新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.916、2009/9/18 14:02

【民事・刑事・振り込め詐欺・恐喝・未成年者を対象とした犯罪の成立について】

質問:振り込め詐欺(恐喝)には色々な手口があるようですが、どのような手口があるのですか?

回答:
1.当事務所では、電話、メールでの相談もおこなっている関係で、「金銭を要求されているが、支払う必要があるのか?」という相談をいただくことが多数あります。そのような中で、比較的多数のご相談をいただいている、よくある「手口」というものがあります。実際に起こった事件全てにおいて「振り込め詐欺だから支払わなくてよい」という結論になるわけではありませんので、個別のケースについては必ず具体的に法律事務所でご相談されるようお願い致します。
2,刑事被疑事件に関し、万が一のため、事例集823番686番639番503番408番256番217番201番185番等もご参照ください。

解説:
以下に、ご相談の中でよくいただく詐欺、恐喝に該当すると思われる事例を紹介します。
@出会い系サイトなどで、女性とメールのやり取りをします。メールのやり取りを重ねるうちに、話がもりあがり、わいせつな話題になってきます。その中で、「わいせつな画像を送って欲しい」というような要求があります。こちらが、自分で撮影したり、ネットで採取したりした画像を添付メールなどで相手に送ったところで、サイト運営者などから、あなたの行為はわいせつ物陳列罪(犯罪の名前はいろいろです)にあたる。または女性が18歳未満であれば女性に指示し画像を送付させるのはするのは児童買春防止法の製造罪に該当する(同法7条3項。確かに該当します。)。警察に通報する。警察に通報されたくなかったら、データ削除費用、調査費用、事務手数料(詐欺の犯人は、調査費用、事務手数料という言葉をよく使います)として最初に数万円、さらに数十万円を支払え、と要求してくるようです。わいせつ画像については、公然性がなければ犯罪にはなりにくく、上記のような状況では、相手が要求している、という形式上、相手の法益を侵害したとも言いがたい状況です(そもそも「相手の女性」など存在しないのですが)し、いずれにせよ、サイト運営者が被害者という法的構成はとり得ないと考えられます。したがって、このような要求は詐欺の手口であると考えることができます。

但し、本当に18歳未満の女性に何度もワイセツな画像送付を要求した場合には児童買春防止法、製造罪により三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金ですから刑罰が重く注意が必要です。写真画像が撮影・送信されてくることは,児童買春・児童ポルノ法にいう「製造」に該当します。児童買春・児童ポルノ法は,児童の健全な性的成長を保護するため「製造」については,「所持」の場合のような目的による限定を加えていません(同法7条3項)。もっとも,写真画像を「製造した」というためには,「自己の意思どおりに撮影がなされた場合」に限られますが,自ら撮影した場合や共犯者に写真を撮らせた場合「製造」に当たることは当然のことです。児童が自ら写真を撮った場合ですが、あなたが何ら関与しないのに,少女が自らの判断で撮影した自分の裸の写真画像をメールに添付して送信してくるのであれば「製造」に当たらないといえます。そのような場合はあなたの意思どおりに撮影されたとはいえないからです。他方であなたが写真の撮影を児童に要求した場合は,製造に当たらないと言い切れるか疑問が出てきます。たとえ少女が実際に撮影したとしても「あなたの意思どおりに」撮影がなされたと認められる事情があれば,製造にあたることになるからです。たとえば,あなたが少女に対し撮影・送信を要求し,写真について具体的に指示したりしたというなどという事情がある場合は,具体的な事情によりますが,あなたの意思どおりに撮影がなされたと認められ「製造」に当たることになります。処罰ですが、略式手続で罰金としても身柄拘束もあり得ます。実際上は、被害女性が18歳未満ではなくこれを理由に恐喝的行為を行うことが犯行方法として報告されていますから、金銭的要求には応じられません。争点である年齢確認のため、事前に弁護士との協儀が必要です。

