新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.755、2008/2/14 12:49

【民事・プロバイダ責任法・違法書込と掲示板管理者の削除・掲示板管理者の違法行為者の情報開示】

質問:インターネットの匿名性の掲示板を管理しています。掲示板の書込みを見ていたら、他人を誹謗中傷するような内容が書かれていました。私自身のことではないので、特に気にしていませんでしたが、最近になって誹謗中傷された方が管理者である私に対して「管理者の方へ。この書込みを消してください。名誉毀損にあたると思います。困っています。」と、何度か掲示板に書き込んでいます。私の発言ではないので、私の管理するホームページを見てくれている方の書込みを勝手に削除してしまっていいものかどうか悩みます。また、私が削除したことによって、私までトラブルに巻き込まれるのはいやです。このまま放置しておいてもいいでしょうか?

回答:
1.プロバイダ責任法等によりインターネット掲示板に書き込まれた内容が、違法、不法なものであれば、掲示板管理者であるあなたは、違法書込みを削除する事が出来ます。又、削除した事によって、書込人が掲示板管理者に不当削除、著作権侵害等を理由に損害賠償請求する事は出来ません。
2.違法、不法な内容により第三者の権利、利益を侵害した場合、あなたがこれを放置しておきますとプロバイダ責任法等により違法な書込みをした人と同様に法的責任を問われる場合がありますので、迅速、適正に対応する必要があります。
3.違法書込みにより権利、利益を侵害された人が、違法書込みをした人を特定する情報を請求して来た場合、掲示板管理者であるあなたは一定の要件の基これを開示しなければなりません。
4.どのような人でも表現の自由があり(憲法21条)自由に意見を表明,伝達する事は出来ますが、第三者の権利、利益を侵害する事は許されませんので(憲法12条)掲示板管理者は、違法、不当書込みについて削除、情報開示等適正な対応が求められます。
5.事例集No732号も参照してください。

解説:
1.(プロバイダ責任法の制度趣旨)あなたのご質問は、インターネット掲示板の管理に関するものであり平成14年5月に施行されたいわゆるプロバイダ規制法(正式名称「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」に関係しますので、この法律の制定理由を先ずご説明します。端的に言うと、この法律はわずか4か条ですが言論、表現の自由に名を借りた違法行為により権利侵害を受けた一般国民を保護するために制定されました。言うまでもなく、自由主義、民主主義社会を支える基本原理は国民の言論、表現、出版の自由です(憲法21条)が、この自由の最終目的が適正な社会秩序を作り個人の尊厳価値を保障するところにある以上(憲法13条)制度上無制限に認められるはずがありませんし、公共の利益、他人の権利利益を侵害する事は許されません(憲法12条)。従来の言論の伝達媒介手段は、一般的には書籍、新聞、出版物、ビデオ、ラジオ、テレビが主であり、伝達される情報の内容は、ほとんどの場合、伝達機関の事前チェックが可能であり、又、情報の発信者が特定できる関係上、違法(不当)な表現,言論、出版があった場合、これを事前に停止し、事後的にも法的責任追及が可能であり、その結果情報発信者の違法行為に対する自己抑制も働いていたのです。

しかし、近時、情報の伝達手段としてインターネット(第2条、特定電気通信)が発達し、本件のような掲示板、ブログを通じて不特定多数の人が自らの特定を不明にして全世界に瞬時に、自由に意見を表明する事が出来るようになり、その内容について伝達機関の事前のチェックがなく、最終的責任者である情報発信者の特定も出来ない状況が生じました。この現象は活発な言論活動を促進する事になりましたが、他方この様な通信、手段技術の変容を利用し、自らの責任の所在を故意に隠しながら不当に第三者の名誉、利益、個人のプライバシーを侵害する事態が発生し、更にこの様な違法不当な状態を商業営利上の対象として取扱う業者まで出現する事になったのです。しかし、被害者が、情報発信者に法的責任追及をしようとしても、相手方が特定できませんし、違法状態を法的に除去しようとしても意見発表の場所である掲示板、ブログの管理者は元々違法行為者ではありません。又、表現、言論の自由、言論内容に関する著作権の関係上、管理者として安易に削除してよいかとう問題もあり、更には被害者から見ると掲示板等の管理者は違法行為の補助者とも考えられ、これらの関係を明らかにする必要が生じました。もとよりこのような違法状態を放置する事は、言論、表現の自由の目的に反し、一般国民の個人の尊厳、プライバシーを侵害するもので許されるはずもありません。そこで、管理者の被害者及び情報提供者への責任、権限を明確にすると共に、違法行為者の情報開示義務を管理者に認めて被害者の責任追及を容易にし、最終的に被害者の権利、利益を保障するためにプロバイダ責任法が制定されたのです。

