新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.509、2006/11/1 14:17 https://www.shinginza.com/qa-hanzai.htm

[刑事・起訴前]
質問:先日、バイクに乗っていたところ、スピード違反をしたということで警察に呼び止められました。その際乗っていたバイクが実は盗んだバイクであったため、その場で現行犯逮捕されてしまいました。私は半年ほど前、自動車で交通事故を起こしており、そのときにはスピード違反(道路交通法違反)と業務上過失致傷の罪で略式起訴され、50万円の罰金を支払いました。また、免許も取消となりました。現在もまだ欠格期間中なので、今回は無免許で運転していたということになります。このような状態なのですが、私は今後どのようになるのでしょうか。

回答:
窃盗罪と道路交通法違反で、起訴され正式な裁判になる場合と、再度略式手続きで罰金となる場合が考えられます。正式裁判となった場合、略式命令とはいえ、非常に近い時期に刑事裁判を受けていることからして、実刑となる可能性もないとはいえないでしょう。もっとも、被害者の方に謝罪をし、和解をすることが出来れば、執行猶予が付される見込みもあります。
解説
1、まず、窃盗について、御質問からは不明ですが行為態様の性質によって情状が大きく異なってきます。バイクを盗んだということですが、他人の敷地内に忍び込んで盗んだのか、それとも路上にとめてあったものを盗んだのか、鍵がつけっぱなしになっていたものを盗んだのか、それとも鍵がかかっていたものにつき、鍵を壊して盗んだのか、一人でとったのか、組織で盗んだのか、などがポイントとして考えられます。
2、一般の方々が軽微な犯罪であると甘く見る傾向がある少額の万引き事犯でさえ、最近では起訴されることが多くなってきています。特に、執行猶予期間中など、近い時期に裁判を受けたことがあるような場合には、さらに正式裁判の可能性は高くなります。本件のようなバイク窃盗ということになると、万引きなどと比べて一般に罪質が重いと考えられますので、公訴提起される可能性は高いと言わざるを得ないでしょう。もっとも、例えば盗んだ時点でバイクが既に非常に古いもので財産的な価値もあまりなく、路上に鍵がかけっぱなしでとめられていた、などというように犯行態様・情状面においてそれほど悪質ではない場合で、逮捕後すぐに被害者の方と連絡をとり、謝罪した上で和解をし、被害届を取り下げてもらうことができたというようなときには、不起訴処分となる可能性もゼロとは言い切れません。特に被疑者が可塑性に富む若年者であるような場合、身近に監視・監督をしっかりとやってくれる身元引受人がいる場合などはそのような事情を考慮し、不起訴処分としてくれる事例もごくわずかですが存在します。したがって、起訴前の活動もないがしろにするべきではないと思われます。ただし、窃盗罪が不起訴処分となった場合でも、道路交通法違反(スピード違反、無免許運転)が不起訴となることはありません。略式起訴され、罰金を支払うことになります(刑事処分とは別に行政処分もなされます)。なお、略式起訴とは、100万円以下の罰金又は科料を科すのが相当な犯罪について、被疑者の異議がない場合に、検察官が簡易裁判所に略式命令(公判を要せずに命令を出す裁判)を請求する起訴手続のことを言います(刑事訴訟法461条、462条1項)。被疑者に異議がある場合(被疑事実に争いがある場合など)には略式起訴をすることはできませんし、略式命令を受けたとしても、その告知を受けた日から14日以内であれば正式な裁判をするよう請求することができます(同法465条1項)。
3、次に、窃盗罪につき不起訴処分にならなかった場合についてですが、この場合には前記の犯行態様、被害の程度、反省の態度、被害回復の内容により略式手続きにより罰金刑が課せられる場合と正式な裁判が選択される場合が有ります。略式手続きによる罰金の場合前記道路交通法違反の罪と併合罪関係になり100万円以内で処分されることになるでしょう。正式裁判の場合これも道路交通法違反の罪と併せて裁判になりますが、量刑については、懲役刑が選択されされることになるでしょうが被害者との間で和解ができているかどうか、被害回復が図れているかどうかによっても大きく変わってくると思われますが、示談が済み、被害弁償も終わっているというのであれば、執行猶予が付される見込みも十分にあると思われます。もっとも、前裁判(略式命令)から本件犯罪までの期間が非常に短い点を考えると、きわどい判断になることも予想されますので、和解ができない場合には和解金を供託するなど、できる限りの努力をすべきであろうと思われます。

≪参照条文≫

刑法
(窃盗) 第二百三十五条  他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
道路交通法違反
(無免許運転の禁止)第六十四条  何人も、第八十四条第一項の規定による公安委員会の運転免許を受けないで(第九十条第四項、第百三条第一項若しくは第三項、第百三条の二第一項、第百四条の二の三第一項又は同条第三項において準用する第百三条第三項の規定により運転免許の効力が停止されている場合を含む。)、自動車又は原動機付自転車を運転してはならない。(罰則 第百十七条の四第二号)
(最高速度)第二十二条  車両は、道路標識等によりその最高速度が指定されている道路においてはその最高速度を、その他の道路においては政令で定める最高速度をこえる速度で進行してはならない。(罰則 第百十八条第一項第一号、同条第二項)
第百十七条の四  次の各号のいずれかに該当する者は、一年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
二  法令の規定による運転の免許を受けている者(第百七条の二の規定により国際運転免許証等で自動車等を運転することができることとされている者を含む。)でなければ運転し、又は操縦することができないこととされている車両等を当該免許を受けないで(法令の規定により当該免許の効力が停止されている場合を含む。)又は国際運転免許証等を所持しないで(第八十八条第一項第二号から第四号までのいずれかに該当している場合、又は本邦に上陸した日から起算して滞在期間が一年を超えている場合を含む。)運転した者
第百十八条  次の各号のいずれかに該当する者は、六月以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。
一  第二十二条(最高速度)の規定の違反となるような行為をした者

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