児童買春における年齢の認識

刑事|児童買春・児童ポルノ禁止法|押収物還付手続き

目次

  1. 質問
  2. 回答
  3. 解説
  4. 関連事例集
  5. 参考判例

質問:

会社役員をしています。児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反容疑で、警察が自宅に乗り込んできました。昨年出会い系サイトで知り合った女性と性交渉をしたことが原因です。当初、女性に年齢を尋ねたら20歳だと言っていたのですが、本当は未成年者(17才)だったようです。その際、自宅にあったパソコン、携帯電話とローションを警察官に押収されてしまいました。翌日、弁護士に依頼し、接見時に、女性が年齢を偽っていたことなどを説明しました。直ちに、弁護士が警察署に説明し、意見書を提出するなどの弁護活動の結果、その日のうちに自宅に戻ることができました。警察署は、捜査段階のため、処分については、まだ決定していないと言われています。家に戻ってから、仕事の関係者と連絡を取りたいと思ったところ、携帯電話が警察に押収されていて、連絡先が分からないことに気づきました。押収されたままだと仕事に支障が生じるのですが、戻してもらうにはどうしたらいいでしょうか。

回答:

回答する前に冒頭申し上げますが、本件について法的に問題点(相手の女性の年齢についての誤解、携帯電話が長期間押収されたままであること)はありますが、それ以前に知らなかったとはいえ、結果として17歳の女子とインターネットを利用し交際すること自体法的規制以前の人間として道徳的問題ですし、児童の健全な性的成長を侵害し、社会風俗の健全化に反するもので大人として深い反省が必要と思われます。以下の解説を御参照ください。

児童買春に関する関連事例集参照。

解説:

1、押収物還付について

押収物で留置の必要がないものは、被告事件の終結を待たないで、決定でこれを「還付」しなければなりません(刑事訴訟法123条1項、222条1項)。還付とは、押収物について留置の必要がないときに捜査機関の占有を解いて原状に回復することをいいます。そして、留置の必要がない場合とは、証拠物又は没収すべき物として押収した物が証拠物又は没収すべき物にならないことが判明したり、証拠物又は没収すべき物と思料される場合であっても、犯罪の態様、軽重、押収物の証拠としての価値、重要性、押収物が還付された場合に隠滅・毀損されるおそれの有無、押収を継続することによって受ける被押収者の不利益の程度その他諸般の事情を考慮し、その占有を継続する必要がないと認められるような場合が考えられます。

今回のご相談のように、逮捕二日目で釈放され、未処分の場合、押収物を直ちに還付してもらうことは難しいかもしれませんが、あなたのように「仕事で必要」という重大な理由がある場合には、押収を継続することによって受ける被押収者の不利益の程度が大きいので、還付請求が認められるかもしれません。まずは、依頼している弁護人に事情を説明し、弁護人から捜査機関に口頭で押収物の取り扱いについて確認してもらいましょう。あなたが必要な事情を説明してもらい、緊急性のある証拠品だけ返してもらうことや、必要な情報だけ書き写させてもらうなどの方法もあります。還付について確認する場所は、警察署段階の場合は担当警察官へ、送検されてしまった場合には、検察庁まで確認することになります。還付の準備ができたら、捜査機関からあなたのところに連絡が入り、直接受取に行くことになります。

押収物仮還付について

一方、弁護士が還付するよう伝えても、捜査機関が素早く対応するとは限りません。内部で協議しているような場合には尚更です。そのような場合には、弁護人から捜査機関に対し、(仮)還付請求書を提出することになります(提出場所は、事件が検察官に送致される前であれば警察署の署長宛に、送致された後であれば担当の検察官宛てになります。)。仮還付というのは、押収物は、所有者、所持者、保管者又は差出人の請求により、仮に還付することができるというものです(刑訴法123条2項)。留置の必要性がなくなっていないが、一時返還しても、捜査上支障がないと認められるものについて、再び捜査機関に戻されることを留保し、一時返還する処分をいいます。なお、仮還付の場合には、法律上の押収の効力は存続していますので、仮還付を受けた者はその物を保管する義務を負い、勝手に処分したり証拠価値に変動を生じさせることは許されません。