2.前述のようにインターネット上の世界は、匿名性が高く、しばしばこれが違法行為、犯罪などの温床になってきました。たとえば、誹謗中傷を含む内容が掲示板に公開されたり、個人情報が公開され、プライバシーが侵害される、などということです。従来、プロバイダがこれらの行為を認識していても、書き込みの内容を勝手に削除したり、修正したりすることは、著作権法に抵触する恐れや損害賠償請求される恐れもあり、簡単に対応できませんでした。そこで、日本では2002年5月27日にプロバイダ責任法(「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」)を施行し、プロバイダの責任と義務を明確にしました。

3.ちなみに、ここでいうプロバイダとはいわゆるインターネット接続業者だけではなく、掲示板などの管理者なども含めた言葉になっています。あなたはホームページの管理者なので、ここでいう「プロバイダ」に該当するといえます。プロバイダ責任法に該当する「プロバイダ」は、以下のように法律で定められています。

4.条文を参照します。プロバイダ責任法第二条3項 特定電気通信役務提供者 特定電気通信設備を用いて他人の通信を媒介し、その他特定電気通信設備を他人の通信の用に供する者をいう。

5.判例においても、「本件掲示板は,インターネット上において公開される電子掲示板であり,不特定多数の者によって受信されることを目的とする電気通信であるから,プロバイダ責任制限法2条1号の「特定電気通信」に当たり,被告は,本件掲示板を管理し,利用者である他人の通信の媒介をしている者であるから,「特定電気通信役務提供者」に当たる。」と示しています。(東京地裁平成16年5月18日)

6.次に、プロバイダ責任法と裁判例に沿って、プロバイダの責任と義務についてご説明いたします。インターネット掲示板などで誹謗中傷を受けたり、個人情報を無断で掲載された場合などは、被害者は掲載を削除する依頼ができます。この依頼に対して削除をしたときは、管理者は掲載者から「無断で削除する行為は著作権法に抵触する。」という損害賠償請求を免れることができます。一見、管理者の責任が軽くなったようにも感じられますが、これは、「掲載者の著作権保護のために削除ができない」といって、削除要請を放置することができなくなったという点でプロバイダの管理責任が重くなったともいえます。積極的に違法行為に加担していなくとも、放置するだけで法律に抵触するという、無作為責任が問われるようになったということです。あなたは、被害者の方から「管理者の方へ。・・・・」という削除要請を受けています。したがって、あなたは理由もなくこれを放置すると無作為責任に問われる可能性がありますので、注意しなければなりません。被害者は、人格権としての名誉権に基いて、書込みの削除を求める権利があります(事例集No732号参照)。それを無視して放置していると、損害賠償責任が生じることにもなるでしょう。理論的的根拠としては共同不法行為(民法719条)に該当するでしょう。本条の「共同の」とは、民事上の被害救済という観点から刑事上の責任と異なり共同不法行為者の意思の連絡は必要でなく、故意行為と過失行為の競合により違法に権利侵害を行った場合も含まれるからです。

7.実際に判例では、掲示板において名誉を毀損する発言が書き込まれ、書き込まれた被害者が削除の要請をしたにもかかわらず、管理者が発言削除などの義務を怠ったため、精神的損害等を蒙ったとして民法709条の不法行為に基く損害賠償を請求するとともに、名誉毀損発言の削除を求めた事案において、その名誉毀損発言を削除するなどの措置を講じなかった掲示板の管理者に削除義務違反があるとして、不法行為の成立を認め、その発言の削除と、被害者が被った精神的また、経営上の損害として200万円の支払が命じられました。(東京高裁平成14年12月25日)