Aアダルトサイトなどで、画像や動画を見ようと思い、18歳以上ですか?という質問に対して、「はい」「YES」をクリックしたところ、突然画面が切り替わり、登録されたので利用料を支払え、という画面になった。また、その際、何かアプリケーションをダウンロードするような画面が高速で表示された。ウイルスにでも感染したのではないかと不安になります。このような相談も多数お受けしています。インターネット上で、通信販売など、なんらかの契約を結ぶ際には、インターネットの特殊性から、契約するつもりが無いのに間違えて契約したり、注文の内容を間違えたりすることが、店舗などの対面式の売買契約よりも発生する可能性が高くなりますので、特定商取引法と同施行規則により、制限が設けられています。すなわち、ネット上で契約を締結するには、契約が成立し、代金を支払う義務が発生すること、その契約の内容が、一目瞭然にわかるように画面に表示させることが必要です。ガイドラインなどでは、大きな文字、赤枠で囲むなどの目立つ表示、が要求されています。アダルトサイトの詐欺業者は、料金がかかることは利用規約に書いてある、利用規約を読まなかったあなたが悪い、という反論をよくしてきます。しかし、利用規約が読みにくい場所にあったり、リンク先にしかなかったりする場合、ひどいときには、数字をわざと漢数字にして、料金表示を見にくくしたりするサイトもあるようです。このような状況では、契約は成立せず、代金を支払う義務は発生しませんので、このような要求をしてくる業者も、詐欺であると考えることができます。なお、ウイルス感染について、最近、アニメーションで何かがダウンロードされたかのように表示し、不安をあおるという手口も報告されています。

B突然電話がかかってきて、「あなたが以前利用した風俗店で、接客をした女性が未成年(18歳未満であった。)だった。親が怒っている。今すぐ示談すれば逮捕されない。100万円払えば示談できる」といわれた。これもよくご相談いただく内容ですが、詐欺の可能性が高いと思います。まず、未成年に対しわいせつな行為をした場合は、各自治体の条例違反や、児童福祉法違反、児童買春防止法に問われる可能性がありますが、これが事実だった場合、お金を積んでも捜査、検挙を免れることはできません。確かに、未成年者を保護する法律等は、被害者である未成年者の健全な性的成長を保護するという点に特色がありますが、例え被害者やその親が許しても、善良な社会秩序維持の面もあるため、一旦捜査が開始すれば検挙、処罰されることがあるのです。つまり、示談すれば警察沙汰は全て免れる、という説明自体が間違いなのです。ましてや、弁護士が、警察への通報を交換条件にするということはありません。

Cいわゆる「援助交際」をしてホテルを出たところで、私立探偵と名乗る者が声をかけ「家出の中、高校生の身辺調査をしている、これは児童買春である。警察の届け出、依頼者の親との交渉の必要性等」を名目に金銭を要求することがあります。この場合、探偵なるものが事実かどうかという点と、年齢確認が大切です。ほとんどの場合、女性は、探偵と共犯であり18歳以上であることが多いようです。犯罪に関連するので警察への通報は躊躇するでしょうから(相手側はその点を指摘して捜査機関への申告を妨害します)その場で現金で解決しようとせずあわてず時間をかけて話し合い近くの弁護士に電話等で相談が必要です。勿論、住所、勤務先、氏名を開示する必要はありません。本当に女性が18歳未満の場合は、捜査機関が直接同行を求めるか、後日任意出頭を要請されます。特に上野、新宿、澁谷等の繁華街で少年課の捜査官が巡回職務質問をしているようです。この場合は年齢の認識が争点になりますので至急弁護士と相談してください。当日の中、高校生との会話内容が決め手になりますから至急証拠保全が必要です。被害未成年者が、同様の行為を繰り返している可能性もあり、年齢の説明に関して警察の誘導で年齢説明の時期について貴方の犯罪成立を認める供述をする危険があるからです(交際する前に18歳未満であることを説明したという事実)。犯罪構成要件上、交際後に18歳未満であることが分かった場合は犯罪不成立です。事例集639番256番を参照してください。いずれにしろ、言うまでもなく法律に反しなくても人間として倫理上許されない行為は厳に慎まなければいけません。

