新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.817、2008/12/5 13:08 https://www.shinginza.com/chikan.htm

【刑事・冤罪の起訴前の弁護活動・伝聞証拠禁止の原則・弁護人による被疑者(被告人)に有利な供述録取書(供述書)の作成・捜査機関との交渉、刑訴322条1項後段・特信情況と必要性】

【質問】電車に乗っていたら、突然「あんた痴漢したでしょ」と言われ、そのまま駅事務室へ連れて行かれました。結局警察も来て、逮捕され、勾留されています。でも、私は無実です。どうすれば外に出られますか?

【回答】
1.急いで、知り合いの弁護士を呼んでください。当番弁護士さんでも構いません。
2.直ちに、弁護人に以下の事項を依頼してください。
@あなたの言い分を供述調書(供述録取書ともいう。刑訴321条、322条、署名、又は押印が必要。二重の伝聞の除去)(又は供述書)にしてもらい担当捜査官、検察官に提出する。成立の真正を担保する必要があれば調書には公証人の認証をうけ確定日付をつけることができます(公証人法1条1項2号、民法施行法5条1項2号)。捜査機関が被疑者の供述調書を受け取ってくれない場合等に有効です。
A担当捜査官、検察官と面会、交渉し、供述調書(又は供述書)に対する警察側の反論、根拠となる情報の開示を求める。
Bさらに、その情報、証拠に対する反論の供述調書を作成し捜査機関に再提出する。捜査機関、被害者側の矛盾点が出るまでこれを繰り返す。
Cあなたに有利な証人がいれば、その人の話を聞いて証人の供述録取書を作ってもらい同じく提出する。以上の書面一切を勾留請求、延長、準抗告で提出する。
D万が一、起訴されたら刑訴322条1項後段の被告人の供述録取書面として提出する。保釈申請書にも被告人、及び捜査機関主張の事実関係を記載した弁護人の意見書を全て添付して事実上裁判所に提出する。
3.事件によっては、起訴される前にあなたの主張を書面にして提出し証拠として保全し、捜査機関を説得して勾留、起訴を回避することが重要になります。
4.事件に巻き込まれ事実上被疑者として疑われた場合、単なる黙秘権の行使(憲法38条1項)、捜査機関に対する口頭による抗議、主張は、勾留、起訴阻止、起訴前の釈放、公判での弁護活動にどれだけ効果があるか疑問です。記憶が鮮明なうちに書面にて主張をし、被害者側の矛盾点を明らかにしておくことが肝要です。弁護人との慎重な協議が必要でしょう。

【解説】
1.弁護士を呼ぶことの重要性。あなたの現在の立場は、被害者女性により現行犯逮捕され(刑訴212条)、その後の勾留が決定され警察署に拘束されているという状態です。今後、あなた(家族も)が刑事訴訟上どのような理由でどれくらいの期間身体を拘束されるのか、あるいはその前提としてどのような行為をしたことによって逮捕されているのか、といった詳しい情報は、捜査の密行性(捜査を公開すると証拠隠滅が図られる恐れがあるため)から警察に聞いてもはっきりとは教えてくれないのが通常です。基本的に警察は被疑者となったあなたの味方というよりも、被害者側の主張を擁護する立場にあると思った方がいいと思います。あなたの主張を擁護し守ってくれる弁護士を呼び依頼し、あなたが無実の罪で警察に逮捕されていることを詳細に話して、力になってくれるように頼んでください(憲法34条、37条3項の趣旨から弁護人選任権が認められます)。日本の刑事裁判の有罪率が99.9%であることは広く知られていますが、もっと怖いことに、はっきりとした目撃者がいない「痴漢行為」の裁判で、被害者女性の供述だけで有罪になることも希ではありません。強姦、強制わいせつ等ワイセツ罪は密室で行われることが多く目撃者がいないのが通常ですが、それでも被害者の供述により有罪を認定されています。