8.この判例を少し具体的にご紹介いたします。
@書き込まれた発言が名誉毀損にあたるかどうか。「ある発言の意味内容が他人の社会的評価を低下させるものであるかどうかは,一般人の普通の注意と読み方とを基準として判断すべきものであり」、インターネットでの匿名掲示板であっても、「その読者において発言がすべて根拠のないものと認識するものではなく,幾分かの真実も含まれているものと考えるのが通常であろう。したがって,その発言によりその対象とされた者の社会的評価が低下させられる危険が生ずるというべき。」として、匿名で書き込みをされた発言によっても、名誉毀損が成立する可能性があるということを示しています。

Aまた、「言論に対しては言論をもって対処することにより解決を図ることが望ましいことはいうまでもないが,それは,対等に言論が交わせる者同士であるという前提があって初めていえることであり」、「本件においては,本件掲示板に本件各発言をした者は,匿名という隠れみのに隠れ,自己の発言については何ら責任を負わないことを前提に発言しているのであるから,対等に責任をもって言論を交わすという立場に立っていないのであって,このような者に対して言論をもって対抗せよということはできない」。

B前述のごとく、匿名の発言も表現の自由(憲法21条)の一環として保障されるべきであるとの主張に対しては、「匿名の者の発言が正当な理由なく他人の名誉を毀損した場合に,被害者が損害賠償等を求めることは当然許されることであり,このことが表現の自由の侵害となるものではない。」としています。これは、表現の自由・言論の自由により、文化芸術的側面の自己実現を行っても良いし、政治社会参加的側面で運動することも良いが、他人の基本的人権である人格権を侵害してまで、無限定に認められるものではない、という考え方です。

C掲示板管理人に発言の削除義務はあるか。「本件掲示板は,匿名で利用することが可能であり,その匿名性のゆえに規範意識の鈍麻した者によって無責任に他人の権利を侵害する発言が書き込まれる危険性が」あり、「本件掲示板では,そのような発言によって被害を受けた者がその発言者を特定してその責任を追及することは事実上不可能になっており,本件掲示板に書き込まれた発言を削除し得るのは,本件掲示板を開設し,これを管理運営する控訴人のみであるというのである。このような諸事情を勘案すると,匿名性という本件掲示板の特性を標榜して匿名による発言を誘引している控訴人には,利用者に注意を喚起するなどして本件掲示板に他人の権利を侵害する発言が書き込まれないようにするとともに,そのような発言が書き込まれたときには,被害者の被害が拡大しないようにするため直ちにこれを削除する義務があるものというべきである」

D被害者が、管理者に対して名誉毀損発言の削除請求することができるか。「人の品性,徳行,名声,信用等の人格的価値について社会から受ける客観的評価である名誉を違法に侵害された者は,損害賠償及び名誉回復のための処分を求めることができるほか,人格権としての名誉権に基づき,加害者に対し,現に行われている侵害行為を排除するため,侵害行為の差止めを求めることができる(最高裁判所昭和61年6月11日大法廷判決・民集40巻4号872頁参照)」。(事例集No732号参照)

Eつまり、管理者のあなたに、被害者から書き込み削除の要請があった場合には、内容を検討の上、他人の権利を侵害する可能性が認められた場合には、削除をしなければいけないということになります。書き込みをした人の表現の自由の問題もあるように思えますが、判例でも示されている通り、他人の名誉を毀損するような発言自体が権利の侵害にあたりますので、その発言の削除によって、あなたが、発言者の表現の自由を侵害した、損害賠償を求められる可能性は低いと考えていいでしょう。心配であれば、発言者に対して、名誉毀損のため被害者から削除依頼がきているということを伝え、削除の同意を得るというのもいいでしょう。7日以上経過しても発言者から何の連絡もなかった場合は、発言者からあなたに対しての削除についての損害賠償はできないと定められているので、管理者であるあなたが削除できます。内容が誹謗中傷であると捉えることができる場合は削除をしても責任を追求されることはないと考えてよいでしょう。

Fこのことは、プロバイダ責任法3条2項にも定められています。

Gプロバイダ責任法3条2項 特定電気通信役務提供者は、特定電気通信による情報の送信を防止する措置を講じた場合において、当該措置により送信を防止された情報の発信者に生じた損害については、当該措置が当該情報の不特定の者に対する送信を防止するために必要な限度においておこなわれたものである場合であって、次の各号のいずれかに該当するときは、賠償の責めに任じない。
一、当該特定電気通信役務提供者が当該特定電気通信による情報の流通によって他人の権利が不当に侵害されていると信じるに足りる相当の理由があったとき。
二、特定電気通信による情報の流通によって自己の権利を侵害されたとする者から、当該権利を侵害したとする情報、侵害されたとする権利及び権利が侵害されたとする理由を示して当該特定電気通信役務提供者に対し侵害情報の送信を防止するそちをこうずるよう申出があった場合に、当該特定電気通信役務提供者が、当該侵害情報の発信者に対し当該侵害情報等を示して当該送信防止措置を講ずることに同意するかどうかを照会した場合において、当該発信者が当該照会を受けた日から七日を経過しても当該発信者から当該送信防止措置を講ずることに同意しない旨の申出がなかったとき。

