新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.860、2009/4/21 12:49

[商事・持分会社とは何か・定款自治の原則]

質問:ある事業を友人と共同で行っています。現在は会社形式にしておらず個人事業なのですが、友人から持分会社にしないかと言われました。持分会社とはどのようなものなでしょうか。株式会社との違いはどこにありますか。

回答:
1.「持分会社」とは、従来からある「合資会社」「合名会社」に、会社法下で新たに創設された「合同会社」を加えた会社類型の総称です(会社法575条)。
2.会社は、会社法成立前、株式会社、有限会社(物的会社)と合名会社、合資会社(人的会社)に理論的に分けられていましたが、平成17年会社法成立により、株式会社(物的会社)と合名、合資、合同会社(人的会社、名称も持分会社と呼ばれます。社員は会社に対して払い戻し等具体的な持ち分を持つことから名付けられています。)に区分けされるようになりました。結果的に有限会社が合同会社となって人的会社の仲間入りをしたような形になっています。区別の基準は、社員と会社、社員相互の関係が密接な関係にあるのかどうかという点です。具体的に言うと、基本的には社員が業務執行権を有するかどうか、無限責任があるかどうかという点に現れますが、合同会社は無限責任の点で修正されている点に特色があります。
3.今回、ご友人から「持分会社」を設立しようと誘われているとのことですが、一口に持分会社と言っても、株式会社とは異なるのはもちろんですが、「合資」「合名」「合同」会社それぞれが異なる組織形態となりますので、どの類型で設立するのかについて、ご友人とよく相談されるとよいでしょう。
4.以下解説します。

解説:
(持分会社総論 制度趣旨)

株式会社の他にどうして持分会社(合名、合資、合同会社)があるのか、どうして平成17年会社法成立施行に基づき旧有限会社の代わりに合同会社が必要なのか説明します。その答えは、自由で公正な社会経済秩序の維持建設発展です(法の支配の理念)。自由主義、資本主義経済の基本は、社会の発展の構想を、私有財産制、私的自治の原則、契約自由の原則におきますので、理論上、個人の経済活動の他に団体(社団)、財産(財団の存在)結成の自由を認めています(憲法21条、22条、29条。結社の自由、営業の自由)。本来、社団、財団の設立は自由に認められるのが原則ですが、団体、財団は存在において無形であり、多数の構成員、関係する債権者等利害関係人がおり、構成員(社員)の利害、社団等の債権者の利益を保護するためには法的規制も当然要請されることになります。国民の社団等設立の要望は、国際社会経済状況の変遷により異なり、それに応じて法は対応を迫られることになります。営利を目的とする社団、会社についていえば大きく分けると会社と社員、そして社員相互間の関係が密接か否かで理論的に区分されます。物的会社、人的会社(持分会社)の区別となります。別な言葉でいえば、所有と経営の分離があるか否かということです。もっと具体的に言うならば、基本的に社員が業務執行権を有するか、会社債権者に対して無限責任を負うかどうか(合同会社は修正されています)という点に現れます。しかし、この基本的な区分も本来自由公正な経済秩序維持の手段であり、その運営については目的に従い柔軟に対応できる制度でなければいけません。

そこで、平成17年の会社法成立、商法改正において、広く社団設立の自由を認める見地から、大会社、公開会社等を基本目的とする株式会社においては、株主保護、債権者保護の要請から規模に応じ、機関構成をさらに詳細に区分けし、会社の基本構造を明らかにして対応し、所有と経営が分離されていない小規模持分会社については、原則に戻り法の規制を弱め団体自治の自由(定款自治の自由)を広く認めて会社機関の設置、内部規律等に柔軟性を与え、会社の設立活動をさらに活発化させようとしました。例えば、有限会社に代わる合同会社は、社員に業務執行権を認めて、定款でも変更も可能としていますし、合資会社の有限責任社員も業務執行権を有し、定款で制限も可能としています。又、出資額とは関係なく利益分配、議決権の内容の変更も可能です(会社法590条2項、591条。本来人的会社では社員一議決権が原則。)。さらに合同会社では、経済活動の能力がありながら無限責任を回避したい社員を獲得するため有限責任を認め、代わりに債権者保護のための規定をおいています。会社計算書類の閲覧請求を自由(会社法625条、618条)、資本金額の減少の制限、債権者の異議(法626条以下)、利益配当の制限(法628条)、出資の払い戻しの制限(会社法632条以下)、退社による持分払い戻しの異議(法635条以下)。

