新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.879、2009/6/2 18:01 http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/gyoukan/kanri/jyohokokai/shoukai.html

[行政,行政機関の保有する情報の公開に関する法律]

質問:国の行政機関に対して,その保有する情報の開示を求めることはできますか。開示が認められなかったときの不服申立手続はありますか。

回答:
1.どなたでも「行政機関の保有する情報の公開に関する法律」に従った手続を利用することができます。
2.手続面については総務省のウェブサイトで詳しく紹介されていますが,制度の趣旨・概要を俯瞰したほうがより一層理解を深めることができるかと思いますので,以下にQ&Aの形式で解説します。
3.場合によっては開示が認められないこともあります。その場合には,一定の不服申立手続があります。
4.実際の利用に際しては,開示が認められない場合への対処などについて,事前に弁護士にご相談なさることをお勧めします。
5.開示請求手続を弁護士に代理人として行ってもらうこともできます。

解説
【この法律の趣旨はどのようなものですか】
はじめに,行政機関の保有する情報の公開に関する法律(名前が長いので,以下「本法」といいます。)が制定された根底にある趣旨について説明します。とりあえず手続の概要について知りたい,という方は読み飛ばしても大丈夫です。本法は,憲法上の人権である「知る権利」を実現させるための法律であると解することができます。この知る権利については,現行憲法上,明文で直接的に定められてはいません。しかし,憲法21条1項に規定される表現の自由の一環として,憲法上保障された人権であると解するべきです。
確かに,歴史的に見れば,表現の自由は意見表明・情報発信の自由という側面から成立してきましたが,社会が複雑化し,情報が高度化した今日においては,意見表明・情報発信の前提として,その表明すべき意見の形成や発信すべき情報の取得のためには,その素材となる情報を受け取る権利が保障されなければ,表現の自由を全うさせることができないといえるからです。この点,判例は,知る権利が憲法上の人権であるか否かが正面から問われたものはないものの,報道機関による報道の自由が問題となった事案において,報道の自由が憲法21条によって保障されると述べる中で,それが国民の知る権利に奉仕するものであると指摘しています。したがって,判例も知る権利が憲法上の人権であると解しているといえます。

とはいえ,知る権利には,2つの側面があります。1つは,国民が自ら情報を得る自由を公権力が妨害してはならないとする自由権的側面,もう1つは,国民が公権力に対してその情報提供を求めることができる社会権的側面です。このうち,社会権的側面の保障については,具体的な法律がなければ実現は困難で,絵に描いた餅になってしまいます。
こうしたことから,本法は,国民の知る権利に応えるための法律であると解することができます。本法の明文上は,そのことが明らかにはされず,行政機関の説明義務を果たすためという形で,いわば「裏側」からその趣旨を説明しようとしており,その点で「及び腰」であると言わざるを得ません。行政機関の保有する情報の開示は,国民主権の下,民主制を真に実現するために必要不可欠なものです。

「思想の自由市場論」という言葉があります。どのような思想信条や政治的な意見でも、表現の自由・言論の自由が整備された「自由市場」において、意見を闘わせ、淘汰されることにより、あるべき姿に近づくことができる、という考え方です。ドイツ古典哲学のカントやヘーゲルの弁証法の考え方を、政治的な意思決定に応用しようとする考え方とも言えるかも知れません。この、自由市場を整備するために、表現の自由は大事ですが、その前提として、知る権利も、極めて重要となります。国政に関する情報が得られなければ,国民は政治に関する意見表明を行うことができず、意思決定を十分にすることができないからです。国会議員には憲法62条で「国政調査権」が与えられ、行政各部に対して「質問主意書(国会法74条)」を出すことができますが、議員以外の国民全般の知る権利を拡充しようとしたのが、この法律の立法趣旨になります。そうだとすれば,解釈・運用上においては,知る権利の重要性に鑑み,極力これに応えるようにされるべきものといえます。