以上、振り込め詐欺等について、共通の対策は、「相手にしない」ことです。最初の攻撃ですっかり怖くなってしまい、誰にも相談できず、言われるままに自宅や職場の住所や電話番号などの個人情報を教えてしまうと、相手はいやがらせをしやすくなります。相手は、自宅の住所を調べる、教えないと押しかける、などといいますが、そのようなことはめったにありません(もし実際に起こった場合にはすぐにお近くの交番、警察署に110番通報しましょう)。また、法的措置をとる、などといいますが、むしろとってもらったほうがよいのです。裁判所は、双方当事者の意見を公平に聞き、法に従って公正な判断を下す場所です。こちらが契約の成立や、慰謝料の支払の必要が無いと考えているのであれば、それを主張するために、裁判にしてもらったほうがよいくらいなのです。当事務所では、詐欺の可能性があるご相談については、無視して、相手にしないこと、そして、もし万が一訴状が届いたら(訴状に見せかけた「ハガキ」が届くケースもありますが、裁判所はハガキを使うことはほとんどありません)、裁判は無視できないので、再度ご相談ください、というご回答を差し上げていますが、「裁判になったので再度相談したい」というご相談をいただいたことはほとんどありません。請求に疑問があったら、まずは支払わずに、また、こちらの情報を相手に与えないで無視するという態度で臨んでください。万が一、相手方に住所、連絡先、勤務先を知られて脅迫的言動が続き、どうしても不安で生活ができない状態であれば、警察に保護を依頼するか、弁護士に代理人を依頼することも可能です。刑事被疑事件に関する場合は、お近くの法律事務所に相談されることもお薦めいたします。

≪参考条文≫

特定商取引に関する法律
(指示)
第十四条  主務大臣は、販売業者又は役務提供事業者が第十一条、第十二条、第十二条の三(第五項を除く。)若しくは前条第一項の規定に違反し、又は次に掲げる行為をした場合において、通信販売に係る取引の公正及び購入者又は役務の提供を受ける者の利益が害されるおそれがあると認めるときは、その販売業者又は役務提供事業者に対し、必要な措置をとるべきことを指示することができる。
一  顧客の意に反して通信販売に係る売買契約又は役務提供契約の申込みをさせようとする行為として経済産業省令で定めるもの
二  前号に掲げるもののほか、通信販売に関する行為であつて、通信販売に係る取引の公正及び購入者又は役務の提供を受ける者の利益を害するおそれがあるものとして経済産業省令で定めるもの
2  経済産業大臣は、通信販売電子メール広告受託事業者が第十二条の四第一項若しくは同条第二項において準用する第十二条の三第二項から第四項までの規定に違反し、又は次に掲げる行為をした場合において、通信販売に係る取引の公正及び購入者又は役務の提供を受ける者の利益が害されるおそれがあると認めるときは、その通信販売電子メール広告受託事業者に対し、必要な措置をとるべきことを指示することができる。
一  顧客の意に反して通信販売電子メール広告委託者に対する通信販売に係る売買契約又は役務提供契約の申込みをさせようとする行為として経済産業省令で定めるもの
二  前号に掲げるもののほか、通信販売に関する行為であつて、通信販売に係る取引の公正及び購入者又は役務の提供を受ける者の利益を害するおそれがあるものとして経済産業省令で定めるもの