2.それを避けるためには、一刻も早く「弁護人」に選任し、検察官の起訴を防ぐための具体的な弁護活動が必要です。本来であれば、有罪の証明を検察官がしなければならず、「無罪推定」がはたらくはずなのですが(疑わしきは罰せず。フランス人権宣言、世界人権宣言11条1項、市民的及び政治的権利に関する国際規約14条2項、憲法98条2項)、捜査機関は、本件のように否認事件ともなれば、無罪推定を覆すだけの証拠資料を逮捕から勾留満期までの間(最長23日間、刑訴203条、208条)検察官、担当捜査機関一体(検察官同一体の原則、検察法7条以下、司法警察職員はその補助機関、刑訴192条以下)となって全力で準備用意するのです。これに対して、単なるその事件限りの弁護人の接見、アドヴァイス、黙秘権行使だけでは、十分な対応といえるか疑問が残ります。捜査機関の証拠資料作成準備により、事実上の立証責任は逆転するからです。伝聞証拠禁止の原則(刑訴320条)により、本来否認事件であれば公判担当の裁判官は予断を抱くはずがないのですが、逮捕状請求(通常逮捕、被害者供述調書等の書類が添付されます。現行犯の場合はありません)、勾留(延長)請求、保釈請求の意見書等により書面として記録に綴じられ事実上公判の裁判官の心証を形成することになります。被害者の詳細な供述録取書は理路整然として裁判の長期化、保釈の必要性、有罪の場合の重罰化を恐れて万が一弁護人が同意すると(一部信用性を争う方式)、とても勝ち目がありません。捜査機関は被疑者の意見を十分に聞きその意見と矛盾しないような被害者の供述録取書を何通も作成しておきます(黙秘権の行使はこの場面では役に立ちます)。そのため時には優しく、厳しく被疑者の供述を引き出し参考にします。公判での被害者の供述と被告人の供述が対立すると被告人の供述が意外と信用されないのはこの辺に原因があります。捜査機関は長年の訓練と経験により立証方法を熟知し体制が整っています。起訴されたらまず有罪と考え、推定する裁判官が多いという現実はこのような点に原因があると思います。このような捜査機関に対し、大事件ででなければ弁護人側が、体制、経験、訓練、資力において十分とは言えない場合もあります(通常刑事弁護人は民事事件も受任しているので年に数件しか担当していないのが現状でしょう)。

3.これに対応する方法は一つしかありません。捜査機関を見習い、捜査機関と同じことをすればいいわけです。

@来るべき裁判に備え被疑者の記憶が鮮明なうちに、自らの有利な意見主張を供述調書書面として残し(供述者の署名、又は押印が必要です。刑訴322条。二重の伝聞の除去。供述録取書は録取者弁護人が供述者、被疑者から聞いた内容を書面で説明しているので二重になるが、署名押印で録取の点の伝聞性がなくなる)、証拠保全することが重要です。基本的に捜査機関は犯罪立証のための証拠として供述調書を作成しますので、被疑者に無実につながる有利な内容の書面は作成してくれません。捜査機関の職務上当然の対応なのですがこれを放置することはできません。すなわち、これは弁護人の職務行為になるわけです。

Aその内容は、事件後なるべく早く事件の概要を書面化することです。例えば、あなたのその日の行動、電車内での位置、方向、乗車駅、鞄、携帯、本等の所持品、腕、体の方向、位置、周りの人間、表情、逮捕現場、及び当初捜査段階での被害者の言動一切、被疑者の対応言動一切に関するもの等を詳細に記載し証拠保全します。次に被害者側の主張を事実上確認し、それに対する反論をするものでなければ実効性はありません。直ちに担当警察捜査官(警察官が取り調べを継続していますから事情をよく知る警察官への提出が特に必要です。しかし警察官は弁護人作成文書の受け取りを特に嫌がります)、検察官に面会を求め書面を提出し捜査機関側の反論を求めます。犯罪立証のために保持しているあらゆる証拠方法の提示を求め検討することが必要です。特に被害者側の被害を受けた状況、被害を受けるまでの状況、被害を受けた後の状況一切、なぜ被疑者が犯人であると確証を持てるかという具体的理由、各証拠等です。あなたが無実であれば、被害者の主張することに全部または一部必ず矛盾点があるはずです。これを一刻も早く発見し主張することです。捜査機関には捜査の密行性がありますが、被疑者が主張する無実の理由を何ら検討することなく無視することはできません。適正公平な捜査こそ民主警察、捜査機関の使命だからです(刑訴1条、警察法2条)。この対応、調査が将来の結果を左右することになると思います。数ヶ月後行われる公判、公判前整理であなたが事実を主張しても、捜査機関が当初用意する被害者側の供述、証拠がいかようにも変更訂正され対応されており遅すぎる結果になります。当初の捜査機関の主張、反論も証拠として残し後日の裁判でも主張、供述の変更を許さないようにしなければいけません。捜査機関が作成する供述調書は、被害者等、供述者の話す通り記載するのではなく捜査機関が理路整然と分かりやすいように記載して供述者の同意を求める形になりますので、被疑者の供述を参考にして被害者側の供述を矛盾なく作成し、不利益と見れば証拠として提出しません。例えば、あなたの電車内での被疑事実一切、逮捕現場、及び当初捜査段階での被害者の言動一切、被疑者の対応等を詳細に記載し、さらに、捜査段階における被害者側の主張も詳細に記載して反論し、起訴前に被害者側のあいまいな供述を事実上抑制、制限する必要があります。あなたが本当に無実であればこの点に何らかの光明があるはずです。

