新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.835、2009/1/19 14:03 https://www.shinginza.com/qa-saisei.htm

【民事・民事再生における個人再生手続の特則・再生債権者との債権確定手続きの簡易化,効力・私的整理の特色】

質問:私は,個人事業主であり,住宅ローン付きの家を有しておりますが,住宅ローンのほかに,金融機関から約600万円の債務があります。月々の所得(税引き後)は,平均して30万円程度であり,住宅ローンを除いた返済可能額は,月額5万円程度です。個人再生という手続を取れば,住宅を維持し,住宅ローンを払いながら,債務を圧縮できると聞いたので,その方法での解決を希望していますが,実は,取引先の業者とのトラブルがあり,約1000万円を請求されています。私としては,裁判になれば私の主張が認められると考えていますが,時間を掛けて裁判をしている余裕がありません。一刻も早く個人再生の申立をしたのですが,可能でしょうか。

回答:
1.迅速な再起更生を目的とする民事再生法の特則である小規模個人再生手続き(民事再生法221条以下)を利用すれば,争いが有る1000万円の請求があっても,再生債権者は自ら予納金を支払い「再生債権評価」の申し出をしなければなりませんし(法227条3項),再生委員の意見に従い裁判所の評価(決定)が出れば,当該評価に対し不服申出(異議による本来の債権確定訴訟)ができませんから(法227条。通常の民事再生は可能です。),貴方の主張が正しければ120万円(600万円の20%)を3年で返済することになり(月3万3000円),申し立て後約6か月で手続きは終了すると思われます。勿論,債権者の過半数(債権者の数,債権額)の同意が必要です。
2.但し,1000万円の請求が正当なものであれば,返済総額は負債総額(1000万円+600万円)の20%である320万円となり,これを3年間で返済しますので(月8万9000円),毎月5万円程度の支払い原資しかない貴方は返済が困難であり,返済期間を5年間にして(法229条2項2号。月5万3000円。安定的収入があるので5年まで認め再起更生を図ります。)債権者の同意,裁判所の認可を得ることになるでしょう。それも難しければ,原則に戻り通常の民事再生手続きになり返済期間をさらに延長することになりますが,5年以上では債権者の同意の可能性は少ないので(元本全額任意整理も通常3年であり民事再生のような一部免除であれば同意は難しいと思います),破産を選択することになるでしょう。

解説:
(債務整理の基本。)

個人主義,自由主義体制,自由競争主義のもとでは,各個人,会社が常に公平で,公正な条件で競争に参加し,公正な社会経済秩序を維持,発展することを理想としています(法の支配の理念)。従って,経済的に破綻するか,破たんの危険のある会社,個人にそれまでの負債を清算し経済的再起更生を果たせるよう種々の法制度を用意しています。しかし,契約は守られなければなりませんから,すでに生じた負債の整理,清算手続きは債権者に公正で,公平,迅速,低廉に行う必要があります。そのような手続きを利用するかは,負債額,残余財産,債務者の希望,債権者の意向により不安であれば法的専門家と協議し決定する必要があります。現在の事業を一旦清算する手続きは破産です。事業用等資産(自宅も)をすべて投げ出し人生一から出直します(破産宣告後の取得財産でやり直します。破産法34条)。比較的残余財産がない場合に有効です。次に,現在の事業用財産を基盤として再起するにはどのような方式を取ろうと必ず全債権者の同意が必要なはずです。本来残り少ない残余財産はすべて債権者の担保であり,同意なくして再起の資産として利用できないからです。しかし,全債権者の同意が必要とするとせっかく築きあげた財産の有効利用ができませんし,結果的に経済的再起更生が困難となります。従来,私的整理(全員の同意)の他,法が裁判所の監督下で強制的に再起を認める会社更生法,和議法,破産法の強制和議がありましたが,債権者の同意条件が厳しく(額,数3分の2)経営権の喪失等弾力的運用ができませんでした。そこで,平成12年以降民事再生法が制定施行され個人,会社の経営権の原則保持,債権者の同意要件緩和(数,額の2分の1),生活の本拠である自宅確保(住宅資金特別条項),そして,さらに負債額5000万円以下(住宅ローン除く),定期的収入のある債務所の迅速な再起更生のための特則を定めました。これが個人再生手続き(弁済総額,期間を限定した小規模再生とさらに債権者の同意不要の給与所得者再生)です。従って,本件のような再生債権の存否についても手続き(他に再生債権者の消極的同意の手続き)が簡略化されています。