以上から、持分会社においては、所有(出資)と経営の分離が前提となる株式会社とは異なり、所有と経営が原則として一致(社員であると同時に、会社の機関として経営に参加する)し、社員相互の信頼関係(社員が経営に参加し無限責任社員がいる。合同会社の社員は有限です。)に基づいて定款自治を広く認め会社を設立・運営されることを前提として各種の規定が設けられています。簡単に言うと社員が、出資だけをして、実際の経営は他人に任せて利益を追及していく株式会社とは対極にあり、小規模持分会社においては社員(出資者)の経営に対する意欲や能力がそのまま会社の利益に反映されていくことになり、そのため社員全員の合意により内部の機関、規律を定款で自由に定め(会社法637条)、はるかに弾力的な経営を可能にして国際社会に対応できる自由で公正な経済社会秩序を維持しようとしています。以下個別的に説明します。

1.持分会社の社員(出資者)
持分会社は、3つの会社類型の総称ですが、その大きな違いは、その会社を構成する社員(出資者)にあります。この社員には「無限責任社員」と「有限責任社員」の2つの類型が存在し、会社ごとになりうる社員の種類が決まっています。合名会社では、無限責任社員(会社法第580条1項、同法576条2項)、合資会社では、無限責任社員と有限責任社員(会社法580条、同法576条3項)、合同会社では、有限責任社員(会社法576条4項、会社法580条2項)が一人以上必要となります。

ア 無限責任社員
無限責任社員とは、580条に定める一定の場合に、会社債権者に対して、直接連帯して、会社の債務を弁済する責任を負う社員のことをいいます。
580条に定める一定の場合とは
会社の財産をもって債務を完済することが出来ない場合
会社財産への強制執行が成功しなかった場合(但し、社員が、当該会社に弁済する資力があり、かつ、強制執行が容易であることを証明した場合を除く)を指します。無限責任社員とはいえ、まずは、会社財産を弁済に充当し、2次的(補充的)に無限責任社員の個人財産によって、債務を弁済するように定めているのです。無限責任社員の責任は、民法における保証人のような責任と考えることが出来ます。また、無限責任社員は、出資の目的が金銭等に限られず、労務(能力など)とすることもできます。つまり、現実に金銭を出資しなくても、会社の設立に参加することが出来ます。
イ 有限責任社員
有限責任社員は、出資の限度で、責任を負担します。もう少し厳密に言うと、合資会社の有限責任社員と合同会社の有限責任社員は、その責任に違いがあります。これは、合資会社の有限責任社員の責任は、『直接』有限責任とされるのに対し、合同会社の有限責任社員は実質的に『間接』有限責任とされているからです。ちなみに、株式会社の出資者である「株主」は『間接』有限責任となります。合資会社の有限責任社員と合同会社の有限責任社員の違いは以下のとおりになります。

@ 合同会社の有限責任社員は、会社に出資した額以上の責任を、会社債権者に対して直接負うことがないのに対して、合資会社の有限責任社員は、定款に定められた各自の出資額(会社法第576条1項6号)のうち、既に会社に対して履行した価格を除いた未履行の部分については、上述した会社法第580条の要件を満たす場合には、「直接」債権者に対して弁済する責任を負うことになります。この違いは、いつ社員あるいは株主の地位を取得するかという点に起因するものであり、合同会社の有限責任社員(株式会社の株主も同様ですが)は、出資について全部の払込又は給付をした後でないとその地位を取得できないのに対し(会社法第209条、同法第578条)、合資会社の有限責任社員は、その出資の履行の全部が終わらなくても、その地位を取得することができるからです。
A 有限責任社員に対し、会社の利益額を超えた額の利益配当がなされた場合には、有限責任社員は、その超えた額について、会社に返還する義務を負いますが、これについて、合資会社の有限責任社員は、会社に返還した額を除いた残額について会社債権者に直接責任を負うのに対して、合同会社の有限責任社員は会社債権者に対して直接責任を負いません(会社法第623条、第580条2項、第630条)。なお、有限責任社員は、無限責任社員と異なり、出資の目的は金銭等の財産に限られ、労務を目的とすることはできません(会社法第576条1項6号)。

