新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.456、2006/8/9 10:27

[民事・消費者]
質問:先日,インターネットオークションで音楽機器を購入しようと思い,入札したのですが,残念なことに上位の入札者が入り,この商品を落札することができませんでした。ところが,オークション終了後,私のメールアドレス宛に出品者と名乗る方から,「最高額で落札した方が都合によりキャンセルしたいとの申出がありましたので,もしよろしければ,あなたが入札した金額でお譲りしたいと思います。」などと記載されたメールが届きました。私は,思いかけず自分の希望価格で購入できることになり,取引したいと思っているのですが,このまま取引を続けても大丈夫でしょうか。

回答:
1、最近,インターネットオークションを悪用した詐欺が多発しています。今回のケースのように,オークションで落札できなかった人をターゲットにしてお金を騙し取ろうとする詐欺行為は「次点詐欺」などと呼ばれており,詐欺の被害に遭わないよう注意が必要です。かかる次点詐欺について手口は色々あるようですが,出品者を装って落札できなかった人に架空の取引を申し出た上で商品の購入代金を振り込ませ,その後商品を送らないという行為は,法律上は,刑法246条の詐欺(懲役10年以下)に該当するとともに,民事上も民法96条の詐欺にあたり,詐取されたお金については,法律上返還請求できます。もっとも,このような詐欺行為を行う者は,他人名義の架空口座などを利用することにより,足が付かないよう細工をしているのが通常ですので,法律上は返還請求権があったとしても,実際に騙し取られたお金を返してもらうことは困難であり,やはり騙されないよう,事前に注意をすることが肝心といえます。
2、このような詐欺行為の被害に遭わないためには,もしご質問のような申出があったとしても,すぐに出品者からのメールであると鵜呑みにせず,本当に出品者からの連絡なのかなど,様々な角度から検証するよう心掛けた方が賢明です。また,オークションを行っている主催者が定める次点入札者に関する取引方法以外の取引方法では取引しないことも大切ですし,メールを送ってきた人を出品者と信用して,あなたの住所,氏名,電話番号などの個人情報が書かれたメールを返信してしまいますと,詐欺行為者にあなたの個人情報を悪用される可能性もありますので,相手方が正規の出品者でかつ信頼できる取引相手と確信できるまでは,これらの個人情報をメールに記載しないことも重要です(自動的に返信メールに署名が記載される状態になっているようでしたら,署名を付けなくするなどの方法を取るとよろしいでしょう。)。
3、そして,相手方に購入代金を振り込んだにもかかわらず,全く商品が届かなかったり,相手方との連絡がとれなくなってしまったりした場合には,既に詐欺の被害に遭っている可能性が高いといえますので,警察(警察庁サイバー犯罪対策又は最寄りの警察署など)に相談し,被害届を出すことにより,詐欺事件として捜査してもらうとよろしいでしょう。また,犯行に使われた振込口座に残高があり,さらに被害届を出している場合には,組戻しの手続(振込を依頼した金融機関に対して振込手続の撤回及び振込金の返金を依頼する手続)を行うことにより,騙し取られたお金が戻ってくる可能性もありますので,振込を依頼した銀行及び振込先の銀行に対して直ちに連絡するなどし,そのような方法で取り戻せないかについても検討されるとよろしいでしょう。

注:組戻しの手続きは本来,振込依頼の際に入力した口座番号等が誤っているなどのケースで,該当口座がない場合にその振込を撤回し,振込金額の返金を依頼する手続になります。ですから今回のような場合に銀行が組戻しに応じてくれるかについては,振込を依頼した銀行及び振込先の銀行(特に後者)の判断しだいで、応じてくれる場合とそうでない場合があります。

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