(和解金の弁護人預かり証等)を用意し、裁判官に面接を求めて却下を要請する必要があります。弁護士の意見書では、刑事訴訟法60条の制度趣旨を論じ、裁判官に対して、適正な判断を求めることを書面で主張すべきです。最終的には裁判官の判断となりますが、否認さえなければ証拠隠滅の理由は認めがたいので、勾留請求が却下される可能性も残されています。
 勾留請求が却下されることは実務上少ないといわれていますが、刑訴60条の要件がないことを証明すれば却下される場合もあります。東京地裁では、裁判官から再犯防止、証拠隠滅防止の誓約書を提出するよう求められる場合がありますが、弁護人は前もって同様の誓約書を用意しておくと効果的です。仮に勾留請求が却下されても、検察官は準抗告(刑訴429条1項2号、裁判所の決定に異議を申し立てるのが抗告ですから、裁判官への異議ですので「準」ということになります。)をしますが(逮捕から3日間の間にこの手続が全て行われますから緊急を要します)、刑訴60条の要件がないことを立証できれば認められないと思いますので罰金相当事件では特別あわてる必要はありません。検察官の準抗告が認められると、弁護人も、この裁判所(正確に言うと単独裁判官ではなく、合議制の裁判所の判断になります)の判断である決定に対して準抗告(裁判官の判断ではありませんが実務的に準抗告となります。)が必要です。 盗撮により余罪があると判断されると勾留は避けられませんのでこの辺が限界でしょう。
 
 また、最初から検察官の勾留請求が認められ場合も証拠隠滅の危険がないようであれば裁判官(単独裁判官)の勾留決定に対し準抗告を提起しなければなりません(刑訴429条1項2号)。というのは、先ほど説明したとおり検察官の処分は勾留の期間が満了するまでに決まるのが原則(処分保留で釈放される場合もありますが例外的な取り扱いです)ですので、被害者と示談したので不起訴処分にすべきであると検察官に要求するには、勾留期間中に示談をする必要があるからです。そうすると、被害者が複数の場合など最長の勾留期間20日間では示談をするための期間としては短すぎるからです。また、送検自体を回避できる可能性もありますので、被害者との示談交渉は出来るだけ早い方がよいでしょう。すでに説明したとおり本条例の保護法益は、個人、社会と2つありますので、不起訴処分を求めるためには示談は必須の条件となります。
 そこで、自分で示談交渉が出来ないようであればできるだけ早く弁護士に起訴前弁護を依頼すべきでしょう。事実上、被疑者本人又はその関係者による被害者との示談交渉は難しいことが多いと思います。被害者とすれば盗撮していた本人やその関係者から連絡があっても会いたくないと考えるでしょうし、盗撮された人全員が被害者であり、複数人と順次示談交渉をすることは時間と費用がかなり必要となり、弁護士以外では事実上不可能です。検察官の最終処分まで示談交渉を終了させなければならないことから検察官との交渉も必要になります。
 なお、本来、勾留期間は10日間が原則で最長10日間の延長が認められており、延長は捜査の必要から行われるもので被疑者には不利益な処分とされていますが、本件のように示談が成立すれば不起訴処分になる可能性が高い場合は、示談成立まで勾留の延長を被疑者から希望する事も弁護活動として許されるものと考えられます。このような勾留期間の延長等検察官との交渉も疎かにできません。更に言えば、被疑者の住所などの個人情報について、被害者側の意向もあり警察、検察は被疑者及びその関係者には公開しないのが原則です。弁護士であれば、職務上の守秘義務を前提に、少なくとも検察官は被害者の個人情報の提供に協力してもらえます。この点からも、弁護士以外では示談交渉は困難と言えるでしょう。

8.(被害者との話し合い)次に、被害者との示談交渉の内容についてですが、まず弁護人を通して、被疑者及び被疑者の配偶者、両親などの謝罪の文書を被害者に提供します。そして、謝罪の意思を明確に示すために、示談金を提供することになります。示談金の相場としては、経済的な制裁を課する意味でも罰金の金額くらいと考えられます(一般的には30万円以上、常習の場合には50万円以上)。ただ、被害者との示談を得ることの重要性から、多少の金額の増加もやむをえないと思います。そして、被疑者及びその関係者が被害者及びその関係者との接触をしないことを保証するために接近禁止の誓約保証書、被害者側の情報不開示の誓約書を作成します。万が一、被害者との示談が成立しなかった場合には、検察官に対し、示談交渉の経緯、示談が成立しない理由を説明し、被疑者が作成した謝罪文等を提出して被疑者の謝罪、反省の意思を客観的に証明する必要があります。また、示談金を受領してもらえない代わりとして示談金の供託をする方法もあります。また、本罪は、社会全体の性秩序、風俗、道徳、を侵害しており個々的に謝罪する事は不可能ですから、被疑者の住所さえ判明しない場合も含めて、被害者多数の場合、公共機関(各弁護士会で受け付けております。赤十字もそのひとつです。)に贖罪寄付をすると良いでしょう。