1.債務整理の種類
(1)任意整理(私的整理,内整理)
任意整理とは,債権者との取引経過(借入・返済)を明確にした上で,その取引経過に基づく債権残高を利息制限法に従って引き直し計算し,債務額・過払い金額を確定させ,各債権者と借金・過払い金の支払方法について合意を交わす手続です。通常,消費者金融業者等は,利息制限法による適正な利率を超えた利息を取っておりますので(「グレーゾーン金利」と言われています。),任意整理によって借金が大幅に減額でき,場合によっては,過払い金の返還を受けることもあります。利息はカットするとしても負債元本を全額返済していきますので,借金が多額で弁済資力のない場合(概ね3年間の分割弁済が不可能な場合),任意整理によることはできません。貴方は,支払い原資月5万円ですから任意整理は難しいと思います。ちなみに,(比較的負債額が大きく残余財産があるが破産を望まない私的整理。)負債額が大きく担保付不動産等残余財産はあるが名誉,信用等のため最終的に破産手続きに移行することをどうしても希望しない個人,会社には,後述の民事再生法の他(民事再生でも債権者の同意が得られなければ最終的に破産になることが予想されます),一部弁済により残債務の免除を求める私的整理があります。

弁護士に依頼し私的に債権者集会を開き(又は個別に折衝),残余全財産の一括平等弁済(個人再生手続きを参考に5000万円以上なら10%以下程度が参考になるでしょう。親類に資金援助を求めることができる場合はそれを条件に和解案がさらにまとまる可能性もあります)担保権付き不動産については任意売却(事業用不動産については強制競売手続きより迅速で2−3割多く債権者に配当になるので債権者にも有利です。これを条件に債務免除を求める。事業用不動産であり民事再生法では自由に処分できません。会社更生法では経営権を奪われ,同意条件が厳しく破産の可能性が残ります。)についての同意を条件として残債権免除を提案し早期に終結する方法があります。自宅の確保は難しいかも知れませんが,交渉により民事再生法と同じように弁済期限延期の交渉は可能ですし,取引先等に公正な価格で売却し賃借し,後日交渉の上買い戻す方法もあります。但し,この整理手続きは裁判所等の公的監督下にありませんから不公正な手続きになる余地があり,私的財産を残すことができる旨の甘言を持っていわゆる整理事件集団が介入する危険が常に存在します。必ず弁護士の介入が必要でしょう。裁判所の監督下の手続きはいずれの方法でも公正性は保持できますが,事務的で,迅速性,弾力的終結が望めない場合があります。この方法は具体的に担当弁護士の経験,能力が影響すると思いますので弁護士と各債権者間で詳細な協議が必要でしょう。私的整理も債権合意が基本ですから合意に至るかどうかは,債権者が破産,民事再生手続きをとった時より債権者に有利な条件(弁済期間,金額,任意売却価格)を具体的に提示できるかどうかがポイントになります。

(2)自己破産
破産は,低収入・失業・失職その他の事情によって今後借金の返済を続けていくことができない債務者が,裁判所の手続を通じ,現時点で持っている財産(家財道具や財産的価値の僅少な物を除く)を換価して債務の返済に充て,なお残存する債務については免責を受けるという方法です。ギャンブルなど不誠実な理由で多額の借金ができた場合,債務者が住宅などの財産を持っていてどうしても失いたくない場合,破産によって仕事を失う場合(生命保険の外交員,ガードマン,旅行業務取引主任者などをしている方などです。資格を必要な人が破産により欠格理由というのではなくあくまで財産的管理業務に従事するかどうかで各法規で決められています。従って,医師,公務員は欠格事由になっていません。ただし,免責によって復権するまでの間別の仕事をするという方法もあります。),さらに,どうしてもご自分の名誉,信用から会社,個人について破産宣告を望まない人などは,この方法によることはできず,前述の任意整理や次の民事再生,個人再生を検討することになります。

