少年(中学生2年生)による学校生活での喧嘩による被害と対処方法・責任者

民事|少年法|不法行為|教育委員会|保護者の責任

目次

  1. 質問
  2. 回答
  3. 解説
  4. 関連事例集
  5. 参考条文

質問:

私の息子(14歳)が下校途中に中学校の校庭を出て15メートルくらいのところで同級生(14歳)に殴られ鼓膜を破裂される怪我を負いました。殴られた場所は学校の構外ではありますが、従来より学校内で仲が悪く、当日も構内で既に険悪な雰囲気となっていたそうです。担当医からは、今後自然治癒の可能性は低く手術の可能性が高いこと、仮に手術をした場合でも後遺症が残る可能性もあることなどを言われております。ところが、加害少年は息子に原因があるなどと言って今まで謝罪にも来ません。学校側も、学校外での出来事であることを理由にうやむやに処理しようとしています。学校側、相手方の非協力的な対応に不信感があります。今後どう対処すればよいでしょうか。

回答:

1、生徒同士の喧嘩でも、お子さんに鼓膜損傷の結果を生じていますので、民事・刑事の法的手続きの可能性があります。

2、民事事件としては、民法709条の不法行為責任を加害生徒本人に問う他、保護者や管理者である学校側の法的責任を問える場合もあります。学校を監督する教育委員会への相談や指導要請をすることも考えられます。

3、民事手続きでは解決が難しい場合は、やむを得ず警察署への被害届の提出を御検討なさって下さい。ただし、少年法では全件送致主義が採用されており、全事件が家庭裁判所に送致される建前となっており紛争が拡大してしまう恐れもありますので注意が必要です。お困りの場合は一度お近くの法律事務所に御相談なさると良いでしょう。

4、喧嘩事案に関する関連事例集参照。

解説:

1、対処方法

本件は生徒同士の喧嘩に関するよくある事案です。このような喧嘩が、軽微なこぶやあざを生じさせる程度に留まる場合、当人同士、あるいは学校内での解決に任せてその場で解決するのが妥当でしょう。問題は、軽微とまではいえない結果が生徒同士の喧嘩で生じてしまったというケースであります。特に、本件のように、軽微ではないが重大とまでいえるか微妙な場合、少年同士のいざこざについて大人が必要以上に関わることに対して躊躇するところではありますが、他方で、単純な喧嘩として子供限りの対応に任せる割り切りにも躊躇されます。この場合に今後の対応としては、学校側の対応にも関連しますが、大きく、

① 少年院や保護観察など少年保護事件の審判手続を求めて被害届を警察署に提出するなどの方法

② 民事事件として不法行為に基づく損害賠償を求める方法

の2つが一応考えられます。なお、②との関連では、相手方との交渉により、後遺症の点に配慮する形で和解による解決を図ることのほか、学校側に対する責任追及の可能性の検討などを考えることとなります。

2、少年事件の特殊性への配慮

(1)ただ、加害者である相手方も少年でありますので、加害少年の更生との関連で十分な配慮の必要があります。というのも、被害者側が一旦被害届を警察署に提出して受理されると、軽微な事案でも、又は、その後の事情の如何に拘らず、家庭裁判所に全件事件が送致されるのが建前です。安易に被害届を提出することは、逆に、加害少年に心理的悪影響を生じさせることも懸念されます。加害少年に反省を求めるべきことは当然ですが、その手段は加害少年の更生可能性などを考慮しつつ慎重さが要請されます。

(2)加害少年の反省と更生を図る手段としては、学校側の対応にまず期待すべきです。学校によるカウンセリング機能の活用を最大限利用すべきです。特に、軽微な事案であるとか、他の加害少年に唆されて犯行に及んだが、元々補導歴のあるような非行少年ではなく、きちんと話しをすれば真剣に反省をして更生が確実という場合、学校によるカウンセリングによる解決にまず期待する方が相手方少年の更生にとっても妥当といえます。

(3)ただ、本件では、学校側が責任を回避しているような状況であり、学校によるカウンセリング機能を期待することは難しそうです。そもそも、本件は学校外での出来事とはいえ、下校途中での生徒同士のけんかについて学校側に責任が生じる可能性がないとは言い切れません。学校内でのいざこざの延長として、学校側にも責任が生じる場合はありえます。そして、学校側として、学校側の責任が懸念される場合、うやむやに事件を終了させようと考えることが多いはずです。学校側に責任を問える可能性があるかどうかを弁護士などの法的専門家の意見を踏まえて慎重に検討する必要があります。

