新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.461、2006/8/24 10:03 https://www.shinginza.com/qa-hanzai.htm

[刑事・少年]
質問:息子は未成年なのですが、先日、罪を犯してしまい逮捕されてしまいました。逮捕の後、監護措置というものになってしまい、現在少年鑑別所にいますが、身柄拘束が長引くことは避けたいと考えています。何かよい方法はないでしょうか。

回答:
1、未成年(少年)が事件を起こして逮捕された場合でも、警察段階での手続は成人と同様です。すなわち、よほど軽微な事案でなければ、捜査や取調べのために、逮捕手続で最大72時間、検察官に送致された後、勾留手続で最大20日間、身柄を拘束されます。その後、成人では起訴・不起訴を検察官が決定しますが、少年事件の場合、全ての事件を家庭裁判所に送致し、家庭裁判所において少年の処遇を決定することになります(全件送致主義)。家庭裁判所では、少年の最終的な処分(少年院や保護観察など)を決定する前に、少年について、監護措置決定をとることがあります。監護措置とは,少年を少年鑑別所に収容して身柄の保全をしながら,少年の行動観察及び心身の鑑別を行う措置のことをいいます。監護措置の要件については,少年法上「審判を行うため必要があるとき」(法17条1項本文)と規定されており,裁判所は,事案の悪質性や非行事実に至る経緯等に鑑み,少年の資質鑑別を行う必要があると判断した場合に監護措置決定を行うことになります。監護措置の期間は原則として2週間ですが,特に継続が必要な場合には原則として1回に限り更新できるとされています(法17条3項)。もっとも,実際の運用としては,更新される場合がほとんどですので,もし,監護措置決定が出された場合には,4週間近くの収容を覚悟しなければなりません。
2、鑑別所では、規則正しい生活の中で、読書、運動、作文などを行います。参考書を差し入れしてもらい、受験勉強をしている少年もいます。また、鑑別技官、家庭裁判所調査官といった専門家と面談を行います。面談の内容や、生活態度などを観察し、当該少年の今後の更生のために必要な処分は何かを判断することになります。一般的なイメージのように、環境が悪いところではなく、刑務所や少年院とは全く異なるものですので、監護措置が取られたからといって悲観的になる必要はありませんが、やはり長期間の身柄拘束であることは変わりなく、特に学校との関係で、出席日数への影響や退学処分などの弊害が予想されます。
3、監護措置への対策としては、まずは、監護措置決定を取られないようにすることです。当たり前のようですが、監護措置決定は、事件が警察や検察から家庭裁判所に送られ(お昼頃)、その日のうちに監護措置決定をとります(夕方5時ころ)。そこで、裁判官が監護措置決定を取らないように、その日のうちに裁判所に出向き、監督できる保護者の存在や、被害者に対する謝罪の状況、就学状況などの環境について、有利な材料を提示しておく必要があります。弁護士を付添人に選任すると、裁判所での少年との接見や、裁判官・調査官との面談などが可能になりますので、この段階からの活動には、弁護士の依頼が重要であると思われます。監護措置決定は、検察から家庭裁判所に事件が送致されたその日のうちに決定してしまいますので、少年がいつ家庭裁判所に送致されるのかを把握しておかなくてはなりません。前述の通り、検察官が家庭裁判所に事件を送致するまでの期間については、最大で逮捕から23日程度ですが、事案が単純である、少年が被疑事実を争っていないなど、捜査の必要性が低い場合には、警察署から送検後直ちに家裁送致になり、その日のうちに監護措置決定がなされる場合もあります。逮捕から2日ほどで監護措置決定が出されるなどというケースもありますので、弁護士の依頼をご検討の場合は、一刻も早くご相談されることをお勧めいたします。
4、実際に監護措置が取られてしまった場合、少年,その法定代理人または付添人は,異議申立てをすることができます(法17条の2第1項)。この異議申立ては,監護措置決定自体に対する異議であり、本当に監護措置決定を出す要件が整っていたのか、という点を争うことになります。監護措置決定自体は、短時間で決定するという性質上、事案の内容、少年の前歴などで画一的に判断されている傾向があり、これを後の異議申し立てで覆すことは、一般的に難しいとされています。
5、監護措置が取られてしまった後の対策として、もう一つ、監護措置の取消というものがあります(法17条8項)。これは、監護措置決定が適法であることを前提に、その後の事情の変更や監護措置を取ったことによる成果、調査の結果などを踏まえて、裁判所が職権で監護措置を終了させることができるというものです。イメージとしては、決定のときは監護措置の必要があったが、現在の状況からすると、鑑別所に入れておく必要がなくなったと判断できるので、早めに出してあげることにする、といったところでしょうか。これは、裁判所の職権で行われるので、申立がなくても決定をすることができ、逆に、申立があっても無視することもできます(一般的に、職権事項の場合には、職権発動を促す上申書を提出します)。この「監護措置の取消」については、監護措置が取られた後の事情も判断材料に含めることができる点などから、「監護措置決定に対する異議申立」に比べて、比較的柔軟な対応が期待できます。
6、以上のように、少年といえども、事件をおこしてしまった場合には、長期間の身柄拘束の可能性があります。また、一口に身柄拘束といっても根拠となる法律には様々なものがあり、根拠ごとに対処法も異なってきます。身柄の早期解放や、最終的な処分(少年院送致など)への対策として、行うべき活動は多岐に渡ります。もしこのような事態に遭遇された場合、緊急を要する活動も考えられますので、お早めに少年事件を取り扱っている弁護士に相談されることをお勧めいたします。

法律相談事例集データベースのページに戻る

法律相談ページに戻る(電話03−3248−5791で簡単な無料法律相談を受付しております)

トップページに戻る