9.(弁護人の依頼)以上の手続きを迅速、確実に実行させるためには、一度刑事弁護に精通した弁護士に起訴前弁護活動を相談した方が良いでしょう。弁護士の選任に関してですが、札幌の犯罪であっても、全国のどこの弁護士会に所属している弁護士でも依頼をすることは可能です。弁護士は、所定の弁護士会に所属している限り、その職務の範囲に地域的な限定はなく、全国どこでも弁護活動が可能です。札幌の犯罪の場合、捜査を担当する警察署、検察庁は札幌となります。被害者の所在もおそらく札幌でしょう。したがって、弁護活動の中心は札幌となります。弁護士に依頼をする場合、経験が豊富であれば弁護士との相談、打ち合わせ、報告連絡を密にするためにも自分の住所に近い法律事務所の弁護士に依頼された方が便利でしょう。どうしても適切な弁護士に相談できないようであれば他府県の弁護人でも構いません。札幌への出張等の費用がかかりますが、それはやむをえない必要経費と考えていただいた方が適切であると思われます。

10.(検察官の処分に対する異議)尚、被害者と示談ができたのに検察官がさらに略式手続により罰金にするようであれば、直ちに弁護人を通じ検察官一体の原則(検察官の職務は検事総長の指揮のもとに組織上一体として遂行すること。検察法7条乃至10条、12条)により、最終決裁権を持つ検察庁の責任者(検事正、次席検事等)に文書、口頭で異議の申し立てが必要であり、起訴便宜主義(刑訴248条)から面会の上納得する理由の説明を求めましょう。公益の代表者であり公訴提起権を独占する(起訴独占主義)検察官の判断は公正、公平でなければならないからです。金融機関に勤務の場合(その他公務員、資格者等処罰により職種に影響がある場合。)、公的側面があり罰金でも自主退職を求められる場合がありますので、弁護人としては職務上譲歩できません。通常検察庁も担当検察官を通し誠意をもって面会等対応してくれるはずです。                                    
≪条文参照≫

北海道:公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例
(卑わいな行為の禁止)
第2条の2
何人も、公共の場所又は公共の乗物にいる者に対し、正当な理由がないのに、著しくしゅう恥させ、又は不安を覚えさせるような次に掲げる行為をしてはならない。
(1) 衣服等の上から、又は直接身体に触れること。
(2) 衣服等で覆われている身体又は下着をのぞき見し、又は撮影すること。
(3) 写真機等を使用して衣服等を透かして見る方法により、衣服等で覆われている身体又は下着の映像を見、又は撮影すること。
(4) 前3号に掲げるもののほか、卑わいな言動をすること。
2 何人も、公衆浴場、公衆便所、公衆が使用することができる更衣室その他公衆が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいる場所における当該状態の人の姿態を、正当な理由がないのに、撮影してはならない。
(罰則)
第10条
第2条第1項第2号又は第6条の規定のいずれかに違反した者は、6月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
2 常習として、第2条の2又は第6条の規定のいずれかに違反した者は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。
第11条
第2条、第3条から第5条まで又は第7条から第9条の2までの規定のいずれかに違反した者は、10万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。
2 常習として第2条から前条までの規定のいずれかに違反した者は、6月以下の懲役又は20万円以下の罰金に処する。