【どのような文書が対象になるのですか】
次の要件を満たした文書,図画,電磁的記録(パソコンなどで用いる電子データや磁気データ)です。
1:行政機関の職員が職務上作成したものか,取得したものであること。
2:当該行政機関の職員が組織的に用いるものとして,当該行政機関が保有しているものであること。
原則として,国のすべての行政機関のすべての文書等が対象になり,そのうえで,本法で定める例外や,他の法律による適用除外について個別に検討することになる,という考え方でよいでしょう。他方,本法は,地方公共団体については直接の対象としていません。ただし,地方公共団体も本法の趣旨に則って情報公開に努めるよう定めています(本法26条)。憲法の定める地方自治の趣旨に照らして,各自治体がそれぞれに見合った形での制度作りに自主的に取り組むことを尊重したものといえるでしょう。これを受けて各自治体で条例が定められていますので,国の行政機関ではなく地方公共団体に対して情報公開を求める際は,各自治体の条例を参照する必要があります。また,行政機関に準ずる存在といえる独立行政法人に対しても,本法は適用されませんが,本法とほぼ同内容の「独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律」が定められていますので,独立行政法人に対する情報公開請求をすることも可能です。

【誰でも開示の請求をする権利がありますか】
誰にでも権利があります。国民一般はもちろんのこと,法人であっても,外国人であっても手続を利用することができます。法人や外国人は日本国民ではありませんが,性質上可能な限りにおいては日本国民と同様に人権が保障されます。そして,本法に基づく開示請求については,法人であるからとか外国人であるからといった理由で一律に制限をする必要はなく,日本国民と同様に知る権利の保障が及ぶものと解することができます。

【開示を求める際に特定の理由が必要になりますか】
開示の請求にあたって,理由の如何は問われません。

【開示をしてもらえない情報はありますか】
原則として全てが開示の対象ですが,以下に掲げる「不開示情報」は開示されません。
1.特定個人を識別できる情報(個人情報)
2.法人等の正当な利益を害するおそれのある情報(法人情報)
3.国の安全を害する,諸外国等との信頼関係を損なうおそれのある情報(国家安全情報)
4.公共の安全と秩序維持に支障を及ぼすおそれのある情報(治安維持情報)
5.行政機関の相互間または内部における審議・検討等に関する情報で,率直な意見交換または意思決定の中立性を不当に損なうおそれのある情報(審議・検討情報)
6.行政機関の事務等の適正な遂行に支障を及ぼすおそれのある情報(行政運営情報)
本法が憲法上の人権である知る権利を実現するための法律だという考えに立ったとしても,こうした一定の制限を設けることはやむを得ないでしょう。なぜなら,人権といえどもそれが絶対無制約のものだとすれば,他人の人権や国民全体の利益(究極的には国民一人ひとりの人権)との矛盾衝突が生じてしまい,ある人の人権のために他者の人権,守るべき利益が侵害されてしまうことになってしまうからです。本法で不開示情報として列挙されているものは,いずれもそれ自体は一般論として正当であるといえます。ただし,個別具体的な場面において,本当にその不開示情報に当たるといえるかどうかについては,不開示情報の範囲が不当に広がらないようにされるべきです。

【請求から開示まではどのような流れになりますか】
対象となる文書等を保有している行政機関の開示請求窓口に請求書を提出してください。書式については,各省庁のウェブサイトからダウンロードが可能となっています。請求を受けた行政機関は,原則として30日以内に,請求どおり開示するか,不開示とするか,それとも部分的に開示するかの決定をします。対象となる文書等に第三者に関する情報が含まれる場合,当該第三者に対し,意見を述べる機会(意見書を提出する機会)が与えられます。開示決定,部分開示決定がされたときは,その通知があった日から30日以内に「開示の実施方法等申出書」を情報公開窓口に提出します。申出の際の希望を踏まえて,当該文書・図画等の閲覧の機会が与えられたり,写しの交付が受けられたりするなど,適宜の方法で開示が実施されます。これらの請求・申出はオンラインで行うこともできます。

【費用はかかりますか】
まず,開示請求の段階で手数料がかかります。平成21年5月1日現在,書面による開示請求の場合は1件あたり300円,オンライン請求の場合は1件あたり200円です。
次に,全部または一部の開示決定がされた場合,開示を実施する段階で実費相当額程度の手数料が別途かかります。コピー1枚10円などですが,詳しくは総務省のウェブサイトをご覧ください。費用を著しく高額に設定することで実質的に利用を制限することにならないよう,法律上も配慮が要請されており,また,経済的困窮者に対しては減免の措置も定められています(本法16条2項3項,本法施行令14条)。