2.持分会社の会社運営
株式会社では、原則として、株主はその持ち株数に応じた議決権を有し、株主総会においてその議決権を行使することにより、会社の意思決定に参加することになります。会社の内部規則を定める定款を変更する場合や、会社を実際に運営していく取締役の選任も議決権の数により決定されます。つまり、持ち株数が大きければ、他の少数株主よりも会社の運営に大きな影響を与えることができるのです。今回ご友人と一緒に設立される会社が株式会社である場合に、持ち株数を同数にして(出資の額を同じにする)設立しない限り、極端な話ですが、出資額の大きい方が会社の運営等に関する決定権を握ることになります。一方で、持分会社の場合には、基本的に定款自治を認め、定款の変更は、定款に別段の定めがなければ、総社員の一致により決定されますし、業務執行についても、定款で業務執行権を一部の社員にのみ与える旨を定めていなければ(会社法591条第1項)、原則として業務執行権は各社員が有することになります(会社法第590条1項)。2人以上の社員がいる場合には、その過半数の決定により業務を執行(支配人の選任・解任については、総社員の過半数の同意が必要です。会社法591条2項)していくことになりますので、貴方がご友人より出資する財産が少なくても、業務の執行についての決定権は対等にあるということができます。また、業務執行権を有する社員は、定款で別段の定めを設けない限り、原則として会社の代表権も有することになりますので、会社業務に関する一切の裁判上および裁判外の権限も有することになります(会社法第599条)。なお、株式会社では、取締役の辞任・解任(株主総会の決議は必要)は自由にできますが、持分会社においては、一部の者に業務執行権を与えた場合には、正当な事由がない限り、業務執行社員の役を辞任・解任をすることはできません。

3.社員の資格と持分の譲渡
株式会社では、株式の譲渡により投下した資本を回収しますし、株式を譲渡することによって、株主の地位を失いことになります。株式の譲渡は、原則として自由にすることができますし、譲渡制限の規定が設けられていても、最終的には会社が買い受け人となることにより、投下した資本を回収しその会社との関係を絶つことができます。しかしながら、持分会社では、その持分の譲渡には、原則として他の社員全員の承諾を必要としますし(会社法585条)、社員の入社には原則として総社員の同意が必要(社員の名前は定款記載事項なので、定款変更の手続きが必要となるため)となります。これは、持分会社が、資本の結合による組織ではなく、社員相互の信頼関係に基づく組織であるからです。また、投下した資本の回収として、株式会社と同様の「持分の譲渡」に限定すると、特に譲渡人が無限責任社員である場合には、譲受人を探すのは容易ではないので、「退社に伴う持分の払戻し(会社法第611条)」を定め、社員の退社の際にその持分を払い戻すことによる投下資本の回収を認めています。なお、持分会社では、任意の退社以外に、法定退社事由(会社法第607条)として
@定款で定めた事由の発生
A総社員の同意
B死亡
C合併(合併により当該法人である社員が消滅する場合に限る。)
D破産手続開始の決定
E解散(破産、合併による解散を除く)
F後見開始の審判を受けたこと
G除名
が設けられていて、一定の事由が発生すると社員の意思とは関係なく(DからFの事由については、定款に別段の定めを設けることも可能)強制的に退社させられることになります。