B又、あなたに有利な証人についても、同様に供述調書(署名、押印)を作るべきです。あなたにとって有利な証人というのは警察にとっては不利な証人ということになりますから、そういう証人からの事情聴取を要請しても、事実上警察は証拠保全をしてくれません。具体的には、証人の供述調書を作成し、その文書内容を検察官、警察に送付意見を求めることになります。例えば、事件発生の駅職員、乗客の証言等です。公判で証言に異なった証言をしたり、協力してくれなければ、刑訴323条1項3号書面として証拠能力が認められる可能性があります。

C次に、文書成立の真正を確保するため公判に備えて公の公証役場で、その度ごとに調書作成の確定日付をもらうことができます。この日付により事件発生直後の状況証拠を確保保全が可能になります。費用は基本手数料5500円、弁護人が当該書面、身分証明書(写真入り)を持っていくと公証人が認証してくれます。警察等捜査機関が調書を受け取らない場合(警察署は、検察官と異なり弁護人の提出文書を通常拒否します。在宅捜査の場合にこのような問題が生じます)には、文書成立の真正を確保するため特に必要です。

Dこの調書は、逮捕後勾留決定、延長、の場合もすべて提出します。内容に信用性があれば、勾留請求、延長の時点でも在宅での取り調べに変更される可能性も残されています。

E最大の目的は起訴前に無実の主張を行い検察官の公訴提起を思い止まらせることです。真偽不明に持っていくことができれば起訴することはないでしょう。一般的に、検事は、弁護人や被疑者が徹底的に無罪を争うような事件については慎重になります。その理由は、99.9%有罪が示すように有罪で当然の刑事裁判において、万が一担当起訴した事件が冤罪となれば公益の代表者である検察官として不適切な職務行為との法的評価がなされ、社会的責任を負う可能性があるからです。

F万が一、公判請求になった場合は、弁護人は保釈請求や、保釈請求却下に対する準抗告の申立の際にも、被告人の供述調書は添付提出します。つまり、検察官、捜査機関へ提出した書類を保釈請求等に際して裁判所にも提出するのです。これにより、第1回公判前の保釈を担当する裁判官だけでなく、公判担当裁判官も公判後弁護人が提出した被告人の供述調書目に通すことになり弁護側の主張も事実上間接的に裁判官の心証形成を行うことが可能になるのです(刑事訴訟では刑訴256条6項、起訴状一本主義と言って公判担当の裁判官は公判が始まるまでは起訴状しか見ることができないとされ、そのため、第1回公判前の保釈の手続きは公判担当の裁判官以外の裁判官が行っていますが、保釈に関する書類も第1回公判後公判担当の裁判官が目を通すことになります)。公判前整理、公判では刑訴322条1項後段の被告人に利益な供述調書として証拠取調請求を提出します。一番記憶鮮明な時の供述であり、数カ月後に行われる公判において行われる無実の具体的な主張が、後でつじつま合わせの主張ではないことを証明するために提出することになります。

