新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.610、2007/4/25 16:20

【税務・確定申告の必要な人の範囲・注意点】
質問:私はサラリーマンですが副収入もあります。サラリーマンでも確定申告をしなければならない場合があると聞いたのですが、どのような場合か教えてください。

【解説】
確定申告が必要な人は、給与が2千万円を越えた場合や、医療費控除を受ける人の場合だけでなく、以下の様なケースもあるので、注意が必要です。
1.給与所得以外に以下の収入があり、その所得が20万円を超えている場合(所得税法第121条第1項@)
(1)原稿料収入や講演料収入があり、その所得(収入から原稿用紙代や交通費等を差し引いたもの)が20万円を超えている場合
(2)マンション等の不動産収入があり、その所得(賃料から固定資産税、修繕費、管理費等を差し引いたもの)が20万円を超えている場合
2.二箇所以上から給料を受け取っている場合で、従たる給与収入(この場合は所得ではない)が20万円を超えている場合(法121@二)
3.同族会社の役員等で、その同族会社からの給与の他に、貸付金の利子又は資産の賃貸料を受け取っている場合(この場合は金額を問いません。)(法121@ 所得税法施行令262の2)

確定申告は必要でないけれど、した方がいい場合で、見落とされがちなものに、以下の様なケースがありますので、注意が必要です。
1.株式を売却した場合に、証券会社に「特定口座」を開設して、源泉徴収を選択している場合(源泉徴収口座)は、株式を売買した都度、証券会社が売買損益を計算して、売買益にかかる税金を納付してくれるので、特に確定申告をする必要はありません。実際にはこういう方が多いと思います。但し、その年に「譲渡損失」が出た場合には、できるだけ申告をした方が良いと思います。なぜなら、確定申告をしておけば、今年出た譲渡損失を3年間繰り越すことができ、来年以降儲けが出た場合に、今年損した分を差し引いて譲渡所得を計算できるので、所得税が安く済むからです。(租税特別措置法37の12の2)もし申告しないと、譲渡損失を次年度へ繰り越すことはできません。(措法37の12の2B、F)但し、譲渡損失を翌期以降に繰り越した場合、他の黒字の株式の譲渡所得から引けるだけであって、給与所得など、株式以外の所得から引くことはできません。

譲渡損失のために必要な書類は以下のとおりです。
1.申告書B
2.分離課税用の申告書
3.申告書付表(上場株式等に係る譲渡損失の繰越用)
4.特定口座年間取引報告書(証券会社発行のもので、原本)
5.(二つ以上の特定口座で取引している場合)株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書
(以上租税特別措置法施行令25の11の2@DE参照)

≪参考条文≫

所得税法第
(確定所得申告を要しない場合)
第百二十一条  その年において給与所得を有する居住者で、その年中に支払を受けるべき第二十八条第一項(給与所得)に規定する給与等(以下この項において「給与等」という。)の金額が二千万円以下であるものは、次の各号のいずれかに該当する場合には、前条第一項の規定にかかわらず、その年分の課税総所得金額及び課税山林所得金額に係る所得税については、同項の規定による申告書を提出することを要しない。ただし、不動産その他の資産をその給与所得に係る給与等の支払者の事業の用に供することによりその対価の支払を受ける場合その他の政令で定める場合は、この限りでない。
一  一の給与等の支払者から給与等の支払を受け、かつ、当該給与等の全部について第百八十三条(給与所得に係る源泉徴収義務)又は第百九十条(年末調整)の規定による所得税の徴収をされた又はされるべき場合において、その年分の利子所得の金額、配当所得の金額、不動産所得の金額、事業所得の金額、山林所得の金額、譲渡所得の金額、一時所得の金額及び雑所得の金額の合計額(以下この項において「給与所得及び退職所得以外の所得金額」という。)が二十万円以下であるとき。
二  二以上の給与等の支払者から給与等の支払を受け、かつ、当該給与等の全部について第百八十三条又は第百九十条の規定による所得税の徴収をされた又はされるべき場合において、イ又はロに該当するとき。
イ 第百九十五条第一項(従たる給与についての扶養控除等申告書)に規定する従たる給与等の支払者から支払を受けるその年分の給与所得に係る給与等の金額とその年分の給与所得及び退職所得以外の所得金額との合計額が二十万円以下であるとき。
ロ イに該当する場合を除き、その年分の給与所得に係る給与等の金額が百五十万円と社会保険料控除の額、小規模企業共済等掛金控除の額、生命保険料控除の額、地震保険料控除の額、障害者控除の額、寡婦(寡夫)控除の額、勤労学生控除の額、配偶者控除の額、配偶者特別控除の額及び扶養控除の額との合計額以下で、かつ、その年分の給与所得及び退職所得以外の所得金額が二十万円以下であるとき。

所得税法施行令
(給与所得以外の所得が少額であつても確定申告書の提出を要する場合)
第二百六十二条の二  法第百二十一条第一項 (確定所得申告を要しない場合)に規定する政令で定める場合は、次に掲げる者がその者に係る第一号に規定する法人から、法第二十八条第一項 (給与所得)に規定する給与等のほか、当該法人の事業に係る貸付金の利子又は不動産、動産、営業権その他の資産を当該事業の用に供することによる対価の支払を受ける場合とする。
一  法第百五十七条第一項第一号 (同族会社の行為又は計算の否認)に規定する同族会社である法人の役員
二  前号の役員の親族であり又はあつた者
三  第一号の役員とまだ婚姻の届出をしないが事実上婚姻関係と同様の事情にあり又はあつた者
四  第一号の役員から受ける金銭その他の資産によつて生計を維持している者