(3)個人再生(民事再生手続きの特則であり小規模個人再生と給与所得者再生を言います。)
個人再生は,民事再生の特則として5000万円(住宅ローン除く)以下の負債で定期的に収入がある人に限りについて裁判所の手続を通じ,債務者の将来の収入の一部分を返済に充てることにして(原則負債の20%。3000万円以上は10%以下になります。最低100万円。)原則3年間の分割弁済を行い(安定的収入があるので例外を認め5年まで可能にして柔軟に対応しています。),残りの債務は免除を受けるという方法です(法221条)。通常の民事再生に対する基本的特色は,弁済総額,期間の限定,債権者の同意方式が消極的同意で簡易(供与所得者再生は同意も不要),手続き期間の短縮(申立後6か月)等の迅速な再起更生です。本件の,債権確定手続きの簡易化(法227条,評価制度)もその制度の一つです。借金が多額である場合(一部免除を得ても返しきれない場合。),借金よりも資産の方が多い場合,毎月の収入がない場合などは,この方法によることはできず,原則に戻り通常の民事再生手続き(同意は困難でしょう),前述の任意整理(私的整理)か自己破産を検討することになります。

2.ご相談のケース
貴方の場合,住宅を維持したいという希望であると思われますので,自己破産の手続は取り得ませんし,また,600万円という債務額からして,よほどの減額が見込めないかぎり(私的整理,期間通常3年ですから各年200万円,月16万円で弁済原資5万円では支払いができません),任意整理による解決も難しいでしょう。従って,個人再生手続を選択したことは基本的には正しいと思われます。住宅ローン条項については,別の事例で説明がありますので,そちらを参照していただき,ここでは,存否や額に争いがある債権を主張されている場合について,以下ご説明いたします。

3.個人再生における債権確定手続(評価制度)
(1)個人再生手続のいては,手続の簡易・迅速化という目的から,債権調査・確定手続について,特則が定められており,具体的には,以下のように手続が進められます。
@ 債権者一覧表の提出
再生債務者が再生手続開始の申立をする際,再生債権者一覧表を提出します(民事再生法221条3項,244条)。

A 債権届出
債権者一覧表が提出されると,再生債権者は,これに記載された再生債権について,債権者一覧表記載の再生債権について届出があったものとみなされます(同法225条)。本来なら債権者は債権届け出をしますが,個人再生手続きの迅速性から債務者の届け出債権一覧表を届け出として,みなし届出制度を規定しています。もっとも,再生債権者が,記載された再生債権の金額等に不満があれば,これとは別に,自ら主張する債権の内容にしたがった債権届出をすることになります。

B 異議の申述
再生債権者は,再生債務者の提出した債権者一覧表に対して,また,再生債務者は,届出再生債権者の再生債権額等について,定められた異議申述期間内に書面で異議を述べることができます(同法226条1甲)。

C 評価申立(通常の民事再生では法105条の査定に該当する。)
異議が述べられた場合,再生債権者は,裁判所に対して異議申述期間の末日から3週間の不変期間内に再生債権の評価の申立をすることができ(同法227条1項,244条),この場合,予納金を収める必要があります(227条3項。通常の民事再生法の査定も同様です。)。この場合,裁判所は,必ず個人再生委員(再生規模に応じた機関で通常の民事再生の監督委員,調査委員に該当します。法54条,法62条。)を選任し,債権の存否,その額,担保不足額についての調査を命じます(同法223条1項,244条)。個人再生委員は,調査結果を裁判所に報告しなければならず(227条5項,244条),裁判所は,この個人再生委員の意見を聞いて,その債権の存否及び額等を定めます(227条7項8項)。小規模個人再生の迅速性からこの決定に対する不服申し立ては認められていません(法238条は異議の訴えを認める通常の民事再生の債権確定手続きを準用していませんし,法227条に異議による債権確定の訴えの規定はありません。)。但し,再生委員の意見に基づき訴訟手続きによることなく裁判所が再生債権の存否を決めますので,裁判を受ける権利(憲法32条)を保障されていませんから,債権表に確定判決の効力は認められません(法238条は,法104条等民事再生法の再生債権の調査,確定手続きを原則的に準用していません)。もし再生債務者が再生計画を履行しない場合,債権表に基づいて強制執行はできないことになりますし,再生債権に対する評価が認められなくても再度再生債権の請求訴訟を改めて提起して配当を受けることが可能です(法232条3項,「再生債権の評価の対象となったもの」に該当する)。

(2)このように,迅速な経済的再起更生を目的とする個人再生手続においては,再生債権の金額が少ないにもかかわらず,再生債権に関する異議(評価)は,最終的に再生債権者側から申し立てなければならず,しかも,申し立てることができる期間制限(法227条1項。異議申して期間の末日から3週間)と,予納金(個人再生委員の費用,報酬。基準15万円)の負担があり,裁判所の評価に対する裁判(決定)に対して異議の訴えを提起することもできませんので,再生債権者が再生債務者の届け出た債務額を争うことは,容易ではありません。従って,債務者にとっては,債権者から存否や額に争いのある債権を主張されているような場合であっても,思い切って個人再生を申し立て,自らの主張どおりの届出を出すことで,結果として手続内では,自己の望む解決に至る可能性も高いと考えられます。但し,再生委員の意見により負債額を認められると弁済総額が増加しますので弁済期間変更等を考える必要があります。