刑事訴訟法
第60条  裁判所は、被告人が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がある場合で、左の各号の一にあたるときは、これを勾留することができる。
一  被告人が定まつた住居を有しないとき。
二  被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
三  被告人が逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
○2  勾留の期間は、公訴の提起があつた日から二箇月とする。特に継続の必要がある場合においては、具体的にその理由を附した決定で、一箇月ごとにこれを更新することができる。但し、第八十九条第一号、第三号、第四号又は第六号にあたる場合を除いては、更新は、一回に限るものとする。
○3  三十万円(刑法 、暴力行為等処罰に関する法律(大正十五年法律第六十号)及び経済関係罰則の整備に関する法律(昭和十九年法律第四号)の罪以外の罪については、当分の間、二万円)以下の罰金、拘留又は科料に当たる事件については、被告人が定まつた住居を有しない場合に限り、第一項の規定を適用する。
第192条  検察官と都道府県公安委員会及び司法警察職員とは、捜査に関し、互に協力しなければならない。
第193条  検察官は、その管轄区域により、司法警察職員に対し、その捜査に関し、必要な一般的指示をすることができる。この場合における指示は、捜査を適正にし、その他公訴の遂行を全うするために必要な事項に関する一般的な準則を定めることによつて行うものとする。
○2  検察官は、その管轄区域により、司法警察職員に対し、捜査の協力を求めるため必要な一般的指揮をすることができる。
○3  検察官は、自ら犯罪を捜査する場合において必要があるときは、司法警察職員を指揮して捜査の補助をさせることができる。
○4  前三項の場合において、司法警察職員は、検察官の指示又は指揮に従わなければならない。
第194条  検事総長、検事長又は検事正は、司法警察職員が正当な理由がなく検察官の指示又は指揮に従わない場合において必要と認めるときは、警察官たる司法警察職員については、国家公安委員会又は都道府県公安委員会に、警察官たる者以外の司法警察職員については、その者を懲戒し又は罷免する権限を有する者に、それぞれ懲戒又は罷免の訴追をすることができる。
○2  国家公安委員会、都道府県公安委員会又は警察官たる者以外の司法警察職員を懲戒し若しくは罷免する権限を有する者は、前項の訴追が理由のあるものと認めるときは、別に法律の定めるところにより、訴追を受けた者を懲戒し又は罷免しなければならない。第197条 捜査については、その目的を達するため必要な取調をすることができる。但し、強制の処分は、この法律に特別の定のある場合でなければ、これをすることができない。
2 捜査については、公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることができる。
第198条 検察官、検察事務官又は司法警察職員は、犯罪の捜査をするについて必要があるときは、被疑者の出頭を求め、これを取り調べることができる。但し、被疑者は、逮捕又は勾留されている場合を除いては、出頭を拒み、又は出頭後、何時でも退去することができる。
2 前項の取調に際しては、被疑者に対し、あらかじめ、自己の意思に反して供述をする必要がない旨を告げなければならない。
3 被疑者の供述は、これを調書に録取することができる。
4 前項の調書は、これを被疑者に閲覧させ、又は読み聞かせて、誤がないかどうかを問い、被疑者が増減変更の申立をしたときは、その供述を調書に記載しなければならない。5 被疑者が、調書に誤のないことを申し立てたときは、これに署名押印することを求めることができる。但し、これを拒絶した場合は、この限りでない。
第207条  前三条の規定による勾留の請求を受けた裁判官は、その処分に関し裁判所又は裁判長と同一の権限を有する。但し、保釈については、この限りでない。
○2  前項の裁判官は、第三十七条の二第一項に規定する事件について勾留を請求された被疑者に被疑事件を告げる際に、被疑者に対し、弁護人を選任することができる旨及び貧困その他の事由により自ら弁護人を選任することができないときは弁護人の選任を請求することができる旨を告げなければならない。ただし、被疑者に弁護人があるときは、この限りでない。
○3  前項の規定により弁護人の選任を請求することができる旨を告げるに当たつては、弁護人の選任を請求するには資力申告書を提出しなければならない旨及びその資力が基準額以上であるときは、あらかじめ、弁護士会(第三十七条の三第二項の規定により第三十一条の二第一項の申出をすべき弁護士会をいう。)に弁護人の選任の申出をしていなければならない旨を教示しなければならない。
4  裁判官は、第一項の勾留の請求を受けたときは、速やかに勾留状を発しなければならない。ただし、勾留の理由がないと認めるとき、及び前条第二項の規定により勾留状を発することができないときは、勾留状を発しないで、直ちに被疑者の釈放を命じなければならない。
第218条  検察官、検察事務官又は司法警察職員は、犯罪の捜査をするについて必要があるときは、裁判官の発する令状により、差押、捜索又は検証をすることができる。この場合において身体の検査は、身体検査令状によらなければならない。
○2  身体の拘束を受けている被疑者の指紋若しくは足型を採取し、身長若しくは体重を測定し、又は写真を撮影するには、被疑者を裸にしない限り、前項の令状によることを要しない。
○3  第一項の令状は、検察官、検察事務官又は司法警察員の請求により、これを発する。
○4  検察官、検察事務官又は司法警察員は、身体検査令状の請求をするには、身体の検査を必要とする理由及び身体の検査を受ける者の性別、健康状態その他裁判所の規則で定める事項を示さなければならない。
○5  裁判官は、身体の検査に関し、適当と認める条件を附することができる。
第219条  前条の令状には、被疑者若しくは被告人の氏名、罪名、差し押えるべき物、捜索すべき場所、身体若しくは物、検証すべき場所若しくは物又は検査すべき身体及び身体の検査に関する条件、有効期間及びその期間経過後は差押、捜索又は検証に着手することができず令状はこれを返還しなければならない旨並びに発付の年月日その他裁判所の規則で定める事項を記載し、裁判官が、これに記名押印しなければならない。
○2  第六十四条第二項の規定は、前条の令状についてこれを準用する。
第246条  司法警察員は、犯罪の捜査をしたときは、この法律に特別の定のある場合を除いては、速やかに書類及び証拠物とともに事件を検察官に送致しなければならない。但し、検察官が指定した事件については、この限りでない。
第247条 公訴は、検察官がこれを行う。
第248条 犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないときは、公訴を提起しないことができる。
(抗告)
第419条  抗告は、特に即時抗告をすることができる旨の規定がある場合の外、裁判所のした決定に対してこれをすることができる。但し、この法律に特別の定のある場合は、この限りでない。
(準抗告)
第429条  裁判官が左の裁判をした場合において、不服がある者は、簡易裁判所の裁判官がした裁判に対しては管轄地方裁判所に、その他の裁判官がした裁判に対してはその裁判官所属の裁判所にその裁判の取消又は変更を請求することができる。
一  忌避の申立を却下する裁判
二  勾留、保釈、押収又は押収物の還付に関する裁判
三  鑑定のため留置を命ずる裁判
四  証人、鑑定人、通訳人又は翻訳人に対して過料又は費用の賠償を命ずる裁判
五  身体の検査を受ける者に対して過料又は費用の賠償を命ずる裁判
○2  第四百二十条第三項の規定は、前項の請求についてこれを準用する。
○3  第一項の請求を受けた地方裁判所又は家庭裁判所は、合議体で決定をしなければならない。
第461条 簡易裁判所は、検察官の請求により、その管轄に属する事件について、公判前、略式命令で、100万円以下の罰金又は科料を科することができる。この場合には、刑の執行猶予をし、没収を科し、その他付随の処分をすることができる。