【開示されなかったときの不服申立ての手段はありますか】
1.行政機関に対する不服申立て
一部しか開示されなかった場合や全部について開示が認められなかった場合で,その部分開示決定や不開示決定といった行政処分に対して不服があるときは,開示請求者ほか一定の者は,行政不服審査違法に基づく不服申立てをすることができます(本法18条)。
この不服申立てには,「審査請求(処分庁に上級行政庁がある場合)」と「異議申立て(処分庁に上級行政庁がない場合)」の2種類があります(行政不服審査法5条,6条)。行政機関は,これらいずれかの不服申立てを受けたときは,不服申立てに対する決定をする際,内閣府に設置された情報公開・個人情報保護審査会に対して諮問をしなければならないとされています。これにより,同じ行政機関ではあるものの,専門性を有する第三者の意見を聴くということになります。

2.裁判所への行政訴訟の提起
前記の不服申立制度の申立先は行政機関でしたが,司法機関である裁判所に訴訟を起こすこともできます(本法21条)。上記不服申立てについてなされた決定に不服がある場合は,訴えの形式としては,部分開示決定や不開示決定に係る不服申立てに対する裁決もしくは決定の取消しを求める訴訟ということになります。また,行政機関に対する不服申立てを訴訟に先立ってしなければならないということにはなっていませんので,部分開示や不開示の決定がされたときに,審査請求または異議申立てを経ることなく,最初から行政訴訟にするという選択肢もあります。この場合,訴えの形式としては,不開示決定等の取消しを求める訴訟ということになります。加えて,取消訴訟に義務付け訴訟を併合して提起し,改めて開示決定すべきという判決を求めることも可能です(行政事件訴訟法3条6号,37条の3)。これら訴訟の遂行は,さすがに弁護士に依頼しないと現実的には難しいでしょう。

【現在,開示請求を検討していますが,認められる見込みがあるかどうか調べることはできますか】
行政機関が不服申立てを受けたとき,内閣府に設置された情報公開・個人情報保護審査会に諮問しなければならないとされていることは前述しましたが,過去にされた諮問に対する答申が総務省のウェブサイト上にデータベース化されています。http://koukai-hogo-db.soumu.go.jp/search/pck$index2.html000ここで適宜のキーワードを指定して検索をかければ,同種の開示請求が過去に不服申立ての対象となったことがあるかどうかや,不服申立てがされたときの先例はどうなっているかを調べることができますので,これからしようとする情報公開請求が認められるかどうかについて,ある程度予測を立てることができます。

【この制度上,弁護士はどのような場面で利用することができますか】
弁護士が行政訴訟について訴訟代理権がある(弁護士以外には訴訟代理権がない)ことはよく知られるところかと思いますが,この手続における弁護士の利用場面は訴訟に限られません。行政機関に対する不服申立てについても弁護士が本人を代理して行うことができることはもとより,そもそも最初の情報公開請求自体から代理して行うこともできます。ただ,情報公開請求は,誰でも利用できるようにとの観点から設計された制度ですので,必ずしも全ての事案で弁護士に初めから依頼しなければ困難なものではありません。それでも,不服申立てや行政訴訟が必要になってから慌てるよりも,最初の段階できちんと弁護士に相談して臨んでおけば,不服申立てや行政訴訟に進むリスクを減少させることができるでしょう。相談料の負担だけで未然にそうした落とし穴を回避できれば,結果的には安上がりだったということになります。また,万一,不服申立てや行政訴訟に進まざるを得なくなったときでも,より有利に,落ち着いて対処することができるといえます。

【参照法令】

≪行政機関の保有する情報の公開に関する法律≫
≪行政機関の保有する情報の公開に関する法律施行令≫
≪独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律≫
≪独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律施行令≫
≪各地方公共団体の情報公開条例≫
今回は,制度の趣旨や概要を眺めるご回答となりましたので,個別の条文は引用しません。必要に応じて,六法をひいたり,弁護士にお聞きになったりしてください。

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