2、却下処分に対する手段

還付請求に対し、却下処分がでた場合に考えられる手段として、押収又は押収物の還付に関する不服申立てのとして準抗告があります。具体的に説明しますと、検察官、検察事務官、司法警察職員のした処分については、刑訴法430条1項、2項を根拠として、裁判所にその処分の取消・変更を請求することができます。さらに、裁判官の裁判に対しても、刑訴法429条2号を根拠として、その取消・変更を求めることができます。

3、本件における具体的に検討

今回の携帯電話還付についてですが、還付請求、又仮還付請求が認められるかどうかはあなたの本件行為について嫌疑が晴れたかどうかによって異なります。嫌疑が晴れなければ還付請求は認められません。なぜなら本件犯罪の成立の要件として、被疑者は交際の時相手方が18才未満であることを認識している必要がありますから(刑法上の言葉ですが故意の内容として年齢の認識が必要です。)本件において、あなたは20才と思っている以上年齢の認識の欠如ですから即ち無罪を主張し否認事件となっています。

この様な状態で携帯電話、パソコンを返還すれば被害慰謝側の連絡先などの情報を得てそれを元に被害者の供述の撤回訂正を強要し、又は年齢認識、交際時期についての証拠となるメール、録音の消去など証拠隠滅の危険が生じるからです。ご質問では翌日後に釈放されたと有りますが、捜査中であり容疑が完全に晴れた状態ではありませんので、還付請求、仮還付請求ともに認められないでしょう。抗告しても同様と考えられます。

4、本件における具体的対策

容疑を完全に晴らす必要がありますから弁護人と相談し交際当時20才と認識したことについて合理的理由があるという弁護人意見書をいち早く提出し捜査官を納得させることです。単に20才と思ったと供述するだけでは嫌疑は晴れません。この様な弁解は誰でもするでしょうから証拠に基づく具体的裏付けが必要です。どうしてそう思う合理性が有ったかを出会いの連絡の時から関係を持ったときの会話等詳細に再現し、そう思う合理的根拠を示し、捜査官に「なるほど」と納得してもらう必要があります。たとえば、被害者が20才で有れば大学生なのか勤めているかどうか等の被害者と交わした会話内容(これは具体的であればあるほど有効な主張となります)、反対に高校生活の話を聞いていればあなたの弁解は通じませんし、被害者の自動車運転免許取得の話をしていれば18歳以上を前提にしていますので相手方が故意に年齢詐称していた事実が明らかになるわけです。その他出会ったときの服装、化粧、飲酒やタバコをしていたか、避妊具を所持していたなど態度も含めて総合的に考えて20才と認識するのはやむを得ない事情であったことを明らかにすることです。

なお、あなたは、出会い系サイトで女性と知り合ったということですが、そのような場合次の法律を根拠に女性が20歳と誤認した旨捜査官に説明するのが容疑を晴らすうえで効果的な場合があります。すなわち平成15年6月に「インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律」(いわゆる「出会い系サイト規正法」)が成立し18歳未満の者がインターネットで18歳未満の事実を表示して交際をすること自体も刑事罰の対象になることから(第6条2号 本条の主体は交際した児童自身も含まれます。本条の趣旨は性風俗の健全化にあり交際する意思能力が不十分な児童自身が自らの正常に成長する権利を事実上放棄するような行為をしても許されないわけです。)、18歳未満の者が利用しようとする出会い系サイトで処罰されることを知っていて18歳未満である事を掲載したり、伝えたりする事は通常なく年齢を詐称することがある程度予想されるからです。このような点を考慮すると還付の可能性は皆無ではありませんから、まずは、依頼している弁護人と詳細に相談することをお勧めします。

以上

関連事例集

Yahoo! JAPAN

※参照条文

憲法

第三十五条 何人も、その住居、書類及び所持品について、侵入、捜索及び押収を受けることのない権利は、第三十三条の場合を除いては、正当な理由に基いて発せられ、且つ捜索する場所及び押収する物を明示する令状がなければ、侵されない。