Gところで、被告人に有利な供述調書は、刑訴322条により「特に信用すべき情況の下にされたものであるとき」という要件が必要です。逮捕、勾留時において弁護人が作成した被疑者の供述調書は、この要件を満たすかという問題ですが、結論を言うと「特別な信用情況」は認められると考えます。特別な信用情況とは、信用性についての外部的保障状況すなわち、供述した全ての情況からみて供述の信用性が担保されていることです(信用性の状況的保障、証言内容で判断することも可能です)。本条は、伝聞証拠排斥の法則(伝聞法則、刑訴320条)の例外規定であり、伝聞証拠とは、刑事訴訟当事者の反対尋問権が保障されていない証拠をいい、反対尋問権を経ていない供述書面等には書面作成過程において間違いの入り込んでいる可能性が大きく証拠の信用性を確保するため事前に証拠能力を否定しています。刑事訴訟は、基本的には民事訴訟と同様に自由心証主義(刑訴318条、証拠価値、証拠能力を基礎づける事実の判断は裁判官の専権です)が採用されているのですが、被告人の生命身体を強制的に剥奪することを目的とする手続きなので主に財産的争いである民事訴訟とは異なり、証拠の資格(証拠能力)を制限し公正公平な刑事裁判(法の支配)を保障しているのです(刑訴1条)。被告人の供述調書は、被告人が自らを反対尋問することは不可能であり、検察官も被告人の黙秘権から反対尋問権を保障されていませんので、本来であれば伝聞証拠に該当することになり証拠能力を有しないことになります。しかし、被告人の供述調書も内容によっては、信用性が保証されている情況で作成されたものは真実発見に有効であり、検察官の反対尋問権の保障に代えて特別な信用性を要件として証拠能力を認めたのが本条です(自白内容の調書も信用性が高く証拠能力が認められます。320条1項前段)。この特信性の要件は、伝聞の文書であっても特に信用性のあるものであれば証拠能力を認めるものなので外部的な特別な事情でなくても、その書面の内容自体でも判断できることになっています。最高裁判所第三小法廷判決昭和29年(あ)第1164号、同30年1月11日、後記判決参照、刑訴321条1項2号後段の問題ですが、(大阪地方裁判所堺支部、昭和46年3月18日決定、)証人である雇い人が被告人である親方の前で不利益な証言ができない状態も判断材料にしています。但し、被告人については真実発見のため本来法廷で弁護人が被告人質問を行えばいいわけですから、当該書面を証拠として提出する「必要性」も要件となるものと解釈されています。

H被告人の逮捕、勾留時における弁護人に対する供述情況は、捜査機関、被害者側の具体的主張、供述内容、証拠を全く知らないうちに行うものであり、将来自分に不利益になる可能性も含まれているので、虚偽の陳述をする可能性が少なく特別の信用情況は認められると思います。また、犯罪発生直後被告人の記憶が鮮明な間に行った具体的主張の状況を確認し、公判廷で行う被告人の供述、主張がつじつま合わせのものでないことを立証する意味で必要性も認められるものと考えます。

I刑事訴訟法においても、民事訴訟と同じように当事者主義(裁判所でなく当事者である検察官、被告人に訴訟の開始、審判対象の特定、証拠調べ、終了の主導権を与える。反対概念は職権主義。訴訟の進行は職権主義です)がとられ、裁判の対象(訴因(構成要件に該当する罪となるべき事実)、民訴では要件事実)は当事者である検察官が提示し判断を求めなければいけせんし(刑訴256条、312条)、起訴状一本主義が採用され、証拠調べは当事者の請求が原則であり(刑訴298条1項)、証人尋問も当事者に先に尋問する実務が採用されています(刑訴304条)。この根拠は、法の支配の理念に求めることが出来ます。法の支配は、個人の尊厳保障にありその源泉は、人間はそもそも生まれながらに自由で有るという個人主義、自由主義(憲法13条)にあり、例外的に刑事手続きにおいて生命、身体の自由が奪われるのは国民が自らの意思により、国家に刑事裁判の権力を委託し、公益の代表である検察権力を認め、司法権の独立を擁立して公正な社会秩序を維持しようとしたからです。すなわち、元々主権者である被疑者、被告人は、刑事事件において単なる取り調べの対象ではなく、国家権力と対等な地位にあり裁判所は公正、公平な判断を行うべく中立性が要求され、検察権力に対し被告人は対等な立場で審判の対象に異議を述べ、自ら証拠を確保、収集、主張しその権利を擁護してくれる弁護人と協力して刑事訴訟手続きを行うことになるのです。以上の制度趣旨から被疑者、被告人は刑事裁判に対して証拠保全等早急な対応が求められるのです。