9.また、プロバイダ責任法には、被害者に、発言によって権利を侵害した者の情報の開示を求めることができることも規定しています。(プロバイダ責任法第四条)したがって、被害者から「誰が書き込みをしたのか教えてほしい」という申出があった場合にもあなたに対応を求められます。

10.条文を参照します。
@プロバイダ責任法第四条、特定電気通信による情報の流通によって自己の権利を侵害されたとする者は、次の各号のいずれかにも該当するときに限り、当該電気通信の用に供される特定電気通信設備を用いる特定電気通信役務提供者に対し、当該開示関係役務提供者が保有する当該権利の侵害に係る発信者情報(氏名、住所その他の侵害情報の発信者の特定に資する情報であって総務省令で定められるものをいう。以下同じ。)の開示を請求することができる。

A発信者情報とは、総務省令第57号において以下の内容となします。
一、発信者その他侵害情報の送信に係る者の氏名又は名称
二、発信者その他侵害情報の送信に係る者の住所
三、発信者の電子メールアドレス(電子メールの利用者を識別するための文字、番号、記号その他の符号をいう。)
四、侵害情報に係るIPアドレス
五、前号のIPアドレスを割り当てられた電気通信設備から開示関係役務提供者の用いる特定電気通信設備に侵害情報が送信された年月日及び時刻と定められています。

11.発信者情報の開示についてはこのように定められていますが、掲示板の管理者が全ての発信者情報を保管し、照会に備えるということは簡単なことではないということは言うまでもありません。例えば、各発言の発信者情報を全て保存するプログラムで掲示板運営をしていなかった管理者に対して、各掲示板の発言について発信者情報を全て保存するとその量は膨大になり、その管理についても大きな問題になることから、「この規定は,一般的に,特定電気通信役務提供者が現に保有している情報を開示することを定めたものであり,特定電気通信役務提供者に対し,発信者情報の保存を義務づけるものではないと解するのが相当である。」と認めた判例があります(東京地裁平成16年9月22日)。

12.被害者からの発信者情報開示の請求の際に備えて全ての情報を開示できるように設備を整えるということまで求められるとはいわないまでも、あなたは、掲示板管理者として、発信者情報の開示請求には速やかに対応し、開示する必要があると判断すれば、保有する範囲での情報を揃えることが求められると思います。

13.近時インターネット掲示板における名誉毀損発言やプライバシー侵害について、管理者の責任を問う裁判は少なくありません。インターネット掲示板といえども、新しい技術を用いているだけで、新聞や雑誌や書籍や町の掲示板などと同じ、言論のメディアであることに変りはありませんから、日本の法令が適用され、管理者にも、最低限度の法的な責任が生じると言えます。しかし、上記の通り、管理者としては、書き込みによって被害を被った人からの削除依頼や発信者情報開示請求に対して、誠意を持って対応すれば、あなたの開設した掲示板上でトラブルが生じ、また、それによってあなたが損害賠償を請求されるということは考えにくいと思います。どのように対応すべきか、ご自身で判断が付きかねる場合は、一度、法律の専門家である弁護士にご相談なさってみると良いでしょう。