検察庁法
第七条  検事総長は、最高検察庁の長として、庁務を掌理し、且つ、すべての検察庁の職員を指揮監督する。
○2  次長検事は、最高検察庁に属し、検事総長を補佐し、又、検事総長に事故のあるとき、又は検事総長が欠けたときは、その職務を行う。
第八条  検事長は、高等検察庁の長として、庁務を掌理し、且つ、その庁並びにその庁の対応する裁判所の管轄区域内に在る地方検察庁及び区検察庁の職員を指揮監督する。
第九条  各地方検察庁に検事正各一人を置き、一級の検事を以てこれに充てる。
○2  検事正は、庁務を掌理し、且つ、その庁及びその庁の対応する裁判所の管轄区域内に在る区検察庁の職員を指揮監督する。
第十条  二人以上の検事又は検事及び副検事の属する各区検察庁に上席検察官各一人を置き、検事を以てこれに充てる。
○2  上席検察官の置かれた各区検察庁においては、その庁の上席検察官が、その他の各区検察庁においては、その庁に属する検事又は副検事(副検事が二人以上あるときは、検事正の指定する副検事)が庁務を掌理し、且つ、その庁の職員を指揮監督する。
第十二条  検事総長、検事長又は検事正は、その指揮監督する検察官の事務を、自ら取り扱い、又はその指揮監督する他の検察官に取り扱わせることができる。

犯罪捜査規範
( 微罪処分 ができる場合)
第百九十八条  捜査した事件について、犯罪事実が極めて軽微であり、かつ、検察官から送致の手続をとる必要がないとあらかじめ指定されたものについては、送致しないことができる。
( 微罪処分 の報告)
第百九十九条  前条の規定により送致しない事件については、その処理年月日、被疑者の氏名、年齢、職業及び住居、罪名並びに犯罪事実の要旨を一月ごとに一括して、 微罪処分 事件報告書(別記様式第十九号)により検察官に報告しなければならない。
( 微罪処分 の際の処置)
第二百条  第百九十八条( 微罪処分 ができる場合)の規定により事件を送致しない場合には、次の各号に掲げる処置をとるものとする。
一  被疑者に対し、厳重に訓戒を加えて、将来を戒めること。
二  親権者、雇主その他被疑者を監督する地位にある者又はこれらの者に代わるべき者を呼び出し、将来の監督につき必要な注意を与えて、その請書を徴すること。
三  被疑者に対し、被害者に対する被害の回復、謝罪その他適当な方法を講ずるよう諭すこと。

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