4.これに対して黙秘権を行使しないで弁護方針を捜査機関に開示すると手の内を明かすことになり不利益だという意見もありますが、私はそのような考えに賛成できません。無実なら正々堂々逮捕時から首尾一貫して最初から理由を明確に開示して争うことが最大の武器です。これが原則です。いずれ裁判、公判前整理で同じことを主張するのです。国家から給料を保障されている公務員である捜査機関と、自費で弁護活動を行う被疑者とでは、費用、身柄拘束による不利益、被疑者、家族の心理的不安、勤め先の対応、マスコミ、風評等から長期戦は明らかに弁護側に不利です。まず、身柄解放を求め短期決戦で戦いを挑む必要があります。最終的に公判裁判官の心証を得るためには小細工は不要です。相手の反論も考慮し証拠を豊富に準備して誠心誠意無実を一貫して主張することです。又、弁護側の主張を開示することなくして、捜査機関の主張、根拠を求めることはできません。手の内を見せる危険は、弁護、捜査機関ともフィフティ、フィフティです。それで起訴されるなら、裁判でも勝てる可能性はさらに少なくなると思います。

5.早期釈放を求めるのであれば、起訴前弁護に力点を置き、嫌疑なし、嫌疑不十分による不起訴処分を目標とすべきです。不安であれば刑事事件に詳しい弁護士にご相談ください。

【参考条文】

憲法
第十三条  すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
第三十四条  何人も、理由を直ちに告げられ、且つ、直ちに弁護人に依頼する権利を与へられなければ、抑留又は拘禁されない。又、何人も、正当な理由がなければ、拘禁されず、要求があれば、その理由は、直ちに本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示されなければならない。
第三十七条  すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する。
○2  刑事被告人は、すべての証人に対して審問する機会を充分に与へられ、又、公費で自己のために強制的手続により証人を求める権利を有する。
○3  刑事被告人は、いかなる場合にも、資格を有する弁護人を依頼することができる。被告人が自らこれを依頼することができないときは、国でこれを附する。
第三十八条  何人も、自己に不利益な供述を強要されない。
第九十八条  この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。
○2  日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。