特定商取引に関する法律施行規則
(通信販売における禁止行為)
第十六条  法第十四条第一項第一号 の経済産業省令で定める行為は、次に掲げるものとする。
一  販売業者又は役務提供事業者が、電子契約(販売業者又は役務提供事業者と顧客との間で電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信技術を利用する方法により電子計算機の映像面を介して締結される売買契約又は役務提供契約であつて、販売業者若しくは役務提供事業者又はこれらの委託を受けた者が当該映像面に表示する手続きに従つて、顧客がその使用する電子計算機を用いて送信することによつてその申込みを行うものをいう。この号及び次号において同じ。)の申込みを受ける場合において、電子契約に係る電子計算機の操作(当該電子契約の申込みとなるものに限る。次号において同じ。)が当該電子契約の申込みとなることを、顧客が当該操作を行う際に容易に認識できるように表示していないこと。
二  販売業者又は役務提供事業者が、電子契約の申込みを受ける場合において、申込みの内容を、顧客が電子契約に係る電子計算機の操作を行う際に容易に確認し及び訂正できるようにしていないこと。
三  販売業者又は役務提供事業者が、申込みの様式が印刷された書面により売買契約又は役務提供契約の申込みを受ける場合において、当該書面の送付が申込みとなることを、顧客が容易に認識できるように当該書面に表示していないこと。
2  法第十四条第一項第二号 の経済産業省令で定める行為は、次に掲げるものとする。一  販売業者又は役務提供事業者が、電子情報処理組織を使用する方法(電磁的方法を除く。)により電子計算機を用いて送信することにより行われる通信販売電子メール広告をすることについての承諾を得、又は請求を受ける場合において、顧客の意に反する承諾又は請求が容易に行われないよう、顧客の電子計算機の操作(通信販売電子メール広告をすることについての承諾又は請求となるものに限る。次号において同じ。)が当該通信販売電子メール広告を受けることについての承諾又は請求となることを、顧客が当該操作を行う際に容易に認識できるように表示していないこと。
二  販売業者又は役務提供事業者が、電磁的方法による電磁的記録の送信、書面への記入その他の行為により行われる通信販売電子メール広告をすることについての承諾を得、又は請求を受ける場合において、当該通信販売電子メール広告をすることについての承諾を得、又は請求を受けるための表示を行う際に、顧客の意に反する承諾又は請求が容易に行われないよう、顧客の電磁的方法による電磁的記録の送信、書面への記入その他の行為が当該通信販売電子メール広告を受けることについての承諾又は請求となることを、顧客が容易に認識できるように表示していないこと。
三  販売業者又は役務提供事業者が、法第十二条四第一項 及び同条第二項 で準用する法第十二条の三第二項 から第四項 までの規定のいずれかに違反する行為を行つている者に、法第十二条の三第五項 各号に掲げる業務のすべてにつき一括して委託すること。
3  法第十四条第二項第一号 の経済産業省令で定める行為は、通信販売電子メール広告受託事業者が、通信販売電子メール広告委託者が電子契約の申込みを受けるための電子メール広告を行う場合において、電子契約に係る電子計算機の操作(当該電子契約の申込みとなるものに限る。)が当該電子契約の申込みとなることを、顧客が当該操作を行う際に容易に認識できるように表示していないこととする。
4  法第十四条第二項第二号 の経済産業省令で定める行為は、次に掲げるものとする。一  通信販売電子メール広告受託事業者が、電子情報処理組織を使用する方法(電磁的方法を除く。)により電子計算機を用いて送信することにより行われる通信販売電子メール広告委託者に係る通信販売電子メール広告をすることについての承諾を得、又は請求を受ける場合において、顧客の意に反する承諾又は請求が容易に行われないよう、顧客の電子計算機の操作(通信販売電子メール広告委託者に係る通信販売電子メール広告をすることについての承諾又は請求となるものに限る。次号において同じ。)が当該通信販売電子メール広告を受けることについての承諾又は請求となることを、顧客が当該操作を行う際に容易に認識できるように表示していないこと。
二  通信販売電子メール広告受託事業者が、電磁的方法による電磁的記録の送信、書面への記入その他の行為により行われる通信販売電子メール広告委託者に係る通信販売電子メール広告をすることについての承諾を得、又は請求を受ける場合において、当該通信販売電子メール広告をすることについての承諾をし、又は請求を受けるための表示を行う際に、顧客の意に反する承諾又は請求が容易に行われないよう、顧客の電磁的方法による電磁的記録の送信、書面への記入その他の行為が当該通信販売電子メール広告を受けることについての承諾又は請求となることを、顧客が容易に認識できるように表示していないこと。

児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(児童買春防止法)
(児童ポルノ提供等)
第七条  児童ポルノを提供した者は、三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。電気通信回線を通じて第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録その他の記録を提供した者も、同様とする。
2  前項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者も、同項と同様とする。同項に掲げる行為の目的で、同項の電磁的記録を保管した者も、同様とする。
3  前項に規定するもののほか、児童に第二条第三項各号のいずれかに掲げる姿態をとらせ、これを写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者も、第一項と同様とする。
4  児童ポルノを不特定若しくは多数の者に提供し、又は公然と陳列した者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。電気通信回線を通じて第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録その他の記録を不特定又は多数の者に提供した者も、同様とする。
5  前項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者も、同項と同様とする。同項に掲げる行為の目的で、同項の電磁的記録を保管した者も、同様とする。
6  第四項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを外国に輸入し、又は外国から輸出した日本国民も、同項と同様とする。

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