新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.626、2007/5/30 13:52 https://www.shinginza.com/qa-souzoku.htm

【民事・相続で共有となった不動産の持分が業者に譲渡されて第三者と共有となった場合の裁判上の分割手続き、交渉方法】

質問:私は、千代田区番町に相続した土地100坪と建物があります。相続人は私と兄弟2名の全部で3人です。相続してから誰も使用していなかったのですが、今回ほかの兄弟2名が共有持ち分(合計3分の2)を全部不動産業者に譲渡してしまいました。そして、先日業者から私の持ち分を5000万円で売ってくれという手紙がきました。私としては、将来この土地を分割して自宅を建てようと思っていたので、売却するつもりはありません。どのように対処したらよいでしょうか。私が売却を拒否していると裁判になるのでしょうか。

回答:

1.共有関係については、民法249条以下に規定があります。256条本文によれば各共有者はいつにても分割を請求することができるとされています。また、共有者の協議が整わない場合は裁判所に分割を請求できることになっています(258条)。不動産業者の請求は民法256条に基づく分割の請求としてなされたものです。もちろん、分割の請求があったからと言って、相手の請求に応じる必要はありませんから5000万円で持ち分を譲渡する義務があるわけではありません。不動産業者の今回の手紙の趣旨は、共有物の分割について協議をしたい、ついては自分たちの考えとしては不動産全部を所有したいので5000万円で、あなたの持ち分を買い取らせてほしい、というお願いと考えてよいでしょう。あなたとしては、もちろんそのような提案を拒否してかまいません。しかし、分割協議には応じる義務がありますので、協議に応じないと「協議が調わない」場合にあたり不動産業者が裁判所に訴えることが可能となります。このような訴訟を共有物分割訴訟といいます。

2.以上の通りですので、不動産業者の手紙を無視していると裁判になってしまうと考えられます。不動産業者としては、転売や建物を建てる目的で購入しているわけですから、このまま放置しておくことは考えられません。あなたとしては、協議に応じなければ必ず裁判になるという前提で対応する必要があります。その点を考慮するとまず事前に話し合いをするというのが正しい対応と言えるでしょう。

そこでどのように対応すればよいのか考える必要があります。基本的には、あなたの希望をまず述べることです。あなたは、将来自分の建物を建てたいということですからそれに必要な土地を分割したいと、提案すればよいのです。もちろん、相手のあることですから希望通りにはいかないこともあるかと思います。法律上どのように分割するかということについては特に決まりはありません。法律上規定されているのは共有物分割訴訟において、現物分割(共有物を物理的に分けることで、土地の場合は分筆してそれぞれの土地を単独所有とします)が不可能な時、または著しく価値を損なう場合(土地の場合は間口の狭い細長い土地にしか分筆できないため建物が建築できないような土地になってしまう場合)は、競売して代金を持ち分に応じて分割するということだけです(民258条2項)。

ここまでの説明でご理解いただけたように、共有物の分割の協議は交渉ごと、ということになります。現物で分割することも可能ですし、現物分割に一部金銭の支払いを交えることも可能です。また、持ち分を全部金銭にかえることもできます。交渉が苦手という方は、弁護士などの専門家にご相談されるがよいと思います。弁護士に依頼する意味は、弁護士が交渉ごとの専門家であるというだけではなく、裁判になった場合の結論について予測を立てながら交渉ができるという利点があるからです。

3.そこで、次に裁判となった場合どのようになるのか説明します。共有物分割の裁判については、どのように分割するかは法律上特に規定がないので、裁判所が裁量をもって分割方法を決めていくことになります。本来裁判というのは訴訟事件といって権利があるかないかを決める手続きなのですが、共有物分割については分割を請求する権利は法律で認められていますがこのように分割せよ、という権利があるわけではないのです。原告となった共有者の請求は、単なる希望にすぎず、裁判所が共有物の状態や当事者の意思などから合理的に分割方法を定める裁判になります。そのため、手続きとしては通常の裁判手続ですが、その本質は非訟事件とされています。通常の裁判手続きをとるため公開の法廷で行われますが、通常2回目からは準備手続きといって法廷ではない部屋で行われるのが一般的です。裁判所としてはこれまでの協議の経過や共有持ち分権者らの希望、不動産の現状等を聞いて分割方法を検討していくことになります。

4.あなたの様に現物分割を希望するのであれば、測量図を基にどの部分の土地を分割してほしいという具体的な主張をすることになります。不動産業者とすれば、あなたの提案する分割案が可能か否か検討して受け入れられないということであれば、その理由を証拠をそろえて主張してくるでしょう。裁判所としては、双方の主張や証拠を見てあなたの提案が合理的であればその方向で調整を図る作業をすることになります。

5.なお、不動産業者の主張するような分割案は、全面的価格賠償による分割と呼ばれています。このような分割案も合理的なものとして認められていますが、あなたの現物の分割が物理的に経済的にも妥当なものである場合、裁判所はまず現物分割を主張するあなたの提案を受け入れることになります。どうしても現物の分割ができないという場合先ほど説明したとおり競売による方法を法律は規定していますが、裁判所は共有者の一部が全面的価格賠償による分割を希望し、しかも賠償する資力に問題がないという場合は競売という方法で判決することはないようです。

6.裁判の流れとしては以上説明したとおりです。あなたが、現物分割を希望しても現実的に困難な場合は最終的には価格賠償になってしまうことになります。しかし、そのような場合でも、交渉のテクニックとしては、あくまで現物分割を希望して争うことが大切です。不動産業者としては、早く事業を展開したいというのが前提ですので現物分割を主張されると裁判が長期化し困ることになるからです。あなたとしても、現物分割を主張していけばその結果、賠償額の金額が増加することになる傾向にあることは間違いありません。

≪条文参照≫
(共有物の使用)
第二百四十九条  各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる。
(共有物の分割請求)
第二百五十六条  各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができる。ただし、五年を超えない期間内は分割をしない旨の契約をすることを妨げない。
2  前項ただし書の契約は、更新することができる。ただし、その期間は、更新の時から五年を超えることができない。
(裁判による共有物の分割)
第二百五十八条  共有物の分割について共有者間に協議が調わないときは、その分割を裁判所に請求することができる。
2  前項の場合において、共有物の現物を分割することができないとき、又は分割によってその価格を著しく減少させるおそれがあるときは、裁判所は、その競売を命ずることができる。

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