○2 捜索又は押収は、権限を有する司法官憲が発する各別の令状により、これを行ふ。

刑事訴訟法

第二百二十条 検察官、検察事務官又は司法警察職員は、第百九十九条の規定により被疑者を逮捕する場合又は現行犯人を逮捕する場合において必要があるときは、左の処分をすることができる。第二百十条の規定により被疑者を逮捕する場合において必要があるときも、同様である。

二 逮捕の現場で差押、捜索又は検証をすること。

第百二十三条 押収物で留置の必要がないものは、被告事件の終結を待たないで、決定でこれを還付しなければならない。

○2 押収物は、所有者、所持者、保管者又は差出人の請求により、決定で仮にこれを還付することができる。

第四百二十九条 裁判官が左の裁判をした場合において、不服がある者は、簡易裁判所の裁判官がした裁判に対しては管轄地方裁判所に、その他の裁判官がした裁判に対してはその裁判官所属の裁判所にその裁判の取消又は変更を請求することができる。

一 忌避の申立を却下する裁判

二 勾留、保釈、押収又は押収物の還付に関する裁判

三 鑑定のため留置を命ずる裁判

四 証人、鑑定人、通訳人又は翻訳人に対して過料又は費用の賠償を命ずる裁判

五 身体の検査を受ける者に対して過料又は費用の賠償を命ずる裁判

○2 第四百二十条第三項の規定は、前項の請求についてこれを準用する。

○3 第一項の請求を受けた地方裁判所又は家庭裁判所は、合議体で決定をしなければならない。

○4 第一項第四号又は第五号の裁判の取消又は変更の請求は、その裁判のあつた日から三日以内にこれをしなければならない。

○5 前項の請求期間内及びその請求があつたときは、裁判の執行は、停止される。

第四百三十条 検察官又は検察事務官のした第三十九条第三項の処分又は押収若しくは押収物の還付に関する処分に不服がある者は、その検察官又は検察事務官が所属する検察庁の対応する裁判所にその処分の取消又は変更を請求することができる。

○2 司法警察職員のした前項の処分に不服がある者は、司法警察職員の職務執行地を管轄する地方裁判所又は簡易裁判所にその処分の取消又は変更を請求することができる。

○3 前二項の請求については、行政事件訴訟に関する法令の規定は、これを適用しない。

児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律

(平成十一年五月二十六日法律第五十二号)

最終改正:平成一六年六月一八日法律第一〇六号

(目的)

第一条 この法律は、児童に対する性的搾取及び性的虐待が児童の権利を著しく侵害することの重大性にかんがみ、あわせて児童の権利の擁護に関する国際的動向を踏まえ、児童買春、児童ポルノに係る行為等を処罰するとともに、これらの行為等により心身に有害な影響を受けた児童の保護のための措置等を定めることにより、児童の権利を擁護することを目的とする。

(定義)

第二条 この法律において「児童」とは、十八歳に満たない者をいう。

2 この法律において「児童買春」とは、次の各号に掲げる者に対し、対償を供与し、又はその供与の約束をして、当該児童に対し、性交等(性交若しくは性交類似行為をし、又は自己の性的好奇心を満たす目的で、児童の性器等(性器、肛門又は乳首をいう。以下同じ。)を触り、若しくは児童に自己の性器等を触らせることをいう。以下同じ。)をすることをいう。

一 児童

二 児童に対する性交等の周旋をした者

三 児童の保護者(親権を行う者、未成年後見人その他の者で、児童を現に監護するものをいう。以下同じ。)又は児童をその支配下に置いている者

3 この法律において「児童ポルノ」とは、写真、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)に係る記録媒体その他の物であって、次の各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写したものをいう。

一 児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為に係る児童の姿態

二 他人が児童の性器等を触る行為又は児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの

三 衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの

(適用上の注意)

第三条 この法律の適用に当たっては、国民の権利を不当に侵害しないように留意しなければならない。

(児童買春)