刑事訴訟法
第一条  この法律は、刑事事件につき、公共の福祉の維持と個人の基本的人権の保障とを全うしつつ、事案の真相を明らかにし、刑罰法令を適正且つ迅速に適用実現することを目的とする。
第百九十二条  検察官と都道府県公安委員会及び司法警察職員とは、捜査に関し、互に協力しなければならない。
第百九十三条  検察官は、その管轄区域により、司法警察職員に対し、その捜査に関し、必要な一般的指示をすることができる。この場合における指示は、捜査を適正にし、その他公訴の遂行を全うするために必要な事項に関する一般的な準則を定めることによつて行うものとする。
○2  検察官は、その管轄区域により、司法警察職員に対し、捜査の協力を求めるため必要な一般的指揮をすることができる。
○3  検察官は、自ら犯罪を捜査する場合において必要があるときは、司法警察職員を指揮して捜査の補助をさせることができる。
○4  前三項の場合において、司法警察職員は、検察官の指示又は指揮に従わなければならない。
第百九十八条  検察官、検察事務官又は司法警察職員は、犯罪の捜査をするについて必要があるときは、被疑者の出頭を求め、これを取り調べることができる。但し、被疑者は、逮捕又は勾留されている場合を除いては、出頭を拒み、又は出頭後、何時でも退去することができる。
○2  前項の取調に際しては、被疑者に対し、あらかじめ、自己の意思に反して供述をする必要がない旨を告げなければならない。
○3  被疑者の供述は、これを調書に録取することができる。
○4  前項の調書は、これを被疑者に閲覧させ、又は読み聞かせて、誤がないかどうかを問い、被疑者が増減変更の申立をしたときは、その供述を調書に記載しなければならない。
○5  被疑者が、調書に誤のないことを申し立てたときは、これに署名押印することを求めることができる。但し、これを拒絶した場合は、この限りでない。
第二百三条  司法警察員は、逮捕状により被疑者を逮捕したとき、又は逮捕状により逮捕された被疑者を受け取つたときは、直ちに犯罪事実の要旨及び弁護人を選任することができる旨を告げた上、弁解の機会を与え、留置の必要がないと思料するときは直ちにこれを釈放し、留置の必要があると思料するときは被疑者が身体を拘束された時から四十八時間以内に書類及び証拠物とともにこれを検察官に送致する手続をしなければならない。
○2  前項の場合において、被疑者に弁護人の有無を尋ね、弁護人があるときは、弁護人を選任することができる旨は、これを告げることを要しない。
○3  司法警察員は、第三十七条の二第一項に規定する事件について第一項の規定により弁護人を選任することができる旨を告げるに当たつては、被疑者に対し、引き続き勾留を請求された場合において貧困その他の事由により自ら弁護人を選任することができないときは裁判官に対して弁護人の選任を請求することができる旨並びに裁判官に対して弁護人の選任を請求するには資力申告書を提出しなければならない旨及びその資力が基準額以上であるときは、あらかじめ、弁護士会(第三十七条の三第二項の規定により第三十一条の二第一項の申出をすべき弁護士会をいう。)に弁護人の選任の申出をしていなければならない旨を教示しなければならない。
○4  第一項の時間の制限内に送致の手続をしないときは、直ちに被疑者を釈放しなければならない。
第二百五条  検察官は、第二百三条の規定により送致された被疑者を受け取つたときは、弁解の機会を与え、留置の必要がないと思料するときは直ちにこれを釈放し、留置の必要があると思料するときは被疑者を受け取つた時から二十四時間以内に裁判官に被疑者の勾留を請求しなければならない。
○2  前項の時間の制限は、被疑者が身体を拘束された時から七十二時間を超えることができない。
○3  前二項の時間の制限内に公訴を提起したときは、勾留の請求をすることを要しない。
○4  第一項及び第二項の時間の制限内に勾留の請求又は公訴の提起をしないときは、直ちに被疑者を釈放しなければならない。
○5  前条第二項の規定は、検察官が、第三十七条の二第一項に規定する事件以外の事件について逮捕され、第二百三条の規定により同項に規定する事件について送致された被疑者に対し、第一項の規定により弁解の機会を与える場合についてこれを準用する。ただし、被疑者に弁護人があるときは、この限りでない。
第二百八条  前条の規定により被疑者を勾留した事件につき、勾留の請求をした日から十日以内に公訴を提起しないときは、検察官は、直ちに被疑者を釈放しなければならない。
○2  裁判官は、やむを得ない事由があると認めるときは、検察官の請求により、前項の期間を延長することができる。この期間の延長は、通じて十日を超えることができない。
第二百十二条  現に罪を行い、又は現に罪を行い終つた者を現行犯人とする。
○2  左の各号の一にあたる者が、罪を行い終つてから間がないと明らかに認められるときは、これを現行犯人とみなす。
一  犯人として追呼されているとき。
二  贓物又は明らかに犯罪の用に供したと思われる兇器その他の物を所持しているとき。
三  身体又は被服に犯罪の顕著な証跡があるとき。
四  誰何されて逃走しようとするとき。
第二百十三条  現行犯人は、何人でも、逮捕状なくしてこれを逮捕することができる。
第二百十四条  検察官、検察事務官及び司法警察職員以外の者は、現行犯人を逮捕したときは、直ちにこれを地方検察庁若しくは区検察庁の検察官又は司法警察職員に引き渡さなければならない。
第二百十六条  現行犯人が逮捕された場合には、第百九十九条の規定により被疑者が逮捕された場合に関する規定を準用する。
第二百九十八条  検察官、被告人又は弁護人は、証拠調を請求することができる。
