新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.681、2007/10/5 14:11 https://www.shinginza.com/qa-fudousan.htm

【民事・共有物分割・その方法】

質問:私(A)とBさんは建物を共有しています。持分は私が10分の9でBさんが10分の1です。その建物は私が20年に亘り使用しています。Bさんは全く別の土地に住んでおり,一切使用していません。その代わり,私はBさんに対し,共有持分に応じた使用料を支払っていたのですが,それも煩わしいので,Bさんに対し,持分の買取を打診しました。ところが,Bさんはこれに応じてくれません。私はBさんから持分を買い取ることはできないのでしょうか。

回答:Bさんの持分を必ず買い取ることができると断言することはできませんが,共有物分割請求訴訟を提起した場合,相応の価額で買い取る(価格賠償)ことができる可能性は高いと思われます。

解説:
1.貴方のご質問はとどのつまり,Bさんとの建物共有関係を解消して,単独所有にしたいという事ですので,法的には共有物の分割という問題になります。そこで,共有の法律関係について先ずご説明いたします。共有とは貴方達の様に複数の人が,同一所有物を量的に共同で分有している関係を言い,共有者の権利を共有持分権といいます。この共有持分権は,呼び名からすると不完全な権利のように思われるでしょうが,法的には完全な独立した1個の所有権です。ただ量的に他の所有者と分有しているので利用,管理について制限を受けるというだけです。持分権は単独の独立した所有権ですから持分権を単独で自由に処分できますし,共有物の全部について利用することがきるのです(民法249条)。所有権は対象物を排他的に支配し,使用収益,処分できるのですから,権利の性質上当然共有関係を解消しようとする請求権も認められることになります。これが共有物分割です(民法258条)。理論的背景としては近代市民法の基本である私有財産制,所有権絶対の原則(憲法29条)が存在します。すなわち,国民の私的財産を保障し、国家といえども国民の所有権を侵害する事は許されず,国民は安心して働き,蓄財し自由な契約により行動して物にたいする完全な排他的所有権を認めて自由,平等な社会秩序を形成しようとしているのです。

したがって,所有権絶対の原則から認められる共有物分割請求は理由のいかんを問わず何時でも請求できますし(法256条本文),これを不当に制限することは出来ませんから,法も5年以上の分割禁止を一切無効としているのです(法256条但し書き)。判例も同じ立場です。裁判上分割の態様は,現物分割,価格賠償,法が認める強制競売がありますが,本来であれば,分割は所有権に関する私的紛争であり当事者主義,弁論主義から当事者の主張に裁判所が拘束されるはずですが,分割方法は当事者の主張にとらわれず,裁判所が共有関係解消の合理的解決を目指し裁量権が認められています。すなわち,裁判上の分割請求は訴訟事件を裁判所の行政作用的運用を認める非訟事件的な色彩により解決しているのです(非訟事件についてはホームページ事例集参照)。したがって,国民の裁判を受ける権利を保障するため(憲法33条,当事者主義が原則です。)裁判所の裁量が過度にならないように解釈上注意する必要があります。具体的には,所有者である当事者利益保護の観点から,当事者の意思,利益に合致する現物分割,価格賠償を基本にして,競売はやむをえないような場合に選択されるべきでしょう。

2.ある物について,これを複数人で共有している場合,それぞれの共有持分権者は,共有物を分割するよう請求することができ,この現物分割の協議が整わない場合には,分割を裁判所に請求することが出来るとされています(共有物分割請求・民法258条1項)。共有者は,各々完全な所有権を有していますから所有の範囲,形態を変更する現物分割が基本となりますのでこの点の原告被告の十分な意見聴取が必要となります。

3.上記の規定により共有物を分割する場合,法律上はまず現物分割,即ち持分に応じて現実に物を分けるという方法(土地なら文筆登記,建物なら改築工事の上で建物区分の登記)を取ることになっており,それが出来ない場合または分割によってその共有物の価格が著しく減少するおそれがあるとき,裁判所は競売を命じるということになっています(同法258条2項)。しかし,実務上は,現物分割が不相当とされる場合であっても,すぐに競売をするという方法はとられておらず,価格賠償,即ち一部の共有持分権者が他の共有持分権者から持分を相当な価格で買い取るのが相当かどうかをまず検討するという取り扱いをしています(全面的価格賠償)。競売は,事件ものとして取り扱われる関係上当然実勢価格より1−3割価格が低下しますので,その選択には裁判所は十分な配慮が必要ですし,裁判所の裁量権が当事者の意思に事実上反しないよう慎重に行使されるべきです。

