新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.417、2006/6/1 10:36

[行政]
質問:最近、業務停止の「行政処分」という言葉をよく耳にしますが、行政処分とは何ですか?懲役何年・・・というものとは違うのですか?行政処分全般について教えてください。

回答:
1、行政処分とは、簡単に言うと、行政機関が個人や法人に対し、法規に基づいて権利を与えたり制限したり、義務を負わせたりすることです。相手方の同意を得ることなく、一方的に行う行為を全般的に行政処分と呼びますが、ご質問のように、行政庁の処分によって不利益な取り扱いを受ける場合、「不利益処分」と呼ぶ場合もあります。一方、懲役何年、というものは刑事罰であり、法律に基づき、検察官が起訴し、裁判所が処分を決定するものです。一般市民の身近な例を挙げると、交通事故で怪我をさせてしまった場合、免許の減点や停止・取消が行政処分、業務上過失傷害による罰金、禁固、懲役などが刑事罰です。具体的な例を挙げると、企業に対する業務停止、医師に対する医師免許の停止・取消、その他許認可が必要な行為に関する不許可や許可取消が挙げられます。また、交通違反をしてしまったときに、運転免許証について減点、免許停止、取り消しなどの処分を受けることがありますが、これも行政処分の一種です。
2、行政庁の行為には、「処分」だけでなく、「指導・助言」にあたるものもあります。行政指導とは、行政機関がその任務又は所掌事務の範囲内において一定の行政目的を実現するため特定の者に一定の作為又は不作為を求める指導、勧告、助言その他の行為であって処分に該当しないものをいいます。このうち、不服を申し立てる対象となる行為は、行政処分、一部の事実行為(継続的なもので、救済の実効性があるもの)、行政庁の不作為(行政庁がやるべき事を行わないとき)があげられます。すなわち、「行政指導」に対しては、不服申し立ては出来ないということです。行政指導はあくまで「助言・指導」であって、強制力を伴うものではありません。これに従うということは、相手方は強制的に、ではなく任意に従ったことになりますので、不服申し立ての対象にはならないのです。
3、行政庁の行為に対する不服申し立てには、不服申し立てと行政訴訟があります。不服申し立てには、処分庁に対する異議申し立てと、審査請求があります。異議申し立ては、処分を下した当該その庁に対する異議の申立であり、処理は迅速だが、自己の行為を自ら判断するので、判断が甘くなる可能性があります。審査請求(再審査請求)とは、処分庁の上級官庁に対し、処分の不当性を訴え、裁決を求めるものです。これも、同じ「行政」という立場での判断であり、大幅に判断が覆る可能性は低いと思われます。
4、異議申し立てや審査請求は、処分があったことを知った日の翌日から60日以内、もしくは処分があった日から1年以内、という期間制限があります。不服の内容によっては、審査請求の前に異議申し立てを行う必要があるもの(異議申し立て前置)この場合は、審査請求の期間制限は変わってきます(行政不服審査法14条)。いずれにせよ、数ヶ月しか期間がありませんので、これらの手続は迅速に行う必要があります。
5、行政訴訟は、裁判所に対して審理を求めるものです。行政庁の行為が違法・違憲である場合、裁判所はこれを判断することができます(違法であれば、損害賠償の請求もできます)。判断権者が裁判所なので、公正な判断が期待できます。しかし、裁判所では、当該処分が、法律が行政庁に与えている「裁量権」の範囲を超えている、その裁量権の濫用である、など「裁量権を逸脱していることが明らかに認められる」かどうかを判断しますので、単純に処分の内容が不服である、という申立は通りにくいと考えられます(なお、交通違反の手続きについては、これとは異なる部分が多くあります)。
6、もちろん、行政処分といっても、過去の例を見ると違法なもの、不当なものはあります。しかし、ここまで解説してきたとおり、行政庁の処分に関する判断をあとから覆すことは困難が伴います。万が一行政庁の行為に対する対抗策をお考えの場合、処分が出る前にこちらの言い分をきちんと伝える、後の訴訟に備えて証拠関係の保全をしておく等、できるだけ早い段階から対策をとる必要がありますので、お早めにお近くの弁護士に相談されることをお勧めいたします。

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