4.結論
従って,貴方のケースでは,裁判になれば貴方に分がある以上,評価制度の上でも貴方が有利でしょうし,そもそも,上述のように,当該取引業者が評価申立をするにはかなりの負担になりますので,貴方の主張にしたがった内容で個人再生手続を申し立ててみてはいかがでしょうか。なお,当該債権を全て否定する場合は,債権者一覧表には,債権者としての記載はしつつ,債権額を0円と記載しておくことになります。

≪条文参照≫

民事再生法
(目的)
第一条  この法律は,経済的に窮境にある債務者について,その債権者の多数の同意を得,かつ,裁判所の認可を受けた再生計画を定めること等により,当該債務者とその債権者との間の民事上の権利関係を適切に調整し,もって当該債務者の事業又は経済生活の再生を図ることを目的とする。
(再生債権の調査の結果)
第百四条  再生債権の調査において,再生債務者等が認め,かつ,調査期間内に届出再生債権者の異議がなかったときは,その再生債権の内容又は議決権の額(第百一条第三項の規定により認否書に記載された再生債権にあっては,その内容)は,確定する。
2  裁判所書記官は,再生債権の調査の結果を再生債権者表に記載しなければならない。
3  第一項の規定により確定した再生債権については,再生債権者表の記載は,再生債権者の全員に対して確定判決と同一の効力を有する。
(再生債権の査定の裁判)
第百五条  再生債権の調査において,再生債権の内容について再生債務者等が認めず,又は届出再生債権者が異議を述べた場合には,当該再生債権(以下「異議等のある再生債権」という。)を有する再生債権者は,その内容の確定のために,当該再生債務者等及び当該異議を述べた届出再生債権者(以下この条から第百七条まで及び第百九条において「異議者等」という。)の全員を相手方として,裁判所に査定の申立てをすることができる。ただし,第百七条第一項並びに第百九条第一項及び第二項の場合は,この限りでない。
2  前項本文の査定の申立ては,異議等のある再生債権に係る調査期間の末日から一月の不変期間内にしなければならない。
3  第一項本文の査定の申立てがあった場合には,裁判所は,当該申立てを不適法として却下する場合を除き,査定の裁判をしなければならない。
4  査定の裁判においては,異議等のある再生債権について,その債権の存否及びその内容を定める。
5  裁判所は,査定の裁判をする場合には,異議者等を審尋しなければならない。
6  第一項本文の査定の申立てについての裁判があった場合には,その裁判書を当事者に送達しなければならない。この場合においては,第十条第三項本文の規定は,適用しない。
(査定の申立てについての裁判に対する異議の訴え)
第百六条  前条第一項本文の査定の申立てについての裁判に不服がある者は,その送達を受けた日から一月の不変期間内に,異議の訴えを提起することができる。
2  前項の訴えは,再生裁判所が管轄する。
3  第一項の訴えが提起された第一審裁判所は,再生裁判所が再生事件を管轄することの根拠となる法令上の規定が第五条第八項又は第九項の規定のみである場合(再生裁判所が第七条第四号の規定により再生事件の移送を受けた場合において,移送を受けたことの根拠となる規定が同号ロ又はハの規定のみであるときを含む。)において,著しい損害又は遅滞を避けるため必要があると認めるときは,前項の規定にかかわらず,職権で,当該訴えに係る訴訟を第五条第一項に規定する地方裁判所(同項に規定する地方裁判所がない場合にあっては,同条第二項に規定する地方裁判所)に移送することができる。
4  第一項の訴えは,これを提起する者が,異議等のある再生債権を有する再生債権者であるときは異議者等の全員を,異議者等であるときは当該再生債権者を,それぞれ被告としなければならない。
5  第一項の訴えの口頭弁論は,同項の期間を経過した後でなければ開始することができない。
6  同一の債権に関し第一項の訴えが数個同時に係属するときは,弁論及び裁判は,併合してしなければならない。この場合においては,民事訴訟法第四十条第一項 から第三項 までの規定を準用する。
7  第一項の訴えについての判決においては,訴えを不適法として却下する場合を除き,同項の裁判を認可し,又は変更する。
(再生計画の取消し)
第百八十九条  再生計画認可の決定が確定した場合において,次の各号のいずれかに該当する事由があるときは,裁判所は,再生債権者の申立てにより,再生計画取消しの決定をすることができる。
一  再生計画が不正の方法により成立したこと。