4.本件で問題になっている共有不動産は建物ですが,建物であるからといって,直ちに現物分割をすることが物理的に不可能というわけではありません。もっとも,上述のように,分割することで,価値が著しく減少してしまうということになれば,現物分割をすることはできません。なお,どのくらい価値が下落する場合に「価値が著しく減少」したといえるのかが問題となりますが,これについて明確な判断基準があるわけではありません。この点,東京地裁平成6年(ワ)第5782号事件において裁判所は,「・・・一括して売却の場合に比してその低下の割合はせいぜい10パーセント強程度に過ぎず,現物分割によって本件各土地の価格が著しく損するとまでは到底認められず・・・」との判断を示しており,これが一応の参考になるかと思います。このような裁判所の裁量は大きく認めることは出来ませんから妥当な判断と思われます。土地の価格算定方法については,路線価から算定する,あるいは不動産屋さんに簡易算定をしてもらうという方法もありますが,価格それ自体について両者間に争いがあるような場合には,裁判所に鑑定人(不動産鑑定士)を選任してもらい,正式な算定をしてもらうのが一般的です(20−50万円程度の費用がかかるでしょう)。ここで現物分割が可能であるということになれば,現物分割をしろ,という判断がなされることになります。

5.次に,現物分割が相当でないということになった場合ですが,上述のとおり,いきなり競売という方法が取られるわけではなく,価額賠償ができるかどうかという点をまず判断することになります。この点,判例は「全面的価額賠償の方法により共有物を分割することの許される特段の事情の存否について審理判断することなく,直ちに競売による分割をすべきものとした原審の判断には,民法258条の解釈適用に誤り,ひいては審理不尽の違法があるというべきであり,この違法は原判決の結論に影響を及ぼすことが明らかである。」と述べています(平10.2.27第二小法廷判決)。そこで,本件でも全面的価額賠償の方法により共有物を分割することの許される特段の事情があるかどうかを判断することになりますが,その抽象的な基準として,「共有者間の実質的公平が害されないかどうか」を判断することになり,具体的には,これまで,当該共有物がどのように使用されてきたか,現在どのように使用されているか,共有物価額の評価方法が妥当であるか,妥当であるとして,支払義務を負担する者にその支払能力があるか否かという点を基準に判断することになります。この判例は,分割方法について共有者の合理的意思を配慮し,裁判所の裁量権を当事者の意思,利益に反しないように制限的に行使させようとするもので妥当な判決です。

6.これを本件について見てみると,本件建物は20年に亘りAさんが使用を続けてきており,Bさんは一切使用してこなかったということですから,通常は,Aさんが全面的価額賠償で持分を全て取得することになったとしても,共有者間の実質的公平が害されるとはいえません。そこで,当該共有物の価額を適正に評価したうえ,Aさんにこれを賠償するだけの経済的能力があるかどうかを判断し,十分に支払能力があると判断されたならば,全面的価額賠償を認める旨の判断がなされることになると思われます。一方で,Aさんに支払能力がないと判断された場合には,競売という方法で分割がなされることになります。

7.共有物分割に関する一般的な解説は以上のとおりですが,具体的な事情によっては,共有者間の実質的公平が害されるか否かについて,さらに様々な角度から検討をする必要が生じる場合もあり,一概に上記4で示した基準のみで判断できるというわけではありません。全面的価額賠償ができるのか,それとも現物分割になるのか,あるいは競売なのか,ご自分では判断が難しいことも多いかと思いますので,迷われた場合は,専門家に相談されることをおすすめします。

≪参考条文≫

民法
(共有物の使用)
第二百四十九条  各共有者は,共有物の全部について,その持分に応じた使用をすることができる。
(共有物の変更)
第二百五十一条  各共有者は,他の共有者の同意を得なければ,共有物に変更を加えることができない。
(共有物の管理)
第二百五十二条  共有物の管理に関する事項は,前条の場合を除き,各共有者の持分の価格に従い,その過半数で決する。ただし,保存行為は,各共有者がすることができる。
(共有物の分割請求)
第二百五十六条  各共有者は,いつでも共有物の分割を請求することができる。ただし,五年を超えない期間内は分割をしない旨の契約をすることを妨げない。
2  前項ただし書の契約は,更新することができる。ただし,その期間は,更新の時から五年を超えることができない。
(裁判による共有物の分割)
第二百五十八条  共有物の分割について共有者間に協議が調わないときは,その分割を裁判所に請求することができる。
2  前項の場合において,共有物の現物を分割することができないとき,又は分割によってその価格を著しく減少させるおそれがあるときは,裁判所は,その競売を命ずることができる。

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