≪条文参照≫

特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律
(平成十三年十一月三十日法律第百三十七号)
(趣旨)
第一条  この法律は、特定電気通信による情報の流通によって権利の侵害があった場合について、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示を請求する権利につき定めるものとする。
(定義)
第二条  この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一  特定電気通信 不特定の者によって受信されることを目的とする電気通信(電気通信事業法 (昭和五十九年法律第八十六号)第二条第一号 に規定する電気通信をいう。以下この号において同じ。)の送信(公衆によって直接受信されることを目的とする電気通信の送信を除く。)をいう。
二  特定電気通信設備 特定電気通信の用に供される電気通信設備(電気通信事業法第二条第二号 に規定する電気通信設備をいう。)をいう。
三  特定電気通信役務提供者 特定電気通信設備を用いて他人の通信を媒介し、その他特定電気通信設備を他人の通信の用に供する者をいう。
四  発信者 特定電気通信役務提供者の用いる特定電気通信設備の記録媒体(当該記録媒体に記録された情報が不特定の者に送信されるものに限る。)に情報を記録し、又は当該特定電気通信設備の送信装置(当該送信装置に入力された情報が不特定の者に送信されるものに限る。)に情報を入力した者をいう。
(損害賠償責任の制限)
第三条  特定電気通信による情報の流通により他人の権利が侵害されたときは、当該特定電気通信の用に供される特定電気通信設備を用いる特定電気通信役務提供者(以下この項において「関係役務提供者」という。)は、これによって生じた損害については、権利を侵害した情報の不特定の者に対する送信を防止する措置を講ずることが技術的に可能な場合であって、次の各号のいずれかに該当するときでなければ、賠償の責めに任じない。ただし、当該関係役務提供者が当該権利を侵害した情報の発信者である場合は、この限りでない。
一  当該関係役務提供者が当該特定電気通信による情報の流通によって他人の権利が侵害されていることを知っていたとき。
二  当該関係役務提供者が、当該特定電気通信による情報の流通を知っていた場合であって、当該特定電気通信による情報の流通によって他人の権利が侵害されていることを知ることができたと認めるに足りる相当の理由があるとき。
2  特定電気通信役務提供者は、特定電気通信による情報の送信を防止する措置を講じた場合において、当該措置により送信を防止された情報の発信者に生じた損害については、当該措置が当該情報の不特定の者に対する送信を防止するために必要な限度において行われたものである場合であって、次の各号のいずれかに該当するときは、賠償の責めに任じない。
一  当該特定電気通信役務提供者が当該特定電気通信による情報の流通によって他人の権利が不当に侵害されていると信じるに足りる相当の理由があったとき。
二  特定電気通信による情報の流通によって自己の権利を侵害されたとする者から、当該権利を侵害したとする情報(以下「侵害情報」という。)、侵害されたとする権利及び権利が侵害されたとする理由(以下この号において「侵害情報等」という。)を示して当該特定電気通信役務提供者に対し侵害情報の送信を防止する措置(以下この号において「送信防止措置」という。)を講ずるよう申出があった場合に、当該特定電気通信役務提供者が、当該侵害情報の発信者に対し当該侵害情報等を示して当該送信防止措置を講ずることに同意するかどうかを照会した場合において、当該発信者が当該照会を受けた日から七日を経過しても当該発信者から当該送信防止措置を講ずることに同意しない旨の申出がなかったとき。
(発信者情報の開示請求等)
第四条  特定電気通信による情報の流通によって自己の権利を侵害されたとする者は、次の各号のいずれにも該当するときに限り、当該特定電気通信の用に供される特定電気通信設備を用いる特定電気通信役務提供者(以下「開示関係役務提供者」という。)に対し、当該開示関係役務提供者が保有する当該権利の侵害に係る発信者情報(氏名、住所その他の侵害情報の発信者の特定に資する情報であって総務省令で定めるものをいう。以下同じ。)の開示を請求することができる。
一  侵害情報の流通によって当該開示の請求をする者の権利が侵害されたことが明らかであるとき。
二  当該発信者情報が当該開示の請求をする者の損害賠償請求権の行使のために必要である場合その他発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるとき。
2  開示関係役務提供者は、前項の規定による開示の請求を受けたときは、当該開示の請求に係る侵害情報の発信者と連絡することができない場合その他特別の事情がある場合を除き、開示するかどうかについて当該発信者の意見を聴かなければならない。
3  第一項の規定により発信者情報の開示を受けた者は、当該発信者情報をみだりに用いて、不当に当該発信者の名誉又は生活の平穏を害する行為をしてはならない。
4  開示関係役務提供者は、第一項の規定による開示の請求に応じないことにより当該開示の請求をした者に生じた損害については、故意又は重大な過失がある場合でなければ、賠償の責めに任じない。ただし、当該開示関係役務提供者が当該開示の請求に係る侵害情報の発信者である場合は、この限りでない。

憲法
第十二条  この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。
第十三条  すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
第二十一条  集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
○2  検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。

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