二  再生債務者等が再生計画の履行を怠ったこと。
三  再生債務者が第四十一条第一項若しくは第四十二条第一項の規定に違反し,又は第五十四条第二項に規定する監督委員の同意を得ないで同項の行為をしたこと。
2  前項第一号に掲げる事由を理由とする同項の申立ては,再生債権者が再生計画認可の決定に対する即時抗告により同号の事由を主張したとき,若しくはこれを知りながら主張しなかったとき,再生債権者が同号に該当する事由があることを知った時から一月を経過したとき,又は再生計画認可の決定が確定した時から二年を経過したときは,することができない。
3  第一項第二号に掲げる事由を理由とする同項の申立ては,再生計画の定めによって認められた権利の全部(履行された部分を除く。)について裁判所が評価した額の十分の一以上に当たる権利を有する再生債権者であって,その有する履行期限が到来した当該権利の全部又は一部について履行を受けていないものに限り,することができる。
4  裁判所は,再生計画取消しの決定をしたときは,直ちに,その裁判書を第一項の申立てをした者及び再生債務者等に送達し,かつ,その主文及び理由の要旨を公告しなければならない。
5  第一項の申立てについての裁判に対しては,即時抗告をすることができる。
6  第四項の決定は,確定しなければその効力を生じない。
7  第四項の決定が確定した場合には,再生計画によって変更された再生債権は,原状に復する。ただし,再生債権者が再生計画によって得た権利に影響を及ぼさない。
8  第百八十五条の規定は第四項の決定が確定した場合について,前条第四項の規定は再生手続終了前に第四項の決定が確定した場合について準用する。
第十三章 小規模個人再生及び給与所得者等再生に関する特則
第一節 小規模個人再生
(手続開始の要件等)
第二百二十一条  個人である債務者のうち,将来において継続的に又は反復して収入を得る見込みがあり,かつ,再生債権の総額(住宅資金貸付債権の額,別除権の行使によって弁済を受けることができると見込まれる再生債権の額及び再生手続開始前の罰金等の額を除く。)が五千万円を超えないものは,この節に規定する特則の適用を受ける再生手続(以下「小規模個人再生」という。)を行うことを求めることができる。
2  小規模個人再生を行うことを求める旨の申述は,再生手続開始の申立ての際(債権者が再生手続開始の申立てをした場合にあっては,再生手続開始の決定があるまで)にしなければならない。
3  前項の申述をするには,次に掲げる事項を記載した書面(以下「債権者一覧表」という。)を提出しなければならない。
一  再生債権者の氏名又は名称並びに各再生債権の額及び原因
二  別除権者については,その別除権の目的である財産及び別除権の行使によって弁済を受けることができないと見込まれる再生債権の額(以下「担保不足見込額」という。)
三  住宅資金貸付債権については,その旨
四  住宅資金特別条項を定めた再生計画案を提出する意思があるときは,その旨
五  その他最高裁判所規則で定める事項
4  再生債務者は,債権者一覧表に各再生債権についての再生債権の額及び担保不足見込額を記載するに当たっては,当該額の全部又は一部につき異議を述べることがある旨をも記載することができる。
5  第一項に規定する再生債権の総額の算定及び債権者一覧表への再生債権の額の記載に関しては,第八十七条第一項第一号から第三号までに掲げる再生債権は,当該各号に掲げる債権の区分に従い,それぞれ当該各号に定める金額の債権として取り扱うものとする。
6  再生債務者は,第二項の申述をするときは,当該申述が第一項又は第三項に規定する要件に該当しないことが明らかになった場合においても再生手続の開始を求める意思があるか否かを明らかにしなければならない。ただし,債権者が再生手続開始の申立てをした場合については,この限りでない。
7  裁判所は,第二項の申述が前項本文に規定する要件に該当しないことが明らかであると認めるときは,再生手続開始の決定前に限り,再生事件を通常の再生手続により行う旨の決定をする。ただし,再生債務者が前項本文の規定により再生手続の開始を求める意思がない旨を明らかにしていたときは,裁判所は,再生手続開始の申立てを棄却しなければならない。
(再生債権の届出の内容)
第二百二十四条  小規模個人再生においては,再生手続に参加しようとする再生債権者は,議決権の額を届け出ることを要しない。
2  小規模個人再生における再生債権の届出に関しては,第二百二十一条第五項の規定を準用する。
(再生債権のみなし届出)