4.まとめ
以上が持分会社の概略ですが、持分会社と株式会社は、同じ「会社」でありながら、全く異なる性質を有する組織であることがお分かりいただけるかと思います。特に会社法下で新設された「合同会社」は、以前の有限会社の形態を念頭に置かれた組織であると言っても過言ではなく、現在設立される持分会社の多くは「合同会社」であると言われています。これは、合資・合同会社と異なり、無限責任社員がいなくても設立できることが大きく影響を与えていると思われます。また、持分会社は、株式会社を設立する場合に比べ、公証人による定款認証が不要なことや、設立の際の登録免許税が株式会社に比べて低額であること(株式会社は15万、持分会社は6万円)ことから、費用をかけずに簡単に設立ができますし、決算公告も義務付けられていません。いずれにしても、実際に持分会社を設立されるということであれば、各会社組織の特徴や、現在の事業を維持・発展させるには、どの会社形態が適しているかについて十分ご検討のうえ、不明な点があれば、専門家に相談しされることをお勧めします。

≪条文参照≫

憲法
第21条  集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
第22条  何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。

会社法
(株主となる時期)
第209条 募集株式の引受人は、次の各号に掲げる場合には、当該各号に定める日に、出資の履行をした募集株式の株主となる。
一 第199条第1項第四号の期日を定めた場合 当該期日
二 第199条第1項第四号の期間を定めた場合 出資の履行をした日
(定款の記載又は記録事項)
第576条 持分会社の定款には、次に掲げる事項を記載し、又は記録しなければならない。
一 目的
二 商号
三 本店の所在地
四 社員の氏名又は名称及び住所
五 社員が無限責任社員又は有限責任社員のいずれであるかの別
六 社員の出資の目的(有限責任社員にあっては、金銭等に限る。)及びその価額又は評価の標準
2 設立しようとする持分会社が合名会社である場合には、前項第五号に掲げる事項として、その社員の全部を無限責任社員とする旨を記載し、又は記録しなければならない。
3 設立しようとする持分会社が合資会社である場合には、第1項第五号に掲げる事項として、その社員の一部を無限責任社員とし、その他の社員を有限責任社員とする旨を記載し、又は記録しなければならない。
4 設立しようとする持分会社が合同会社である場合には、第1項第五号に掲げる事項として、その社員の全部を有限責任社員とする旨を記載し、又は記録しなければならない。
(合同会社の設立時の出資の履行)
第578条 設立しようとする持分会社が合同会社である場合には、当該合同会社の社員になろうとする者は、定款の作成後、合同会社の設立の登記をする時までに、その出資に係る金銭の全額を払い込み、又はその出資に係る金銭以外の財産の全部を給付しなければならない。ただし、合同会社の社員になろうとする者全員の同意があるときは、登記、登録その他権利の設定又は移転を第三者に対抗するために必要な行為は、合同会社の成立後にすることを妨げない。
(社員の責任)
第580条 社員は、次に掲げる場合には、連帯して、持分会社の債務を弁済する責任を負う。
一 当該持分会社の財産をもってその債務を完済することができない場合
二 当該持分会社の財産に対する強制執行がその効を奏しなかった場合(社員が、当該持分会社に弁済をする資力があり、かつ、強制執行が容易であることを証明した場合を除く。)
2 有限責任社員は、その出資の価額(既に持分会社に対し履行した出資の価額を除く。)を限度として、持分会社の債務を弁済する責任を負う。
(持分の譲渡)
第585条 社員は、他の社員の全員の承諾がなければ、その持分の全部又は一部を他人に譲渡することができない。
2 前項の規定にかかわらず、業務を執行しない有限責任社員は、業務を執行する社員の全員の承諾があるときは、その持分の全部又は一部を他人に譲渡することができる。
3 第637条の規定にかかわらず、業務を執行しない有限責任社員の持分の譲渡に伴い定款の変更を生ずるときは、その持分の譲渡による定款の変更は、業務を執行する社員の全員の同意によってすることができる。
4 前3項の規定は、定款で別段の定めをすることを妨げない。
(業務の執行)
