新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.432、2006/6/30 10:49

[民事・不法行為]
質問:会社の上司から,勤務中,職場で皆がいない時に,繰り返し,肩,髪,腰を触られ,また,食事に誘われました。私は,抵抗し,また,誘いを拒否しましたが,この半年間,ほぼ毎日のように繰り返されました。上司に対して,セクハラ行為を行ったとして,慰謝料請求ができますか。

回答:
1、セクハラとは,セクシャルハラスメントの略で,セクシャルハラスメントとは,一般に,職場における相手の意思に反する性的言動などと定義されます。そして,セクハラは,一般に,@地位を利用して,雇用上の利益又は不利益を与えないことの対価として性的要求を行う,地位利用型・対価型と,A性的言動により,不快な労働環境を作り出す,環境型に分類されます。
2、ただ,例え,性的言動により,不快を感じ,セクハラ行為を受けたとしても,直ちに,慰謝料請求が認められるわけではなく,慰謝料請求が認められるためには,相手方の行為が法律上の違法行為に該当する必要があります。よって,慰謝料請求が認められるかの検討にあたっては,相手方の行為が,セクハラ行為に該当するかというよりは,違法行為に該当するかという点が重要になります。そして,違法行為に該当するかの判断基準(違法性の判断基準)は,学説上,被侵害利益の性質と侵害行為の態様との相関関係から判断すると考える見解が多数を占めており,また,判例上は,基本的にこの見解の考えを前提としつつ,より具体的な判断基準を判示している判例も多く,例えば,横浜セクシャルハラスメント訴訟の控訴審判決である,東京高裁平成9年11月20日判決は,身体的な接触行為が違法行為に該当するか否かについて,「接触行為の対象となった相手方の身体の部位,接触の態様,程度(反復性,継続性を含む)等の接触行為の外形,接触行為の目的,相手方に与えた不快感の程度,行為の場所・時刻(他人のいないような場所・時刻かなど),勤務中の行為か否か,行為者と相手方との職務上の地位・関係等の諸事情を総合的に考慮して,当該行為が相手方に対する性的意味を有する身体的接触行為であって,社会通念上許容される限度を超えるものであると認められるときは,相手方の性的自由又は人格権に対する侵害に当たり,違法性を有すると解すべきである。」と判示しています。
3、そして,本件では,接触行為の対象となった身体の部位は,「肩,髪,腰」で,一概に接触が許されない部位とまでは言えません。ただ,他方,接触の程度は,「半年間,ほぼ毎日のように繰り返され」ており,継続的で執拗であると言え,また,被害者は不快感を持ち抵抗しており,また,行為の場所・時刻は,「職場で皆がいない時」であり,また,勤務中の行為であり,さらに,行為者と相手方の職務上の地位・関係は,会社の上司と部下です。これらの事情を総合的に考慮しますと,上司の行為は,社会通念上許容される限度を超えるものであると認められる可能性はあり,違法行為に該当するとして,慰謝料請求が認められる可能性はあると思います。なお,上記東京高裁判決は,本件事案と似た事案で,違法行為に該当すると判断し,慰謝料請求を肯定しています。但し,上記東京高裁判決の事案は,その後,加害者のセクハラ行為がエスカレートしていき,加害者が強制わいせつ行為に及んだ事案ですので,本件事案とは事案を異にします。本件事案は,慰謝料請求が認められるかの判断が難しい,微妙な事案と言え,裁判になった場合等に慰謝料請求が認められるかは断言できない事案だと思います。
4、セクハラ被害に遭った場合,慰謝料請求が可能かは事案毎に異なりますので,弁護士に相談するのが良いでしょう。

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