○2  裁判所は、必要と認めるときは、職権で証拠調をすることができる。
第三百四条  証人、鑑定人、通訳人又は翻訳人は、裁判長又は陪席の裁判官が、まず、これを尋問する。
○2  検察官、被告人又は弁護人は、前項の尋問が終つた後、裁判長に告げて、その証人、鑑定人、通訳人又は翻訳人を尋問することができる。この場合において、その証人、鑑定人、通訳人又は翻訳人の取調が、検察官、被告人又は弁護人の請求にかかるものであるときは、請求をした者が、先に尋問する。
○3  裁判所は、適当と認めるときは、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き、前二項の尋問の順序を変更することができる。
第三百二十条  第三百二十一条乃至第三百二十八条に規定する場合を除いては、公判期日における供述に代えて書面を証拠とし、又は公判期日外における他の者の供述を内容
第三百二十一条  被告人以外の者が作成した供述書又はその者の供述を録取した書面で供述者の署名若しくは押印のあるものは、次に掲げる場合に限り、これを証拠とすることができる。
一  裁判官の面前(第百五十七条の四第一項に規定する方法による場合を含む。)における供述を録取した書面については、その供述者が死亡、精神若しくは身体の故障、所在不明若しくは国外にいるため公判準備若しくは公判期日において供述することができないとき、又は供述者が公判準備若しくは公判期日において前の供述と異つた供述をしたとき。
二  検察官の面前における供述を録取した書面については、その供述者が死亡、精神若しくは身体の故障、所在不明若しくは国外にいるため公判準備若しくは公判期日において供述することができないとき、又は公判準備若しくは公判期日において前の供述と相反するか若しくは実質的に異つた供述をしたとき。但し、公判準備又は公判期日における供述よりも前の供述を信用すべき特別の情況の存するときに限る。
三  前二号に掲げる書面以外の書面については、供述者が死亡、精神若しくは身体の故障、所在不明又は国外にいるため公判準備又は公判期日において供述することができず、且つ、その供述が犯罪事実の存否の証明に欠くことができないものであるとき。但し、その供述が特に信用すべき情況の下にされたものであるときに限る。
○2  被告人以外の者の公判準備若しくは公判期日における供述を録取した書面又は裁判所若しくは裁判官の検証の結果を記載した書面は、前項の規定にかかわらず、これを証拠とすることができる。
○3  検察官、検察事務官又は司法警察職員の検証の結果を記載した書面は、その供述者が公判期日において証人として尋問を受け、その真正に作成されたものであることを供述したときは、第一項の規定にかかわらず、これを証拠とすることができる。
○4  鑑定の経過及び結果を記載した書面で鑑定人の作成したものについても、前項と同様である。
第三百二十二条  被告人が作成した供述書又は被告人の供述を録取した書面で被告人の署名若しくは押印のあるものは、その供述が被告人に不利益な事実の承認を内容とするものであるとき、又は特に信用すべき情況の下にされたものであるときに限り、これを証拠とすることができる。但し、被告人に不利益な事実の承認を内容とする書面は、その承認が自白でない場合においても、第三百十九条の規定に準じ、任意にされたものでない疑があると認めるときは、これを証拠とすることができない。
○2  被告人の公判準備又は公判期日における供述を録取した書面は、その供述が任意にされたものであると認めるときに限り、これを証拠とすることができる。
第三百二十三条  前三条に掲げる書面以外の書面は、次に掲げるものに限り、これを証拠とすることができる。
一  戸籍謄本、公正証書謄本その他公務員(外国の公務員を含む。)がその職務上証明することができる事実についてその公務員の作成した書面
二  商業帳簿、航海日誌その他業務の通常の過程において作成された書面
三  前二号に掲げるものの外特に信用すべき情況の下に作成された書面
第二百五十六条  公訴の提起は、起訴状を提出してこれをしなければならない。
○2  起訴状には、左の事項を記載しなければならない。
一  被告人の氏名その他被告人を特定するに足りる事項
二  公訴事実
三  罪名
○3  公訴事実は、訴因を明示してこれを記載しなければならない。訴因を明示するには、できる限り日時、場所及び方法を以て罪となるべき事実を特定してこれをしなければならない。
○4  罪名は、適用すべき罰条を示してこれを記載しなければならない。但し、罰条の記載の誤は、被告人の防禦に実質的な不利益を生ずる虞がない限り、公訴提起の効力に影響を及ぼさない。
○5  数個の訴因及び罰条は、予備的に又は択一的にこれを記載することができる。
○6  起訴状には、裁判官に事件につき予断を生ぜしめる虞のある書類その他の物を添附し、又はその内容を引用してはならない。
第三百十二条  裁判所は、検察官の請求があるときは、公訴事実の同一性を害しない限度において、起訴状に記載された訴因又は罰条の追加、撤回又は変更を許さなければならない。
○2  裁判所は、審理の経過に鑑み適当と認めるときは、訴因又は罰条を追加又は変更すべきことを命ずることができる。
○3  裁判所は、訴因又は罰条の追加、撤回又は変更があつたときは、速やかに追加、撤回又は変更された部分を被告人に通知しなければならない。
○4  裁判所は、訴因又は罰条の追加又は変更により被告人の防禦に実質的な不利益を生ずる虞があると認めるときは、被告人又は弁護人の請求により、決定で、被告人に充分な防禦の準備をさせるため必要な期間公判手続を停止しなければならない。