第590条 社員は、定款に別段の定めがある場合を除き、持分会社の業務を執行する。
2 社員が二人以上ある場合には、持分会社の業務は、定款に別段の定めがある場合を除き、社員の過半数をもって決定する。
3 前項の規定にかかわらず、持分会社の常務は、各社員が単独で行うことができる。ただし、その完了前に他の社員が異議を述べた場合は、この限りでない。
(業務を執行する社員を定款で定めた場合)
第591条 業務を執行する社員を定款で定めた場合において、業務を執行する社員が二人以上あるときは、持分会社の業務は、定款に別段の定めがある場合を除き、業務を執行する社員の過半数をもって決定する。この場合における前条第三項の規定の適用については、同項中「社員」とあるのは、「業務を執行する社員」とする。
2 前項の規定にかかわらず、同項に規定する場合には、支配人の選任及び解任は、社員の過半数をもって決定する。ただし、定款で別段の定めをすることを妨げない。
3(略)
4 業務を執行する社員を定款で定めた場合には、その業務を執行する社員は、正当な事由がなければ、辞任することができない。
5 前項の業務を執行する社員は、正当な事由がある場合に限り、他の社員の一致によって解任することができる。
6 前二項の規定は、定款で別段の定めをすることを妨げない。
(持分会社の代表)
第599条 業務を執行する社員は、持分会社を代表する。ただし、他に持分会社を代表する社員その他持分会社を代表する者を定めた場合は、この限りでない。
2 前項本文の業務を執行する社員が二人以上ある場合には、業務を執行する社員は、各自、持分会社を代表する。
3 持分会社は、定款又は定款の定めに基づく社員の互選によって、業務を執行する社員の中から持分会社を代表する社員を定めることができる。
4 持分会社を代表する社員は、持分会社の業務に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する。
5 前項の権限に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。
(社員の加入)
第604条 持分会社は、新たに社員を加入させることができる。
2 持分会社の社員の加入は、当該社員に係る定款の変更をした時に、その効力を生ずる。
3 前項の規定にかかわらず、合同会社が新たに社員を加入させる場合において、新たに社員となろうとする者が同項の定款の変更をした時にその出資に係る払込み又は給付の全部又は一部を履行していないときは、その者は、当該払込み又は給付を完了した時に、合同会社の社員となる。
(法定退社)
第607条 社員は、前条、第609条第1項、第642条第2項及び第845条の場合のほか、次に掲げる事由によって退社する。
一 定款で定めた事由の発生
二 総社員の同意
三 死亡
四 合併(合併により当該法人である社員が消滅する場合に限る。)
五 破産手続開始の決定
六 解散(前二号に掲げる事由によるものを除く。)
七 後見開始の審判を受けたこと。
八 除名
2 持分会社は、その社員が前項第五号から第七号までに掲げる事由の全部又は一部によっては退社しない旨を定めることができる。
(退社に伴う持分の払戻し)
第六百十一条 退社した社員は、その出資の種類を問わず、その持分の払戻しを受けることができる。ただし、第608条第一項及び第二項の規定により当該社員の一般承継人が社員となった場合は、この限りでない。
2 退社した社員と持分会社との間の計算は、退社の時における持分会社の財産の状況に従ってしなければならない。
3 退社した社員の持分は、その出資の種類を問わず、金銭で払い戻すことができる。
4 退社の時にまだ完了していない事項については、その完了後に計算をすることができる。
5 社員が除名により退社した場合における第二項及び前項の規定の適用については、これらの規定中「退社の時」とあるのは、「除名の訴えを提起した時」とする。
6 前項に規定する場合には、持分会社は、除名の訴えを提起した日後の年六分の利率により算定した利息をも支払わなければならない。
7 社員の持分の差押えは、持分の払戻しを請求する権利に対しても、その効力を有する。
(計算書類の閲覧等)
第618条  持分会社の社員は、当該持分会社の営業時間内は、いつでも、次に掲げる請求をすることができる。
一  計算書類が書面をもって作成されているときは、当該書面の閲覧又は謄写の請求