第四条 児童買春をした者は、五年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。

(児童買春周旋)

第五条 児童買春の周旋をした者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

2 児童買春の周旋をすることを業とした者は、七年以下の懲役及び千万円以下の罰金に処する。

(児童買春勧誘)

第六条 児童買春の周旋をする目的で、人に児童買春をするように勧誘した者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

2 前項の目的で、人に児童買春をするように勧誘することを業とした者は、七年以下の懲役及び千万円以下の罰金に処する。

(児童ポルノ提供等)

第七条 児童ポルノを提供した者は、三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。電気通信回線を通じて第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録その他の記録を提供した者も、同様とする。

2 前項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者も、同項と同様とする。同項に掲げる行為の目的で、同項の電磁的記録を保管した者も、同様とする。

3 前項に規定するもののほか、児童に第二条第三項各号のいずれかに掲げる姿態をとらせ、これを写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者も、第一項と同様とする。

4 児童ポルノを不特定若しくは多数の者に提供し、又は公然と陳列した者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。電気通信回線を通じて第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録その他の記録を不特定又は多数の者に提供した者も、同様とする。

5 前項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者も、同項と同様とする。同項に掲げる行為の目的で、同項の電磁的記録を保管した者も、同様とする。

6 第四項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを外国に輸入し、又は外国から輸出した日本国民も、同項と同様とする。

(児童買春等目的人身売買等)

第八条 児童を児童買春における性交等の相手方とさせ又は第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を描写して児童ポルノを製造する目的で、当該児童を売買した者は、一年以上十年以下の懲役に処する。

2 前項の目的で、外国に居住する児童で略取され、誘拐され、又は売買されたものをその居住国外に移送した日本国民は、二年以上の有期懲役に処する。

3 前二項の罪の未遂は、罰する。

(児童の年齢の知情)

第九条 児童を使用する者は、児童の年齢を知らないことを理由として、第五条から前条までの規定による処罰を免れることができない。ただし、過失がないときは、この限りでない。

(国民の国外犯)

第十条 第四条から第六条まで、第七条第一項から第五項まで並びに第八条第一項及び第三項(同条第一項に係る部分に限る。)の罪は、刑法 (明治四十年法律第四十五号)第三条 の例に従う。

(両罰規定)

第十一条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、第五条から第七条までの罪を犯したときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して各本条の罰金刑を科する。

(捜査及び公判における配慮等)

第十二条 第四条から第八条までの罪に係る事件の捜査及び公判に職務上関係のある者(次項において「職務関係者」という。)は、その職務を行うに当たり、児童の人権及び特性に配慮するとともに、その名誉及び尊厳を害しないよう注意しなければならない。

2 国及び地方公共団体は、職務関係者に対し、児童の人権、特性等に関する理解を深めるための訓練及び啓発を行うよう努めるものとする。

(記事等の掲載等の禁止)

第十三条 第四条から第八条までの罪に係る事件に係る児童については、その氏名、年齢、職業、就学する学校の名称、住居、容貌等により当該児童が当該事件に係る者であることを推知することができるような記事若しくは写真又は放送番組を、新聞紙その他の出版物に掲載し、又は放送してはならない。

(教育、啓発及び調査研究)

第十四条 国及び地方公共団体は、児童買春、児童ポルノの提供等の行為が児童の心身の成長に重大な影響を与えるものであることにかんがみ、これらの行為を未然に防止することができるよう、児童の権利に関する国民の理解を深めるための教育及び啓発に努めるものとする。

2 国及び地方公共団体は、児童買春、児童ポルノの提供等の行為の防止に資する調査研究の推進に努めるものとする。

(心身に有害な影響を受けた児童の保護)

第十五条 関係行政機関は、児童買春の相手方となったこと、児童ポルノに描写されたこと等により心身に有害な影響を受けた児童に対し、相互に連携を図りつつ、その心身の状況、その置かれている環境等に応じ、当該児童がその受けた影響から身体的及び心理的に回復し、個人の尊厳を保って成長することができるよう、相談、指導、一時保護、施設への入所その他の必要な保護のための措置を適切に講ずるものとする。