検察庁法
第七条  検事総長は、最高検察庁の長として、庁務を掌理し、且つ、すべての検察庁の職員を指揮監督する。
○2  次長検事は、最高検察庁に属し、検事総長を補佐し、又、検事総長に事故のあるとき、又は検事総長が欠けたときは、その職務を行う。

警察法
(警察の責務)
第二条  警察は、個人の生命、身体及び財産の保護に任じ、犯罪の予防、鎮圧及び捜査、被疑者の逮捕、交通の取締その他公共の安全と秩序の維持に当ることをもつてその責務とする。
2  警察の活動は、厳格に前項の責務の範囲に限られるべきものであつて、その責務の遂行に当つては、不偏不党且つ公平中正を旨とし、いやしくも日本国憲法 の保障する個人の権利及び自由の干渉にわたる等その権限を濫用することがあつてはならない。

市民的及び政治的権利に関する国際規約(自由権規約)
採択 1966年(昭和41)12月16日国連第21総会
日本  1978年(昭和53)5月30日署名、79年6月6日国会承認、6月21日批准書寄託、8月4日公布(条約7号)、9月21日発効
(公正な裁判を受ける権利)
第14条 すべての者は、裁判所の前に平等とする。すべての者は、その刑事上の罪の決定又は民事上の権利及び義務の争いについての決定のため、法律で設置された、権限のある、独立の、かつ、公平な裁判所による公正な公開審理を受ける権利を有する。報道機関及び公衆に対しては、民主的社会における道徳、公の秩序若しくは国の安全を理由として、当事者の私生活の利益のため必要な場合において又はその公開が司法の利益を害することとなる特別な状況において裁判所が真に必要があると認める限度で、裁判の全部又は一部を公開しないことができる。もっとも、刑事訴訟又は他の訴訟において言い渡される判決は、少年の利益のために必要がある場合又は当該手続が夫婦間の争い若しくは児童の後見に関するものである場合を除くほか、公開する。
2 刑事上の罪に問われているすべての者は、法律に基づいて有罪とされるまでは、無罪と推定される権利を有する。

世界人権宣言
第11条
1 犯罪の訴追を受けた者は、すべて、自己の弁護に必要なすべての保障を与えられた公開の裁判において法律に従って有罪の立証があるまでは、無罪と推定される権利を有する。

公証人法
第一条  公証人ハ当事者其ノ他ノ関係人ノ嘱託ニ因リ左ノ事務ヲ行フ権限ヲ有ス
一  法律行為其ノ他私権ニ関スル事実ニ付公正証書ヲ作成スルコト
二  私署証書ニ認証ヲ与フルコト

民法施行法
第五条  証書ハ左ノ場合ニ限リ確定日付アルモノトス
一  公正証書ナルトキハ其日付ヲ以テ確定日付トス
二  登記所又ハ公証人役場ニ於テ私署証書ニ日付アル印章ヲ押捺シタルトキハ其印章ノ日付ヲ以テ確定日付トス

【参考判例】

(公職選挙法違反被告事件 最高裁判所第三小法廷判決昭和29年(あ)第1164号、同30年1月11日)
所論各証人に対する検察官の面前調書の証拠調が、これら各証人を尋問した公判期日の後の公判期日で行われたからといつて憲法三七条二項の保障する被告人らの反対尋問権を奪つたことにならないことは既に当裁判所大法廷判例の趣旨とするところである(昭和二四年(つ)九三号同二五年三月六日・刑事判例集四巻三号三〇八頁)。しかも、本件における主要な争点たる金銭供与の趣旨、検察官に対する供述の任意性の有無については、既に先の証人尋問に際し、反対尋問権の行使の機会が与えられているに止まらず、記録に徴すると充分に反対尋問が行われているのである。また証拠調に当つて当事者に異議があつたからといつてその意見を聴いた上で決定をし、適法に証拠調をした以上、証拠調手続が違法となるの理はなく、更に第一審裁判所がこれら証人の再尋問の請求を却下したからといつて先に適法になされた証拠調が遡つて不適法になる理由もない。所論は採用できない(昭和二七年(あ)六七〇四号同二九年五月一一日第三小法廷判決参照)。
同第二点について。
刑訴三二一条一項二号は、伝聞証拠排斥に関する同三二〇条の例外規定の一つであつて、このような供述調書を証拠とする必要性とその証拠について反対尋問を経ないでも充分の信用性ある情況の存在をその理由とするものである。そして証人が検察官の面前調書と異つた供述をしたことによりその必要性は充たされるし、また必ずしも外部的な特別の事情でなくても、その供述の内容自体によつてそれが信用性ある情況の存在を推知せしめる事由となると解すべきものである。このことは既に当裁判所再三の判例の趣旨とするところであり(昭和二六年(あ)一一一一号同年一一月一五日第一小法廷判決・刑集五巻一二号二三九三頁)、原判決の判断もこれと同趣旨に出るものであるから、原判決には何ら理由の不備又は判断の遺脱なく、所論は理由がない

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