租税特別措置法
(上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除)
第三十七条の十二の二
3  第一項の規定は、同項に規定する居住者又は国内に恒久的施設を有する非居住者が前項に規定する上場株式等に係る譲渡損失の金額が生じた年分の所得税につき当該上場株式等に係る譲渡損失の金額の計算に関する明細書その他の財務省令で定める書類の添付がある確定申告書を提出し、かつ、その後において連続して確定申告書を提出している場合であつて、第一項の確定申告書に同項の規定による控除を受ける金額の計算に関する明細書その他の財務省令で定める書類の添付がある場合に限り、適用する。
7  その年の翌年以後又はその年において第一項の規定の適用を受けようとする場合に提出すべき確定申告書の記載事項の特例その他前各項の規定の適用に関し必要な事項は、政令で定める。

租税特別措置法施行令
(上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除)
第二十五条の十一の二  法第三十七条の十二の二第一項 の規定による上場株式等に係る譲渡損失の金額(同条第二項 に規定する上場株式等に係る譲渡損失の金額をいう。以下この条において同じ。)の控除については、次に定めるところによる。
一  控除する上場株式等に係る譲渡損失の金額が前年以前三年内の二以上の年に生じたものである場合には、これらの年のうち最も古い年に生じた上場株式等に係る譲渡損失の金額から順次控除する。
二  前年以前三年内の一の年において生じた上場株式等に係る譲渡損失の金額の控除をする場合において、その年分の法第三十七条の十二の二第一項 に規定する株式等に係る譲渡所得等の金額のうちに法第三十七条の十一第一項 に規定する上場株式等に係る譲渡所得等の金額があるときは、当該上場株式等に係る譲渡損失の金額は、まず、当該株式等に係る譲渡所得等の金額から当該上場株式等に係る譲渡所得等の金額を控除した残額から控除し、なお控除しきれない損失の金額があるときは、当該上場株式等に係る譲渡所得等の金額から控除する。
三  所得税法第七十一条第一項 の規定による控除が行われる場合には、まず、法第三十七条の十二の二第一項 の規定による控除を行つた後、所得税法第七十一条第一項 の規定による控除を行う。
5  その年の翌年以後又はその年において法第三十七条の十二の二第一項 の規定の適用を受けようとする場合に提出すべき所得税法第百二十条第一項 の規定による申告書及び提出することができる同法第百二十二条第一項 又は第百二十三条第一項 の規定による申告書には、同法第百二十条第一項 各号又は第百二十三条第二項 各号に掲げる事項のほか、次に掲げる事項を併せて記載しなければならない。
一  その年において生じた上場株式等に係る譲渡損失の金額
二  その年の前年以前三年内の各年において生じた上場株式等に係る譲渡損失の金額(法第三十七条の十二の二第一項 の規定により前年以前において控除されたものを除く。次項第二号において同じ。)
三  その年において生じた上場株式等に係る譲渡損失の金額がある場合には、その年分の株式等に係る譲渡所得等の金額の計算上生じた損失の金額
四  第二号に掲げる上場株式等に係る譲渡損失の金額がある場合には、当該損失の金額を控除しないで計算した場合のその年分の株式等に係る譲渡所得等の金額
五  法第三十七条の十二の二第一項 の規定により翌年以後において株式等に係る譲渡所得等の金額の計算上控除することができる上場株式等に係る譲渡損失の金額
六  前各号に掲げる金額の計算の基礎その他財務省令で定める事項
6  法第三十七条の十二の二第五項 において準用する所得税法第百二十三条第一項 に規定する政令で定める事項は、次に掲げる事項とする。
一  その年において生じた上場株式等に係る譲渡損失の金額
二  その年の前年以前三年内の各年において生じた上場株式等に係る譲渡損失の金額
三  その年において生じた上場株式等に係る譲渡損失の金額がある場合には、その年分の総所得金額、退職所得金額及び山林所得金額の合計額並びに株式等に係る譲渡所得等の金額の計算上生じた損失の金額又は純損失の金額(所得税法第二条第一項第二十五号 に規定する純損失の金額をいう。次号において同じ。)
四  第二号に掲げる上場株式等に係る譲渡損失の金額がある場合には、その年分の総所得金額、退職所得金額及び山林所得金額の合計額並びに当該損失の金額を控除しないで計算した場合のその年分の株式等に係る譲渡所得等の金額又は純損失の金額
五  法第三十七条の十二の二第一項 の規定により翌年以後において株式等に係る譲渡所得等の金額の計算上控除することができる上場株式等に係る譲渡損失の金額
六  前各号に掲げる金額の計算の基礎その他財務省令で定める事項

法律相談事例集データベースのページに戻る

法律相談ページに戻る(電話03−3248−5791で簡単な無料法律相談を受付しております)

トップページに戻る