2 関係行政機関は、前項の措置を講ずる場合において、同項の児童の保護のため必要があると認めるときは、その保護者に対し、相談、指導その他の措置を講ずるものとする。

(心身に有害な影響を受けた児童の保護のための体制の整備)

第十六条 国及び地方公共団体は、児童買春の相手方となったこと、児童ポルノに描写されたこと等により心身に有害な影響を受けた児童について専門的知識に基づく保護を適切に行うことができるよう、これらの児童の保護に関する調査研究の推進、これらの児童の保護を行う者の資質の向上、これらの児童が緊急に保護を必要とする場合における関係機関の連携協力体制の強化、これらの児童の保護を行う民間の団体との連携協力体制の整備等必要な体制の整備に努めるものとする。

(国際協力の推進)

第十七条 国は、第四条から第八条までの罪に係る行為の防止及び事件の適正かつ迅速な捜査のため、国際的な緊密な連携の確保、国際的な調査研究の推進その他の国際協力の推進に努めるものとする。

インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律

(平成十五年六月十三日法律第八十三号)

第一章 総則(第一条―第五条)

第二章 児童に係る誘引の規制(第六条)

第三章 児童による利用の防止(第七条―第十条)

第四章 雑則(第十一条―第十四条)

第五章 罰則(第十五条―第十八条)

附則

第一章 総則

(目的)

第一条 この法律は、インターネット異性紹介事業を利用して児童を性交等の相手方となるように誘引する行為等を禁止するとともに、児童によるインターネット異性紹介事業の利用を防止するための措置等を定めることにより、インターネット異性紹介事業の利用に起因する児童買春その他の犯罪から児童を保護し、もって児童の健全な育成に資することを目的とする。

(定義)

第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

一 児童 十八歳に満たない者をいう。

二 インターネット異性紹介事業 異性交際(面識のない異性との交際をいう。以下同じ。)を希望する者(以下「異性交際希望者」という。)の求めに応じ、その異性交際に関する情報をインターネットを利用して公衆が閲覧することができる状態に置いてこれに伝達し、かつ、当該情報の伝達を受けた異性交際希望者が電子メールその他の電気通信(電気通信事業法 (昭和五十九年法律第八十六号)第二条第一号 に規定する電気通信をいう。以下同じ。)を利用して当該情報に係る異性交際希望者と相互に連絡することができるようにする役務を提供する事業をいう。

三 インターネット異性紹介事業者 インターネット異性紹介事業を行う者をいう。

(インターネット異性紹介事業者等の責務)

第三条 インターネット異性紹介事業者及びその行うインターネット異性紹介事業に必要な役務を提供する事業者は、児童の健全な育成に配慮するとともに、児童によるインターネット異性紹介事業の利用の防止に資するよう努めなければならない。

(保護者の責務)

第四条 児童の保護者(親権を行う者又は後見人をいう。)は、児童によるインターネット異性紹介事業の利用を防止するために必要な措置を講ずるよう努めなければならない。

(国及び地方公共団体の責務)

第五条 国及び地方公共団体は、児童によるインターネット異性紹介事業の利用の防止に関する国民の理解を深めるための教育及び啓発に努めるとともに、児童によるインターネット異性紹介事業の利用の防止に資する技術の開発及び普及を推進するよう努めるものとする。

2 国及び地方公共団体は、事業者、国民又はこれらの者が組織する民間の団体が自発的に行うインターネット異性紹介事業に係る活動であって、児童の健全な育成に障害を及ぼす行為を防止するためのものが促進されるよう必要な施策を講ずるものとする。

第二章 児童に係る誘引の規制

第六条 何人も、インターネット異性紹介事業を利用して、次に掲げる行為をしてはならない。

一 児童を性交等(性交若しくは性交類似行為をし、又は自己の性的好奇心を満たす目的で、他人の性器等(性器、肛門又は乳首をいう。以下同じ。)を触り、若しくは他人に自己の性器等を触らせることをいう。以下同じ。)の相手方となるように誘引すること。