(4)また、このような学校の逃げ腰な態度を改めさせる為には、教育委員会への相談、警察に被害届を提出するなどが考えられます。前記のとおり、少年事件では、家庭裁判所に事件が全件送致されますので、加害者側が被害者側と示談をして、被害届を取消したような場合でも、警察限りで処理することがまず出来ません。警察の対応としても、被害届を受理すると必ず家裁送致されることを考慮し、とりあえず被害届の受理を延期しつつ相談に乗ってくれることもあるでしょう。実効性はともかく、被害届を提出せずに警察に事件の概要を話しつつ加害者側や学校側と誠実な話し合いを模索するという対処は取っ掛かりとしては妥当な解決方法でしょう。さらに、学校側への働きかけ、被害届を警察に提出するかの判断などをする前に弁護士に相談されることもお勧めです。

なお、弁護士の相談との関連で、現在弁護士会では被害者支援のプログラムの一環として無料電話相談(被害者サポート支援)などの取り組みをしています。ここでは、1回に限り無料で面接相談にも応じていますので積極的に活用すべきです。さらに、継続的な相談や示談を含めた相手方との交渉などを具体的に検討されたい場合、上記被害者サポート支援から継続相談に移行するか、弁護士会を通さずに弁護士に継続相談等をしていただき、適宜アドバイスを受けることをお勧めします。因みに、当事務所では、少年事件のような被害者側の立場と加害者側の立場に慎重に配慮する必要がある事例を対象に継続相談という受任の方法も検討させていただいております。

(5)以上のような慎重な対応で臨んだにも拘らず加害者側の対応に誠意が感じられず加害少年に反省がないという場合には、最終的に被害届を警察に受理してもらうということもやむをえないといえます。

3、まとめ

(1)①との関係

本件では、学校側に積極的に加害少年の反省・更生に尽力するよう求めると共に、事件の真相究明を求めるべきです。ただ、学校側は非協力的な姿勢を変えないのであれば、教育委員会や弁護士による学校側への働きかけが必要となります。また、学校側への責任追求の余地がないかも検討する必要があります。学校側の対応如何では警察に被害届を提出受理することも最終的な手段としてはやむをえないところでしょう。被害届が受理されると、受理警察署から加害者側や学校側に事件の経緯・今後の対応など、諸事情を聞かれますので、誠実な対応をせざるを得なくなります。ただ、前記のとおり、家裁に前件送致されるわけですから、被害届を提出する前に事案の重大性や加害者側の態度、学校側の協力の度合いなどをもう一度良く考える必要があります。

(2)②との関係

① ただ、それとは別に、本件では耳の鼓膜が破れており、今後後遺症の可能性がありますので、加害者側に対し、不法行為に基づく損害賠償請求として、治療費の支払、慰謝料等の支払等についてきちんと話合いをすることが不可欠となります。両者で円満に和解解決が得られるのが被害者にとっても加害者にとっても良いでしょう。上記の民事事件の交渉についても、必要に応じて弁護士に依頼されると円滑な解決が期待できます。

② 尚、法的責任責任追及の場合当事者を誰にするかですが、未成年者は14歳でも責任能力があるので少年を相手に訴訟を提起できます。次に両親ですが少年同士の険悪な関係を知りつつ問題となっていたような事態をあえて放置したような場合は責任を負う可能性があるでしょう。法的根拠については当事務所ホームページ事例集NO522を参照してください。学校側(学校及び担当教師)ですが、学校付近での事件でもあり両親に準じて少年を監督する立場にあると考えられるので、民法714条の直接適用か、趣旨を類推して両親と同様に少年同士の危険な関係を知りつつ事態を漫然と放置していたような場合は責任を負うこともあると思われます。

③ 後遺症が具体的に生じた場合は慰謝料、労働能力喪失率による逸失利益の計算は交通事故の判例で確立していますので算定は容易と思われます。

以上

関連事例集

Yahoo! JAPAN

※参照条文

民法

第709条(不法行為による損害賠償)故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

第710条(財産以外の損害の賠償)他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。

第712条(責任能力)未成年者は、他人に損害を加えた場合において、自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったときは、その行為について賠償の責任を負わない。

第714条(責任無能力者の監督義務者等の責任)

1 前二条の規定により責任無能力者がその責任を負わない場合において、その責任無能力者を監督する法定の義務を負う者は、その責任無能力者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、監督義務者がその義務を怠らなかったとき、又はその義務を怠らなくても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。

2 監督義務者に代わって責任無能力者を監督する者も、前項の責任を負う。

(使用者等の責任)

第七百十五条 ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。

2 使用者に代わって事業を監督する者も、前項の責任を負う。

3 前二項の規定は、使用者又は監督者から被用者に対する求償権の行使を妨げない。