新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.416、2006/5/31 14:53

[民事・契約]
質問:根保証人の責任について質問します。知人が7年前に銀行から1000万円借りるということで連帯保証人になりました。今回知人が破産をしたため、00県信用保証協会というところから、保証債務として800万円請求されています。しかし、知人の説明では1000万円は3年間で完済するということで保証人になったので、私としては既に保証人ではないと思っていました。そこで、00保証協会に訪ねてみると、私は、知人が7年前に1000万円借りるときに、銀行に対し保証書という書面に署名捺印しているが、その書面では「本人が銀行から現在及び将来負担する一切の債務を保証する」旨の記載があること、7年前の1000万円の借金は既に返済されているが、その2年後に更に2000万円融資され、その返済が1600万円残っているので、私にその半額の800万円を保証人として請求するということでした。私は、5年前の1000万円の借り入れについて保証人になるということで保証書に署名捺印したので、それ以外の借金については全く知りませんでした。00保証協会の説明では、保証書に、将来負担する債務も保証すると書いてあり、それを読んで私が署名捺印した以上、私に責任があるということです。私としては、当時銀行員から詳しく説明もなく、1000万円借り入れについての必要書類ということで渡された書類に署名捺印したので納得がいきません。私に責任はあるのでしょうか。

回答:
1、銀行等の金融機関の保証人となる場合、個別の金銭消費貸借契約書について保証人として署名捺印しますが、その際、別に保証書などという書面の提出を求められることがあります。そこには、本人(借り主)が将来借り入れる債務についても保証人となる旨の記載があります。そのように将来借り入れる債務についても保証することを包括根保証といいます。このような包括的な保証も有効とされていますが、金額や期限に限度がない場合や会社等の経営者以外の第三者を包括根保証人とする場合は、問題が多く、その保証人としての責任については限定される場合があります。なお、包括根保証については問題が多かったことから、今回民法が改正され、新たに包括根保証契約に関する条文が規定されました。しかし、これは法律施行後(平成17年4月1日)の契約にしか適用になりません(民歩附則第4条)。ですから、ご質問のケースについては、従来の問題が残っています(改正法については別途解説を参考にしてください)。
2、まず、あなたは、包括根保証人になることを知らなかったということですが、包括根保証人になることを知らなかったと、認められれば、民法上は保証人の責任はありません。しかし、保証書に署名捺印しているとなると、知らなかっただけではとうりません。現在の民事裁判は書面による証拠が重視されますから、保証書を良く読まないで署名捺印したということは裁判所では認めてもらえません。また、銀行の場合は署名捺印した保証書の写しを保証人に渡す扱いになっていますので良く読まないで署名捺印したというのは、弁解になりません。特別に、だまされて保証書に署名捺印したなどの特殊な事情がありかつ、そのような事実を証明しない限り包括根保証人であることは否定できないことになります。
3、ですから、あなたの場合も、包括根保証はしていないと言う主張(裁判上は、契約締結の否認と言います)は認められないと思われます。しかし、包括根保証人として責任があるとしても、本人の借金全額について保証人として責任を負うことになるかいなかは別の問題になります。たとえ、金額についての制限や、保証期間について制限する規定がなくても、保証人の責任を制限することが判例上認められています(判例タイムズ 826号241ページ以下に多くの判例が挙げられています。)このように責任を限定的に解する根拠は、主に信義則(信義誠実の原則)にもとめられています。保証書上は、無期限無限定となっているわけですから本来は制限がないことになるはずですが、それでは保証人になった人にあまりに重い責任が負わされることになり不公平な結果となり放置できない場合、特別に救済しようという考え方です。ですから、保証人の責任が制限されるかについては、保証するに至った事情、借主、貸主と保証人の関係、借り入れた金額、包括保証してから融資までの期間等個々具体的な事情を考慮して判断されることになります。
4、あなたの場合、保証書に署名捺印したのが7年前で、今回請求されている借り入れが5年前と言うことですから、保証書作成後2年以内に行われた融資であり、保障期間の経過というだけでは、責任が全くないとはいえないでしょう。また、金額も800万円ということで当初の融資の1000万円の範囲内の金額です。これらの事情を考慮すると特に保証人としての責任を認めても過酷な状況とはいえませんし、不公平ともいえないと判断される可能性が高いと思われます。ですから他に担保があったのに貸主の判断で解除したなど特殊な事情がない限り、保証人の責任を負わされる可能性が高いと思われます。いずれにしろ、保証人として支払う前に詳しい事情を弁護士に相談されるが良いでしょう。
5、なお、包括根保証については、期限の制限がない場合は2、3年経過すれば解約権が発生すると考えられていました。この点については改正法により、保証期間は5年を経過することはできないこと、期間の定めがない場合は、保証した日から3年経過により確定することになりました(民法465条の3)。そして、改正法施行前に締結された包括根保証についても、改正法の施行後3年が経過しても元本が確定しないものについては3年(極度額の定めのあるものは5年)を経過する日に自動的に元本が確定するという経過措置が定められました(附則4条)。

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