第二百二十五条  債権者一覧表に記載されている再生債権者は,債権者一覧表に記載されている再生債権については,債権届出期間内に裁判所に当該再生債権の届出又は当該再生債権を有しない旨の届出をした場合を除き,当該債権届出期間の初日に,債権者一覧表の記載内容と同一の内容で再生債権の届出をしたものとみなす。
(届出再生債権に対する異議)
第二百二十六条  再生債務者及び届出再生債権者は,一般異議申述期間内に,裁判所に対し,届出があった再生債権の額又は担保不足見込額について,書面で,異議を述べることができる。ただし,再生債務者は,債権者一覧表に記載した再生債権の額及び担保不足見込額であって第二百二十一条第四項の規定により異議を述べることがある旨を債権者一覧表に記載していないものについては,異議を述べることができない。
2  第九十五条の規定による届出又は届出事項の変更があった場合には,裁判所は,その再生債権に対して異議を述べることができる期間(以下「特別異議申述期間」という。)を定めなければならない。
3  再生債務者及び届出再生債権者は,特別異議申述期間内に,裁判所に対し,特別異議申述期間に係る再生債権の額又は担保不足見込額について,書面で,異議を述べることができる。
4  第百二条第三項から第五項までの規定は特別異議申述期間を定める決定又は一般異議申述期間若しくは特別異議申述期間を変更する決定をした場合における裁判書の送達について,第百三条第二項の規定は第二項の場合について準用する。
5  再生手続開始前の罰金等及び債権者一覧表に住宅資金特別条項を定めた再生計画案を提出する意思がある旨の記載がされた場合における第百九十八条第一項に規定する住宅資金貸付債権については,前各項の規定は,適用しない。
6  再生債務者が債権者一覧表に住宅資金特別条項を定めた再生計画案を提出する意思がある旨の記載をした場合には,第百九十八条第一項に規定する住宅資金貸付債権を有する再生債権者であって当該住宅資金貸付債権以外に再生債権を有しないもの及び保証会社であって住宅資金貸付債権に係る債務の保証に基づく求償権以外に再生債権を有しないものは,第一項本文及び第三項の異議を述べることができない。
(再生債権の評価)
第二百二十七条  前条第一項本文又は第三項の規定により再生債務者又は届出再生債権者が異議を述べた場合には,当該再生債権を有する再生債権者は,裁判所に対し,異議申述期間の末日から三週間の不変期間内に,再生債権の評価の申立てをすることができる。ただし,当該再生債権が執行力ある債務名義又は終局判決のあるものである場合には,当該異議を述べた者が当該申立てをしなければならない。
2  前項ただし書の場合において,前項本文の不変期間内に再生債権の評価の申立てがなかったとき又は当該申立てが却下されたときは,前条第一項本文又は第三項の異議は,なかったものとみなす。
3  再生債権の評価の申立てをするときは,申立人は,その申立てに係る手続の費用として裁判所の定める金額を予納しなければならない。
4  前項に規定する費用の予納がないときは,裁判所は,再生債権の評価の申立てを却下しなければならない。
5  裁判所は,第二百二十三条第一項の規定による決定において,同条第二項第二号に掲げる事項を個人再生委員の職務として指定する場合には,裁判所に対して調査の結果の報告をすべき期間をも定めなければならない。
6  第二百二十三条第二項第二号に掲げる事項を職務として指定された個人再生委員は,再生債務者若しくはその法定代理人又は再生債権者(当該個人再生委員が同項第一号に掲げる事項をも職務として指定された場合にあっては,再生債権者)に対し,再生債権の存否及び額並びに担保不足見込額に関する資料の提出を求めることができる。
7  再生債権の評価においては,裁判所は,再生債権の評価の申立てに係る再生債権について,その債権の存否及び額又は担保不足見込額を定める。
8  裁判所は,再生債権の評価をする場合には,第二百二十三条第二項第二号に掲げる事項を職務として指定された個人再生委員の意見を聴かなければならない。
9  第七項の規定による再生債権の評価については,第二百二十一条第五項の規定を準用する。
10  再生手続開始前の罰金等及び債権者一覧表に住宅資金特別条項を定めた再生計画案を提出する意思がある旨の記載がされた場合における第百九十八条第一項に規定する住宅資金貸付債権については,前各項の規定は,適用しない。

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