二 人(児童を除く。)を児童との性交等の相手方となるように誘引すること。

三 対償を供与することを示して、児童を異性交際(性交等を除く。次号において同じ。)の相手方となるように誘引すること。

四 対償を受けることを示して、人を児童との異性交際の相手方となるように誘引すること。

第三章 児童による利用の防止

(利用の禁止の明示等)

第七条 インターネット異性紹介事業者は、その行うインターネット異性紹介事業について広告又は宣伝をするときは、国家公安委員会規則で定めるところにより、児童が当該インターネット異性紹介事業を利用してはならない旨を明らかにしなければならない。

2 前項に規定するもののほか、インターネット異性紹介事業者は、国家公安委員会規則で定めるところにより、その行うインターネット異性紹介事業を利用しようとする者に対し、児童がこれを利用してはならない旨を伝達しなければならない。

(児童でないことの確認)

第八条 インターネット異性紹介事業者は、次に掲げる場合は、国家公安委員会規則で定めるところにより、あらかじめ、これらの異性交際希望者が児童でないことを確認しなければならない。ただし、第二号に掲げる場合にあっては、第一号に規定する異性交際希望者が当該インターネット異性紹介事業者の行う氏名、年齢その他の本人を特定する事項の確認(国家公安委員会規則で定める方法により行うものに限る。)を受けているときは、この限りでない。

一 異性交際希望者の求めに応じ、その異性交際に関する情報をインターネットを利用して公衆が閲覧することができる状態に置いて、これに伝達するとき。

二 他の異性交際希望者の求めに応じ、前号に規定する異性交際希望者からの異性交際に関する情報をインターネットを利用して公衆が閲覧することができる状態に置いて、当該他の異性交際希望者に伝達するとき。

三 前二号の規定によりその異性交際に関する情報の伝達を受けた他の異性交際希望者が、電子メールその他の電気通信を利用して、当該情報に係る第一号に規定する異性交際希望者と連絡することができるようにするとき。

四 第一号に規定する異性交際希望者が、電子メールその他の電気通信を利用して、第一号又は第二号の規定によりその異性交際に関する情報の伝達を受けた他の異性交際希望者と連絡することができるようにするとき。

(児童の健全な育成に障害を及ぼす行為の防止措置)

第九条 インターネット異性紹介事業者は、その行うインターネット異性紹介事業を利用して行われる第六条各号に掲げる行為その他の児童の健全な育成に障害を及ぼす行為を防止するための措置を講ずるよう努めなければならない。

(是正命令)

第十条 都道府県公安委員会(以下「公安委員会」という。)は、インターネット異性紹介事業者が第七条又は第八条の規定に違反していると認めるときは、当該インターネット異性紹介事業者に対し、当該違反を是正するために必要な措置をとるべきことを命ずることができる。

第四章 雑則

(報告の徴収)

第十一条 公安委員会は、第七条、第八条及び前条の規定の施行に必要な限度において、インターネット異性紹介事業者に対し、その行うインターネット異性紹介事業に関し報告を求めることができる。

(方面公安委員会への権限の委任)

第十二条 前二条に規定する道公安委員会の権限に属する事務は、政令で定めるところにより、方面公安委員会に委任することができる。

(経過措置)

第十三条 この法律の規定に基づき政令又は国家公安委員会規則を制定し、又は改廃する場合においては、それぞれ政令又は国家公安委員会規則で、その制定又は改廃に伴い合理的に必要とされる範囲内において、所要の経過措置(罰則に関する経過措置を含む。)を定めることができる。

(国家公安委員会規則への委任)

第十四条 この法律に定めるもののほか、この法律の実施のための手続その他この法律の施行に関し必要な事項は、国家公安委員会規則で定める。

第五章 罰則

第十五条 第十条の規定による命令に違反した者は、六月以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。

第十六条 第六条の規定に違反した者は、百万円以下の罰金に処する。

第十七条 第十一条の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者は、三十万円以下の罰金に処する。

第十八条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、第十五条又は前条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、各本条の罰金刑を科する。