二  計算書類が電磁的記録をもって作成されているときは、当該電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧又は謄写の請求
2  前項の規定は、定款で別段の定めをすることを妨げない。ただし、定款によっても、社員が事業年度の終了時に同項各号に掲げる請求をすることを制限する旨を定めることができない。
第625条  合同会社の債権者は、当該合同会社の営業時間内は、いつでも、その計算書類(作成した日から五年以内のものに限る。)について第六百十八条第一項各号に掲げる請求をすることができる。
第二款 資本金の額の減少に関する特則
(出資の払戻し又は持分の払戻しを行う場合の資本金の額の減少)
第六百二十六条  合同会社は、第六百二十条第一項の場合のほか、出資の払戻し又は持分の払戻しのために、その資本金の額を減少することができる。
2  前項の規定により出資の払戻しのために減少する資本金の額は、第六百三十二条第二項に規定する出資払戻額から出資の払戻しをする日における剰余金額を控除して得た額を超えてはならない。
3  第一項の規定により持分の払戻しのために減少する資本金の額は、第六百三十五条第一項に規定する持分払戻額から持分の払戻しをする日における剰余金額を控除して得た額を超えてはならない。
4  前二項に規定する「剰余金額」とは、第一号に掲げる額から第二号から第四号までに掲げる額の合計額を減じて得た額をいう(第四款及び第五款において同じ。)。
一  資産の額
二  負債の額
三  資本金の額
四  前二号に掲げるもののほか、法務省令で定める各勘定科目に計上した額の合計額
(債権者の異議)
第六百二十七条  合同会社が資本金の額を減少する場合には、当該合同会社の債権者は、当該合同会社に対し、資本金の額の減少について異議を述べることができる。
2  前項に規定する場合には、合同会社は、次に掲げる事項を官報に公告し、かつ、知れている債権者には、各別にこれを催告しなければならない。ただし、第二号の期間は、一箇月を下ることができない。
一  当該資本金の額の減少の内容
二  債権者が一定の期間内に異議を述べることができる旨
3  前項の規定にかかわらず、合同会社が同項の規定による公告を、官報のほか、第九百三十九条第一項の規定による定款の定めに従い、同項第二号又は第三号に掲げる公告方法によりするときは、前項の規定による各別の催告は、することを要しない。
(利益の配当の制限)
第628条 合同会社は、利益の配当により社員に対して交付する金銭等の帳簿価額(以下この款において「配当額」という。)が当該利益の配当をする日における利益額を超える場合には、当該利益の配当をすることができない。この場合においては、合同会社は、第621条第一項の規定による請求を拒むことができる。
(社員に対する求償権の制限等)
第630条 前条第一項に規定する場合において、利益の配当を受けた社員は、配当額が利益の配当をした日における利益額を超えることにつき善意であるときは、当該配当額について、当該利益の配当に関する業務を執行した社員からの求償の請求に応ずる義務を負わない。
2 前条第一項に規定する場合には、合同会社の債権者は、利益の配当を受けた社員に対し、配当額(当該配当額が当該債権者の合同会社に対して有する債権額を超える場合にあっては、当該債権額)に相当する金銭を支払わせることができる。
3 第623条第二項の規定は、合同会社の社員については、適用しない。
第四款 出資の払戻しに関する特則
(出資の払戻しの制限)
第632条  第六百二十四条第一項の規定にかかわらず、合同会社の社員は、定款を変更してその出資の価額を減少する場合を除き、同項前段の規定による請求をすることができない。
2  合同会社が出資の払戻しにより社員に対して交付する金銭等の帳簿価額(以下この款において「出資払戻額」という。)が、第六百二十四条第一項前段の規定による請求をした日における剰余金額(第六百二十六条第一項の資本金の額の減少をした場合にあっては、その減少をした後の剰余金額。以下この款において同じ。)又は前項の出資の価額を減少した額のいずれか少ない額を超える場合には、当該出資の払戻しをすることができない。この場合においては、合同会社は、第六百二十四条第一項前段の規定による請求を拒むことができる。

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